DX推進を成功へ導くには?本当にあったDX失敗事例と活用事例
- DXとは?
- DX(デジタルトランスフォーメーション)とは?
- 人事のDX「HRDX」とは?
- 本当にあったDX失敗事例
- 現場の意見を聞きすぎて失敗
- ハイエンドすぎるシステムを導入した
- 現役人事担当者による人事におけるDX活用事例
- タレントマネジメントシステムによる人事のDX
- 人材育成のオンライン化
- テレワークにおける成果管理のデジタル化
- DX成功のポイント・DX先進企業の共通点とは?
- 単なるシステム導入ではないことを理解する
- 「DX≠業務効率」必ず業務の棚卸を行う
- DX実現後のイメージを言語化し共有する
- DX取り組み後のPDCAと常に改善して最新システムを
- 【まとめ】DX推進は人事の業務効率化を実現する
DX推進の取り組みが、多くの人事部門で始まっています。DX先進企業では、すでにDXを通じた成果を手にしている企業もあるようです。今回はDX推進の「成功ポイント」と実際にあった「失敗例」を人事の観点から解説します。
DXとは?
DXは社会にとっても、企業にとっても必要不可欠な取り組みとして認知され始めています。まずは、DXの概念と現状について解説します。
DX(デジタルトランスフォーメーション)とは?
デジタルトランスフォーメーションは、テクノロジーを活用して”企業に組織やビジネスモデル自体の変革という非連続的な進化を求めること”(※参考 総務省:「情報通信白書」)と定義されています。DXは総務省や経済産業省を中心に、国が強く推進する取り組みです。
経済産業省は、企業のDXを6段階の成熟度レベルを設定して評価しています。DXに対して何も実施していない段階をレベル0、DXが最も進んでいる段階をレベル5としています。
レベル0(未着手):経営者は無関心か、関心があっても具体的な取組に至っていない
レベル1(一部での散発的実施):全社戦略が明確でない中、部門単位での試行・実施にとどまっている
レベル2(一部での戦略的実施):全社戦略に基づく一部の部門での推進
レベル3(全社戦略に基づく部門横断的推進):全社戦略に基づく部門横断的推進
レベル4(全社戦略に基づく持続的実施):定量的な指標などによる持続的な実施
レベル5(グローバル市場におけるデジタル企業):デジタル企業として、グローバル競争を勝ち抜くことのできるレベル
2022年12月末までに経済産業省の指標をもとに「情報処理機構(IPA)」が調査を実施した企業3,956社の回答では、
レベル1未満:1,977社(50.0%)
レベル1以上2未満:1,213社(30.7%)
レベル2以上3未満:485社(12.3%)
レベル3以上4未満:256社(6.5%)
レベル4以上:25社(0.6%)
という結果になりました。
レベル3以上の企業は3,956社中281社で全体の7.1%、レベル3未満の企業は3,956社中3,675社で92.9%、レベル2未満の企業は3,956社中3,190社で80.7%で、80%以上の企業でDXが進んでいないことが判明しています。
DXについてさらに詳しく知りたい方は「デジタルトランスフォーメーションはなぜDX?意味や定義、事例を解説」をお読みください。
参考:DX推進指標 自己診断結果 分析レポート(2022年版)
人事のDX「HRDX」とは?
