#労務管理
2024/09/18

給与とは?所得や手取りとの違いと支給や勤怠や控除など給与明細の項目について簡単に解説

目次

給与は、従業員ひとりひとりが提供した労働の対価として支払われるもので、従業員の生活を支えるものです。

給与には、実働に応じた金額の他に手当なども含まれるため、従業員ひとりひとりで金額が異なります。

正確な金額で給与を受け取るためには、従業員ひとりひとりが自身の支給額や控除額を正しく把握することが大切です。

この記事では、給与について、給与に含まれるもの、給与と給料や賃金との違い、給与と所得や手取りとの違い、給与明細とは、給与明細の支給に含まれる項目、給与明細の勤怠に含まれる具体的な項目、給与明細の控除に含まれる具体的な項目、給与明細に関する注意点について簡単に解説します。

給与明細や勤怠記録のデジタル化

給与とは

給与とは、企業などの使用者から従業員が受け取る全ての収入を指し、基本給の他、賞与や各種手当なども含まれ、賃金だけでなく自社製品の支給などの現物支給も含まれます。

また、現物支給の場合でも税金の対象となり、当該物品を金銭に換算します。

給与について、所得税法では「給与所得とは、俸給、給料、賃金、歳費及び賞与並びにこれらの性質を有する給与に係る所得をいう。」と定義されています。

(出典)e-Gov 法令検索「所得税法(給与所得)第二十八条

給与に含まれるもの

給与に含まれるものには、大きく分けて「基本給」「各種手当」「その他の変動する給与」の3つがあげられます。

基本給

給与のベースになる金額で、昇進などがない限りは月によって変動することはありません。

各種手当

手当の種類には役職手当や通勤手当、住宅手当、資格手当などがあります。

住所や家族構成、所有する資格などによって、手当の有無や金額は従業員ひとりひとり異なります。

その他の変動する給与

変動給与には、残業代や割増賃金など、月によって金額が変動するものが含まれます。

割増賃金の例には、深夜割増賃金や休日割増賃金などがあります。

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給与と給料や賃金との違い

給料とは、給与から各種の手当や変動する金額を差し引いたもので、基本給とほぼ同義であると言えます。

給与が残業代などの金額によって変動するのに対し、給料は昇給や賃金のベースアップなどを除いて変動しないことが特徴です。

賃金とは、給与とほぼ同じ意味を持つ言葉で、労働基準法では「この法律で賃金とは、賃金、給料、手当、賞与その他名称の如何を問わず、労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのものをいう。」と定義されています。

(出典)e-Gov 法令検索「労働基準法(定義)第十一条

労働基準法で、賃金が「使用者が労働者に支払う」ものとされている通り、給与と賃金の大きな違いは「視点」にあります。

給与は、従業員などの労働者が「受け取るもの」という意味合いが大きいのに対して、賃金は、企業などの使用者が従業員に「支払うもの」という意味合いが大きく、支払う側の視点で定義されています。

また、給与は「所得税法」で定義されているのに対し、賃金は「労働基準法」で定義されていることも違いの1つです。

給与と所得や手取りとの違い

所得とは、給与の全支給額から所定の控除を差し引いたものを指します。

また、手取りも給与から必要な控除を差し引いたものを指し、ほぼ所得と同義の言葉です。

給与が総支給額であるのに対し、所得や手取りは従業員が実際に受け取る金額を指します。

給与明細とは

給与明細とは、給与が支払われる際に発行される、給与の金額の内訳を記載した書類を指します。

給与明細には、主に「差引支給額」「支給」「控除」「勤怠」の項目が記載されます。

差引支給額

差引支給額とは、各種手当なども含めた総支給額から控除額を差し引いた、実際に従業員が受け取る金額を指し、企業の規模や雇用形態などで異なりますが、一般的には総支給額の約8割が差引支給額になります。

支給

支給とは、企業から従業員ひとりひとりに支払われる全ての給与が、項目に分けて明記されている部分を指し、給与計算の土台である基本給、残業手当や通勤手当などの各種手当が支給に含まれます。

控除

控除とは、総支給額から差し引かれる金額が記載され、各種社会保険料や税金、財形貯蓄制度や従業員持株会などの企業ごとの控除が含まれます。

勤怠

勤怠とは、従業員の出勤日数や休日、実働時間、残業時間などが記載されている勤怠情報を基に計算されるため、勤怠欄が実際の勤務状況を正しく反映しているかを確認することが大切になります。

