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2025/03/21

360度評価とは?メリットとデメリットや評価のやり方と設問例について解説

目次
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360度評価とは、評価対象者に対して、上司、同僚、部下など立場の異なる複数人の従業員が、多面的に評価を行う評価方法で「360度多面評価」「360度フィードバック」とも呼ばれ、自分自身を客観的に評価することも360度評価に含まれます。

360度評価には多くのメリットがある一方で、実施や運用に多くの工数がかかるなどのデメリットもあります。

この記事では、360度評価が注目される背景と目的、360度評価のメリットとデメリット、360度評価のデメリットを解消する方法、360度評価が効果的な企業、360度評価の導入手順と導入で重要なポイント、360度評価の評価項目の具体例と評価項目を設定する際のポイント、360度評価のフィードバックのポイント、360度評価の導入事例について解説します。

360度評価マニュアル

360度評価とは

360度評価とは、評価対象者に対して、上司、同僚、部下など立場の異なる複数人の従業員が、多面的に評価を行う評価方法で「360度多面評価」「360度フィードバック」とも呼ばれます。

また、自分自身を客観的に評価することも360度評価に含まれます。

一般的に人事評価は、直属の上司が評価者となるのに対して、360度評価は、上司や同僚などあらゆる視点から業務の成績はもちろん、勤務態度や勤務姿勢の評価を行うため、「自己評価」と「他者評価」とのギャップを知ることもでき、評価の「公平さ」や「客観性」が得られます。

360度評価とは

360度評価は「評価」と名前がついていますが、もともとは「能力開発の手法」としてアメリカで誕生し、昇給や報酬への反映よりも、人材育成に重きを置いているため、人材の能力開発を目的とした手法としても注目されています。

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360度評価が注目される背景

360評価が注目され企業で導入されるようになった背景について確認してみましょう。

360評価が注目される背景

  • ワークスタイルの多様化

  • 組織構造の変革

ワークスタイルの多様化

360評価が注目される背景として、「ワークスタイルの多様化」があげられます。

これまでの評価は、上司が部下に対して直接的に行うことが一般的でした。

しかし、リモートワークの導入や、働き方改革によって、労働時間や勤務場所の自由度が高まるなど、ワークスタイルが多様化し、出社を前提とした上司ひとりによる従来の評価制度だけでは、納得度の高い公平な評価をすることが難しくなっています。

上司ひとりだけでなく、同僚などさまざまな立場からの声を評価に反映することで、評価対象者は公平で適切な評価がなされていると感じることができます。

また、360度評価を取り入れることで、上司が直接見ることができない従業員の行動や特性、作業工程、作業過程、成果などを評価できるようになります。

360度評価は、ワークスタイルの多様化による、新しい働き方に適応できる評価であるという点で注目されている評価制度だと言えます。

組織構造の変革

360評価が注目される背景として、「組織構造の変革」があげられます。

企業の組織構造が、年功序列の考え方が強く反映された「ピラミッド型組織」から、成果主義の「フラットな組織」へと変革してきていることをうけて、さまざまな企業で360度評価が注目されるようになりました。

従来の人事制度は、年功序列の考え方が強く反映され、評価の際に従業員の成果よりも年齢や勤続年数が重視されていたため、従業員の評価への納得度が低下していました。

年功序列が色濃く反映された評価から、従業員の実力に見合った「成果主義」の評価をするために、360度評価を取り入れる企業が増えたと言えます。

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360度評価の目的

360度評価を実施する主な目的について確認してみましょう。

360度評価の目的

  • 客観的で公正な評価の実施

  • 人材育成や能力開発

  • 行動規範や企業理念の浸透

  • 従業員満足度の向上

客観的で公正な評価の実施

360度評価を実施する目的として、「客観的で公正な評価の実施」があげられます。

360度評価は、上司ひとりの評価ではなく多面的な評価を行うため、評価対象者の行動や特性を正しく把握できるだけでなく、より客観的で公正な評価ができ、評価対象者は評価に対してより納得感を得やすくなります。

上司ひとりの評価の場合、評価のバラつきや、上司との人間関係によって、バイアスがかかってしまい、人事評価エラーが発生してしまう場合があります。

特に、上司との関係が良好でない場合、評価対象者は評価に不安を抱えてしまうことになります。

また、プレイヤーとしては能力が高く、上司から高い評価を受けている従業員でも、チームプレーが苦手で、同僚や部下からの評価が上司からの評価ほど高くはない場合もあります。

