人的資源管理(HRM)とは?目的や課題と企業例
- 人的資源管理(HRM)とは
- 人的資源の特徴
- 人的資源管理のモデル
- ミシガンモデル
- ハーバードモデル
- 高業績HRM(AMO理論)
- 高業績(PIRKモデル)
- タレントマネジメント
- 人的資源管理と人事労務管理との違い
- 人的資源と人的資本との違い
- 人的資源管理の目的
- 人材育成の促進
- 組織戦略の実現
- 人的資源管理の課題
- 因果関係の複雑化
- 制度と人的資源の最適化
- 人的資源管理の事例
- 人的資源管理の事例:日産自動車
- 人的資源管理の事例:サムスン電子
- 人的資源管理に関する書籍
- 人的資源管理に関する書籍「図解 人材マネジメント入門」
- 人的資源管理に関する書籍「経験から学ぶ人的資源管理 新版」
- 人的資源管理に関する書籍「人的資源管理」
- 人的資源管理で組織戦略の実現へ
人的資源管理(HRM)とは、人を経営資源の1つとみなし、活用する制度を設計し運用することです。
人的資源管理の目的は、組織の目標を達成することであり、経営戦略と連動している必要があります。
人的資源管理の基本的な意味と目的や、企業例を解説します。
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人的資源管理(HRM)とは
人的資源管理(HRM)とは、人を経営資源の1つとみなし、活用する制度を設計し運用することです。
英語の「Human resource management(ヒューマンリソースマネジメント)」を日本語に訳した言葉で、頭文字をとってHRMなどと略されます。
人的資源管理の目的は、組織の目標を達成することであり、経営戦略と連動している必要があります。
人的資源管理の一例として、「採用活動」「人事評価」「配置転換」「人事異動」のように、「ヒト」に関連した、制度の設計、運用、活用を目的とした人事管理業務があげられます。
人的資源の特徴
人的資源は、4つの経営資源である「ヒト」「モノ」「カネ」「情報」のうち、「ヒト」が最も重要な資源であるという考え方で、「ヒト」に関連するマネジメント活動の全てを指します。
4つの経営資源の中で、ヒトを最重要資源とする理由は、モノ、カネ、情報のすべては、ヒトの存在がなければ活用できない資源だからです。
人的資源の特徴の一つとして、「喜怒哀楽」や「思考の主体性」があげられます。
言い換えると、従業員には感情があり、それぞれ意思を持って行動し、自律を求めるということです。
管理者の一方的な指示だけでは、従業員に不満が溜まり、怒りや悲しみの感情を抱きます。
管理対象者である「ヒト」は、感情を持った生身の人間であるため、「モノ」「カネ」「情報」とは異なり、絶対的な管理方法がないのが特徴です。
人的資源管理のモデル
人的資源管理には、モデル概念があります。
人的資源管理の5つのモデル概念について確認してみましょう。
人的資源管理のモデル
ミシガンモデル
ハーバードモデル
高業績HRM(AMO理論)
高業績(PIRKモデル)
タレントマネジメント
ミシガンモデル
ミシガンモデルは、「採用と選抜」「人材の評価」「人材の開発」「報酬」の4つの要素で構成され、1980年代にアメリカのミシガン大学が実施した研究データをもとにした人的資源管理モデルです。
ミシガンモデルの4つの要素
採用と選抜
人材の評価
人材の開発
報酬
ミシガンモデルは、企業の目標達成を主軸に、人材をどう活用するのかを重視し、制度設計や活用を行い、経営組織や組織構造などの経営面での成長を目指します。
ハーバードモデル
ハーバードモデルは、「従業員への影響」「人的資源のフロー」「報酬システム」「職務システム」の4つの要素で構成され、1980年代にアメリカのハーバード大学が実施した研究データをもとにした人的資源管理モデルです。
ハーバードモデルの4つの要素
従業員への影響
人的資源のフロー
報酬システム
職務システム
ハーバードモデルは、従業員のスキルとコミットメントの向上と、企業と従業員の協調的な関係性を主軸に、組織全体の成長を目指します。
高業績HRM(AMO理論)
高業績HRM(AMO理論)は、「Ability(能力)」「Motivation(モチベーション)」「Opportunity(機会)」3つの要素で構成される人的資源管理モデルで、頭文字をとって「AMO理論」と呼ばれます。
高業績HRM(AMO理論)の3つの要素
Ability(能力)
Motivation(モチベーション)
Opportunity(機会)
高業績HRM(AMO理論)は、従業員の能力、モチベーション、機会を向上させることで、持続的競争において優位性を高められるという考え方です。
また、「帰属意識」や「モチベーション」の高まりが期待できます。
高業績(PIRKモデル)
高業績(PIRKモデル)は、「Power(権限)」「Information(情報)」「Reward(報酬)」「Knowledge(知識)」の4つの要素で構成される人的資源管理モデルで、頭文字をとって「PIRKモデル」と呼ばれます。