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給与明細の支給に含まれる具体的な項目

給与明細の支給の項目では、企業から従業員に支払われる金額が分けて記載されます。

支払われる金額には、主に「基本給」「残業手当」「休日手当」「通勤手当」「その他項目」があります。

基本給

基本給とは、給与の土台となるもので、役職、勤続年数、経験などによって決まり、毎月同じ額が支払われます。

また、基本給は「基本給〇ヶ月分」と表されるなど、賞与の根拠にもなります。

残業手当

残業手当とは、所定の労働時間を超えて働いた場合に支払われます。

労働基準法では、1日8時間、週40時間を超えて働いた場合、25%の割増賃金を支払うことが義務付けられています。

また、一定の残業が発生するとみなされる「みなし残業制度」が適用されている場合は、残業時間の長さに関係無く、固定の金額が支払われます。

(参考)e-Gov 法令検索「労働基準法(時間外、休日及び深夜の割増賃金)第三十七条

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休日手当

休日手当とは、法定休日に働いた場合に支払われます。

法定休日は、労働基準法によって定められた労働者に必要な最低限の休日を指し、1週間に1日もしくは4週間に4日と定められています。

また、労働基準法では、法定休日に働いた場合、35%の割増賃金を支払うことが義務付けられています。

(参考)e-Gov 法令検索「労働基準法(休日)第三十五条

通勤手当

通勤手当とは、毎日の通勤に交通費が掛かる場合に支払われます。

交通費の具体的な内容には、電車の定期代や自家用車のガソリン代などがあります。

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その他項目

その他項目とは、役職手当や資格手当、住宅手当などです。

その他項目の支給を受けられるかどうかは、従業員ひとりひとりの役職や資格の有無、家族構成などによって異なります。

支給要件や支給金額も企業によって異なるため、自分が支給を受けられるかどうか知りたい場合は、就業規則を確認したり人事部などに問い合わせたりすると良いでしょう。

給与明細の勤怠に含まれる具体的な項目

給与明細の勤怠の項目では、期間内の出勤や欠勤を始めとする勤務状況に関する情報が明示されています。

勤怠の具体的な項目には、「所定労働日数」「勤務日数」「深夜労働時間」「遅刻・早退時間」「特休日数」「有給休暇日数」があります。

所定労働日数

所定労働日数とは、給与計算期間の中で、従業員が出勤しなければならないとされる日数を指します。

正社員など同じ勤務形態で働いている場合、所定労働日数は基本的に全従業員で同じになります。

勤務日数

勤務日数とは、所定労働日数のうち、実際に出勤した日数を指します。

ただし、休日出勤の日数は勤務日数に含まれません。

深夜労働時間

深夜労働時間とは、22時〜翌5時に働いた時間の長さを指します。

労働基準法では、深夜労働時間に働いた場合、25%の割増賃金を支払うことが義務付けられています。

(参考)e-Gov 法令検索「労働基準法(時間外、休日及び深夜の割増賃金)第三十七条

遅刻・早退時間

遅刻・早退時間とは、期間中に遅刻や早退があった場合に、その時間の合計を算出します。

特休日数

特休日数とは、慶弔休暇やリフレッシュ休暇など、企業が定める休暇の取得日数を指します。

有給休暇日数

有給休暇日数とは、給料の支払い対象となる有給休暇の取得日数を指します。

給与明細の控除に含まれる具体的な項目

給与明細の控除の項目では、総支給額から差し引かれるものが記載されています。

控除の具体的な項目には、「所得税」「住民税」「健康保険料」「厚生年金保険料」「介護保険料」「雇用保険料」があります。

所得税

所得税とは、毎年1月1日から12月31日の1年間に得た所得に対して課せられ、給与から天引きすることが義務付けられている税金です。

課税されるのは、年間所得の全てではなく、対象となる特定の所得に対してのみです。

所得税の金額は、保険料などが控除された後の給与額や、扶養家族の人数などによって決定します。

所得税は、一般的に源泉徴収という形で給与から概算で徴収されます。

源泉徴収の際に所得税を払い過ぎていた場合は、年末調整の際に超過分が従業員に還付されるようになっています。

反対に、源泉徴収で所得税が不足していた場合は、追徴される場合もあります。

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住民税

住民税とは、住民票が登録されている都道府県や市町村に支払うもので、翌年の6月から1年かけて分割で徴収されます。

企業が従業員の住民税を天引きし、従業員に代わって納める方法を特別徴収と言います。

特別徴収に対し、個人が住民税を6月・8月・10月・翌年1月の4回分割もしくは一括で直接納付する方法を普通徴収と言います。

特別徴収は普通徴収と比較すると、一回あたりの納付額が少なく、納付漏れが無いことがメリットと言えます。

健康保険料

健康保険とは、業務外での病気やけがで病院を受診する際にかかる医療費が軽減される仕組みです。

給与から天引きされる健康保険料の金額は、従業員ひとりひとりの標準報酬月額の数%で、加入している健康保険によって異なります。

標準報酬月額とは、月の給与を1〜50の等級に区分したもので、基本給や各種手当を含めた4月〜6月の給与の平均額を基に、毎年7月1日に算出されます。

健康保険組合は、医療費の負担などの他にも、健康に関する情報や各種の健診の機会の提供などの保健事業も行っています。

厚生年金保険料

厚生年金制度とは、65歳以上になったり、障害の認定を受けたりした際に年金の給付を受けることができる仕組みです。