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人材育成や能力開発

360度評価を実施する目的として、「人材育成や能力開発」があげられます。

360度評価は、直属の上司からの評価だけでなく多面的な評価を通してさまざまな意見をもらえます。

同僚や上司からだけでなく、部下から上司を評価することも、360度評価に含まれています。

立場の異なる従業員から評価を受けることで、周囲が自分をどのように見ているのか、どのような能力が不足しているのかが明確になります。

360度評価は、特に部下が上司を評価する場合に効果が発揮されます。

部下の立場から上司を評価すること自体に戸惑いを感じる場合もありますが、360度評価を取り入れ、部下が中立の立場で上司を評価することで、上司は部下との関わり方を見つめ直す機会となり上司自身の成長にもつながります。

また、360度評価では「自己評価」も行うため、「自己評価」と「他者評価」とのギャップに気づくことができます。

さまざまな立場の人から評価を受けることで、より客観的に自分と向き合うことができ、改善行動や人材育成につながるため、360度評価が実施されます。

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行動規範や企業理念の浸透

360度評価を実施する目的として、「行動規範や企業理念の浸透」があげられます。

360度評価を行うことで、日頃から周囲の人を観察し積極的に関わる習慣が生まれます。

また、行動規範や自社の理念に紐付いた質問事項を設定することで、評価を通して価値観の浸透を図ることもできます。

行動規範に沿った仕事ができているかどうかは、定性評価となり数値で判断することができません。

しかし、360度評価を通して、複数の従業員の視点から行動規範を守れているかの評価をすることで、行動規範に沿った仕事ができてるかの判断ができるようになります。

また、上司のみが行動規範の評価を実施する場合、適切な評価を実施できない可能性があります。

特に、リモートワークが主流の企業では、上司は部下の行動を細かく確認することが困難になるため、部下に関する限られた情報で評価を実施してしまうと、評価の信憑性が低下してしまいます。

同僚などさまざま立場から行動規範に関する評価を実施するために、360度評価が実施されます。

※行動規範とは、「行動」を通じた基準や規則のこと。360度評価は、行動規範を守れているかを判断する目的で取り入れられることもあります。

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従業員満足度の向上

360度評価を実施する目的として、「従業員満足度の向上」があげられます。

上司ひとりによる従来の評価体制では、従業員が上司に対して不満を抱いてしまう場合があります。

さらに、成果や行動を鑑みた評価が実施されていない場合、従業員の評価への納得度が低下し、従業員満足度は下がる一方です。

360度評価を取り入れ、複数人に評価されることによって、自身の評価が多面的になり評価に対する納得度も上がります。

また、評価を通して自身を客観視することができるようになり、今まで気づいていなかった評価ポイントや努力すべき点を見つけやすくなり、仕事への「モチベーションの向上」や「キャリアアップ」に役立ちます。

360度評価は匿名で実施されることが多いため、仕事の成果や日々の行動などに基づいて、従業員間で率直に評価をしあうことが可能です。

評価に対して従業員が真摯に向き合う体制が整えば、従業員満足度の向上につながります。

また、部下による評価を受けた上司も、部下の働きやすさの向上を検討する機会となります。

360度評価は、上司と部下の双方の従業員満足度を向上させる目的でも取り入れられる評価制度です。

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360度評価のメリット

360度評価を導入することで得られるメリットについて確認してみましょう。

360度評価のメリット

  • 評価に対する納得感の向上

  • 自発的な改善行動の促進

  • 帰属意識の醸成

  • 社内コミュニケーションの活性化

評価に対する納得感の向上

360度評価のメリットとして、「評価に対する納得感の向上」があげられます。

360度評価は、上司ひとりの評価による従来の人事評価とは異なり、異なる立場の複数の従業員による評価のため、「客観性」や「公平さ」が高まり、評価対象者の評価に対する「納得感」が高まります。

評価結果によっては、評価対象者にとって好ましくない場合もありますが、上司ひとりの意見ではなく、複数の従業員による評価であった場合は、評価結果を受け入れることができる可能性が高まります。

