#人材育成
2024/09/19

ケイパビリティとは?ビジネスでの意味やコアコンピタンスとの違いと高める方法を簡単に解説

目次

ケイパビリティとは、企業としての組織力や自社ならではの強みを指します。

ケイパビリティを取り入れて、自社の組織力を強化することは、競合他社との差別化や事業の安定などのさまざまなメリットがあります。

この記事では、ケイパビリティのビジネスでの意味、ケイパビリティとコアコンピタンスとの違い、ケイパビリティのメリット、ケイパビリティを把握するためのフレームワーク、ケイパビリティを高める方法と注意点について簡単に解説します。

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ケイパビリティとは

ケイパビリティ(capability)とは、能力、才能、可能性などの意味がある言葉で、ビジネスでは、「企業としての組織力や自社ならではの強み」と定義されています。

ケイパビリティの具体例には、商品やサービスの品質、デザイン性、生産性の高さなどがあげられます。

ケイパビリティの概念は、1992年にボストンコンサルティンググループのジョージ・ストークス氏、フィリップ・エバンス氏、ローレンス・シュルマン氏の3人が共同で著した論文「Competing on Capabilities: The New Rules of Corporate Strategy」の中で提唱されました。

論文の中でケイパビリティとは、「バリューチェーン全体の組織的な能力」であると述べられています。

バリューチェーンとは、商品の製造や流通、販売などの各プロセスにおいて付与される価値を可視化し、最大化することを指します。

変化の激しい経済社会の中で、自社のケイパビリティを正しく知り、伸ばしていくことが重要です。

(参考)「Competing on Capabilities: The New Rules of Corporate Strategy」(著:ジョージ・ストークス、フィリップ・エバンス、ローレンス・シュルマン)

ケイパビリティとコアコンピタンスの違い

コアコンピタンス(core competence)とは、核、中心の意味を持つcoreと、能力の意味を持つcompetenceが組み合わされた単語で、企業の核となる強みのことを指します。

コアコンピタンスの具体例としては、バイクや自動車製造会社におけるエンジン技術、電化製品会社におけるテレビの液晶画面や薄型ディスプレイなどがあります。

コアコンピタンスが特定の技術としての強みを指すのに対し、ケイパビリティは事業プロセス全体など、組織全体で強みといえる能力を指す点が違いと言えます。

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ケイパビリティのメリット

ケイパビリティは、自社ならではの組織力や強みを示すものです。

ケイパビリティを取り入れることで、具体的にどのようなメリットがあるのか確認してみましょう。

ケイパビリティのメリット

  • 他社との差別化がしやすい

  • 事業の安定が期待できる

  • 全社で横断的に取り組める

他社との差別化がしやすい

ケイパビリティのメリットとして、「他社との差別化がしやすい」ことがあげられます。

ケイパビリティは特定の技術ではなく、自社ならではの組織力や強みを指すことから、他社が真似しづらいものであると言えます。

真似がされづらいものであることから、企業は自社のケイパビリティを伸ばしやすくなり、市場での優位性をより高めていけます。

事業の安定が期待できる

ケイパビリティのメリットとして、「事業の安定が期待できる」ことがあげられます。

特定の技術などの強みは、他社が同様の技術やそれ以上に優れた技術を開発した場合、優位性が揺らぎやすくなってしまいます。

ですがケイパビリティは、商品やサービスの品質や生産性の高さなど、組織そのものの強みのため、他社の商品開発状況などの外的要因に影響されづらいものです。

外的要因の影響を受けにくいケイパビリティを伸ばすことは、経営の安定につながり、経営が安定することによって収益や業績を高めることが期待できます。

全社で横断的に取り組める

ケイパビリティのメリットとして、「全社で横断的に取り組める」ことがあげられます。

ケイパビリティは自社全体が持つ組織力のため、強化するためには全社で横断的に取り組むことが大切です。

部門や部署の垣根を超え、企業全体が一体となって共通の目的の達成を目指すことは、ケイパビリティのメリットの1つと言えます。

ケイパビリティをより効率的に高めるためには、具体的な施策によって部署間の連携を強化したり、必要に応じた人材配置を行ったりすることが有効です。

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ケイパビリティを把握するためのフレームワーク

ケイパビリティは、企業それぞれで異なるものです。

自社のケイパビリティを把握するには、どのような方法があるのかケイパビリティを把握するためのフレームワークについて確認してみましょう。

SWOT分析

SWOT分析とは、自社の現状を4つの要素に分けて分析する方法で、「Strength(強み)」「Weakness(弱み)」「Opportunity(機会)」「Threat(脅威)」の4つの要素の頭文字を取ってSWOTと呼ばれます。

SWOT分析の4つの要素は、プラス要因とマイナス要因、内部環境と外部環境に分類されます。

  • Strength(強み):自社の強み(内部環境のプラス要因)

  • Weakness(弱み):自社の弱み(内部環境のマイナス要因)

  • Opportunity(機会):自社の強みを活かせるような環境の変化(外部環境のプラス要因)

