#人材育成
2024/08/21

ピーターの法則とは?組織に及ぼす影響や創造的無能と回避するための対策を分かりやすく解説

目次

ピーターの法則とは、能力主義の階層組織の中では、有能な人材でも、極限まで昇進を重ねていくと、いずれは能力の限界に達して「無能化」してしまうという法則です。

ピーターの法則は組織に、「生産性の低下」「優秀な人材の流出」「人事評価制度の無効化」などの影響を及ぼすと考えられています。

この記事では、ピーターの法則とはどのような法則なのか、ピーターの法則と創造的無能について、ピーターの法則とパーキンソンの法則やディルバートの法則の関係、ピーターの法則とハロー効果の違い、ピーターの法則が及ぼす影響と回避するための対策、ピーターの法則についての本について、分かりやすく解説します。

優秀人材のスキルや能力などのデータの把握

ピーターの法則とは

ピーターの法則とは、「能力主義の階層組織の中で、有能さを発揮していた人が、極限まで昇進することで、能力を無能化させてしまい、いずれ組織全体に無能な人間が溢れてしまい、組織全体が無能化してしまう」という、社会学の法則の1つです。

ピーターの法則は、教育学博士で南カリフォルニア大学教授のローレンス・J・ピーター氏と小説家のレイモンド・ハル氏の共著である「ピーターの法則 創造的無能のすすめ」で提唱されています。

「階層社会において、人は昇進を重ね、自分の限界まで出世する。無能な人はそのポストにとどまるが、有能な人も限界まで出世したポストで無能化してしまう。やがてあらゆるポストは無能な人によって占められてしまう。よって、仕事はまだ無能なレベルに達していない人によって行われる」ということがピーターの法則の概要です。

「無能化」の具体的な例は、プレーヤーとしては優秀だったのに、昇進し管理職になりマネジメント能力が求められるようになった事で無能化してしまうことです。

また、たとえ仕事内容が同じだったとしても、求められるレベルが極限まで達し、活躍が難しくなってしまう場合もあります。

(参考)「ピーターの法則 創造的無能のすすめ」(著:ローレンス・J・ピーター、レイモンド・ハル、訳:渡辺伸也、出版:ダイヤモンド社)

ピーターの法則と創造的無能

ピーターの法則では、有能な人でも能力の限界まで出世すると、無能化してしまうと言われています。

創造的無能とは、いつまでも無能化せずに活躍するために、現状が最適だと考え、現状の地位にとどまるために、能力や領域を故意に現状にとどめ、自らを「無能」かのように取り繕うことを指します。

ピーターの法則が組織に与える影響

ピーターの法則が組織に与える影響について確認してみましょう。

ピーターの法則が組織に与える影響

  • 生産性の低下

  • 優秀な人材の流出

  • 人事評価制度の無効化

生産性の低下

ピーターの法則が組織に与える影響として、「生産性の低下」があげられます。

有能なプレーヤーとして活躍していた人が、必ずしも管理職で活躍するとは限りません。

昇進しマッチしないポジションに異動することで、企業の生産性は低下してしまいます。

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優秀な人材の流出

ピーターの法則が組織に与える影響として、「優秀な人材の流出」があげられます。

優秀な人材が昇進することで無能化してしまうことを防ぐために、昇進しないようセーブをして仕事をすることを「創造的無能」と言いますが、優秀な人材ができないフリをすることは健全な状態であるとは言えず、良い解決方法ではありません。

また、できないフリをすることは、本人にもストレスが掛かり、昇進できなければ、昇給も望めず、優秀な人材の流出へと繋がってしまいます。

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人事評価制度の無効化

ピーターの法則が組織に与える影響として、「人事評価制度の無効化」があげられます。

ポストに占める無能な人材の割合が大きくなっていくと、組織は正しく機能しなくなり、人材の評価が難しくなっていきます。

昇進に適した人材を正しく選ぶ事ができない組織では、人事評価制度も機能せず、無効化してしまいます。

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ピーターの法則を回避するための対策

ピーターの法則を回避するための対策として、企業側ができることと、個人ができることについて、確認してみましょう。

ピーターの法則を回避するための企業の対策

  • 降格の条件を決める

  • 従業員の教育や育成の機会を作る

  • マネジメント以外の道を用意する

  • キャリアについて1on1などで話し合う

ピーターの法則を回避するための個人の対策

  • 役職に求める能力を確認する

  • 昇進先のポストで必要となるスキルを習得する

  • 今後のキャリアについて相談する

降格の条件を決める

ピーターの法則を回避するための企業の対策として、「降格の条件を決める」ことがあげられます。

ピーターの法則を防ぐために、降格のシステムを整えるようにしましょう。

外資系企業とは異なり、日本の企業では降格の条件が決まっていない場合が多いですが、実力の発揮できないポストに留まることは、周囲の従業員に悪影響を及ぼすだけでなく、本人にとっても苦痛です。