高業績(PIRKモデル)の4つの要素
Power:権限の委譲
Information:情報の共有
Reward:公平な報酬
Knowledge:従業員に帰属する知識
高業績(PIRKモデル)は、従業員に公平感覚とコミットメントが生まれるため、企業に対する「帰属意識」や「モチベーション」の高まりが期待でき、離職率の低下に役立ちます。
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タレントマネジメント
タレントマネジメントは、スキルやノウハウなどの従業員データを一元的に集約し、人事異動、人材配置、人材育成、評価などの人事戦略に反映させることで、組織成長や業務効率化を目指すプロセスを指し、企業の経営戦略の実現を目指した人事戦略です。
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HRBrain タレントマネジメント
人的資源管理と人事労務管理との違い
人事労務管理とは、「PM(Personal Management)」と略され、組織の経営戦略実現のために行う管理活動を指します。
組織のために、採用、人事管理、人材配置などの管理活動を行う点は、人的資源管理と同じですが、独立行政法人労働政策研究・研修機構(JILP)の山崎憲氏によると、人的資源管理と人事労務管理には、以下のような違いがあります。
「人事労務管理が集団としての労働者を重視するのに対して、人的資源管理が個人としての労働者を重視する」
人事労務管理は、従業員を集団として企業の利益最大化を目的に主眼を置いた管理活動であるのに対し、人的資源管理は従業員を貴重な経営資源とし育成を目的とした管理活動である点で異なると言われています。
(参考)人事労務管理と人的資源管理におけるinternalとexternal ー日本的経営とジョブ型を超えてー
人的資源と人的資本との違い
「人的資源 (Human Resource)」と「人的資本(Human Capital)」の違いについて確認してみましょう。
人的資源は、4つの経営資源である「ヒト」「モノ」「カネ」「情報」のうち、「ヒト」が最も重要な資源(コスト)であるという考え方をさします。
人的資本は、「スキル」「知識」「ノウハウ」「資源」など、従業員がもつ能力を資本としてとらえる考え方をさします。
人的資源では従業員を経営資源の一つとして活用することを目的にしているのに対し、人的資本は従業員自体を投資対象として価値を向上させることによって、企業価値をあげることを目的としています。
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人的資源管理の目的
人的資源管理の目的と役割について、「人的資源」と「経営戦略」の2つの観点から確認してみましょう。
人的資源管理の目的
人材育成の促進
組織戦略の実現
人材育成の促進
人的資源管理は、従業員の「育成」や「キャリア実現」につながります。
従業員1人1人が持つ、知識や経験、ノウハウを貴重な人的資源として主軸に置きつつ、キャリアプランの設定や、希望する働き方の実現を目指すことで、ミスマッチによる離職防止や、従業員のエンゲージメントを向上させる効果があります。
例えば、従業員に対して「どんな能力を高めたいのか」「何の経験を積みたいのか」などのヒアリングを1on1ミーティングで行うことで、組織と従業員とのマッチが高まり、長期的な育成計画を設計し運用することができます。
また、育児や介護などによって、従来の働き方が難しいと感じる従業員に対して、「時短勤務」「フレックスタイム制」「リモートワーク」など、希望に応じた働き方や労使関係を、整備、提案する事で、退職による企業の人的資源の損失をカバーしつつ、従業員のキャリアを守る事にもつながるでしょう。
人的資源管理は、従業員が持つ資源や背景を適切に管理、理解する事で、組織とのマッチやエンゲージメントが向上するため、従業員の「資源」を最大限発揮できる社内環境の実現につながります。
▼「1on1ミーティング」についてさらに詳しく
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組織戦略の実現
組織が目指すべき目標や戦略の実現やプロセスに、人材の存在は必要不可欠です。
なぜなら、ヒト以外の経営資源である「モノ・カネ・情報」は、全て「ヒト」によって、活用や管理がされることで、はじめて効果を発揮するからです。
組織戦略の実現のためには、企業文化、ビジョン、市場情勢など、重要なポイントが複合的に絡み合っていますが、どんなに優れたモノ、情報、膨大なカネであっても、人材の活用や活躍がなければ、無用の長物となってしまうでしょう。
人的資源管理によって、「ヒト」を組織における根本的な経営資源だと認識し、最重要課題として取り扱う事で、組織戦略の実現が可能になります。