自発的な改善行動の促進

360度評価のメリットとして、「自発的な改善行動の促進」があげられます。

360度評価のフィードバックを通して、評価対象者は、「自己評価」と「他者評価」のギャップを知ることができ、自己認識を正すきっかけが得られます。

多面的な評価によって、自身の強みと弱みや、自分自身が何をいかし、何を改善すべきなのかを客観的に把握でき、「自発的な改善行動」を行うことができるようになります。

また、上司ひとりの評価では気づけなかった、同僚や部下、顧客それぞれの目線での従業員の強みや弱みを把握するきっかけにもなるため、人材育成の方針を改善したり、具体的な改善行動を想定しやすくなり、これまでの認識を改めるきっかけにもなります。

帰属意識の醸成

360度評価のメリットとして、「帰属意識の醸成」があげられます。

360度評価によって、正当な評価がされていると感じられることで、従業員のモチベーションの向上や、他の従業員への信頼感が高まります。

評価者として人事評価に参加することで、自身の意見が尊重されていると感じられたり、組織との関わりを強く感じることができ、組織の一員であるという自覚を持つことができるようになります。

また、360度評価を通して、コミュニケーションの活性化や、組織との一体感を感じることで、従業員の帰属意識の醸成を図ることは、「従業員エンゲージメントの向上」につながります。

さらに、従業員エンゲージメントが高まることで、生産性の向上や、従業員の成長、職場の雰囲気の改善やコミュニケーションの活性化、離職率の低下などのメリットが得られます。

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社内コミュニケーションの活性化

360度評価のメリットとして、「社内コミュニケーションの活性化」があげられます。

360度評価は、部下から上司への率直な意見を拾い上げることができます。

また、360度評価の「フィードバック面談」や「1on1ミーティング」を通して、上司と部下とのコミュニケーションの機会が増えます。

上司と部下とのコミュニケーションが増えることで、部署内での人間関係を把握することもできるようになるため、従業員間での人間関係の問題にも気付けるようになります。

また、社内のコミュニケーション不足が課題で、活発なコミュニケーションを企業風土として根付かせていきたいと考えている場合、「積極的なコミュニケーション」を行動規範として、360度評価の評価項目に取り入れることで、活発なコミュニケーションを根付かせて行くことも可能です。

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360度評価のデメリット

360度評価を導入することで起こるデメリットについて確認してみましょう。

360度評価のデメリット

  • 運用の工数の増加

  • 不適切な評価が行われる可能性

  • 上司が部下に厳しくなくなる可能性

運用の工数の増加

360度評価のデメリットとして、「運用の工数の増加」があげられます。

360度評価は、ひとりの評価対象者を複数名で評価するため、評価シートの作成や回収、集計にかかる工数が通常の人事評価と比較して多くなります。

従業員によっては、通常の業務に追われながら、慣れない評価作業を行うことに負担を感じてしまう場合もあります。

また、360度評価実施後の評価結果やフィードバックシート、面談履歴といった、数多くのデータ管理をどのように行っていくのかも課題になります。

そして、360度評価に限ったことではありませんが、人事評価に記載されたシートには対象者への評価が記載されており、取り扱いには注意が必要で「匿名性をどう担保するのか」という点も運用上の課題になります。

