#人材管理
2024/08/08

ミッションとは?ビジョン・バリューとの違いから具体例まで解説

目次

近年、企業ミッションの重要性が増しています。人事でミッションステートメント作成に悩まれている方も多いのではないでしょうか。この記事ではミッション、ビジョン、バリューの違いや、作成方法を解説します。活用事例も紹介していますので、参考にしてみてください。

ミッション・ビジョン・バリューとは

ミッション・ビジョン・バリューとは、違いを解説

かつてミッション、ビジョン、バリューは、各々単体で扱われることが多くありました。ここではそもそもミッション・ビジョン・バリューとは何なのかということから、ミッション、ビジョン、バリューの単体での意味をそれぞれ解説します。

 ミッション・ビジョン・バリューとは

「ミッション・ビジョン・バリュー(MVV)」として世に出たのは、オーストリアの経営学者であるピーター・F・ドラッカーの著書『「Managing in the Next Society」(邦題:「ネクスト・ソサエティ」2002年国内刊)』の中で示されたのがはじまりです。

ピーター・F・ドラッカーは著書の中で「ネクスト・ソサエティにおける企業の最大の課題は、社会的な正統性の確立、すなわち価値、使命、ビションの確立である。他の機能はすべてアウトソーシングできる」と説明し、組織が存在意義や社会的ポジションを示す方法としてミッション・ビジョン・バリューを提唱しました。

(※引用)ピーター・F・ドラッカー著『「Managing in the Next Society」(邦題:「ネクスト・ソサエティ」ダイヤモンド社刊)』より

ミッションとは

企業におけるミッションとは、組織の成長していく方向を定める指針となる大事なもので、企業姿勢や存在意義を社会に示すものとしても役割を担います。

ミッションとは「使命」としても訳され、「作戦や任務を遂行する」場合に「ミッションを完遂する」などと使われます。企業がなぜ存在し、「社会の中で実現したいことは何なのか」を示すものになります。

ビジョンとは

ビジョンとは「展望」と訳すことができますが、企業においては「企業として将来どんな展望があるのか、どうなることが理想か」を示します。ビジョンを明確にすることで、企業としての理想像を従業員に共有できます。企業の「なりたい姿」を示すものになります。

バリューとは

バリューとはもともと「価値」という意味ですが、マクドナルドの「バリューセット」などに代表されるように、「お得な」という意味で訳されることも多いです。

企業にとっての「バリュー」とは、「企業や組織で共有すべき方針や価値観」です。特に従業員にとって、どんな価値観で働くのかは大事な指針になってきます。企業の「行動指針」を示すものと理解しましょう。

ミッションとビジョンの違い

ミッションは「Why」にあたりビションは「What」にあたるといわれています。しかし両方とも抽象的な概念を含むため、企業によっては混同したり、違う使い方をしたりしています。

ミッションの方がより大きな指針で、ビジョンの方はより具体的な、実現したい姿や目標のことだと考えるといいでしょう。

ミッションとバリューの違い

ミッションが「Why」ならば、バリューは「How」です。

大きな使命(ミッション)に向かって、どう実現(バリュー)していくのかということになります。

ミッションの作成と浸透方法

ミッションの作成と浸透方法を解説

ここでは企業がミッションを作成するステップと、組織全体への浸透方法を解説します。

メンバーを決め作成期間を設定する

ミッションを作成するメンバーに関する定義はありません。ベンチャー企業であれば、創業者の想いを明文化することで強いミッションができることもあります。また時期も決まりはありませんが、会社設立のタイミングおよび、企業規模が成長していく段階で、定期的にステージにあったミッションに書き換えていく必要があります。都度そのタイミングでメンバーを募り、短期間のプロジェクトにするのがおすすめです。

企業規模が大きい場合は1人で作成するのではなく、経営陣と広報や人事を含む各部のトップによるチームでの作成がおすすめです。ただし人数が多くなりすぎても決定しづらくなるため、人数を絞り、期間を決めた制作が必要です。

実際に筆者自身も、ミッションの作成には2度ほど関わりましたが、一度は参加したいメンバーが多すぎて10名ほどになってしまい失敗しました。結果5名前後でしっかり練ったものを、経営陣と叩き直すスタイルの方がスムーズに進んだ経験があります。

ミッションステートメントを作成する

メンバーが決まったら、次にミッションステートメントを作成します。

ミッションステートメントとは、企業の存在意義や使命、従業員の共有している価値観などを明文化したものです。

ミッションの浸透には、このミッションステートメントの作成が欠かせません。行動指針までに落とし込み、従業員への浸透をはかります。またミッションステートメントは社内外へ明示し、株主、顧客を含め発信していきます。

