ナラティブとは? ストーリーとの違いやビジネスでの活用方法とナラティブアプローチについて解説
- ナラティブとは
- ナラティブとストーリーの違い
- ナラティブアプローチとは
- ナラティブアプローチのドミナントストーリーとは
- ナラティブアプローチでの支援方法
- ドミナントストーリーとオルタナティブストーリー
- ナラティブアプローチのビジネスでの活用
- ナラティブアプローチのポイント
- 傾聴する
- 問題を外在化させる
- 話し合う
- ナラティブマーケティングとは
- ナラティブマーケティングとストーリーテリング型マーケティングの違い
- ナラティブマーケティングのメリット
- ユーザーを主人公にしたアプローチ
- 物事をよりユーザー目線で捉える
- 商品の本質がユーザーに届きやすくなる
- ナラティブマーケティングの活用事例
- ナラティブマーケティングの活用事例:無印良品
- ナラティブマーケティングの活用事例:SUBARU
- ナラティブアプローチと1on1の導入で従業員の育成を促進
ナラティブ(narrative)とは「物語」「語り」「話術」という意味で、ビジネスシーンで使われる「ナラティブアプローチ」から「ナラティブマーケティング」だけでなく、医療や臨床心理、教育などの現場でも使われている言葉です。
この記事では、ナラティブとストーリーの違い、ナラティブアプローチの意味と方法、ナラティブアプローチのポイント、ナラティブマーケティングの意味とメリット、ナラティブマーケティングの企業の活用事例について解説します。
ナラティブアプローチを促進する「1on1」実施方法
ナラティブとは
ナラティブ(narrative)とは「物語」「語り」「話術」という意味で、ビジネスシーンだけでなく、医療や臨床心理、教育などの現場でも使われている言葉です。
日本語で映画やドラマの「筋の進行などの解説や語り」を意味する「ナレーション」という言葉がありますが、ナレーションはナラティブの「語り」から派生した言葉です。
ナラティブは1960年代、フランス構造主義によって物語の役割について関心が高まり、ストーリーとは別の文芸理論上の用語として出てきた言葉と言われています。
現在はもともとの文学や言語学の理論を超え、さまざまな場面で使われるようになりました。
ナラティブとストーリーの違い
ストーリーとは、物語の筋書きのことを指し、主人公やその他の登場人物をメインに、話が展開されていき、ほとんどの場合、起承転結で物語が完結するのが特徴で、語り手も聞き手も存在しません。
ナラティブの場合は、語り手が物語を展開していき、物語の主人公は語り手であり、物語は完結しません。
ナラティブアプローチとは
ナラティブアプローチとは、1990年代に臨床心理学の領域から生まれた支援療法で、カウンセリング時に、患者自身に自分の物語を語らせ、問題の原因となっている否定的な思い込みを発見し、肯定的な内容に書き換えることで、抱えている問題を解決しようとするアプローチのことです。
カウンセラーとの対話で、患者自身がネガティブに捉えていた過去の経験や、思い込みを肯定的な価値観に置き換える手法を使うことで、負の影響を軽減できると考えられています。
また、患者に「物語(ナラティブ)」にして話をさせることで、自分自身が忘れていたことや、気が付いていなかった問題点などを発見することもできます。
ナラティブアプローチのドミナントストーリーとは
心理療法士のエプストンとホワイトは患者を支配する思い込みの物語を「ドミナントストーリー」と名付けました。
ドミナントストーリーとは、患者が思い込んでしまっている、主にネガティブなストーリーです。
例えば、「自分は親に嫌われている」「男は弱音を吐いてはいけない」など、患者自身が感じている精神的な苦痛のベースになるものを指します。
ナラティブアプローチでは、患者が思い込んでしまっている、主にネガティブなストーリーである、ドミナントストーリーを聞き出し、ポジティブな価値観に書き換えていきます。
(参考)「物語としての家族」(著:M.ホワイト、D.エプストン、訳:小森康永、出版:金剛出版)
ナラティブアプローチでの支援方法
カウンセラーによるナラティブアプローチの過程では、ドミナントストーリーから患者の精神的問題点を可視化し、患者自身で問題点を客観視できるよう、「どうして苦痛を感じるのか」の問いかけを繰り返します。
例えば、「弱音を吐いてはいけない」と考えている人に対して、「どうして弱音を吐いてはいけないと思うのですか?」と聞くことで、どうしてそのようなストーリーを信じるようになったのかの原因を探って行きます。
問いかけを繰り返すことで、「弱さを見せるのはダメなことだと言うのは、周囲に思い込まされていただけ」で、実際「弱さを見せることは悪いことではない」と患者が分かれば、ポジティブなストーリーに置き換えて行けます。
ドミナントストーリーとオルタナティブストーリー
