#人事評価
2024/08/08

人事評価の不満放置は危険!退職を防ぐには?要因・対処ポイントを解説

目次

多くの企業が導入している人事評価制度。長く運用していると、人事評価制度に対する社員からの不満は必ずと言っていいほど出るものです。

ここでは、統計に見る人事評価の不満理由をベースに、人事評価の不満原因や制度の見直しポイント、自社にあった人材評価方法について解説します。

人事評価の不満要因は?

人事評価の不満要因

人事評価制度の不満は、なぜ起こるのでしょうか?人事評価制度の仕組みを念頭に、統計にみる人事評価制度の不満について解説します。

そもそも、基本的な人事評価の仕組みとは?

日本では、一定規模以上の企業では人事評価制度を導入しており、その多くは成果主義の要素が含まれた人事制度です。

成果評価においては、営業職や技術職などは定量的に評価が可能ですが、事務職などは定量的な評価が困難であり、定性的な評価をせざるを得ません。また、能力評価面においては、評価者である上司の主観が入ったり、期末効果や中央化傾向と言われる、いわゆる人事評価におけるヒューマンエラーも生じやすい傾向があります。

人事評価がおかしい・納得いかない|統計に見る不満理由

人事評価制度を導入している企業では、社員は何かしらの不満を持っているものです。アデコ株式会社が実施した「人事評価制度の意識調査」によると、自社の人事評価制度に不満がある社員は62.3%と半数以上という結果となっています。

同意識調査によると、不満理由のランキングは次のとおりです。

人事制度に不満を感じる理由

  • 評価基準が不明確(62.8%)

  • 評価者の価値観や業務経験によって評価にばらつきが出て不公平(45.2%)

  • 評価のフィードバックが不十分(28.1%)

  • 自己評価よりも低くされ、その理由がわからない(22.9%)

  • 評価結果が昇進、昇格に結びつくものではない(21.4%)

人事評価制度への不満理由は、「評価基準が不明確」であることが最も多い結果となっています。

評価基準を定めていない、もしくは定めていても明文化していないことがあげられますが、この要因により、被評価者は「なぜ成果を出している自分よりも他の社員の評価が高いのか」「人の好き嫌いで評価が決まっているのでは」などのように感じ、不満につながると考えられます。

続いて、「評価者による評価のばらつき」「自己評価より評価が低く理由が不明」「評価のフィードバックが不十分」「評価結果が昇進、昇格に結びついていない」が各々20%台となっています。

ある上司から高い評価を得ていた社員の上司が変わった途端、その社員の評価が低くなるような場合、被評価者は「今まで評価されていた自分の良さを理解してくれない」「なぜ評価が低い結果となったかの説明がない」といったことから、不満を感じるでしょう。

また、高い評価を受け続けても昇進・昇格しない状況が続くようなことも、人事評価制度に対する不満につながります。

放置危険?退職要因となる人事評価の不満

退職要因

人事評価制度に対する不満は常々あるものですが、見直しもせずに従来どおりの制度で運用していると、人事評価制度に不満をもつ社員の離職や不服申し立てなどの事態もあり得ます。ここでは、退職につながる人事評価の不満や不服申し立てについて、どのようなケースがあるのかをご紹介します。

評価が低いと辞める!?退職につながる人事評価の不満

人事評価制度の改善をすることなく制度に対する不満を放置していると、要因によっては退職につながることがあり、とくにコア人材にその傾向が見受けられます。採用から育成段階まで多くの時間・コストを投入して育成してきた社員の退職は、企業にとって大きな痛手であり、コア人材であればダメージは尚更です。

人事評価の不満が退職につながる要因があるのであれば、早急に改善する必要があります。退職につながる人事評価の不満は主に次のようなことがあげられます。

●退職につながる主な人事評価の不満

  • 人事評価に納得感がなく不当に評価が低いと感じる

  • 能力や成果が評価に反映されず、評価基準に納得できない

  • 評価者の評価能力にばらつきがある

  • 評価者とそりが合わない

これらの不満は、共通して「評価基準が明確でない」「評価訓練が不十分」ということが起因しています。人事評価制度の見直しは労力を要するものであり、先送りしがちですが、とくに、不当に評価が低いなど退職につながるといった人事評価の不満は早急に改善することが必要です。

