コンピテンシーとは?意味やモデルの活用メリットと導入時の具体例
- コンピテンシーとは
- コンピテンシーの活用
- マネジメントでの活用
- 人材育成での活用
- 人事評価での活用
- 採用活動での活用
- コンピテンシーを活用するメリット
- 人事評価の公平性を維持しやすくなる
- 人材育成を効率的に行える
- ミスマッチのない人材採用が行える
- コンピテンシーを活用するデメリット
- 評価基準の制定が難しい
- 評価基準が細かい場合に評価者の負担が増える
- 自社に合わない基準を設定してしまうと失敗する可能性がある
- コンピテンシーの導入手順
- 高い成果を上げている従業員へヒアリングを行う
- コンピテンシーモデルを作成する
- 評価項目を作成する
- 評価項目ごとにレベルを設定する
- コンピテンシーを導入する際の注意点
- コンピテンシーを導入する目標を明確にする
- 導入過程に手間をかけすぎない
- 定期的に振り返りと改善を行う
- コンピテンシーの導入と運用を効率化する方法
コンピテンシーは、自社や部署にとっての「理想のモデル」を示すことによって、従業員の目標設定や人事評価に役立つ有効な指標です。
この記事では、コンピテンシーの概要や具体的な活用場面、導入するメリット・デメリット、注意点などについて解説します。
ハイパフォーマーの行動特性を抽出
コンピテンシーとは
コンピテンシーとは、仕事において成果や業績が高い人に共通する行動特性を指します。
行動特性は、実際の行動より、行動を起こすきっかけになる価値観や性格など、内面の要素が注目されます。
高い成果をあげる従業員の思考や行動を分析した結果、成果につながると考えられる特性がコンピテンシーであると言えます。
コンピテンシーの活用
コンピテンシーは、人材の採用や評価など、あらゆるシチュエーションで活用できます。
コンピテンシーが活用できる代表的な4つの場面について確認してみましょう。
コンピテンシーの活用
マネジメントでの活用
人材育成での活用
人事評価での活用
採用活動での活用
マネジメントでの活用
コンピテンシーは、各部署での「マネジメント」に活用できます。
同じ企業でも、営業や総務、経理など、部署によって求められるコンピテンシーが異なることがあります。
その部署で、どのような行動特性を持つ人が成果をあげやすいかを把握できれば、マッチしたコンピテンシーを持つ人材を配置することができるでしょう。
結果として、部署全体のパフォーマンスが向上することが期待できます。
逆に、合わない部署に配置された従業員が、やりたい業務や得意な分野とのミスマッチに悩むことも減らせるでしょう。
▼「人材配置」につていさらに詳しく
適材適所を実現する「人材配置」とは?実践的な方法とポイントを人事目線で解説
人材育成での活用
コンピテンシーは、「人材育成」にも活用できます。
まず、各部署や自社全体で高い業績や成果をあげている人材のコンピテンシーを明示します。
理想的とされるコンピテンシーの明示によって、他の従業員にとって目指すべき目標が明確になることが期待できます。
明示の方法としては、研修を実施し「どのような行動を取れば、高い業績や成果を生み出せるのか」を従業員に浸透させることが有効です。
その際、新人クラスや主任クラス、課長級クラスなど、従業員を階層に分けると、より具体的な目標設定が行えるでしょう。
▼「人材育成」についてさらに詳しく
【実践編】人材育成って何やるの?これを読めば基本的考え方と具体的な企画方法がよくわかる
▼「研修」についてさらに詳しく
社員研修とは?内容やプログラム例、おすすめサービスを解説
人事評価での活用
コンピテンシーは、「人事評価」の際にも活用できます。
コンピテンシーを活用した「コンピテンシー評価」では、高い成果をあげるコンピテンシーモデルに合致するほど評価が高くなります。
コンピテンシー評価の大きな特長は、評価基準が明確になることから、評価者の主観に左右されない評価が行われる点です。
人事評価において、明確な評価基準が設定されていないと、従業員に不満が生まれ、離職につながりやすくなります。
その点で、コンピテンシーによる人事評価は、公正で客観的であることから、評価が従業員に受け入れられやすいでしょう。
結果として、従業員のモチベーションやパフォーマンスの向上につながることが期待できます。
▼「人事評価」についてさらに詳しく
人事評価とは?解決すべき9つの課題と人事評価制度のメリット5つを紹介
納得度の高い評価とは?目指すべき状態やアクションについて
採用活動での活用
コンピテンシーは、「採用活動」の際にも活用できます。
コンピテンシーを活用した採用活動を行う際は、まず自社で成果をあげている人材のコンピテンシーを把握します。
