Netflixの最強人事戦略とは?ジョブ型雇用の理想形と人事戦略トレンドを解説
- Netflix(ネットフリックス)の最強人事戦略とは?
- そもそも、ジョブ型雇用とは?
- Netflixの型破りな最強人事戦略とは
- 経営者が注力すべきは「文化の醸成」と「優れたチームを作ること」
- Netflix人事戦略のキーとなる、カルチャーと重視されるバリュー
- とことんやり抜くための「5つのカルチャー」
- Netflixが重きを置く「重視されるバリュー」
- 全社員がハイパフォーマー?!Netflixの人材管理方針
- Netflixが重視する社員の「自由と責任」
- 真似てはいけない?!Netflixの人事戦略
- 会社に貢献したハイパフォーマーも解雇対象?
- 解雇不安に怯えるNetflixの社員
- 日本とアメリカの企業文化の違い
- 知っておきたい、海外の人事戦略トレンド
- アメリカの評価制度変遷
- GAFAも取り組むノーレイティング
- 【まとめ】海外の人事戦略にもアンテナを張り、自社にあった戦略を検討しましょう
Netflix(ネットフリックス)の最強人事戦略とは?
型破りなNetflixの最強人事戦略。都度、ベストパフォーマンスを発揮するための「ジョブ型雇用の理想形」ともいえるでしょう。ここでは、ジョブ型雇用とNetflixの最強人事戦略の概要を解説します。
そもそも、ジョブ型雇用とは?
ジョブ型雇用とは、仕事内容にマッチする人材を雇用すること。仕事内容の一つひとつが職務記述書に定められており、欧米を中心に普及している「仕事」に主眼をおいた雇用形態です。
これに対して、日本では、採用した人材を仕事に当てはめるという、「人材」を主眼においたメンバーシップ型雇用が主となっています。
ジョブ型雇用を詳しく知りたい方は、「ジョブ型雇用とは?メンバーシップ型雇用との違いやメリット・デメリットを解説」をご参考ください。
Netflixの型破りな最強人事戦略とは
DVDの郵送レンタルから、定額制動画配信事業へとビジネスモデルを転換し、驚異的な成長を続けるNetflix社。この原動力といえる最強人事戦略とは、どのようなものなのでしょうか。
一言でいうと、ジョブ型雇用の理想形といえますが、同社の人事戦略は「業界最高水準の給与」「将来の業務に相応しくない人は解雇」など、企業文化や行動規範が示されているカルチャーデックに凝縮されています。
この型破りなカルチャーデックが同社の成功要因のひとつとなっているのです。
経営者が注力すべきは「文化の醸成」と「優れたチームを作ること」
元Netflix社の最高人事責任者であるパティ・マッコード氏は、著書「NETFLIXの最強人事戦略」でビジネスリーダーの役割を次のように示しています。
”すばらしい仕事を期限内にやり遂げる、優れたチームをつくることである。それだけ。”
企業は、人数が増えると組織を統制するための規則や制度を作るように、企業の成長段階に合わせて人事制度を整備していくものですが、マッコード氏は、これは間違っていると断言しています。
ビジネスリーダーの役割は、優れたチームをつくることであり、それに必要なのはカルチャー、つまり「企業文化」の醸成とマッコード氏は説いているのです。
このカルチャーを醸成するため、社員の拠り所となる行動規範を作り、「カルチャーデック」として周知・実践させることで「ドリームチーム」を実現しています。
(※引用)パティ・マッコード (著), 櫻井 祐子 (翻訳) 「NETFLIXの最強人事戦略~自由と責任の文化を築く~」より
Netflix人事戦略のキーとなる、カルチャーと重視されるバリュー
Netflix社は、ビジネスリーダーの役割は「優れたチーム」を作る手段として、カルチャーデックを策定していますが、どのようなことが定められているのでしょうか。ここでは、「5つのカルチャー」「重視されるバリュー」を説明します。