不服申し立てなどあり得る影響

不当に低い評価を得続けている社員などから、人事評価に対する不服申し立てがなされることも考えられます。とくに、人事評価によって降格がなされるようなケースはトラブルに発展することが多くあるでしょう。過去判例では、不当な人事評価に対して不法行為が認められたケースも多くあります。

●不服申し立てがなされる主なケース

  • 法令違反があった場合(男女雇用機会均等法や育児介護休業法などの強制法規違反)

  • 人事権の濫用があった場合(成果主義人事における人事権の逸脱による不法行為)

  • 人事考課と賃金決定に著しく均衡を失する場合(極端に賃金減額幅が大きいなど)

  • 目標管理の不適切な運用があった場合(目標が高すぎる、十分な能力開発がなされていない)

性別を基準に一律的に低い評価を与えるといった強制法規違反、従業員の業績や能力に関係ない基準で不当な評価を行うといった人事権の濫用など、人事考課が法的に公正性でない場合、訴訟に発展する恐れもあります。

コンプライアンスの観点でも、人事評価の不満を解消し、公正性を担保することが求められます。

人事評価の不満をなくす方法・ポイント解説

不満をなくすポイント

人事評価制度に対する不満の最大要因は、「評価基準が不明確」であることでした。この評価基準の見直しや整備をすることが最大のポイントです。その次位の不満要因としてあげられた「評価者による評価のばらつき」「自己評価より評価が低く理由が不明」「評価のフィードバックが不十分」に対する対処としては、評価者訓練が不可欠です。

ここでは、人事評価の不満をなくす方法・ポイントを解説します。

見直すべき評価基準3要素

人事評価の評価基準は主に、仕事の成果を評価する「成果評価」、社員の職務能力やスキルを評価する「能力評価」、仕事に対する姿勢やプロセスを評価する「情意評価」の3要素で構成されます。

成果評価

成果評価の基準は、職種によって定め方は大きく変わります。売り上げや特許申請数など定量的な評価が可能な営業職や開発職は目標設定の基準を明確にすることができますが、成果を数値で表すことが難しい事務職などは、評価基準の設定に工夫が必要です。

定性的な評価基準を定める場合、「何を」「いつまでに」「どのように」を明確にし、すべてができて100%達成とします。しかし100%達成していたとしてもB評価というような定め方が考えられます。100%を上回る評価であればA評価、著しく上回る評価であればS評価、他方、100%を下回る評価であればC評価、著しく下回る場合はD評価とすると良いでしょう。

【定性的な評価基準例】
S評価:期待を著しく上回った成果
A評価:期待を上回った成果
B評価:期待通りの成果(100%)
C評価:期待を下回った成果
D評価:期待を著しく下回った成果

●能力評価

能力評価の基準は企業によって違いがありますが、主に職務に関するスキルや知識のほか、どの職務にも共通する業務遂行力、改善力、企画力などが対象とされることが多いです。

階層別に見合った能力要件に見直し、職務に有効なスキルや知識を棚卸して、各々の職務に見合った要件を整理します。共通する業務遂行力や改善力、企画力などについては会社が望む要件を定義しましょう。

これらの要件を評価基準として明文化し、人事評価シートに落とし込むことが有効な手段です。

人事評価シートを詳しく知りたい方は、「人事評価シートとは?書き方とテンプレート作成方法を紹介」をご参考ください。

情意評価

情意評価の基準は、主に仕事に対する姿勢やプロセスを指します。メンバーとのチームワークや自己の責任感、仕事に対する意欲などが評価項目になりますが、階層によっては求める水準が大きく変わります。

階層が上位になるほど、情意評価に対する項目はできて当たり前である一方、成果の比重が大きくなることが一般的です。若年層においては、情意評価項目の比重を高くしてプロセス重視の評価を行うことがポイントです。

会社が社員に求める行動や姿勢を情意項目として定めて、どのような行動・姿勢をとる者が高評価者の対象となるかを明確化することで、不満の解消につなげることができます。

不可欠な評価者訓練と十分なフィードバック

評価者訓練が不十分、あるいは行っていない場合、評価者基準が間違いなくばらつき、退職つながる不満に発展します。また、人事評価結果に対して十分なフィードバックをしていないと納得感を得られずに不満につながります。そのため次のように改善することを心がけてください。