  • Threat(脅威):自社の強みが損なわれるような環境の変化(外部環境のマイナス要因)

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バリューチェーン分析

バリューチェーン分析とは、企業の活動を主活動と支援活動の2つに分け、どの活動から付加価値が生み出されているのかを分析する方法です。

主活動

  • 製造(原材料から製品を製造する活動)

製造工程の効率性、良品と不良品の割合、生産計画の適切さなどを確認し評価する

  • 購買物流(原材料の調達・貯蔵、配分などを行う活動)

原材料の調達コストや在庫管理、品質などを確認し評価する

  • 出荷(商品を梱包し、各倉庫や店舗へ配送する活動)

配送ルートやコストの適切さなどを確認し評価する

  • マーケティング・販売(広告や営業などの販売に関連した活動)

広告のターゲティング設定をはじめ、各マーケティング戦略の適切さや、価格の適正さなどを確認し評価する

  • サービス(商品販売後のメンテナンスや顧客サポートなどの活動)

顧客への問い合わせ対応や保守サービスに関する内容の適切さなどを確認し評価する

支援活動

  • 人事・労務管理(従業員の採用や教育、給与の支払いなど)

労働基準法などの労働関連法規が遵守されているか、人員計画が適切に立てられているかなどを確認し評価する

  • 技術開発(新商品の開発や既存商品の品質向上、生産性の向上など)

社会のニーズに合った商品の開発を行えているか、一定の生産効率を維持できているかなどを確認し評価する

  • 全般管理(経理や総務、経営企画など)

各種業務のデジタル化やコンプライアンス、CSRなどに関して、企業として適切に対応できているかを確認し評価する

バリューチェーン分析によって、自社の各分野での強みや弱み、現状のコストを把握した後は、さらにVRIO分析を行います。

VRIO分析とは、各活動の質を見極めるもので、「Value(経済的価値)」「Rareness(希少性)」「Imitability(模倣可能性)」「Organization(組織)」の4つの要素の頭文字を取ってVRIOと呼びます。

  • Value(経済的価値):自社が強みとしているものが、外部環境の脅威に対抗できるか

  • Rareness(希少性):自社が強みとしているものに、他社と比較して希少性があるか

  • Imitability(模倣可能性):自社が強みとしているものは、他社が模倣することが難しいものか

  • Organization(組織):自社が強みとしているものを、活用する環境が自社に整っているか

上記の質問にYesかNoで回答、もしくは5段階で評価することで、自社の強みと弱みをより明確にするのがVRIO分析です。

バリューチェーン分析、VRIO分析によって、正確に自社の強みや課題を把握することは、正しい経営戦略の立案に役立ちます。

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ケイパビリティを高める方法

ケイパビリティを高め他社との差別化を強化することは、企業の事業成長につながることが期待できます。

ケイパビリティを強化するにはどのような方法があるのか確認してみましょう。

ケイパビリティを高める方法

  • 人材育成の強化

  • ケイパビリティ・ベース競争戦略の推進

  • ダイナミックケイパビリティ戦略の推進

人材育成の強化

ケイパビリティを高める方法として、「人材育成の強化」があげられます。

具体的には、従業員がより高度で幅広い知識やスキルを習得できるような学びを促進すると良いでしょう。

従業員が学びで得た知識やスキルを実務に活用することで、業務の効率化や事業成長につながることが期待できます。

人材の育成に重点を置いた具体的な学習方法として、「OJT」「e-ラーニング」「ジョブローテーション」などがあげられます。

  • OJT

OJTとは、先輩従業員のそばに付いて、実務に関する知識やスキルを学ぶ方法で、実務に即して学習を行うことから習得が早く、不明点がある際にすぐに質問できる点が特長です。

  • e-ラーニング

インターネットを活用し、オンラインで学ぶ方法で、インターネット環境があれば、場所を選ばずに学習できる点が特長です。

  • ジョブローテーション

さまざまな分野の業務を習得するために、定期的に部署を異動させる方法で、さまざまな部署の業務を見ることで、多角的な視点を得やすくなることが特長です。

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経営戦略と連動した人材育成を実現する方法

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ケイパビリティ・ベース競争戦略の推進

ケイパビリティを高める方法として、「ケイパビリティ・ベース競争戦略の推進」があげられます。

ケイパビリティ・ベース競争戦略とは、ケイパビリティを事業の中心に置くことで、市場での自社の優位性を高めようとする方法を指します。

ケイパビリティ・ベース競争戦略には、「ビジネスプロセスの重視」「主要なビジネスプロセスの変換」「部門間のインフラ整備」「トップの推進」の4つの基本ルールがあります。

  • ビジネスプロセスの重視

ビジネスプロセスの重視とは、自社の組織体制やプロセスの組み立て方に重点を置いて事業戦略などを考えることを指します。

事業戦略を考える際は、一般的に自社の商品やサービス、参入する市場に重点を置くことが多いですが、ケイパビリティ・ベース競争戦略では、あくまで自社の組織力に着目して考えます。