ミッションステートメントを作成する際には、以下のような要素を盛り込みます。

  • 創業者の想い

  • 顧客への姿勢

  • 従業員への想い

  • 製品・サービスがもたらしたいベネフィット

  • 企業の優位性

  • 社会的責任や社会貢献

ミッションを浸透させる

最後のステップはミッションの浸透です。ミッションの浸透は組織のトップから進めていきます。

まずは経営陣からマネジメント層までの浸透を先に行い、人事評価に落とし込むことが大事です。マネジメント層の行動や判断基準、人事評価基準がミッションステートメントをベースにすることでスタッフにも自然に浸透しやすくなります。

また朝礼などの社内イベントで、ミッションステートメントを都度繰り返すのもおすすめです。社内報の利用、ミッションに紐づけた従業員の表彰など、繰り返すことがミッション浸透には欠かせません。

まだ明確な人事評価制度がないなど、最初から人事評価制度の作り方が知りたい方は「人事評価制度の作り方 事前に把握しておきたいポイント」がおすすめです。

ミッション具体例

ミッションを活用している具体例を紹介

ミッションを企業活動に活用している事例を紹介します。

具体例1:「いい会社をつくりましょう」伊那食品工業株式会社

「いい会社をつくりましょう」を合言葉に企業経営する、伊那食品工業株式会社(長野県伊那市)を紹介します。

同社は1958年創業で、「かんてんぱぱ」をはじめ主に寒天を原料にした家庭用から業務用の食材を製造しています。長年業績を伸ばし続け、「農林水産大臣賞」や「最優秀経営者賞」(日刊工業新聞社)など多数受賞しています。

「いい会社」を基準としているため、人件費を「費用」とみると経費削減の対象になるが、人件費は働いてくれた従業員への対価なので多くてよいという意識で企業経営をしているそうです。そのため、あえて「永続的低成長」を目指し、社員が安心して働けるようにと終身雇用制度をとっています。

同社は長野県という立地にありながら、毎年20〜30名の採用枠に、2,000〜3,000名の学生が応募する人気企業になっています。

  • 伊那食品工業株式会社の社是

いい会社をつくりましょう
〜たくましく そして やさしく〜

同社HPでは「いい会社」とはどのような会社であるのかを以下のように掲載しています。

”単に経営上の数字が良いというだけでなく、会社を取り巻くすべての人々が、日常会話の中で「いい会社だね」と言ってくださるような会社のことです。「いい会社」は自分たちを含め、すべての人々をハッピーにします。ハピネスこそ人間社会すべての究極の目的だと思います。「たくましく」とは、手を抜かず、仕事に一生懸命取り組むこと。また自分を律し、その厳しさに耐えることです。永続していく強い会社という意味も含みます。「やさしく」とは、他人を思いやることです。どちらを欠くこともなく、両立させている人たちの集まりが「いい会社」と呼ばれるのだと思います。”

(※引用)伊那食品工業株式会社:「企業理念」より

具体例2:「マチの“ほっと”ステーション」株式会社ローソン

株式会社ローソン(東京都品川区)は、国内14,476店舗、海外3,621店舗を展開する国内大手コンビニエンスストアチェーンです。(2021年2月)

企業理念に「私たちは“みんなと暮らすマチ”を幸せにします。」を掲げ、地域に愛される店舗づくりを目指すと宣言しています。

理念にあわせ、「マチの“ほっと”ステーション」をビジョンとし、広告やマーケティング展開にダイレクトにメッセージを活用しています。

  •  ローソンWAY

  1. マチ一番の笑顔あふれるお店をつくろう。
  2. アイデアを超えに出して、行動しよう。
  3. チャレンジを、楽しもう。
  4. 仲間を想い。ひとつになろう。
  5. 誠実でいよう。

この他に「ローソン グループ企業行動憲章」を作成し、グループの行動指針を定めています。(※引用)株式会社ローソン:「企業情報」より

 具体例3:株式会社良品計画

「無印良品」を展開する株式会社良品計画(東京都豊島区)は、企業理念を商品の制作コンセプトに反映させていることで有名です。顧客にも理念や「無印良品らしさ」を中心に発信し、SNSを使ったコミュニケーションで成功しています。

