戦略人事とは?人事戦略との違いや経営戦略を実現するための役割について解説
- 戦略人事とは?
- 戦略人事の概念
- 戦略人事の例
- 戦略人事と人事の違い
- 戦略人事と経営戦略
- 経営戦略とは
- 戦略人事と経営戦略の関係
- 戦略人事が育たない要因
- 戦略人事と人事戦略の違い
- 戦略人事に必要な4つの機能と役割
- HRビジネスパートナー(HRBP)
- センター・オブ・エクセレンス(CoE)
- オペレーション部門
- 組織開発(OD)と人材開発(TD)
- 戦略人事の立て方
- 経営ビジョンを理解する
- 人材ビジョンの策定
- 中長期経営計画を理解する
- 中長期人事計画の策定
- 採用計画と人材育成計画の策定
- 組織人事戦略
- 戦略人事を行うために必要なこと
- 現場からの信頼を得る
- 人事の取り組みとの整合性をはかる
- 戦略人事についての説明を行う
- 戦略人事の成功事例
- 戦略人事の導入支援
- 戦略人事セミナーへの参加
- 戦略人事コンサルティングの導入
- 戦略人事を始めるなら人材データベースの構築から
- 戦略人事を「スキルの可視化」で支援
戦略人事とは、経営戦略の実現を目指して、経営資源の中の一つである「ヒト」という「人的資源」を最大限活用し、経営戦略と連動した人事戦略を実施することで「戦略的人的資源管理(SHRM)」のことをさします。
事業環境の変化が激しい現代社会で、事業ドメインを変え生き残って行くためには経営資源を適切に集中させることが大切です。その際に「ヒト」をどのように戦略にマッチさせていくのかを考えることが戦略人事です。
戦略人事と人事戦略との違いや、戦略人事を実施するうえでのポイントについて解説します。
戦略人事を「知っている」から「できる」へ
戦略人事とは?
戦略人事とは、経営戦略の実現を目指して、経営資源の中の一つである「ヒト」という「人的資源」を最大限活用し、業績向上に貢献するために、経営戦略と連動した、人事戦略を実施することです。
戦略人事のベースとなる概念に「戦略的人的資源管理(Strategic Human Resources Management)」があり、英語の頭文字を取って「SHRM」とも呼ばれます。
戦略的人的資源管理(SHRM)は、経営戦略や企業の目標達成に重点を置いて人的資源管理の施策を実施することを指します。
▼「人的資源管理(HRM)」についてさらに詳しく
人的資源管理(HRM)とは?目的や課題と企業例
戦略人事の概念
戦略人事のベースとなる概念に「戦略的人的資源管理(Strategic Human Resources Management)」があり、英語の頭文字を取って「SHRM」とも呼ばれます。
戦略的人的資源管理(SHRM)は、「事業戦略を実現するために、人事戦略はどうあるべきか」という考え方で、米ミシガン大学のデイビット・ウルリッチ教授が、1997年に「MBAの人事戦略」の中で提唱しました。
事業環境の変化が激しい現代社会で、事業ドメインを変え生き残って行くためには、「ヒト」「モノ」「カネ」「情報」という経営資源を適切に集中させることが大切です。
その際に「ヒト」という「人的資源」をどのように戦略にマッチさせていくのかを考えることが戦略人事です。
MBAの人材戦略
戦略人事の例
戦略人事について、例をあげて確認してみましょう。
例えば、「既存市場から新規市場へサービスを展開し、事業ドメインを拡大する戦略をとりたい」という企業があるとします。
その場合、既存の従業員を教育し新規事業にシフトし、組織体制の見直しを行う必要があります。そのため、「新しい事業へチャレンジする組織風土の醸成」や、「報酬制度の見直し」などが必要になります。
このように、「事業実現のために人事施策を実施すること」が戦略人事です。
戦略人事と人事の違い
従来の人事は、給与や労務管理など、定型のオペレーション業務を行うため、どちらかというと、就業規則に則した管理や、前例を重視する傾向があります。
戦略人事での施策にあわせて、事業部門での異動や体制が決まり、その結果の発令をかけたり、転勤手続きを実施するのが従来の人事です。
一方で、戦略人事は、事前に異動者リストを作成したり、人材補充のための採用を検討したり、教育体制を整えたりと、「攻めの人事」を実施します。
このように、戦略人事と、「ヒト」という「人的資源」の側面から、積極的に経営に参画し企業の変革をリードしていきます。
戦略人事と経営戦略
戦略人事と経営戦略の関係について確認してみましょう。
経営戦略とは
「経営戦略(Management Strategy)」とは、企業において事業が経営目的や経営目標を達成できるようにするための、計画や施策全般のことをさします。