企業の人事部門にもDXの波が押し寄せています。特にテレワークの普及により、従業員の労働環境とデジタルは分離できない問題となりました。人事部門では、こうしたデジタル中心の労働環境を整備するために人事管理システムの導入やエンゲージメントサーベイなどのサーベイツール導入を通じてDXを推進しています。このような人事部門におけるDXを「HRDX」と呼びます。
本当にあったDX失敗事例
現状、80%以上の企業が、DXはあまり進んでいないと回答している状況です。一方で、焦ってDXを推進しても失敗してしまう場合もあります。そこで実際にあった失敗事例をご紹介します。
現場の意見を聞きすぎて失敗
DX推進のよくある失敗の1つが現場の意見を聞きすぎることです。DXはそもそも、デジタルを通じてビジネスモデルや仕事の進め方を根本的に変革する取り組みです。現場の意見を取り入れすぎると、本来のDXではなく、単なるデジタルツールの導入だけで終わってしまうでしょう。
また、DXのために新たなシステムを導入する場合、現場の意見をもとにフルカスタマイズしたシステムを導入してしまうケースがあります。ある大手企業では、現場の意見を全て取り入れて現状の業務をデジタル化した結果、高度で複雑なシステムができあがり、かえって使いづらくなったそうです。今ではその複雑なシステムを使う従業員は誰もおらず、結果として投資した数千万円が無駄に終わりました。
ハイエンドすぎるシステムを導入した
DX担当者は、先進的な取り組みをしたいという気持ちが強くなりがちです。その結果、大きな失敗を冒してしまうケースがあります。多くの企業では、DXを社をあげての特命プロジェクトとして実施する場合も少なくないでしょう。
ある企業B社ではDXのプロジェクトリーダーが詳細な要件定義をせずに、大手ITベンダーから高機能なAIやビッグデータ解析システムを導入しました。ITベンダーも最先端の技術を提供し、B社はその年の優良顧客として副社長がセミナーの講演者として呼ばれるほどでした。
しかし、B社のプロジェクトでは、B社にとって高度なシステムが本当に必要かどうか検討を行わなかったため、結果として導入時に大混乱が起きました。現場の従業員がシステムを使いこなせず、業務が止まってしまったのです。その結果、システムを1週間停止してシステムの改修を行いました。1週間の間、B社の従業員たちはシステムが使えないため、紙を使って業務を進めたそうです。
このように、経営側と現場の従業員との間でDXに対する認識のずれがあると、DXが逆に事業を停滞させる原因にもなるのです。
現役人事担当者による人事におけるDX活用事例
人事の現場でDXが進むとどのような効果があるのでしょうか。現役人事担当者による人事におけるDX活用事例をご紹介します。
タレントマネジメントシステムによる人事のDX
タレントマネジメントシステムの導入は、人事の仕事の進め方を大きく変えました。システムを導入するまでは、従業員に関する情報をひとつひとつのExcelで個別管理していました。しかしタレントマネジメントシステムにより従業員の個人情報、能力、スキル、モチベーションなどに関する情報を一元化することで、情報を探す手間がなくなり業務効率が各段に上がったのです。
それだけでなく、人材マネジメントのあり方自体を大きく変えようとしています。従業員のモチベーションや性格検査の結果をグラフ等で見える化できるようになったため、これまで勘と経験によるマネジメントが中心だった人事管理手法がデータに基づく根拠ある管理手法へと変化しているのです。今後は従業員のスキルを見える化することで、真に適材適所の配置を実現しようとしています。
このように、タレントマネジメントシステムは人事のDXに大きく役立っています。
タレントマネジメントシステムについて詳しく知りたい方は「【人事監修】現場で使えるタレントマネジメントシステムとは?サービス比較・選び方のポイント」をお読みください。
人材育成のオンライン化
人材育成のデジタル化は、研修教育部門のあり方を大きく変えました。従来は会議室に集合して1日中研修を行う「集合研修」が中心でした。集合研修は、会場準備が大変で欠席すると再受講が難しいという非効率が存在していました。
しかし、ラーニングマネジメントシステム(LMS)とZoomの導入により、映像配信によるオンデマンド学習と、場所を選ばないリアルタイム学習ができるようになったのです。これにより会場準備の手間が削減され、受講者も録画により再受講ができるようになりました。また、LMSを活用することで、従来の1日中拘束する研修ではなく、隙間時間にいつでも学習できる仕組みを構築できたのです。人材育成のDXにより、本当に必要な時に必要な知識を学べるようになり、学習効率が大幅に向上しました。