  • 主要なビジネスプロセスの変換

主要なビジネスプロセスの変換とは、自社のビジネスプロセスの中でも特に軸となる部分を、他社よりも高い価値を提供できるようなケイパビリティに変換することを指します。

また、限りのある経営資源を分散させずに有効活用するという観点からも、重要なビジネスプロセスのみに集中して強化します。

  • 部門間のインフラ整備

部門間のインフラ整備とは、インフラを整備することで、部門や部署を超えたケイパビリティの創出を促進することを指します。

特に、部門間や部署間で連携がしづらい縦割り構造の企業では、インフラを整備することによって、自社全体の組織力を高められることが期待できます。

  • トップの推進

トップの推進とは、ケイパビリティの強化を全社で横断的に推進していく中で、指揮を取る経営層などの自社のトップを指します。

ケイパビリティの強化に関する従業員からの意見やアイデアを活かして、トップ層が積極的に経営戦略を推し進めていく必要があります。

ダイナミックケイパビリティ戦略の推進

ケイパビリティを高める方法として、「ダイナミックケイパビリティ戦略の推進」があげられます。

ダイナミックケイパビリティ戦略とは、変化の激しいビジネス社会の中で成長し続けるために、資金や情報、人員を再活用することで、自社の事業や組織そのものを変革することを指します。

ダイナミック・ケイパビリティ戦略では、「感知(Sensing)」「変容(Transforming)」「捕捉(Seizing)」の3つの能力が重要とされています。

  • 感知(Sensing):社会全体のニーズや他社の動向、社会情勢など、自社にとって脅威となる環境の変化を敏感に察知する能力

  • 変容(Transforming):社内の資源を再構築することで、組織全体を変革させる能力を指し、具体的な変容には、社内ルールの変更、組織編成の変更などがあげられる

  • 捕捉(Seizing):すでに社内外にある資源を再活用することで、新しく事業を始める能力を指し、関連技術の改良や設備への投資、新しいビジネスモデルの設計などによって高めることができる

▼「ダイナミックケイパビリティ」についてさらに詳しく
ダイナミックケイパビリティとは?重要性や向上するためのコツも解説

ケイパビリティを高める際の留意点

ケイパビリティを高めるためには、人材育成の強化や、ケイパビリティ・ベース競争戦略もしくはダイナミックケイパビリティ戦略の推進などを実施します。

ケイパビリティを高める施策を実行する際に留意すべき点について確認してみましょう。

ケイパビリティを高める際の留意点

  • 短期的に結果を求めず長期的視点を持つ

  • 市場の変化をキャッチアップする

  • 必要に応じてツールを活用する

短期的に結果を求めず長期的視点を持つ

ケイパビリティを高める際の留意点として、「短期的に結果を求めず長期的視点を持つ」ことがあげられます。

ケイパビリティに関する施策は、必ずしもすぐに結果が出るものではありません。

組織全体を対象に行うからこそ、明確な結果が出るまでに長い時間が掛かる場合もあります。

特に、人材育成については人を対象に行う施策であるため、成功しない可能性もあります。

すぐに目に見える効果が感じられない場合でも、長期的な視点を持って試行錯誤しながら施策を継続させることが重要です。

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市場の変化をキャッチアップする

ケイパビリティを高める際の留意点として、「市場の変化をキャッチアップする」ことがあげられます。

ケイパビリティの強化は、変化の激しい経済社会の中で自社が成長し続けるために実施するため、市場の変化を敏感にキャッチアップし、社会のニーズに応えられるような価値提供を意識することが大切です。

社会のニーズを満たせる価値提供ができることで、市場での自社の競争優位性を維持することができるようになります。

必要に応じてツールを活用する

ケイパビリティを高める際の留意点として、「必要に応じてツールを活用する」ことがあげられます。

ケイパビリティの強化は、社内のあらゆる部署や部門を巻き込んで、横断的に行う必要があります。

しかし、企業の規模やケイパビリティ強化に割ける人的リソースによっては、全ての施策を自社内のみで行うことが難しい場合もあります。

ケイパビリティの強化を効率的に行うために、必要に応じて社外のツールやサービスを活用することも大切です。

例えば、業務フローを自動化できるツールを活用すると、業務を大幅に効率化できます。

また、市場調査や競合企業の分析などを行いたい場合に、コンサルタントなどの外部の専門家の力を借りると、調査や分析を効率的に行えるだけではなく、より正確で専門的な結果を得ることができるでしょう。

ケイパビリティは自社の市場価値向上に必須

ケイパビリティは、企業における組織力や固有の強みを指すものです。

ケイパビリティを取り入れて、自社の組織力を強化することは、競合他社との差別化や事業の安定などのさまざまなメリットがあります。

ケイパビリティを高めるためには、人材育成からダイナミックケイパビリティ戦略の推進まで、さまざまな方法があります。

一方で、ケイパビリティの強化施策は、人材育成が必要であり、全社で横断的に行うため、工数が掛かるもののすぐに結果が出るとはかぎりません。

ケイパビリティを高める施策は、市場の動向を敏感にキャッチアップしながら、長期的な視点を持って行っていくことが重要といえるでしょう。

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