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不適切な評価が行われる可能性

360度評価のデメリットとして、「不適切な評価が行われる可能性」があげられます。

360度評価では、これまで評価を行ったことがない従業員も、評価を行うことになるため、主観が評価に影響を与え、不適切な評価が行われてしまう可能性があります。

特に初めて評価を行う従業員は、客観的な評価に慣れていないため、業務とは関係のない主観的な評価や、感情に左右されて評価を行ってしまう恐れがあります。

親しい同僚や関係値が良好な上司には良い評価をつけ、逆に関係値が良好ではない同僚や上司には厳しい評価をつける従業員が出てくる可能性もあります。

また、評価に慣れていないため、評価対象者全員に「肯定的な評価」を付けておけば良いだろうと考えてしまう場合もあります。

360度評価は匿名の場合が多いですが、それでも、自分の行った評価が評価対象者にバレてしまわないかという恐れから、率直な評価を行えない場合もあります。

上司が部下に厳しくなくなる可能性

360度評価のデメリットとして、「上司が部下に厳しくなくなる可能性」があげられます。

360度評価では、上司も部下から「評価される立場」になります。

一般的に、部下は上司の業務の全ては把握していないため、上司の部下に対する日頃の指導の印象のみで評価を行ってしまいがちです。

厳しい指導をする上司は、評価で不利な立場に立たされてしまう場合があるため、評価を気にして、上司が部下に厳しくなくなってしまう可能性があります。

360度評価は、周囲の従業員から評価を受けるため、今までの業務や人間関係に影響を与えることがあります。

360度評価のデメリットを解消する方法

360度評価を導入する際は、「運用の手間が増える」「不適切な評価が行われる可能性がある」「上司が部下に厳しくなくなる可能性がある」といったデメリットがあることを理解し、事前に対策を検討しておくと良いでしょう。

360度評価のデメリットを解消する方法として、意識しておくべきことについて確認してみましょう。

360度評価のデメリットを解消する方法

  • 360度評価の導入目的を従業員に説明し理解を得る

  • 360度評価の研修を実施し適切な評価ができるようにする

  • 360度評価システムを導入し運用工数を削減する

360度評価の導入目的を従業員に説明し理解を得る

360度評価のデメリットを解消する方法として、「360度評価の導入目的を従業員に説明し理解を得る」ことがあげられます。

360度評価は、同僚や部下などさまざまな立場から評価が実施される点で、従来の評価制度とは大きく異なるため、360度評価の導入目的を従業員に説明せず導入を進めてしまうと、従業員の困惑を招いてしまいます。

360度評価の導入が決まったら、まず最初に従業員全体に360度評価について周知する機会を設けましょう。

360度評価の導入背景や目的、評価項目と評価の反映方法などを正しく理解できるよう、丁寧な説明が必要です。

目的意識もなく形式的に360度評価を実施してしまうと、従業員同士で示し合わせて評価し合うといった、360度評価の本来の導入目的から逸れた事象が発生してしまう恐れがあります。

360度評価のデメリットをカバーするためには、従業員に360度評価の目的をしっかりと理解してもらうことが重要です。

360度評価の研修を実施し適切な評価ができるようにする

360度評価のデメリットを解消する方法として、「360度評価の研修を実施し適切な評価ができるようにする」ことがあげられます。

360度評価は上司だけでなく、同僚や部下などのさまざまな従業員が評価に関わります。

従業員の中には、他者を評価をした経験がなく、誰かを評価すること自体に戸惑ってしまう従業員もいるでしょう。

評価を実施した経験のない従業員に対しては、評価方法に関する研修を実施するようにしましょう。

評価時に重要視する項目や主観的な判断を行わないなどの注意事項を指導することで、効果的に360度評価を実施することができます。

360度評価の目的でもある育成の観点で、効果がじゅうぶんに発揮されるよう、研修の実施など、評価の質を高められるような工夫をするようにしましょう。

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360度評価システムを導入し運用工数を削減する

360度評価のデメリットを解消する方法として、「360度評価システムを導入し運用工数を削減する」ことがあげられます。

360度評価は、ひとりの評価対象者を複数名で評価するため、評価シートの作成と回収、集計などにかかる工数が、通常の人事評価と比較して多くなってしまいます。

さらに360度評価は、評価後のフィードバック面談や、1on1での改善アクションの進捗確認が大切になります。

他者からの評価や面談履歴を確認する場合、紙やエクセルファイルなどの管理では、面談記録をさかのぼって確認することが難しく、正確なフィードバックをすることができない場合があります。

