#労務管理
2024/09/04

リモートワークと他形態との違いとは。導入のポイントとともに解説 

目次

政府が推進する『働き方改革』の影響もあり、リモートワークを導入する企業は近年、増加傾向にあります。リモートワークは企業にとっても社員にとってもメリットのある働き方ですが、他の働き方とどう違うのでしょうか?導入の際に注意するポイントも確認しておきましょう。

リモートワークとは

ネット環境が整備された現代社会では、出社せずに働く社員が増えつつあります。『リモートワーク』は、そのような働き方の一つです。

リモートワークの定義

リモートワークはその名の通り遠隔(remote)から働く(work)ことで、「電話やメールなどを用いて企業と連絡を取り、出社をしない働き方」です。

元々は自宅で会社の業務をこなす働き方を指していましたが、近年はインターネットの普及やコワーキングスペースの増加に伴い、オフィスでも自宅でもない場所で働くケースも多いようです。

『働き方改革』の普及と同時に、人材の確保という点からも、リモートワークを導入する企業は急速に増えています。

労働形態は様々

リモートワークは労働形態を問いません。毎日出社するのではなく、会議や進捗確認などで直接会って話したいときには出社し、それ以外は会社以外で働くケース、あらかじめ出社日を週何日と決めているケースなど様々です。

誰もが、同じ場所にいなくてもコミュニケーションが容易に取れる現代においては、社員同士が常に同じオフィスにいる必要もなくなりました。出社せずに働くことのできる環境を提供している企業がどんどん増えています。

特に、プログラマーなどの自宅作業ができる業種では近年、リモートワークを選択する人が多くなっています。

その他の形態との違い

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在宅勤務やノマドワークなど、リモートワークと似た意味で使われる言葉は多くあります。雇用形態の明確な違いについてご存知でしょうか?

在宅勤務との違い

厚生労働省が出している「在宅勤務のガイドライン」によれば、在宅勤務は『事業者と雇用関係にある労働者が自宅で勤務すること』であるとされています。

在宅勤務とリモートワークの違いは「働く場所」にあります。在宅勤務は本人の自宅限定ですが、リモートワークは必ずしも自宅である必要はなく、図書館やカフェ、レンタルオフィスやコワーキングスペースなど、働く場所を自由に選ぶことができます。

経営者としては、労働中のケガや事故などの保証範囲が異なるのが心配なところ。労働者がどこで働くのかを把握しておく必要があります。勤務場所を自宅に限定するかどうかは要検討事項でしょう。

『情報通信機器を活用した在宅勤務の適切な導入及び実施のためのガイドラインの改訂について』厚生労働省

テレワークとの違い

テレワークは、インターネット環境を用いて場所や時間にとらわれない働き方をする労働形態のことです。

総務省によれば、テレワークには企業に雇用された労働者が行う『雇用型テレワーク』と、個人事業主や小規模の事業者が行う『自営型テレワーク』に分類されます。

リモートワークについては、会社との雇用関係があることが定められていますが、テレワークの場合はそうではありません。

テレは『telephone(電話)』ではなく、『tele(遠隔)』が由来です。テレワークの方がより広義的な働き方を指す言葉ですが、少々古い言葉でもあり、若い世代には通じない言葉かもしれません。

ノマドワークとの違い

ノマドはフランス語で「遊牧民」という意味です。特定の勤務地を持たない人達を指す言葉で、エンジニアやライター、また営業職の場合も、特定の場所で働かない場合はノマドワークと呼ぶことがあります。

リモートワークは厳密に言えば企業に雇用されている人達ですが、ノマドワークは不特定の場所で働く『ワークスタイル』を指す言葉ですので、求人などでノマドワークという言葉が使われることはありません。

クラウドソーシングとの違い

クラウドソーシングは、発注者がインターネット上で受注者を公募する形式のこと。この働き方は近年、日本でも本格化しはじめており、2017年時点では1500億円にも届く市場規模に成長しています。

正社員を募集するケースもあるようですが、Webサイトの作成やロゴデザインなど、社内に制作技術がないものや、特定の業務にのみ従事して欲しい場合に外部委託をするために用いられるものです。