その上で、応募者の持つ行動特性と自社が求める人物像のコンピテンシーがどれくらい一致しているかを見極めます。
具体的には、「これまでの職歴で最も大きな成果を上げたことは何ですか」「成果をあげるためにそのような行動を取ったのはなぜですか」など、具体的な成果の内容や行動についての質問をすると良いでしょう。
コンピテンシーを活用するメリット
コンピテンシーは、人材採用から人事評価まで、あらゆる場面で活用できる指標です。
コンピテンシーを活用することによって、具体的にどのようなメリットがあるのかについて、確認してみましょう。
コンピテンシーを活用するメリット
人事評価の公平性を維持しやすくなる
人材育成を効率的に行える
ミスマッチのない人材採用が行える
人事評価の公平性を維持しやすくなる
コンピテンシーを活用した「コンピテンシー評価」は、公平性が大きな特長です。
人事評価は、その後の役職や給与に影響するなど、従業員ひとりひとりにとって重要なものです。
そのため、主観が入っていない、公平かつ公正な評価がされることが理想的です。
従来の人事評価では、評価者である上司との関係性や、評価者の主観的な好き嫌いが評価に影響してしまう可能性がありました。
また、周囲との協調性や責任感の強さなどの数値で測れない項目については、明確な基準がない場合もありました。
一方、人事評価にコンピテンシーを活用すると、どのような行動が評価につながるかが明確になります。
明確な基準ができることにより、評価者は評価を行いやすくなり、従業員は評価に対する納得感を得やすくなるでしょう。
人材育成を効率的に行える
社内で成果をあげている人のコンピテンシーが明確になると、従業員は目指すべき人物像である「ロールモデル」がクリアになると考えられます。
自分の目指す姿を明確に描けるようになることで、自発的な学習やスキルの習得につながることが期待できます。
また、特別なスキルや資格を持っているにも関わらず、思うように成果をあげられていない従業員もいるでしょう。
成果につながりやすい行動特性を知ることにより、それまで結果を出せなかった従業員が活躍できるようになる可能性がある点も、コンピテンシーを活用した人材育成の特徴と言えます。
▼「ロールモデル」につていさらに詳しく
ロールモデルとは?なぜいた方がいいの?女性のキャリアの実例を含め解説!
ミスマッチのない人材採用が行える
コンピテンシーの活用は、自社にマッチする人材の採用にも役立ちます。
従来の採用活動は、学歴や職歴、資格の有無など、目に見える基準を元に行われることが多くありました。
学歴や職歴、資格は、応募者の来歴を知る上での材料にはなりますが、その人が成果をあげるために具体的にどのような行動を取るのかまでは分かりません。
コンピテンシーを活用すると、学歴や資格などの表面的な要素だけではなく、入社後に自社で活躍できる行動特性を持っているかどうかという観点で選考を行えます。
結果として、より自社の方針に合う人材を採用できることが期待できるでしょう。
コンピテンシーを活用するデメリット
コンピテンシーは、あらゆる場面で活用でき、メリットも多くありますが、デメリットもあります。
コンピテンシーを活用する際のデメリットについて、確認してみましょう。
コンピテンシーを活用するデメリット
評価基準の制定が難しい
評価基準が細かい場合に評価者の負担が増える
自社に合わない基準を設定してしまうと失敗する可能性がある
評価基準の制定が難しい
自社で成果をあげられるコンピテンシーモデルを明示するためには、成果をあげている従業員の行動特性を分析する必要があります。
しかし、企業には、部署や職種ごとに成果をあげている従業員が複数います。
そのため、従業員ひとりひとりへのヒアリングを行うだけでも、多くの工数と時間がかかります。
また、高い成果をあげている従業員本人が、自身がなぜ成果をあげられるのかをうまく説明できない場合も考えられます。
また、ヒアリングで得た情報の分析にも、多くの手間がかかります。
このように、ヒアリングから分析、コンピテンシーモデルの作成まで多くの工数と時間がかかることは、コンピテンシーを導入するデメリットの1つと言えます。
評価基準が細かい場合に評価者の負担が増える
コンピテンシーを活用した人事評価は、どのような行動が評価につながるかが明確なため、従業員にとって納得感のあるものになりやすい点が特長です。
一方で、行動特性が多くの項目で細かく定められていると、評価者は部下がその項目のひとつひとつに該当しているかどうかを判断するのに多くの時間を要します。
評価を担当する部下の人数が多ければ多いほど、その手間は大きくなるでしょう。
また、自社の事業内容や経営方針に変更があった際には、理想的なコンピテンシーモデルが改められる場合があります。
そのため、評価の度に評価項目の内容が変わる可能性もあります。