また、360度評価は社内の複数の従業員が評価を行うため、匿名性の担保が大切になります。

匿名性が担保され、従業員が安心して評価を行える環境を整えるためにも、360度評価システムを導入すると良いでしょう。

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360度評価が効果的な企業

360度評価を導入することで、特に効果が得やすい企業の特徴について確認してみましょう。

360度評価が効果的な企業

  • 上司ひとりの視点では適正な評価がしきれない環境である

  • 社内コミュニケーションや風通しに課題を感じている

上司ひとりの視点では適正な評価がしきれない環境である

360度評価が効果的な企業として、「上司ひとりの視点では適正な評価がしきれない環境である」ことがあげられます。

  • ひとりの上司が抱える部下の人数が7名以上おり上司ひとりでの評価が難しい

  • 上司が忙しいなどの理由で「部下の状態が把握できない」状況が発生し部下から不満が出ている

  • 上司がプレイングマネージャーのため部下の行動観察にじゅうぶんな時間を割けない

  • 評価対象者が組織横断のプロジェクトに参加しているため上司が行動を把握しにくい

ひとりの上司が評価対象者の行動を把握しにくい状況にある場合、複数の従業員の視点から評価を行う、360度評価は有効な評価手段と言えます。

社内コミュニケーションや風通しに課題を感じている

360度評価が効果的な企業として、「社内コミュニケーションや風通しに課題を感じている」ことがあげられます。

  • 成果主義でお互いへの関心が薄く従業員同士の協力姿勢が見られない

  • 積極的な発言が少なく「言われたことをやればいい」という風潮がある

  • 社内のコミュニケーションが希薄であることが離職率の高さにつながっている

  • 上司と部下や従業員同士のコミュニケーションが希薄

特に、部下から上司への意見を拾い上げられるため、社内コミュニケーションに課題を感じている場合には、360度評価は効果的なツールと言えます。

また、コミュニケーションの活性化は、人材の定着や成果を発揮しやすい組織づくりに欠かせない要素です。

活発なコミュニケーションを企業風土として根付かせていくための仕組みづくりとして、360度評価を導入することも有効です。

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360度評価の導入手順

実際に360度評価を導入する際の導入手順について確認してみましょう。

360度評価の導入手順

  1. 360度評価の導入目的を明確にする
  2. 360度評価の導入範囲を決める
  3. 360度評価の実施方法を検討する
  4. 360度評価の評価項目を設定する
  5. 360度評価の実施を従業員に周知する
  6. 360度評価を実施する
  7. 360度評価の評価内容を集計する
  8. 360度評価の評価内容の分析とフィードバックを実施する

360度評価では一度実施したら終わりではなく、導入手順にしたがって「PDCA」サイクルを回しながら、客観的に分析し次回の360度評価で実施すべき施策を検討するようにしましょう。