リモートワークとは求人方法が大きく異なります。クラウドソーシングは求人の手段であり、雇用形態であるリモートワークとは用途がそもそも違います。

経営者にとってのメリット・デメリット

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リモートワークは従来の働き方とは大きく異なります。リモートワークを採用すると、経営者にとってどのようなメリットやデメリットがあるのでしょうか。

コスト削減

リモートワーク導入のメリットの一つはコスト削減です。従業員が作業するオフィス空間や駐車場といった土地代を削減でき、机や倚子、事務用品といった什器や備品、光熱費も大きくコストカットできるでしょう。経営者にとっては大きなメリットです。

また、交通費や飲食費などの従業員コストも削減可能です。アメリカの大手企業では、年間あたり従業員1人につきトータルで100万円以上コスト削減できたという事例も報告されていて、日本でも注目されています。

人材確保

これまでは、遠方の地域に優秀な人材がいたとしても、確保することが困難でした。出社必須の業務形態である限りは、通勤可能な地域に求人を募ることしかできません。

リモートワークを導入すれば、遠方地域に住む人や、海外にまで求人を募ることができます。人手不足が大きく解消される可能性があるでしょう。

育児や介護など、家庭の事情で外に働きに出ることができない有能な人材は世の中にたくさんいます。止むを得ない引っ越しなど、今までは勤務地の都合で退職せざるを得なかった社員の離職を防ぐこともできるでしょう。

リモートワークを導入することで、会社の人材確保についての問題解決が期待できます。

コミュニケーションが取りにくい

良いことばかりに見えるリモートワークも、メリットばかりではありません。デメリットもあります。

当たり前のことですが、全員で同じ場所で作業をするほどの円滑なコミュニケーションは見込めません。顔が常に見える場所で勤務していればわかるような、小さな変化にお互いが気づきにくいというデメリットがあります。

遠隔である以上、メールやチャットツール、電話によってコミュニケーションを取ることになります。対面であれば5分で済ませられるような会話内容でも、必要以上に意思の疎通に時間がかかることもあるでしょう。

作業過程でミスがあった際、伝達が遅くなる危険性も高いので、コミュニケーションについてはしっかりとしたマニュアルを用意しておくべきです。

成果を掴みづらい

リモートワークでは、勤務態度の把握や勤務時間の管理を正確に行うことができないため、評価の基準は提出された成果物から判断するしかありません。

成果についての基準が曖昧だと、評価に納得がいかない従業員は、モチベーションが低下し、会社に対する信頼を喪失しかねません。

企業サイトのメンテナンスや、管理をしているバックエンドエンジニアのような、成果物が曖昧な仕事に対する評価をどのようなものにするかは、正直なかなか難しいところですが、成果に対し具体的な定義を設け、妥当な評価をすることが求められます。

リモートワークの導入事例

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リモートワークを導入して成果をあげている企業の実例を見てみましょう。

東急リバブル

東急リバブルは不動産の売買や仲介を事業とする大手企業です。時差出勤制度を導入するなど、元々働き方についてたくさんのアイディアを実践してきたこの企業は、2016年にリモートワークを導入しました。

同社では週に1、2回、月に6回とリモートワークの回数に上限を設けています。また、情報漏洩対策として業務用のパソコンの導入、リモートワークで行える業務内容を限定しています。

トライアルの時点で作業者のおよそ7割が「業務効率があがった」と回答したそうです。

営業の中継所となる『サテライトオフィス』についても導入を進めていて、今後もさらに従業員が働きやすいリモートワーク環境を整えていくことが予想されます。

日本航空

日本航空では、2014年から積極的にリモートワークを導入しています。

週1回の在宅勤務が許可されており、半休と在宅をあわせることも可能なほか、在宅勤務時は勤務時間を一時中断できるといった分割勤務制度を設けているなど、働き方の自由化がかなり進んでいます。在宅勤務のためのワークショップを開く活動なども。