このように、評価基準が細かいために、評価する側の負担が大きくなることは、コンピテンシーを導入するデメリットの1つです。
自社に合わない基準を設定してしまうと失敗する可能性がある
最良のコンピテンシーは、企業それぞれで異なります。
そのため、コンピテンシーを導入する際は、自社に合う行動特性について情報収集を行い、分析することが必要です。
しかし、分析の方法や観点などが少しずれてしまうと、コンピテンシーに沿ったマネジメントや人材育成を行っても、期待通りの効果が得られない場合があります。
コンピテンシーの導入に一度失敗してしまうと、従業員が自社へ不信感を抱き、導入に協力してもらえなくなる可能性があります。
そのため、コンピテンシーの導入を検討している企業は、導入理由などについて従業員へ十分に説明した上で、自社に合ったコンピテンシーを慎重に作成することが大切です。
コンピテンシーの導入手順
コンピテンシーを人材育成や採用活動に役立てたい場合の導入手順について確認してみましょう。
コンピテンシーの導入手順
- 高い成果を上げている従業員へヒアリングを行う
- コンピテンシーモデルを作成する
- 評価項目を作成する
- 評価項目ごとにレベルを設定する
高い成果を上げている従業員へヒアリングを行う
自社で高い成果や業績をあげている従業員を部署ごとにピックアップします。
そして、該当する従業員ひとりひとりにヒアリングを行いましょう。
ヒアリングは、アンケートやインタビューなど任意の形式で実施します。
ヒアリングする内容は、社内業務や顧客対応などの場面を想定し、高い成果をあげる従業員がどのように考えてどう動くのか、普段の行動特性を探れるものにします。
ヒアリング後は集めた内容を、「チームワーク」や「リーダーシップ」など、あらかじめ定めておいた分類に分けておくと、後で整理が楽になるでしょう。
コンピテンシーモデルを作成する
高い成果をあげる従業員へのヒアリングを行った後は、他の従業員の目標となる各コンピテンシーモデルを作成します。
一般的によく設定されている、3つのコンピテンシーモデルについて確認してみましょう。
コンピテンシーモデル
理想型モデル
実在型モデル
ハイブリッド型モデル
理想型モデル
理想型モデルは、自社の理念や、自社が求める人物像などを元に作成するものです。
自社が掲げるビジョンや、達成するべき事業目標などの要素を、具体的な行動特性に落とし込んで作成します。
理想型モデルは、企業理念などの自社の考え方を投影して作るモデルであるため、時間をかけずに作成できる点が特徴です。
▼「企業理念」についてさらに詳しく
企業理念と経営理念の違いは?それらを社内に浸透させる方法について
実在型モデル
実在型モデルは、自社内に実際に在籍する従業員を元に作成するものです。
実際に自社で働く従業員がモデルであることから、周囲の従業員が見ても納得感を得やすい点が特徴です。
ただし、その従業員が独自に持っているスキルをベースにモデルを作ってしまうと、他の従業員が参考にしづらくなってしまいます。
実在型モデルを作成する際は、複数の従業員へのヒアリングが必要です。
ハイブリッド型モデル
ハイブリッド型モデルは、理想型モデルと実在型モデルの長所を取って作成するモデルです。
ハイブリッド型モデルは、まず実在型の形式でモデルを設定し、そこに自社ならではの理想のコンピテンシーを加えて作成します。
自社の理想のコンピテンシーについては、あまりに高い理想や目標を元にしたコンピテンシーを取り入れると、実現が難しくなってしまう場合があります。
理想型の要素を取り入れる際は、従業員が目指そうと思えるような、現実的なコンピテンシーの採用が大切です。
評価項目を作成する
コンピテンシーモデルができた後は、そのモデルにおける評価項目を作成します。
評価項目は、可能な限り成否を明確に判断できる、具体的なものであると良いでしょう。
評価項目の例
自己認知能力
組織力、チームワーク
業務遂行力
情報収集力、情報整理力
指示、統率力
評価項目ごとにレベルを設定する
評価項目をどの程度達成できているかを判断するためには、評価基準を設定する必要があります。
評価基準は、段階制や点数制にするなど、その達成度合いが明瞭であるものが理想的です。
たとえば点数制にした場合、各項目ごとの合計点数を、人事評価や昇進の有無の判断に活用するなど、あらゆる場面での評価に活用できるでしょう。
コンピテンシーを導入する際の注意点
コンピテンシーは、「自社が目指す人物像を明確にする」非常に役立つ指標です。
一方で、その導入にあたっては、いくつか注意するべき点があります。
コンピテンシー導入における3つの注意点について、確認してみましょう。
コンピテンシーを導入する際の注意点
コンピテンシーを導入する目標を明確にする