(※参考) Netflix :「Netflixのカルチャー」
とことんやり抜くための「5つのカルチャー」
Netflix社は、自社のドメインを確立するために、独特でもあり大切にしていることとして、次のことをあげています。
社員一人ひとりの自立した意思決定を促し、尊重する
情報は、広く、オープンかつ積極的に共有する
とことん率直に意見を言い合う
優れた人材でチームを構成し続ける
ルールをつくらない
この哲学の核心は、プロセスの上位に人を位置付けていることにあります。優れたチームを構成し続けるため、ルールを作らず社員の自立した意思決定を尊重し、とことんやり抜く企業文化を醸成しているのです。
Netflixが重きを置く「重視されるバリュー」
Netflix社では、会社が何を重視しているかは、どのような人が評価され、どのような人が去るのかで示されるとしています。その上で同社は、働く社員たちがどのような行動・スキルを重視しているかを「重視されるバリュー」として次の項目をあげています。
判断力
コミュニケーション
好奇心
勇気
情熱
無私の心
イノベーション
インクルージョン
誠実さ
影響力
自身に当てはまるバリューが多い、あるいは、バリューが一緒に働きたい理想像に近いほど、同社が活躍の場に適しているとしています。
バリューの各項目には、行動規範が細かく定められており、たとえば、判断力では「不確かな状況でも賢明な判断ができる」、コミュニケーションでは「率直で有益なフィードバックを、的確なタイミングで仲間に伝えられる」、勇気では「難しい決断もためらわずに下せる」というように、価値観が分かりやすく示されています。
全社員がハイパフォーマー?!Netflixの人材管理方針
Netflix社では、優れたチームを構成し続けるため、「自由と責任」を重視するとともに、ユニークな発想の下、ドリームチームを追求しています。ここでは、同社が重視する自由と責任とドリームチームについて説明していきます。
Netflixが重視する社員の「自由と責任」
Netflixのカルチャーデックには、「オフィスでゴミを見つけたら、そこが自分の家であるかのように社員が拾って捨てる会社」を目指していると記載しています。これは「自分の仕事ではない」とは考えずに、目の前にある課題に対して自発的に行われるよう、社員全員が当事者意識を持つことを意味しています。
人の能力を発揮させるには、信頼と自由を与えられて成長していくものとの考え方から、同社は責任とともに自由を与えているのです。
この「自由と責任」によって、社員の各々が同社にとって正しいことをする会社を目指しています。
優秀な社員をクビに?新陳代謝が肝となるドリームチーム
同社は、優れたチームを構成し続けるため、「ドリームチーム」を追求しています。ドリームチームとは、全てのメンバーが卓越した能力の下、極めて効果的にコラボレーションする最高のチームを指していますが、注目すべきは、各々の専門分野のハイパフォーマーをすべてのポストに配置すること。そのために、能力が振るわない社員は、十分な退職金を提示し、さらなる優秀な社員のためにポストを空けるよう、ドリームチーム人材を獲得しているのです。
また、同社では「キーパーテスト」といわれる判断基準を重視しており、マネージャーは、転職を考えているメンバーを引き止めないと判断した場合も、同様に退職金を提示し、次のポストの人材を獲得していきます。
イメージとしては、プロスポーツの世界と同じと考えると、わかりやすいでしょう。
真似てはいけない?!Netflixの人事戦略
優れたチームを構成し続けるために、Netflix社で追求しているドリームチーム。そのためには、能力不足の社員はもちろん、過去に功績を上げた社員であっても、解雇対象になります。ここでは、同社のドリームチームを構成するための人事戦略について解説します。
会社に貢献したハイパフォーマーも解雇対象?