継続的に360度評価を実施することで、より精度の高い評価を実施することができるようになります。

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360度評価の導入目的を明確にする

360度評価の導入手順の1つ目の手順は、「360度評価の導入目的を明確にする」ことです。

360度評価の導入目的が、育成ではなく評価を目的とする場合は、人事評価への落とし込み方を検討するようにしましょう。

360度評価の導入範囲を決める

360度評価の導入手順の2つ目の手順は、「360度評価の導入範囲を決める」ことです。

360度評価を全社で導入するのか、管理職のみを対象とするのかなど、導入範囲を決定します。

360度評価の実施方法を検討する

360度評価の導入手順の3つ目の手順は、「360度評価の実施方法を検討する」ことです。

360度評価を紙ベースでのアンケート形式で実施するか、オンラインでの実施にするかなどを検討します。

評価項目を設定する

360度評価の導入手順の4つ目の手順は、「評価項目を設定する」ことです。

評価者全員が理解できる内容を評価項目として設定します。

360度評価の実施を従業員に周知する

360度評価の導入手順の5つ目の手順は、「360度評価の実施を従業員に周知する」ことです。

360度評価を実施する目的や効果を従業員に周知します。

360度評価を実施する

360度評価の導入手順の6つ目の手順は、「360度評価を実施する」ことです。

360度評価の実施期間の設定についても、360度評価を実施する段階で設定します。

360度評価の評価内容を集計する

360度評価の導入手順の7つ目の手順は、「360度評価の評価内容を集計する」ことです。

360度評価の評価内容を集め集計します。

360度評価の評価内容の分析とフィードバックを実施する

360度評価の導入手順の8つ目の手順は、「360度評価の評価内容の分析とフィードバックを実施する」ことです。

360度評価の評価内容を分析し、従業員へのフィードバック面談を実施します。

360度評価の導入で重要なポイント

360度評価の導入を成功させるために、重要なポイントについて確認してみましょう。

360度評価の導入で重要なポイント

  • 360度評価の試験的な運用

  • 360度評価の研修の実施

  • 360度評価の評価項目の設定

  • 360度評価のフィードバックと解決策の実施

360度評価の試験的な運用

360度評価の導入で重要なポイントとして、「360度評価の試験的な運用」があげられます。

360度評価を導入する際は、まず管理職を対象として試験的な運用から始めることを推奨します。

導入当初から全従業員を対象に360度評価を実施してしまうと、準備に相当な時間と工数を必要としてしまいます。

360度評価の研修の実施

360度評価の導入で重要なポイントとして、「360度評価の研修の実施」があげられます。

360度評価を導入する際は、従業員向けに導入背景や目的、評価項目と評価の反映方法などを周知する説明会の実施や他者を適切に評価するための研修を実施しましょう。

従業員が360度評価の目的を理解しないまま評価を実施してしまうと、360度評価は形骸化し、実施する意味が薄くなってしまいます。

360度評価の評価項目の設定

360度評価の導入で重要なポイントとして、「360度評価の評価項目の設定」があげられます。

360度評価を実施する際は、まずは評価項目を設定しましょう。

目安として評価対象者1名に対しての評価が「10分程度」で完了できる項目量が適切です。

評価項目が膨大になってしまうと、評価に相当な時間を要してしまい、360度評価の実施自体が従業員の負担になってしまいます。

ただし、評価項目を絞りすぎることは避けましょう。

評価項目数が少なすぎると、具体性や網羅性のない評価になってしまいます。

360度評価のフィードバックと解決策の実施

360度評価の導入で重要なポイントとして、「360度評価のフィードバックと解決策の実施」があげられます。

360度評価を導入し実施する際は、フィードバックの内容を「行動計画」に落とし込めるよう、フォローする必要があることを念頭に置いておきましょう。

360度評価は、評価後の「フィードバック」と解決策である「行動計画」の決定と実施が非常に大切です。

360度評価の評価結果を漠然とフィードバックするだけでは、次の評価までの目標が明確になりません。

また、フィードバックの内容を誤って認識してしまうと、見当違いの対策を実施してしまう可能性があるので注意しましょう。

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360度評価の評価項目の具体例

360度評価で設定する評価項目の具体例について確認してみましょう。

行動状態を示す評価項目

360度評価の評価項目を設計する際は、「行動状態」を示す内容を設定するようにし、成果(結果)だけではなく、結果に至るまでのプロセス(行動)を評価するようにしましょう。

リーダーシップについての評価(部下から上司への評価)

「十分なリーダーシップを持っているか」というのではなく、具体的な行動を示すような項目を設定します。

  • 常に目標とする方向性や方針を部下に説明しているか

  • 組織の成果や成長のために先頭に立って行動しているか

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協調性についての評価(一般職から一般職、もしくは一般職から上司への評価)

「協調性があるか」というのではなく、具体的な行動を示すような項目を設定します。

  • 意見の異なる同僚とも協力して仕事を進めているか

  • 周囲のメンバーの立場や状況を考えながら業務を行っているか

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360度評価システムの評価項目

360度評価システムの項目例として「HRBrain 360度評価システム」の評価項目を確認してみましょう。

管理職の評価(部下から上司への評価)

組織戦略(部門ミッションの理解、部下の役割明示)

  • 期待される役割を部下に対して具体的に告げているか

部署内コミュニケーション

  • 仕事のことで気軽に話しかけることができるか

人材育成

  • 育成機会の提供、業務に対するフィードバックをされているか

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一般職の評価(一般職から一般職、もしくは一般職から上司への評価)

メンバー間のコミュニケーション

  • 周囲との会話はどの程度あるか

仕事の進め方

  • 目標達成のために有効な施策を考え、実行しているか

仕事の判断の仕方

  • 行動規範にそった適切な判断ができているか

360度評価システムの評価項目は、実施目的や社内の状況に合わせて、自由にカスタマイズすることができます。

また、あらかじめ設定されている、設問テンプレートを活用することも可能です。

360度評価システムの実施をサポート
⇒「HRBrain 360度評価」資料ダウンロード

360度評価の評価項目を設定する際のポイント

360度評価の評価項目を設定する際のポイントについて確認してみましょう。

360度評価の評価項目を設定する際のポイント

  • 評価対象者1名に対して10分程度で回答できる項目量を設定する

  • 管理職と一般社員で異なる評価項目を設定する

  • 評価項目の数を多くしすぎない

  • 回答は「どちらとも言えない」を含む5段階で評価する

  • 選択式の設問と自由記入の設問を設ける

360度評価の評価項目は、ベンチャー企業や中小企業など組織の状況によっては短期間で変化をすることがあるため、柔軟に変更できるようにしましょう。

また、360度評価は業務時間に実施されるため、評価項目が多すぎたり、評価に時間が掛かってしまうものは、評価者である従業員の負担にもなってしまうため適していません。