特に、年功序列の考え方が残っている日本の企業では、ピーターの法則が起こりやすい土壌が整っていると言えます。

不適切な昇進を防ぐためにも、役職に求める能力を明確にし、無能な人がポストに居座り続ける状況を変えることが重要です。

従業員の教育や育成の機会を作る

ピーターの法則を回避するための企業の対策として、「従業員の教育や育成の機会を作る」ことがあげられます。

昇進をする前に、ポストに相応しい能力を従業員が身に付けることができるよう、教育や育成をする機会を作るようにしましょう。

特に、これまでプレーヤーとして活躍して来た人が管理職へと昇進する場合、未経験の分野への挑戦となるため、マネジメントの手法などについて研修を受けさせるなど、学ぶ機会を与えることは重要です。

また、基準に達した従業員のみを昇進させることで、無能な人が昇進するリスクを減らすことができます。

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マネジメント以外の道を用意する

ピーターの法則を回避するための企業の対策として、「マネジメント以外の道を用意する」

ことがあげられます。

プレーヤーとして優秀だった人材を、マネジメントのポストへと抜擢することは一般的ですが、プレーヤーとして優秀な人材の全員が管理職に適性があるわけではありません。

プレーヤーとして活躍し続けるキャリアを用意することで、ピーターの法則を防ぐことができます。

また、プレーヤーとして活躍し続けるキャリアを用意しても、給与が上がらないのであれば、モチベーションを維持することはできないため、昇進ではなく昇給など、別の形で従業員の頑張りに報いる方法が必要となります。

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キャリアについて1on1などで話し合う

ピーターの法則を回避するための企業の対策として、「キャリアについて1on1などで話し合う」ことがあげられます。

「目指すキャリア」や「どのような状態を理想とするのか」などを話し合う「1on1ミーティング(面談)」を、上司と部下の間で定期的に行うことが、ピーターの法則の防止に役立ちます。

1on1ミーティングを行うにあたって、重要となるのが面談記録の管理です。

「何を話し合ったのか」「その結果、どのような改善行動を行うのか」などを記録し、保管しておくことで、適切な振り返りが可能になります。

面談で話した内容を忘れることを防ぐだけでなく、上司が変わった場合や、異動などの場合にも、シームレスに情報の確認ができるようになります。

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役職に求める能力を確認する

ピーターの法則を回避するための個人の対策として、「役職に求める能力を確認する」ことがあげられます。

昇進の前に、ポストで必要となる能力を確認し、自身がこれから習得すべきスキルを明確にしておきましょう。

また、「自分には知識が不足している」と言うように、具体的に今の自分に足りないものが分かっていることで、問題の解消について能動的に動くことができるようになります。

昇進先のポストで必要となるスキルを習得する

ピーターの法則を回避するための個人の対策として、「昇進先のポストで必要となるスキルを習得する」ことがあげられます。

企業が昇進先のポストで必要となる能力やスキルについて研修を実施することが無い場合は、自身で外部セミナーや研修に参加するようにしましょう。

企業によっては福利厚生で勉強代を一部負担してくれる場合もあります。

あらかじめ、必要になる能力を先回りして把握し、習得すると良いでしょう。

今後のキャリアについて相談する

ピーターの法則を回避するための個人の対策として、「今後のキャリアについて相談する」ことがあげられます。

今後のキャリアを相談する方法としては、上司に相談する、もしくは社外のキャリアコンサルタントなどに相談する方法があります。

例えば、「昇進先のポストに適性がない、向いていない」と思う場合でも、他者からの視点は異なる場合があります。

また、知人や友人が同様のポストに就いている場合は、「どのような働き方をしているのか」「最初に感じたギャップは何か」「課題解決のために役立った書籍や考え方」などについて、インタビューをすることで昇進後の仕事が具体的に想像しやすくなります。

ピーターの法則とディルバートの法則

ディルバートの法則とは、アメリカの漫画家であるスコット・アダムズ氏が描いたキャラクターにちなんで名づけられた法則で、ピーターの法則の変形と言われています。

ピーターの法則では「人は能力の限界まで出世することで無能のレベルに達する」とありますが、ディルバートの法則では「無能な人に意図的に地位を与えることで、被害を最小限にとどめる」という説を提唱しています。