在宅対象者は事務員などの間接スタッフに限られていて、当たり前ではありますが、パイロットやキャビンアテンダントなどは対象外です。

現在も、業種にあわせた環境改革をさらに進めているそうです。

リモートワークに向いている職種とは

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リモートワークに向く職種と、向かない職種があります。職種によっては、リモートワークを導入すると、かえって働きにくい環境になってしまうかもしれません。

どのような職種がリモートワークとして適切なのかを見ていきましょう。

現場が限られない職種

『現場に出向く必要のない仕事』は当たり前ですがリモートワークに最適な職種です。パソコンだけで作業が完結するような事務やデザイン、プログラムの開発などがこれに該当します。

製造業の直接作業者や医師、介護職などは作業者がどうしてもその場にいることが求められます。

場所を問わない職業かどうかを見極めて導入することが必要です。

情報共有がしやすい職種

情報の受け渡しがしやすい職種というのもリモートワークに向いている条件の一つです。例えば成果物が電子データなら、リモートワークを導入しやすくなります。

デザインやプログラミングのソースコードなど、電子データでやりとりができるものは、わざわざ会社に出向いたり、郵送の必要がありません。

データ入力や編集など、共通のプラットフォームを用いる仕事は、インターネット上にあるデータベースにアクセスすることができればどこにいても仕事ができるので、リモートワークに向いている職種です。

Webコミュニケーションが可能な職種

チャットツールやオンライン通話など、Web上でのコミュニケーションが可能な職種は、リモートワークへの親和性が高いと言えるでしょう。

最近では、ビデオチャットや、スマホからデータやチャットのやりとりができるアプリなど、便利なツールがたくさんあります。勤怠管理や業務連絡、スケジュール管理などもWeb上で行える環境が整っているのなら、よりリモートワークをスムーズに行うことができます。

リモートワーク実現のポイント

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社内にリモートワークの導入を検討する際には、そのためのインフラ整備も考える必要があります。組織の環境作りにおいて、何をすべきでしょうか?

クラウド化などの環境整備

データベースやシステムを、ある程度クラウド化しておきましょう。データベースが社内ローカルだと、データのアップロードをするために出社しなければならず、リモートワークを有効活用することができません。

クラウドであれば、ネットワーク環境さえあれば、場所を問わずデータが更新できるようになります。

データのアップロードや更新だけでなく、場所に関係なく出退勤や報告書の管理もできるようになるので、リモートワークにはクラウドの導入は必須と言えます。

ただし、外部から社内のデータに簡単にアクセスできるようになるということは、情報漏洩などのリスクが大きくなるということでもあります。クラウドを導入する際は、社員に対するコンプライアンスとセキュリティの徹底が必要です。また、どのデータをクラウドで扱うかも明確にしておきましょう。

コミュニケーションツールの統一

SkypeやLINEなど、多彩なコミュニケーションツールがありますが、仕事で使うツールは統一しておくことが好ましいでしょう。

チーム編成が変わったり、新しいチームへの異動が生じた際、それぞれが異なるツールを使っていると、コミュニケーションエラーが発生する恐れがあるからです。

日々多くの人間とやりとりをする人事や中間管理の仕事も、ツールがバラバラだと把握がしにくい状況になります。会社で利用するツールは統一しておきましょう。

特徴などを理解して導入検討をしよう

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リモートワークは社員の働き方に多様性を与えるだけでなく、コスト削減が見込めるなど、企業にとっても従業員にとってもメリットが多いため、導入する企業は近年増加しています。

リモートワークに使えるクラウドサービスやコミュニケーションツールも増えており、導入のハードルもどんどん低くなっています。日本航空やGoogleなど、名だたる世界的企業も導入を開始しています。

ただし、リモートワークも万能ではありません。向いている職種とそうでない職種があるので、一つ一つをきちんと検証し、Webツールやオンラインストレージなど、環境を整えることも重要です。データの取り扱いに関する社内規約も厳密に定めましょう。

リモートワークを導入して、快適な作業環境を提供できれば社員のモチベーションや効率アップにつながり、ひいては業績の向上につながることでしょう。

働き方改革時代の新しいワークスタイルのひとつとして、導入を考えてみてはいかがでしょうか。

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HR大学編集部
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