ですが、逆に評価項目数が少なすぎると、網羅性に欠けてしまい、適切な評価ができない可能性もあるため注意するようにしましょう。

さらに、評価項目ごとにウェイトを変更するかなども含めて評価項目を設計するようにしましょう。

360度評価のフィードバックのポイント

360度評価は、もともと人材育成や能力開発を目的とした評価方法のため、360度評価を実施しただけでは、360度評価の持つメリットを得ることができません。

360度評価実施後は、1on1でのフィードバック面談の機会を設けるようにしましょう。

フィードバック面談をすることで、評価対象者は自身を客観的に見ることができるようになります。

また、フィードバック面談の際に、評価を確認できるシートがあると、改善点を踏まえた具体的な改善策を行動計画へと落とし込むことができ、有意義なコミュニケーションを取ることができます。

さらにフィードバック面談の際は、「主観を入れず事実だけを伝える」「要因については評価対象者本人に考えさせる」「具体的な改善策を行動計画に落とし込む」という3つのポイントを押さえておきましょう。

フィードバックポイントとコメント例

  • 主観を入れず事実だけを伝える:「この項目は、自身の評価が5に対して、周囲の評価は2から3とギャップがあります。」

  • 要因については評価対象者本人に考えさせる:「周囲の評価が2から3だった要因が何か思い当たりますか。」

  • 具体的な改善策を行動計画に落とし込む:「具体的に今日から何を変えていったら良いと思いますか。」

特に、社内コミュニケーションやメンバー育成に課題を感じている場合は、人事評価のタイミングだけでなく、月1回などの頻度で1on1ミーティングを実施し、行動計画の進捗について確認するようにしましょう。

360度評価の導入事例

360度評価を導入している企業の具体的な導入事例について確認してみましょう。

アサヒビール株式会社

アサヒビール株式会社では、2010年から360度評価を導入しています。

360度評価導入当初は、組織長や部門長クラスを対象としていましたが、現在では部下がいる管理職やチームリーダーにも対象を広げ、年1回の頻度で360度評価を実施し、「強い管理職と職場づくり」を目的に人材育成の制度として活用しています。

評価項目は、「WILL(意思の表明)」「SEE(問題の感知)」「THINK(戦略の構築)」の3分野で構成される「ビジョンマネジメント」と、「PLAN(業務の計画)」「DO(業務の遂行)」「CHECK(成果の検証)」「ACTION(業務の改善)」の4分野からなる「ジョブマネジメント」に関する項目の全24項目で構成され、5段階で評価をします。

評価者は上司、部下、同僚の合計10人以内で、人事部が指名し、評価は匿名で誰が回答したかは分からないようになっています。

また、360度評価の実施後に、「リーダーミーティング」を実施し、同じ職種の従業員15名前後で集まり、今後自らが実施する「アクションプラン」を立てることでマネジメント力の向上を図っています。

アサヒビール株式会社

株式会社ディー・エヌ・エー

株式会社ディー・エヌ・エーでは、マネジメント層を対象に、評価ではなくマネージャーとしての人材育成(能力開発)を目的として360度評価を導入しています。

同社の360度評価で特徴的な点は、実名制である点です。

実名制である理由は、行動規範の1つである「発言責任(率直に思ったことはなんでも言う)」に則って、包み隠さず正々堂々と意見を伝えるようにしているためです。

360度評価の「マネージャーとしての評価軸」は、「ゴールを示す」「適切に任せる」「支援をする」「結果を出す」「インテグリティ(誠実さ)が高い」の5点の実践度についてコメント付きで評価を実施します。