テレワークにおける成果管理のデジタル化
人事によるDXは、働き方を根本的に変えることも実現しました。新型コロナウイルス感染症の影響をきっかけに従業員のほとんどにフルリモートワーク環境を導入しました。しかし、テレワークの導入で最も懸念されたのが、従業員の日々の成果管理です。上司が物理的に不在の状況でも従業員が日々、業務成果をあげられるように管理できるようにしたい。その想いを実現したのがタレントマネジメントシステムでした。
週1回の上司と部下の1on1を導入し、タレントマネジメントシステムに面談記録を保管しました。面談時には部下から上司に対して週単位で目標設定と成果報告を行うことで、テレワークでも安定的な成果を得られるようになりました。タレントマネジメントシステムに記録した面談データにより、全従業員の成果状況を簡単に検索できるようになり、テレワーク環境でも組織パフォーマンス改善に取り組めるようになったのです。
テレワーク(リモートワーク)の環境下でも、従業員のパフォーマンスを最大化させるポイントや目標管理の方法について、さらに詳しく知りたい方は「リモートワーク環境での目標管理のやり方と注意点」をご確認ください。
上司と部下とのスムーズな面談に役立つ1on1ミーティングの方法を、さらに詳しく学びたい方のために「1on1ミーティング入門書」をご用意しました。ぜひご活用ください。
▼「人事担当者によるDX」についてさらに詳しく
人事のDX推進【実践編】人事部門ではどのようにDXを推進するのか?
DXで人事戦略を実現するには?具体的方法、事例を紹介
労務のDXとは?DX化のメリットや課題点について解説
DX成功のポイント・DX先進企業の共通点とは?
DXはどうすれば成功するのでしょうか。最後にDX成功のポイント・DX先進企業の共通点をご紹介します。
単なるシステム導入ではないことを理解する
まず、ここまでご紹介したようにDXは単なるシステム導入ではなく、テクノロジーを通じて事業や業務を根本的に変革する取り組みを意味します。DXを成功させるには、まずDXの概念を関係者全員で理解することが重要です。例えば経営陣がビデオで「当社におけるDX」についての話をして従業員に見てもらうのも手段の1つです。
「DX≠業務効率」必ず業務の棚卸を行う
DX推進の大きなメリットは、それまで人手が必要だった業務を削減あるいは自動化して効率化できることです。。一方で今回の失敗事例のように、DXをただ推進すれば必ず業務効率化できるわけではありません。DX推進で最も重要なのは、最初に業務棚卸を行ったうえでどのようなDXを進めるのか要件定義をきちんと行うことです。業務棚卸をしてテクノロジーで代替できる業務を見つけられれば、要件定義はそう難しくはないでしょう。
DX実現後のイメージを言語化し共有する
DXは事業や業務を根本的に変える取り組みであるため、社内の反発が起きることが十分に考えられます。経営者や管理部門の想いだけでDXを推進した場合、事業責任者からの反発によりDXそのものが頓挫することもあるでしょう。まずは経営トップや役員がDXを通じて何を成し遂げたいのか言語化して従業員に伝えることが何よりも重要です。全従業員でDX実現後のイメージを共有できれば、DXは半分成功したと言えるでしょう。
DX取り組み後のPDCAと常に改善して最新システムを
DXの取り組みがひと段落した企業でも、油断は大敵です。よくあるケースとして、システムを導入後にデジタル環境に慣れてしまい、気づけば最新のシステムが古くなっていることもあります。特に先進的な企業ほど注意が必要です。「私たちは進んでいる」という自負がかえってあだとなり、いつの間にか競合他社に追い抜かれていることも少なくありません。進んだ取り組みを行った後こそ、常に改善を行い、新たな技術を取り込んでいくようにしましょう。例えばGoogleなどの先進的な企業を常にチェックすること、セミナーに積極的に参加すること、とにかく新しい試みにチャレンジすると良いでしょう。
▼「DX推進」や「DX成功のポイント」についてさらに詳しく
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【まとめ】DX推進は人事の業務効率化を実現する
今回はDX成功のポイントと失敗事例を紹介しました。DXは正しく推進すれば、間違いなく人事業務の効率化を実現できます。ご紹介した事例や成功のポイントを参考に、全社一丸となったDXを進めていきましょう。
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