【実践】人事フレームワークまとめ・KSF活用。SWOT/PEST分析
- KSF(キーサクセスファクター:重要成功要因)の意味とは
- KSFとは
- 人事におけるKSFのお勧めフレームワーク3選
- SWOT分析
- ロジックツリー分析
- PEST分析
- 人事向けフレームワークを使ったKSFの設定方法・例・まとめ
- SWOT分析の例
- ロジックツリー分析の例
- PEST分析の例
- 人事におけるKSFの活用例
- 経営環境変化に対応できる組織づくり
- 新規事業の推進に応じた組織・風土づくり
- アイディアを選抜する仕組みなどの創設
- 戦略人事のためのKSF設定は、フレームワークの活用を
顧客ニーズの多様化や経営環境の劇的な変化により、企業が事業を成功させるためには、KSFを定めることが必要不可欠となっており、戦略人事の観点でもKSFの重要性は増してきています。
ここでは、KSFの設定にあたり、人事におけるお勧めのフレームワークとKSFの活用例などを説明します。
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KSF(キーサクセスファクター:重要成功要因)の意味とは
ここでは、KSFの意味を説明します。
KSFとは
KSF(Key Success Factor)は重要成功要因を指し、外部環境と内部環境の分析結果に基づいて、競争優位を構築するために定めるものであり、KSFを定めることは企業戦略立案の第一歩といえます。
さらにKSFの基礎について体系的に知りたい方は「【完全版】人事のためのKSFとは。KPI・KGI・OKRとの違い」をご確認ください。
人事におけるKSFのお勧めフレームワーク3選
競争優位を構築するために、内外環境を踏まえたKSFを設定するにはフレームワークを活用することが有効です。企業戦略やマーケティング分野では、「5F(Five Forces)分析」や「3C分析」などを行うことが多いですが、ここでは、人事分野に活用できるフレームワークを紹介します。
SWOT分析
SWOT分析は、「Strength(強み)」「Weakness(弱み)」「Opportunity(機会)」「Threat(脅威)」の4つの視点からKSFを抽出するフレームワークで、4つの頭文字「S・W・O・T」を取ってSWOT(スウォット)分析といわれています。
経済情勢や競合環境、市場環境といった自社を取り巻く外部環境と、自社の商品やサービス・ブランド力、技術力などの内部環境を4つの視点に分けて分析することで、戦略立案や意思決定、KSFの設定などをおこなうために用いるのです。
SWOT分析は、外部環境である「機会」「脅威」、内部環境である「強み」「弱み」に分けて分析します。
ロジックツリー分析
ロジックツリー分析は、課題をツリー状に展開し、解決方法などを導き出すフレームワークです。課題をツリーのトップに配置し、そこから目的を達成するための要素をツリー上に展開していきます。
ロジックツリーの要素を展開するときのポイントは、MECE(モレなくダブりなく)に展開することです。モレがあると重要な選択肢が除外されてしまい、ダブりがあるとKSFの設定の意思決定に誤りが生じることがありますので、注意が必要です。
PEST分析
PEST分析とは「Politics(政治)」、「Economy(経済)」、「Society(社会)」、「Technology(技術)」の4つの外部環境を分析するためのフレームワークで、4つの頭文字「P・E・S・T」を取って、PEST分析といわれています。
Politics(政治):政治、法律、業界動向など
Economy(経済):景気、賃金、経済動向など
Society(社会):人口、社会変化の動向など
Technology(技術):技術の進展や革新動向など
法律の制約や技術革新など外部環境の動向を把握することで、KSFとして設定すべき課題が明確になります。
人事向けフレームワークを使ったKSFの設定方法・例・まとめ
ここでは、フレームワークを使ったKSFの設定方法を人事に関連した具体例に沿って説明します。
SWOT分析の例
外部環境は、法律、政治状況、技術革新による環境変化や、競争環境の動向、顧客ニーズの変化などであり、内部環境は、価格や品質、技術、ブランド・サービス力、経営資源などが該当します。
内部環境は、自社の「強み」と「弱み」です。外部環境のうち「機会」は自社にとってプラスの要素になりますが、「脅威」は、自社にとってはマイナス要素です。これら「強み」「弱み」「機会」「脅威」のそれぞれを抽出しますが、この作業は、組織横断的に行い、アイデアや知見を持ち寄ることがポイントになります。
分類しただけで終わりではなく、この分類を元に向かうべき方向性を検討します。
SWOT分析の基本は次のとおりです。
「強み」を「機会」に投入する。
「脅威」は避ける。
「弱み」は克服する。
「脅威」を「機会」に変えられないか。
この視点でSWOT分析を行うことで、競争優位を構築するためのKSFを設定することができます。
「【完全版】人事のためのKSFとは。KPI・KGI・OKRとの違い」の「4.KSFの設定方法・例まとめ」でふれたSWOT分析の例を用い、具体的に説明します。次のような外部環境、内部環境があった場合、SWOT分析では次のように整理していきます。
【外部環境】
顧客ニーズの多様化により、小ロット、短納期の要求が以前にも増して強くなっている。
【内部環境】
製造工程間で負担にばらつきがあり、手待ち時間が多い部門と少ない部門がある。
各部署に優れたベテランがいるが技術承継が進んでいない。
コスト制約上、人員の拡充は困難である。
↓ SWOT分析
Strength(強み):優れたベテラン社員の存在
Opportunity(機会):(小ロット、短納期要請)
Weakness(弱み):技術承継が進んでいない、工程間で負担にばらつきがある、人員拡充は困難