人的資源管理の課題
人的資源管理の課題と問題について、「ハーバードモデル」と「ミシガンモデル」の2つのモデルの特徴に合わせて確認してみましょう。
ハーバードモデル
ハーバードモデルは、企業と人材の協調的な関係性を主軸に、組織全体の成長を目指した人的資源管理の方法
ミシガンモデル
ミシガンモデルとは、企業の目標達成を主軸に、人材をどう活用するのかを重視し、制度設計や活用を行う人的資源管理の方法
因果関係の複雑化
人的資源管理は、「業績の良し悪しの要因が分かりにくい」という課題が挙げられます。
組織と人材の因果関係は複雑で、要因を明確に判断するのが難しいためです。
とくに、ミシガンモデルでは、「企業の目標達成」を最優先に掲げ、人材管理を行うため、業績が上がれば人的資源の価値も連動して高くなります。
そうなると、「従業員個人に合った能力開発や希望の反映や適切な評価が難しくなる」という問題が生まれることも考えられます。
制度と人的資源の最適化
人的資源管理は、「組織と人材の協調的な関係構築が難しい」という課題が挙げられます。
とくに、ハーバードモデルでは、組織と人材の協調的な関係を目指していますが、組織側が上位の立場になると、従業員側は意見を言いにくくなり、不満があっても伝えられない状態になる可能性があります。
さらに、組織側が協調的な関係性だと誤認してしまい、「従業員の労働環境が脅かされるリスクもある」ため、制度と人的資源の最適化が課題だと言えるでしょう。
人的資源管理の事例
人的資源管理は、企業においてどのように導入、実践されているのでしょうか。
人的資源管理の事例について確認してみましょう。
人的資源管理の事例:日産自動車
日産自動車株式会社では、「自らのキャリアは、自らデザインする」という人財育成の方針と考え方のもと、従業員の育成と能力開発に意欲的に取り組んでいる企業の一つです。
2011年、当時の社長カルロス・ゴーンが「優秀人材の育成や発掘」を目的にタレントマネジメントを導入しました。
20代、30代の若手層が将来の経営トップを担う人材になるために、上司やキャリアコーチが育成プランを作成し、能力開発をサポートするなど「人的資源管理」を積極的に推進しています。
人的資源管理の事例:サムスン電子
サムスン電子株式会社は、「人材第一」という経営哲学のもと、人材の獲得や育成に力を入れ、成長した企業です。
1990年代から、グローバル人材の育成や能力開発の構築のため、「マネジメント人材育成制度」を実施しました。
次世代のグローバル人材の育成とリーダー育成を目的に、2年間の成均館大学とマサチューセッツ工科大学での研修を実施するなど、経営と技術への惜しみないグローバル育成を行い、人的資源管理に意欲的に取り組んでいます。
人的資源管理に関する書籍
人的資源管理への理解をさらに深めるために、人的資源を学ぶ際におすすめの書籍をご紹介します。
人的資源管理に関する書籍「図解 人材マネジメント入門」
リクルートマネジメントソリューションズ社にて、50社以上の人事制度を構築、組織開発を支援した経験を持つ坪谷邦生氏による、人材マネジメントの入門書です。
人材開発や組織開発だけでなく、採用や異動、人事評価、等級など、人事のすべての領域が体系的にまとまっています。
図解を用いて分かりやすく解説されているので、簡単に人材マネジメント領域を学び直したい人におすすめの書籍です。
▼「人的資源管理」おすすめ書籍
図解 人材マネジメント入門
▼坪谷邦生氏の登壇イベントレポートはこちら
【イベントレポート】人が育つ組織の人事評価 〜理論と実践〜
【イベントレポート】個と組織がともに勝つ目標管理
人的資源管理に関する書籍「経験から学ぶ人的資源管理 新版」
人的資源管理や人事マネジメントに関する本は多数ありますが、この本は最新の法律や時代背景に沿った内容となっています。
人的資源管理について、人事戦略の視点で実践的に分かりやすく解説されているため、人事マネジメントを初心から現場実践レベルまで学びたい人におすすめの書籍です。
▼「人的資源管理」おすすめ書籍
経験から学ぶ人的資源管理 新版
人的資源管理に関する書籍「人的資源管理」
制度、育成、雇用、評価など「組織」に主軸を置いた人材マネジメントや、グローバル化への対応方法について分かりやすく解説されています。
規模が大きい組織やグローバル化にどう対応したら良いのか悩んでいる、人材マネジメントの視点で組織の問題解決に導く方法を学びたいという人におすすめの書籍です。
▼「人的資源管理」おすすめ書籍
人的資源管理
人的資源管理で組織戦略の実現へ
人的資源管理は、従業員と組織の成長に大切な「人事管理方法」の1つです。
従業員が持っている「資源」を最大限に引き出し、労働生産性、モチベーションの向上、を実現することで、組織戦略の実現につながるでしょう。
そのためには、従業員データの把握と評価制度の適切な管理や活用は必要不可欠です。
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