20歳から60歳までの人は国民年金に加入する義務がありますが、企業などに属して働いている場合は、国民年金に加えて厚生年金の保険料を納付する必要があります。

厚生年金に加入することによって、保険料の負担は大きくなりますが、受け取れる年金の支給額も多くなります。

給与から天引きされる厚生年金保険料には国民年金の保険料が含まれているため、国民年金と厚生年金の保険料を別々に納付する必要はありません。

介護保険料

介護保険制度とは、介護関連のサービスを受けた際に利用料を軽減してもらうことができる仕組みです。

40歳になると被保険者となり、保険料の納付が始まる点は、健康保険や厚生年金と介護保険とが異なる点です。

介護保険の被保険者になると、65歳以降に要介護認定によって介護が必要であると認定された場合に、年金を受けることができます。

また、40〜64歳の間は、介護保険の対象となる特定疾病によって介護が必要であると認定された場合に、年金を受け取ることが可能です。

雇用保険料

雇用保険とは、失業や育児などの理由によって休職し、収入が無くなった場合に、労働者の生活維持をサポートするための給付を受けることができる制度です。

また、雇用保険制度では、労働者だけではなく企業などの事業者に対しても給付が行われます。

事業者に対する給付の具体例には、高齢者や障害を持つ人をハローワークを介して雇用した際に給付される「特定求職者雇用開発助成金」や、非正規雇用の労働者に関する企業内でのキャリアアップ促進のために給付される「キャリアアップ助成金」などがあります。

給与から天引きされる雇用保険料の金額は、令和6年度の場合、従業員ひとりひとりの標準報酬月額の0.6〜0.7%です。

(参考)厚生労働省「令和6年度の雇用保険料率について

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給与明細に関する注意点

給与明細は、毎月給与が支払われる度に、企業から従業員ひとりひとりに発行されます。

給与明細を受け取った際に注意すると良い点について確認してみましょう。

支給額や控除額を確認する

給与明細に関する注意点として、「支給額や控除額を確認する」ことがあげられます。

給与明細には、基本給や各種手当などを含めた支給額と、住民税や社会保険料などの控除額が記載されています。

給与額は、経理部などで細部まで計算され、ダブルチェックやトリプルチェックを経て決定しているため、原則間違いがあるべきものではありません。

しかし、人が計算するものであるため、絶対に誤りがないとは言い切れません。

給与明細を受け取ったら、念のため、給与額に間違いがないかを確認するようにしましょう。

特に、通勤方法やルートが変わった、新しく給与天引きの財形貯蓄を始めたなど、給与額に影響するような変化があった際は、給与明細に変更が反映されているかを確認することが重要です。

万が一、給与額の計算に誤りがあることが分かった際は、速やかに上司や経理部に申し出ましょう。

勤怠が実際の勤務状況と違わないか確認する

給与明細に関する注意点として、「勤怠が実際の勤務状況と違わないか確認する」ことがあげられます。

給与明細を受け取った後は、勤怠欄を確認することが大切です。

勤怠欄には、労働日数や休暇取得日数の他、残業時間や休日出勤日数などの時間外労働に関する情報が記載されています。

勤怠の中でも特に、残業時間や休日出勤日数は給与額に大きく影響するため、計算に誤りがないかを確認することが重要です。

近年では、専用のシステムで勤怠のデータを取り込み、一括計算している企業が多くなっていますが、一方で紙の勤怠記録表を元に電卓で計算し、給与額を算出している企業もあります。

紙の勤怠記録表を基に計算をする場合は、記録表の読み間違えや電卓の操作ミスなどによって、計算を誤ってしまう可能性があります。

また、専用システムで勤怠データを取り込む場合でも、データが正しく取り込まれない場合もあるため、給与明細を見る際は、勤怠に関する計算に誤りがないかを確認することが特に重要です。

最低3年間は保管する

給与明細に関する注意点として、「最低3年間は保管する」ことがあげられます。

給与明細は、内容を確認した後も破棄せずに保管することが大切です。

万が一、給与の計算に誤りがあって差額を請求する場合、請求可能期間が旧法の2年から原則5年に延長されつつ、当分の間は3年とされているためです。

事後に請求が必要になった際にスムーズに手続きができるよう、給与明細は年月順にまとめて3年間は保管することが理想的です。

また万が一、企業から支払われていると思われていた各種の保険料や税が未納となっていたという状況も無いとは言い切れません。

保険料や税が未納状態になっていた場合に給与明細があれば、給与から天引きされていたことを示す証拠になります。

(参考)厚生労働省「労働者の皆さま 未払賃金が請求できる期間などが延長されます

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給与の内容について正しく知ることが大切

給与は、従業員ひとりひとりが提供した労働の対価として支払われるものです。

給与の内訳項目には、基本給や各種手当などの支給、各種保険料や税金などの控除、勤務日数や時間外労働などの勤怠があります。

特に、時間外労働の有無や時間は、毎月の給与額の変動に大きく影響します。

正確な金額で給与を受け取るためには、従業員ひとりひとりが自身の支給額や控除額を正しく把握することが大切です。

給与明細が発行された際は、時間外労働分を含めた支給額や、各種保険料などの控除額が正しく計算されているかどうかを確認するようにしましょう。

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