現在「無印良品」はInstagramのフォロワー数が279万人、Twitter(@muji_net)のフォロワー数が72万人(2021年8月現在)を誇るアカウントを所持しています。ファンが商品だけでなく、企業姿勢に共感して商品や動画を紹介することで、多くに人に気に入られ、リツイート(拡散)される、バズツイートが何度も起こっています。

・「良品」ビジョン
「良品」には、あらかじめ用意された正解はない。しかし、自ら問いかければ、無限の可能性が見えてくる。

 ・企業理念

●良品価値の探求 Quest Value
「良品」の新たな価値と魅力を生活者の視点で探求し、提供していく。

●成長の良循環 Positive Spiral
「良品」の公正で透明な事業活動を通じ、グローバルな成長と発展に挑戦していく。

●最良のパートナーシップ Best Partnership
仲間を尊重し、取引先との信頼を深め、「良品」の豊かな世界を拡げていく。

  • 行動基準

  1. カスタマー・レスポンスの徹底
  2. 地球大の発想と行動
  3. 地域コミュニティーと共に栄える
  4. 誠実で、しかも正直であれ
  5. 全てにコミュニケーションを

(※引用)株式会社良品計画:「企業情報」より

ミッションの効果

密書の従業員や採用への効果を解説

実際にミッションがあることで、どのような効果があるのでしょうか?

経営者JP総研が10,000名の管理職以上のエグゼクティブに調査したとろ、企業理念が浸透していると答えた企業のうち67.6%が、直近5年間で業績が向上していると回答しています。(※1)

理念の作成と浸透は、企業経営に有益だといえるでしょう。では従業員や採用面での効果に関して解説します。

(※1)経営者JP総研:『「理念、ビジョン、ミッション」に関する意識調査』より

 従業員への効果

高い使命感のあるミッションが示されると、大きな社会的目標に向かう意義が生まれ、従業員全体のモチベーションが上がります。また意思決定の権限を従業員へシフトしていく際にも、ミッションステートメントに沿っているかを基準にすることで、各々の意思で判断できます。その分従業員の当事者意識を高め、組織への参加意識を高める効果があります。

企業のグローバル化も進む中、従業員の人種や国籍も多様化しています。ミッションステートメントで行動指針や意思決定する基準が明確であれば、マネジメントもしやすくなります。

採用への効果

企業経営において「エンゲージメント」が重要視されるようになるようになっています。エンゲージメントとは、従業員が組織へ愛着心を持ち、スタッフ同士の相互理解ができていること、ということです。ロイヤルティーといわれることもあります。

日本CHO協会の『「エンゲージメント」に関するアンケート』では、「社員のエンゲージメントに影響を強く与えると思う要素は?」という問いに、「共感できるミッション・ビジョン・バリュー」という答えが51%と「上司・同僚・部下との良好な協力体制や人間関係」と並んで1位になっています。(※2)

(※2、引用)日本CHO協会:『「エンゲージメント」に関するアンケート』より

また現在、候補者が就職や就職前に、企業のサイトを確認するということが当たり前になりました。実際に筆者が採用面接をしていた際にも感じたのが、多くの候補者が「ミッション・ビジョン・バリュー」を最初に確認するということです。このことからも、「ミッション・ビジョン・バリュー」は従業員にとって大きな価値を持つようになっているとともに、採用においても必須の要素になっているといえます。

【まとめ】ミッション浸透はクラウド型人事評価との連動で

ミッションに関して、その概要から作成方法、浸透方法まで紹介してきました。企業価値向上のためにも、今後の事業戦略としても取り組みたい課題です。

ミッション浸透のために欠かせなのが、人事評価との連動です。また最近はクラウド型の人事評価システムにすることで、簡単にコストもおさえて導入することが可能になりました。

HRBrainは、従業員の人事評価などのオペレーションのすべてをクラウド上のソフトウエアで効率化するサービスです。MBOやOKR、1on1などの最新のマネジメント手法をカンタン・シンプルに運用できます。

「そろそろ人事制度をクラウド化したいが大変そう。誰に相談したらいいか分からない・・」
「もっと人事評価と能力開発を連動させて、人材の育成をしたい」
「人事評価とミッションを連動させるために、実際に何をしたらいいか分からない・・」

このような悩みをHRBrainで解決できます!
無料トライアル実施中!ぜひお試しください!

HR大学編集部
HR大学 編集部

HR大学は、タレントマネジメントシステム・組織診断サーベイを提供するHRBrainが運営する、人事評価や目標管理などの情報をお伝えするメディアです。難しく感じられがちな人事を「やさしく学べる」メディアを目指します。

\ この記事をシェアする /

  • X
  • LinkedIn

おすすめ記事