導入過程に手間をかけすぎない
定期的に振り返りと改善を行う
コンピテンシーを導入する目標を明確にする
コンピテンシーを取り入れる際は、コンピテンシー導入によって最終的に自社の何を改善したいか、明確な目的を定めることが重要です。
コンピテンシーを導入しても、採用や人材マネジメントの課題がすぐに解決するわけではありません。
改善を繰り返しながら自社にとって最良のコンピテンシーを追求するためには、多少時間がかかる場合もあります。
そのような場合でも、明確な導入目標があることで、途中で挫折することなく自社にとって最良のコンピテンシーモデルを確立することができるでしょう。
導入過程に手間をかけすぎない
コンピテンシーは、ハイパフォーマーである従業員へのヒアリングから始まり、実際に活用するまでに多くの時間を要します。
コンピテンシーの導入や運用に多くの人員を確保できない場合は、コンピテンシー導入に特化した既存のシステムを活用するなどして、導入の負荷がかかり過ぎないようにすることが大切です。
また、自社や社会の状況などによって、求められるコンピテンシーモデルや評価項目は変更になる場合があります。
そのため、コンピテンシーモデルや評価項目の設定には、多くの時間や手間をかけ過ぎないようにしましょう。
定期的に振り返りと改善を行う
コンピテンシーは、導入時にコンピテンシーモデルや評価項目などを一度決めて終わりというものではありません。
自社の事業方針は、その時々の社会状況によって変化して行くものです。
コンピテンシーも、周囲の状況に合わせて、定期的に振り返りを行い、必要があれば改善していくことが求められます。
特に、コンピテンシー導入によって目指す姿と自社の状況とが乖離してきたと感じられた際は、柔軟に評価項目を変更するなどの対応をしましょう。
コンピテンシーの導入と運用を効率化する方法
コンピテンシーは、「仕事において成果や業績が高い人に共通する行動特性」を、明確にすることによって、あらゆる場面で幅広く活用できる指標です。
目指すべきモデルが明示されることによって、従業員の目標設定や人事評価などに非常に役立つでしょう。
一方で、コンピテンシーの導入には、成果をあげている従業員へのヒアリングや評価項目の設定など、大変多くの工数がかかります。
また、導入した後も必要に応じてコンピテンシーモデルや評価項目の改善を行う必要があります。
そのためコンピテンシーは、丁寧に計画を立て、従業員に十分な説明を行った上で導入することが大切です。
コンピテンシーモデルの作成を「HRBrain タレントマネジメントシステム」で実施
「HRBrain タレントマネジメントシステム」は、従業員ひとりひとりのスキルマップなどの「人材データ」や、目標管理、人事評価、人材教育履歴、1on1などの面談記録など、あらゆるデータを一元管理し、可視化することが可能です。
コンピテンシーの導入に必要な、ハイパフォーマー人材の抽出や、データの洗い出しが可能です。
また、コンピテンシーモデルの作成に必須である、ハイパフォーマー人材へのインタビュー記録をデータ管理することも可能です。
HRBrain タレントマネジメントの特徴
検索性と実用性の高い「データベース構築」を実現
運用途中で項目の見直しが発生しても柔軟に対応できるので安心です。
柔軟な権限設定で最適な人材情報管理を
従業員、上司、管理者それぞれで項目単位の権限設定が可能なので、大切な情報を、最適な状態で管理できます。
人材データの見える化も柔軟で簡単に
データベースの自由度の高さや、データの見える化をより簡単に、ダッシュボードの作成も実務運用を想定しています。
▼「タレントマネジメント」についてさらに詳しく
【完全版】タレントマネジメントとは?基本・実践、導入方法まで解説
タレントマネジメントシステムの課題とは? 目的・導入の課題と成功事例まで
▼「タレントマネジメント」お役立ち資料まとめ
【人事担当者必見】タレントマネジメントに関するお役立ち資料まとめ
おすすめ記事
- 介護離職とは?原因と理由や離職しないための対策と支援などの解決策について解説#人事評価2024/11/11
- 退職代行とは?使われた際に企業が取るべき対応や注意点について解説#人事評価2024/11/06
- 目標設定とは?方法とフレームワークや具体例と注意点について解説#人事評価2024/10/28
- 360度フィードバックとは?意味や目的とやり方や評価項目について解説#人事評価2024/10/21
- KPIとは?KGIやKFSとの違いや作り方と目標設定の例を簡単に解説#人事評価2024/09/04
- 等級制度とは?職能資格制度・職能等級制度・役割等級制度の3つの種類やメリットとデメリットと作り方について解説#人事評価2024/09/04