360度評価を実名制にすることで、改善サイクルが早まり、その後のコミュニケーションも活発になるという利点があります。

株式会社ディー・エヌ・エー
(参考)ディー・エヌ・エー「従業員とともに | 【DeNA】サステナビリティ

▼「インテグリティ」についてさらに詳しく
インテグリティとは?組織に求められる「誠実さ」の重要性

アイリスオーヤマ株式会社

アイリスオーヤマ株式会社では、人事評価と人材育成の両面で「公正さ」を重視して、2003年から360度評価を導入しました。

360度評価の導入当初は、人材育成ツールとして管理職のみを対象としていましたが、5年後には、パートや契約社員を含めた全社員に対象を拡大しました。

また、主任以上の幹部社員用と、一般社員用で評価項目や運用方法、利用目的を変えて運用をしています。

幹部社員については人事評価と人材育成に「360度評価」を利用し、年1回の「リーダー研修」の結果と「360度評価」の結果をもとに、人事評価委員会で査定を行い、幹部社員の昇格と降格を決定しています。

幹部社員用の質問内容は「業務力」「実力」「指導力」「人間力」の4分野に分かれ、設問数は計12問、評価者は10〜30人を人事部が選出します。

アイリスオーヤマ
(参考)アイリスオーヤマ「公正な評価制度

360度評価実施マニュアル

360度評価は数ある評価制度の1つです。

自社の評価制度を見直す際には、自社の状況と照らし合わせながら、最適な評価制度を構築する必要があります。

360度評価は、評価対象者に対して、上司、同僚、部下などの、立場の異なる人が多面的に評価を行うため、評価に対する納得感や評価を通して人材育成や能力開発を行うことが可能です。

「360度評価マニュアル」では、360度評価の実施目的やメリット、開始までのステップを解説しています。

360度評価実施マニュアル

360度評価実施マニュアルで分かること

  • 360度評価とは

  • 360度評価のメリットと実施にかかる課題とは

  • 360度評価を成功させるための3つのポイント

  • 360度評価の運用を3STEPで解説

  • 360度評価STEP別チェックシート

  • 360度評価システム/コンサルティングサービス紹介

360度評価の成功は「360度評価システム」の導入がカギ

360度評価とは、評価対象者に対して、上司、同僚、部下など立場の異なる複数人の従業員が、多面的に評価を行う評価方法で「360度多面評価」「360度フィードバック」とも呼ばれ、自分自身を客観的に評価することも360度評価に含まれます。

360度評価は、「客観的で公正な評価の実施」「人材育成や能力開発」「行動規範や企業理念の浸透」「従業員満足度の向上」を目的として実施されます。

また、360度評価は、「評価に対する納得感の向上」「自発的な改善行動の促進」「帰属意識の醸成」「社内コミュニケーションの活性化」など多くのメリットがある一方で、「運用の工数の増加」「不適切な評価が行われる可能性」「上司が部下に厳しくなくなる可能性」などのデメリットがあります。

360度評価のデメリットを解消し、メリットを最大限に発揮するためには、「360度評価システム」を導入し、適切な評価項目の設定や運用工数の削減を目指すことが必要です。

「HRBrain360度評価」は、360度評価の導入、運用効率の削減と効率化、データ集計と分析から活用までを実現します。

HRBrain360度評価の3つのポイント

  • 設問設定から集計と可視化までを効率化

  • 収集したデータを他の人材データと一元管理

  • 設問設計から集計までがオールインワン

※コンサルティング支援、研修の有料オプションあり

HRBrain360度評価の主な機能

  • 柔軟な評価設定機能

  • 回答管理機能

  • 個人ごとの結果閲覧機能

  • スコア集計機能

  • CSVインポート機能

  • スマホ対応機能

株式会社HRBrain 東本真樹
東本 真樹
  • 株式会社HRBrain コンサルティング事業部 組織・⼈事コンサルタント

2008年、デジタルマーケティングを支援する企業に入社。
企業ブランディングを活かしたマーケティング支援を経験した後、人事コンサルティング事業の立ち上げに参画。
主に300名未満の中小企業に向けた人事評価制度設計・運用支援・研修企画/実施を行う。

その後、1,000名規模の上場企業にて人事ポジションを経験し事業会社人事としての職務にも従事。

人事評価制度の運用、サーベイによる組織傾向分析、人材データベースの運用管理を経験。
現在は、HRBrainコンサルティング事業部にて組織人材コンサルタントとして活躍中。
人事評価制度の設計から定着に向けたコンサルティングまで各企業のフェーズに沿った支援を行っている。

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