日本では、自社に大きな貢献をした者には、それなりのポストを与えることが一般的でしょう。しかし、Netflix社では、たとえ、自社に大きな貢献をした社員、あるいはスキルが高い社員であっても、業務に合わないと判断されれば、進んで解雇するという思い切った方針をとっています。
日本のカルチャーでは考えにくいですが、同社はドリームチームが切磋琢磨する最高の職場を実現するために、ドラスティックなコンセプトを掲げているのです。
解雇不安に怯えるNetflixの社員
全てのポストにハイパフォーマーを配置する方針の下、能力不足や業務に合わないと判断されたら、Netflix社の社員は、マネージャーから解雇対象として退職金が提示されます。同社の社員は、いつ、自分が解雇対象となるか解雇不安に怯えていることも事実です。
それでも、同社の社員はオリンピックのチームのようなドリームチームに所属していたことに誇りを持ち、非情とも思われる同社の企業文化を高く評価している層もいるのです。
日本とアメリカの企業文化の違い
アメリカの企業文化
アメリカを始めとした欧米諸国では、転職は当たり前であり、良い条件や待遇の会社があれば他社へ行くのが日常です。できる人材は、他社からヘッドハンティングされることも珍しくありません。
欧米諸国では、自分や家族が幸せになるために、少しでも条件や待遇が良い会社を求めて転職を繰り返す人が多く、企業文化としても転職は当たり前で、日本と比較してドライな文化となっています。
Netflix社の企業文化は、アメリカのなかでも独特で思い切ったものになっており、ドリームチームを維持するために、アメリカのなかでも、特にドライな文化であるといえるでしょう。
日本の企業文化
日本では、近年では転職市場が盛んになりつつありますが、終身雇用が根付いていた背景もあり、欧米諸国ほど転職は盛んではありません。終身雇用をベースとした退職金や福利厚生などの充実した会社制度などを背景に、社員の会社に対する帰属意識は比較的高いといえます。
転職することは、「会社への裏切り」というような考え方が長く努めてきた人に根付いていることも、転職が盛んでない要因の一つにあるでしょう。
知っておきたい、海外の人事戦略トレンド
ここまでNetflixの人事戦略をご紹介してきました。このほかにも知っておきたい海外企業の人事戦略をご紹介します。
アメリカの評価制度変遷
欧米における人事評価制度の主流である成果主義。業績や貢献度をベースとした評価手法で、日本でも多くの企業が取り入れた人事評価制度です。
アメリカでは、ジョブ型雇用の下、ホワイトカラーといわれるリーダー層は「成果」、ブルーカラーといわれる一般層は「職務」がそれぞれ評価基準となっていることが一般的です。このような成果主義の下、アメリカでは、MBO(目標管理制度)やコンピテンシー制度などが導入され、日本でも取り入れられています。
しかし、近年、年度単位で運用する目標管理制度の限界などを背景に、アメリカでは、ランク付けによる人事評価制度を廃止する動きが広がっています。
目標管理制度を詳しく知りたい方は、「MBOとは?目標管理におけるメリットやOKRとの違いを解説」をご参考ください。
▼「コンピテンシー」についてさらに詳しく
コンピテンシーとは?活用メリットやデメリット、導入の流れを解説
GAFAも取り組むノーレイティング
ランク付による人事評価制度を廃止し、GoogleやAppleなど、アメリカにおける世界最大手のIT企業GAFAなども採用している「ノーレイティング」が注目を浴びています。
ノーレイティングとは、ランク付けによる人事評価ではなく、都度、1on1面談などを通じ、目標設定やフィードバック、評価が行われる制度です。ランク付けの人事評価制度は、低評価者の社員のモチベーションを低下させる要因となるほか、成長を阻害するものにもなり得ます。
こうしたモチベーションの低下や成長を阻害している要因を取り除くために、ノーレイティングが注目されているのです。
ノーレイティングを詳しく知りたい方は、「管理職が給与を決定!?ノーレイティングについて徹底解説」をご参考ください。
【まとめ】海外の人事戦略にもアンテナを張り、自社にあった戦略を検討しましょう
本記事では、Netflixの最強人事戦略をわかりやすく説明するとともに、日米の企業文化の違いを踏まえた、人事戦略のトレンドを解説しました。
雇用環境や文化などから、日本ではNetflix の人事戦略をそのまま適用することは困難ですが、最高のチームを構成し続けるための考え方は参考になるでしょう。
GAFAも取り組むノーレイティングは、経営者の視点では、激しく変化する経営環境に適した制度ですが、日本で適用していくには、課題が多いことも事実です。
日本の動向のみならず、Netflix の事例やノーレイティングなど海外の取り組みにもアンテナを張り、自社にあった人事戦略を検討しましょう。
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