・不可欠な評価者訓練

評価者訓練は、評価制度の仕組みや評価基準など人事評価制度の理解度を深めるとともに、評価者が陥りやすい人事評価エラーを防ぐなど、人事評価方法を訓練するものです。

恣意的な評価とならないように、自社の評価基準を十分に理解してもらうよう、人事評価の手引きなどを作成することが考えられます。その手引きには、人事評価エラーが起きないように対策を記すことも有効です。

・主な人事評価エラーと対策例

主な人事評価エラー

・十分な評価フィードバックの必要性

人事評価の不満として、「自己評価より評価が低く理由が不明」「評価のフィードバックが不十分」という理由も上げられています。

評価結果に対して、なぜこのような結果となったのかフィードバックを十分に行うことで、人事評価に対する不満を低減させることができます。ただし、納得性のある評価は、明確化された評価基準の下、人事評価エラーがないようにすることが肝要です。

自社の人事評価制度の理解を深める被評価者訓練

評価者訓練を行うことは一般的と思われますが、評価を受ける側の被評価者訓練がされていないケースは多いと考えられます。

人事評価の不満要素は、評価基準が不明確であることが大きな要因であることから、評価者のみならず、被評価者に対しても評価基準の理解浸透に努めることが有効です。 

被評価者自身が人事評価制度の理解を深めることで、透明性の高い公平な人事評価制度を運用することができるのです。

不満をなくすには!自社にあった評価方法

不満をなくすには

人事評価制度の不満をなくすには、評価基準を見直し、評価者訓練や被評価者訓練を行うことがポイントであることを説明しましたが、更なる取り組みとして、評価方法の見直しをすることも有効です。ここでは、360度評価とコンピテンシー評価について見ていきます。

自律型組織には360度評価(多面評価による透明性)

従来のトップダウン型のヒエラルキー組織から、フラット組織やネットワーク組織など自律型組織への転換が求められるなか、多面評価の仕組みである360度評価が注目を集めています。

従来型の上から下への評価によるだけでなく、上司や部下、同僚など複数の視点で評価を受けることで、評価の納得性も増すほか、自己評価も行うことで自身と客観的に向き合うことができます。

360度評価を詳しく知りたい方は、「360度評価(多面評価)とは?メリットとデメリットや評価項目とフィードバック方法を解説」をご参考ください。

活躍する社員を増やすコンピテンシー評価(高業績の評価基準明確化)

自社のハイパフォーマーの行動特性に着目し、他の社員の人事評価や人材育成につなげるコンピテンシー評価も注目を集めています。

コンピテンシー評価は、前段としてコンピテンシーモデルを設計する必要がありますが、コンピテンシーモデルは、実在するハイパフォーマーをベースに設計する「実在型モデル」、会社の求める人材像のような理想をベースにする「理想型モデル」、双方を組み合わせた「ハイブリッドモデル」があります。

コンピテンシーは、画一的な評価基準はなく自社にあった基準を作り出すため、大きな手間がかかりますが、自社にあった納得感のある人事評価につなげることができるでしょう。人事評価のみならず人材育成面や採用面でも有効な手段です。

コンピテンシーを詳しく知りたい方は、「コンピテンシーとは?活用メリットやデメリット、導入の流れを解説」をご参考ください。

【まとめ】人事評価の不満をなくすには、人事評価基準の見直しと評価者・被評価者訓練が肝!

本記事では、統計に見る人事評価の不満理由をベースに、不満防止につなげるための人事評価制度の見直しポイントや自社にあった人事評価方法について解説しました。

人事評価の不満は、改善もせずに放置していると退職にもつながることもありますので、不満を解消することは極めて重要です。人事評価の解消を解消するには、「評価基準の見直し」「評価者訓練」「被評価者訓練」によって、透明性・納得性の高い人事評価制度を運用することが肝となります。更なる取り組みとして、自社にあった評価制度として360度評価やコンピテンシー評価などを検討しても良いでしょう。

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HR大学編集部
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