また、経営資産である「ヒト」「モノ」「カネ」「情報」を、経営目的や経営目標達成のために分配を行ったり、施策実現のための体制づくりを行うことも経営戦略に含まれます。
戦略人事と経営戦略の関係
経営戦略を実行するうえで必要な「戦略」「戦術」「戦力」「環境」のうち、戦力と環境を担うのが「人事戦略」です。いくら良い戦略や戦術を立てても、それを実行する戦力がないと、戦略の実現は叶いません。
さらに、戦力が十分に力を発揮する環境の整備も大事な人事の仕事です。そのために、人事は積極的に経営を理解しなければなりません。経営を理解するとは、会社の向かっている方向にベクトルを合わせ、次に何が起こるかを予測し備えることです。
このように、戦略人事は、経営戦略を理解し、経営戦略のうち「ヒト」が担う領域に関して、対策や施策の実行をすることが求められます。
戦略人事が育たない要因
戦略人事が経営戦略の実現において重要であることは分かりましたが、日本では戦略人事が「育たない」という課題があります。
戦略人事が育たない3つの原因について確認してみましょう。
- 人事部に戦略を理解するビジネス感覚をもった人材がいない
- 経営者が人事部をビジネスパートナーとして認識していない
- 人事部が労務部として給与計算や社会保険業務に特化している
戦略も戦術も、「誰が」「どのよう」に実行するのかが明確でなければなりません。
つまり経営とは「ヒトを経営する」ことなので、経営戦略と戦略人事の関係は、事業を成功させるためには、切り離せないものです。
戦略人事と人事戦略の違い
「戦略人事」と「人事戦略」との違いについて確認してみましょう。
人事戦略とは、人事の業務である採用や教育、労務オペレーションをどのように改革するかを策定するものです。例えば、優秀な人材を採用するために、採用手法をダイレクトリクルーティングに変更するといったものが人事戦略です。
また、業務の効率化のために、給与業務をアウトソーシングさせることや、若手の早期登用を達成するために、役職定年制を導入することなども人事戦略です。
人事戦略が失敗したとしても、直接的には事業目標の達成には影響しません。
一方で、新規事業のために電気主任技術者を10名採用する必要があるというのは、戦略人事です。
戦略人事の達成は、事業の成否や事業目標の達成の成否に影響します。
▼「ダイレクトリクルーティング」についてさらに詳しく
ダイレクトリクルーティングとは?他の採用手法や新卒・中途採用向けサービスを比較
戦略人事に必要な4つの機能と役割
戦略人事を実施するために必要な4つの機能について確認してみましょう。
戦略人事に必要な4つの機能
HRビジネスパートナー(HRBP)
センター・オブ・エクセレンス(CoE)
オペレーション部門
組織開発(OD)と人材開発(TD)
HRビジネスパートナー(HRBP)
HRビジネスパートナー(HRBP)とは、「人事(HR)」と「ビジネスパートナー(BP)」が協働する機能です。
BPとは、経営トップや現場のリーダーを指します。HR戦略の実行には、経営トップの考え方を理解し、現場のニーズや実態を知らなければなりません。机上だけでなく現場に足を運び、働く社員の気持ちや暗黙知も理解した上で施策を検討します。
▼「HRビジネスパートナー(HRBP)」についてさらに詳しく
HRビジネスパートナー(HRBP)とは?人事のトランスフォーメーションを実現する方法を解説
センター・オブ・エクセレンス(CoE)
センター・オブ・エクセレンス(CoE)とは、優秀な人材やノウハウなどの経営資源を一か所に集約する機能です。
戦略人事を実施するためには、人事に関するプロフェッショナル集団として、経営トップや現場をサポートする必要があります。
HBPRで現場のニーズをとらえ施策を検討する段階で、人事の専門知識が発揮されます。
例えば、現場ではこういう点を評価してほしいというニーズに対し、人事評価制度を構築する際に、評価制度に盛り込むといった役割を果たします。
オペレーション部門
オペレーション部門とは、CoEで策定された施策を実際に日々運用する機能です。具体的には、採用プロセスや給与、社会保険業務、社員の異動などです。
CoEとオペレーション部門との関係は、CoEで策定された施策を運用マニュアルや仕様書という形でオペレーション部門に納品します。
組織開発(OD)と人材開発(TD)
組織開発(DO)とは、組織の人事戦略を実行するための体制を構築する機能で、「OD」は「Organization Development」の頭文字を取ったものです。