ディルバートの法則では、地位が上の人は、組織の運営や生産性にほとんど関わっておらず、顧客の対応や製品の生産など大部分の仕事は、現場の人によって行われていると考え、無能な人は「現場の仕事の邪魔をしないように意図的に昇進させる」と説いています。

ピーターの法則とパーキンソンの法則

パーキンソンの法則とは、イギリスの歴史学者で政治学者のシリル・ノースコート・パーキンソン氏が提唱した法則で、1957年当時のイギリスの行政や組織の分析から生み出され、2つの法則から成り立っています。

  • 第一法則:仕事の量は完成のために与えられた時間をすべて満たすまで膨張する

  • 第二法則:支出の額は収入の額に達するまで膨張する

第一法則は、仕事の量と時間の関係について示しており、仕事の量や難易度にかかわらず、役人の数が一定の割合で増加し続けている現象から導き出されました。

具体的には、同じ仕事量に対して役人の人数が増え、1人に対しての仕事量が減少しても、労働時間の減少には繋がらないという例があげられます。

第二の法則は、支出と収入の関係を示しており、行政組織の予算が毎年全て使われ、結果として税金の負担が増えるという財政状況から導き出されました。

具体的には、収入を増やしたはずなのに、その分使ってしまってお金が貯まらないという例があげられます。

ピーターの法則とハロー効果

ハロー効果とは、認知のバイアスのひとつで、ある対象を評価する際に、一部の特徴的な印象に引きずられて、全体の評価をしてしまう効果のことです。

「halo」は、聖人の頭上などに描かれる後光を意味することから、「後光効果」とも言われ、「1つの特徴に影響を受けて、対象をゆがめて見てしまう」という人間の心理を指しています。

具体的には、「有名大学を卒業している」「身だしなみが整っている」など、本来のビジネススキルや能力とは別の要素に引きずられて評価をしてしまうことです。

昇進に繋がる人事評価も、人が人を評価するシステムである以上、ピーターの法則とハロー効果は無関係とは言えません。

ハロー効果を防止するためにも、評価や昇進の基準を明確にし、評価者の先入観や主観を抜きに、能力や成果に見合った評価を行う必要があります。

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理想的な評価制度を運用する方法

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納得度の高い評価を行う方法

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ピーターの法則を紹介した本

ピーターの法則について解説した本について確認してみましょう。

ピーターの法則「階層社会学」が暴く会社に無能があふれる理由

「ピーターの法則 『階層社会学』が暴く会社に無能があふれる理由」は、階層社会での組織体制や、無能化しないための方法や、組織で生き残るための知恵について、ピーターの法則の提唱者である、ローレンス・J・ピーター氏の鋭い観察眼と洞察で解説されています。

ピーターの法則をイチから学ぶにあたって参考になる本です。

(参考)「ピーターの法則 『階層社会学』が暴く会社に無能があふれる理由」(著:ローレンス・J・ピーター、レイモンド・ハル、訳:渡辺伸也、出版:ダイヤモンド社)

ピーターの法則 創造的無能のすすめ

「ピーターの法則 創造的無能のすすめ」は、階層社会において、人はなぜ無能化してしまうのか、有能であり続けるために積極的に無能を装う創造的無能について、ピーターの法則の提唱者である、ローレンス・J・ピーター氏によって解説されています。

(参考)「ピーターの法則 創造的無能のすすめ」(著:ローレンス・J・ピーター、レイモンド・ハル、訳:渡辺伸也、出版:ダイヤモンド社)

ピーターの法則をもとにより良い組織運営を目指す方法

ピーターの法則とは、能力主義の階層組織の中では、有能な人材でも、極限まで昇進を重ねていくと、いずれは能力の限界に達して「無能化」してしまうという法則です。

ピーターの法則は組織に、「生産性の低下」「優秀な人材の流出」「人事評価制度の無効化」などの影響を及ぼすと考えられています。

ピーターの法則を回避するためには、降格の条件を設定することや、研修などの教育制度を整える、有能なプレーヤーに対してマネジメントへの昇進以外のキャリアや昇給を設定する、昇進の条件や評価を明確にするなどの対策が必要になります。

ピーターの法則について理解を深め、組織の中の有能な人材の無能化を防ぐための対策を行い、より良い組織運営を目指すようにしましょう。

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HR大学編集部
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