Threat(脅威):小ロット、短納期要請
このSWOT分析では、「小ロット、短納期要請」について機会と脅威のそれぞれにプロットしています。これは、脅威にもなれば機会にもなり得るという意味ですが、機会と捉えて「小ロット、短納期要請」に応えれば、競合他社に対して競争優位に立てるということです。
この例では、競争優位を確立するために「小ロット、短納期要請」を機会と捉え、限られた人数で小ロット・短納期ニーズに応える必要があるなか、優れたベテラン社員の教育によって「多能工の育成」を進めることがKSFと整理できます。これによって、手待ち時間の多い部門から手待ち時間の少ない部門に人員を充当できる体制を整えるのです。
この「多能工の育成」が、KSFとなります。
ロジックツリー分析の例
ロジックツリー分析は、課題や問題解決を行うときのフレームワークです。
例えば、KGIを「労働生産性を〇%にする」といった場合、労働生産性を要素分解すると、「生産量÷労働量」となります。つまり、生産量を上げるか、労働量を下げるかのいずれかの手段となりますが、さらに下位階層として、生産量を上げる手段、労働量を下げる手段を要素分解していきます。
ロジックツリー分析では、このように要素分解してKSFを設定していきます。
PEST分析の例
PEST分析は、外部環境を整理するフレームワークです。PEST分析だけでもKSFの方向性を導くことはできますが、内部環境が考慮されないためモレが生じてしまいます。SWOT分析の外部環境分析を補完する役割として活用することも有効と考えられます。
「政治」「経済」「社会」「技術」の4つの要素から外部環境を分析しますが、それぞれどのようなことか、製造業における労働生産性向上を例に説明します。
政治動向:定年70歳の段階的引き上げ
経済動向:雇用率の低下や賃金の上昇、小ロット短納期ニーズの高まり
社会動向:労働人口減少
技術動向:女性や高齢者でも扱いやすい生産補助具の台頭
このような外部環境から、限られた人数で小ロット短納期ニーズに対応すべく、多能工化の推進とともに、高齢者や女性労働者でも扱いやすい生産補助具を導入するなどにより、労働生産性の向上を目指すことを導くことができます。
この場合のKSFは、「多能工化の推進」「高齢者・女性活躍対応」となります。
このように、自社を取り巻く外部環境をPEST分析にて整理し、向かうべき方向性を抽出します。
人事におけるKSFの活用例
ここでは、人事におけるKSFの活用について具体例を紹介します。
経営環境変化に対応できる組織づくり
経営環境が激しく変化している昨今、多くの企業に浸透しているライン組織では、経営の意思決定が迅速に行えないなどデメリットが生じることがあります。
例えば、自社を取り巻く環境として業界動向の変化が激しく、顧客からの要請が日々変わってくる状況があるとします。自社の組織は、「社長→部長→課長→係長→担当」といったライン組織となっており、意思決定は、金額が高いほど決裁基準は上位階層になり他社と比較して意思決定スピードが遅く、競合他社に負けている場合、KSFをどのように活用するか説明します。
SWOT分析を行った場合、意思決定の迅速化を図るため、組織体制としてカンパニー制やフラット組織などのフラットな組織運営がKSFと整理できます。
フラットな組織運営によって、経営の意思決定を迅速に行える組織体制を目指すことができるのです。
新規事業の推進に応じた組織・風土づくり
新規事業の推進は、失敗を恐れず挑戦していく組織や風土が必要ですが、組織体制や人材評価制度などの体制が新規事業の推進を阻害することもあります。
例えば、新規事業がなかなか進まない企業において、単年度の評価によって人材評価をしていることから、新規事業に向けた目標設定する者が少ないといった場合、KSFをどのように活用するか説明します。
SWOT分析を行った場合、内部環境としては、単年度の評価を行っているため、挑戦的な目標設定をする社員が少ない、すぐに成果が現れない新規事業の目標を掲げる者もいないといったことから、新規事業の推進に対応した人材評価制度の見直しがKSFと整理できます。
単年度だけではなく、複数年度の目標設定をできるようにするとともに、新規事業部門の成果は、プロセスや提案件数などを重視するといったことが考えられますが、これにより失敗を恐れない組織・風土づくりを目指すことができるのです。
アイディアを選抜する仕組みなどの創設
意欲の高い社員は、自身のアイデアを会社に認めてもらいたいという承認欲求が強いものです。この承認欲求を満たすことによって、優秀な社員を自社に引き止めることができます。
例えば、社員の意見などを吸い上げる仕組みもなく、社員が提案しても却下され、すべてがトップダウンで決定される組織において、優秀な社員が離職するといった場合、KSFをどのように活用するか説明します。
SWOT分析を行った場合、内部環境としては、社員の提案は受け入れずにすべてがトップダウンで意思決定され、優秀な社員が意欲をなくして離職している状況から、優秀な社員の意欲向上がKSFとして整理できます。
具体的には、提案制度や新規事業の社内公募制度など、優秀な社員の意欲を引き上げる施策を導入することで、優秀な社員を引き止めることができるのです。
戦略人事のためのKSF設定は、フレームワークの活用を
人事におけるKSF設定のお勧めフレームワークとして、SWOT分析、PEST分析、ロジックツリー分析を人事事例を交えて説明したほか、実際の人事におけるKSFの活用例もわかりやすく解説しました。
フレームワークを活用することによって、有用なKSFを設定できることが理解できたと思います。
KSFは、企業戦略立案に活用することが基本ですが、戦略人事の重要性が増してきている昨今、人事部門でもKSFを設定することが必要な場面多くなると思われます。
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