また、組織開発とは単に組織を作るだけでなく、そこで働く従業員の「成長マインドセット」を実現する機能でもあります。
人材開発(TD)とは、戦略実現のための人材マネジメント戦略の機能で、「TD」は「Talent Development」の頭文字を取ったものです。例えば、技術系の企業の戦略として、電気や工事の資格取得者を育成するといった目標をさします。
▼「組織開発(OD)」についてさらに詳しく
組織開発とは?診断型、対話型って?その手法や企業事例も紹介
▼「マインドセット」についてさらに詳しく
成功するためのマインドセットとは
戦略人事の立て方
戦略人事を実施するうえで大切な6つのステップについて確認してみましょう。
戦略人事の立て方
- 経営ビジョンを理解する
- 人材ビジョンの策定
- 中長期経営計画を理解する
- 中長期人事計画の策定
- 採用計画と人材育成計画の策定
- 組織人事戦略
経営ビジョンを理解する
戦略人事を実施するためのステップの1つめは、「経営ビジョンを理解する」ことです。
経営ビジョンを理解するためには、経営方針を読み解いて、会社が社会の中でどのような使命をもっているのかを理解します。
人材ビジョンの策定
戦略人事を実施するためのステップの2つめは、「人材ビジョンの策定」です。
人材ビジョンの策定とは、経営ビジョンが達成された際の「従業員の状況」を策定することです。
例えば、「食を通じて社会に貢献する」というビジョンがあった場合、そこで働く従業員の姿を策定します。
「食を創造するために食のプロフェッショナルとして日々努力している」「従業員は仕事と家庭を両立し生き生きと働いている」などです。
中長期経営計画を理解する
戦略人事を実施するためのステップの3つめは、「中長期経営計画を理解する」ことです。
中長期経営計画を理解するために、中長期経営計画からこの数年の「企業目標」を理解します。その中で「ヒト」という「人的資源」に対してのニーズを明らかにします。
中長期人事計画の策定
戦略人事を実施するためのステップの4つめは、「中長期人事計画の策定」です。
中長期人事計画の策定のために、人材ビジョンを基本に据えて、中長期経営計画での「ヒト」という「人的資源」に対してのニーズを計画します。
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採用計画と人材育成計画の策定
戦略人事を実施するためのステップの5つめは、「採用計画と人材育成計画の策定」です。
採用計画と人材育成計画の策定では、経営計画のニーズに必要な人材を何人採用するかの採用計画を策定します。
さらに、2年後に新たな工場を建設するといった計画の場合、2年以内に工場長の育成を行います。
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組織人事戦略
戦略人事を実施するためのステップの6つめは、「組織人事戦略」です。
組織人事戦略とは、経営方針にそった組織開発をさします。
「ヒト」という「人的資源」が、経営方針にそったアウトプットを出せるか否かは、組織開発に影響されます。
組織開発とは、マネジメントスタイルで、頑張りぬく「グリット」の醸成です。戦略人事が机上の空論で終わらないためには、組織開発を行い、その後の状況をフォローします。
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戦略人事を行うために必要なこと
戦略人事を行うための3つのポイントについて確認してみましょう。
戦略人事を行うために必要なこと
現場からの信頼を得る
人事の取り組みとの整合性をはかる
戦略人事についての説明を行う
現場からの信頼を得る
戦略人事を実施する際は、人事は現場と密接に協働し、現場からの信頼を得て戦略的な人事を行うようにしましょう。
戦略人事は経営方針にそって、戦略的に人事を発動します。
一方で、「ヒト」を扱うため、気持ちやモチベーションの管理も大切にしなければなりません。
人事の取り組みとの整合性をはかる
戦略人事を実行する際は、人事部内で、人事の取り組みの整合性をはかるようにしましょう。
例えば、経営計画に沿って組織が新設されたとして、採用チームや企画チームは、新設組織のメンバーに動機付けをし励まします。
一方で、労務管理チームは日常のオペレーションとして、時間外作業の削減を新設メンバーに出します。
このように人事内で状況が統一されておらず、取り組みがバラバラの状態だと、現場のモチベーションが下がってしまうため、注意が必要です。
戦略人事についての説明を行う
戦略人事を実施する際は、戦略人事についての説明を行うようにしましょう。
人事は自らが、従業員に対して企業の戦略を説明し、そのために従業員がどうあるべきかを示す義務があります。
人事は採用や異動などの強い権限が与えられていて、企業の戦略に沿って人事権を発動します。
しかし、すべての従業員が経営方針や経営戦略を理解していない状態では、戦略的な人事権の発動は理解されません。
戦略人事の成功事例
戦略人事の成功事例として、オムロン株式会社の戦略人事について確認してみましょう。
オムロン株式会社は、オートメーションのリーディングカンパニーとして、全世界で社会システムやヘルスケア事業を展開する企業です。
オムロンでは、「事業を通じて社会的課題を解決し、よりよい社会をつくる」という企業理念の実践を重視しています。企業理念を実践するために、2012年度から「TOGA(The Omron Global Awards)」をスタートしました。
TOGAは、「社員自らが社会的課題の解決に向けた目標を立てることで、企業理念実践にチャレンジし続ける風土の醸成を狙いとしています。」として、経営課題について、チームが協働して活動をし、毎年多くのテーマが実行されています。
たとえば、メキシコでは、自動車工場が新設される計画で雇用が46%増加すると予測されていました。
ですが、激しい人材の争奪戦による離職率の高さが問題となっていました。
そこで工場内に高校教育を提供するオムロンハイスクールを設置し、教育に専念することで離職率の低下に貢献しました。
こういった採用や離職防止といった経営課題に対し、戦略的な施策を人事主導で企画し実行することで、企業の抱える課題を解決しています。
(参考)
オムロン株式会社
The OMRON Global Awards(TOGA) | 企業理念経営について
戦略人事の導入支援
戦略人事を導入するためには、人事部の意識改革が必要です。
戦略人事の導入を、人事部が効率よく実施するための支援について確認してみましょう。
戦略人事の導入支援
戦略人事セミナーへの参加
戦略人事コンサルティングの導入
戦略人事セミナーへの参加
戦略人事を実施するためには、経営を理解することが必要です。
人事自らが、経営への理解度を深めるため、学ぶようにしましょう。
そのためには、「差別化戦略とは何か?」「リーダー企業やチャレンジャー企業の戦略とは?」など、企業経営理論を勉強する必要があります。
積極的に企業経営セミナーなどに参加するようにしましょう。
戦略人事コンサルティングの導入
戦略人事の立案に対して、コンサルティングの導入を検討することもあるでしょう。
コンサルティングを導入する際の注意点は、戦略人事コンサルティングのアウトプットは、採用戦略の立案や教育計画の立案などの、具体的な個別戦略です。
まず、人事が全体の設計図を作成し、必要な場面でコンサルティングを導入することを、勧めます。
戦略人事を始めるなら人材データベースの構築から
戦略人事の重要性が増している中、社内に点在していた人材情報を一元的に管理する人材データベースの構築をできるかどうかが、最重要課題です。
人材データベースを構築することによって、中長期経営計画と連動した、
中長期人事計画
採用計画と人材育成計画
組織人事戦略
を策定することが容易になるでしょう。
この資料で分かること
人材データベースとは
なぜ人材データベースが必要なのか
人材データベース構築に必要な項目とは
人材データベースの活用方法
人材データベースを活用してデータドリブン人事へ
戦略人事を「スキルの可視化」で支援
経営戦略と連動し戦略人事を実現させるためには、「ヒト」という「人的資源」をどのように経営戦略とマッチさせていくのかを考えることがカギとなります。
「HRBrain タレントマネジメント」では、蓄積した人材データの分析や従業員のスキルの可視化を行い、データドリブンな人事を実現し、的確な人材配置や人材育成を可能にします。
HRBrainタレントマネジメントの特徴
検索性と実用性の高い「データベース構築」を実現
運用途中で項目の見直しが発生しても柔軟に対応できるので安心です。
柔軟な権限設定で最適な人材情報管理を
従業員、上司、管理者それぞれで項目単位の権限設定が可能なので、大切な情報を、最適な状態で管理できます。
人材データの見える化も柔軟で簡単に
データベースの自由度の高さや、データの見える化をより簡単に、ダッシュボードの作成も実務運用を想定しています。
▼「タレントマネジメント」についてさらに詳しく
【完全版】タレントマネジメントとは?基本・実践、導入方法まで解説
▼「タレントマネジメントシステム」についてさらに詳しく
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