オルタナティブストーリーとは、苦痛の原因になっているドミナントストーリーを見直すための質問を繰り返し投げ掛けることで、別の角度から見たポジティブなストーリーが生まれ、置き換えられることを指します。
そして、カウンセラーとの対話で、患者の苦痛の素であるドミナントストーリーをオルタナティブストーリーに変換して行くことが、ナラティブアプローチの目的です。
ナラティブアプローチのビジネスでの活用
ナラティブアプローチは、ビジネスにおいて、上司と部下や、従業員と企業カウンセラーなどの関係で使用されます。
例えば、「上司に嫌われている」と部下が思っている場合、「どうしてそう思うのか?」を考えた際に、「仕事をたくさん押し付けてくるから」と、負のドミナントストーリーを語ったとします。
ですが、「嫌われているから、仕事をたくさん押し付けてくる」という考えを、「信用して期待されているから、仕事を任せてもらえている」と置き換えられれば、ナラティブアプローチは成功します。
また、キャリアコンサルティングの場面でもナラティブアプローチは有効です。
コンサルタントの一方的なアドバイスではなく、対象者のストーリーを深く聞くことで、本来やりたかった事や生きがいを感じるキャリアを一緒に探していくことが可能になります。
ナラティブアプローチのポイント
ナラティブアプローチを行う際のポイントについて確認してみましょう。
ナラティブアプローチのポイント
傾聴する
問題を外在化させる
話し合う
傾聴する
ナラティブアプローチのポイントとして、「傾聴する」ことがあげられます。
上司と部下の場合は、まずは上司として「傾聴」する事で、部下のドミナントストーリーをしっかりと聞き出すことが必要になります。
部下に相談された場合に、上司が話を最後まで聞かず、途中でアドバイスを始めてしまうのは正反対のアプローチです。
しっかりと上司は部下の話を傾聴して、部下の中で問題となっているドミナントストーリーを集めていく必要があります。
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問題を外在化させる
ナラティブアプローチのポイントとして、「問題を外在化させる」ことがあげられます。
上司が部下の話を傾聴して、部下の中で問題となっているドミナントストーリーを集めたら、次に上司は問題点を「外在化」させ、部下が問題と客観的に向き合えるように促します。
上司は部下にただアドバイスを与えるのではなく、質問をし部下が自分自身の中にある負のドミナントストーリーを、違った角度から考えられるように促し、オルタナティブストーリーに置き換える機会を作ります。
話し合う
ナラティブアプローチのポイントとして、「話し合う」ことがあげられます。
しっかりと上司と部下で「話し合う」ことが大切です。
上司は部下と対話することで、部下の中にあったドミナントストーリーが前向きなオルタナティブストーリーとして置き換えられていくのを助けます。ストーリーの置き換えが完了したことを確認できたら、ナラティブアプローチは完了になります。
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ナラティブマーケティングとは
ナラティブマーケティングとは、顧客自身の物語にアプローチしていくマーケティング戦略のことを指します。
従来は、「商品がどうやって作られたのか」「高品質の材料である」「開発に何年かかったか」など、作り手や売り手側のストーリーや情報を商品の販売に活用していました。
ナラティブマーケティングでは、ユーザーの物語を想像することで、ユーザーにどのような利益や恩恵である「ベネフィット」を付加できるのかということを訴えていきます。
例えば、英会話のスクールであれば、「格安」「TOEIC900越え講師のみ」「今なら700点保証」など英会話スクールの情報を謳うのではなく、「スクールに入ることで、主人公であるユーザーの未来の可能性がどのように広がるのか?」を物語として語ってアプローチするようにします。
ナラティブマーケティングとストーリーテリング型マーケティングの違い
これまでの販売方法では、「ストーリーテリングマーケティング」「ストーリー型」など、作り手の想いを伝えるコミュニケーションが主流で主役は売り手側でした。
ストーリーテリングマーケティングは、高度経済成長期の頃のように、ただ認知を上げれば売れた「連呼型」に比べれば、一歩踏み込んだ手法ですが、それでも「商品の本質がユーザーに分かりにくい」「ユーザーの好感を得にくい」などの問題点が残っていました。
主役が売り手側にあるストーリーテリングマーケティングの問題点を解決したのが、次世代のマーケティング手法で、主役が買い手側にあるナラティブマーケティングです。
ナラティブマーケティングのメリット
ナラティブマーケティングのメリットについて確認してみましょう。
ナラティブマーケティングのメリット
ユーザーを主人公にしたアプローチ
物事をよりユーザー目線で捉えること
商品の本質がユーザーに届きやすくなる
ユーザーを主人公にしたアプローチ
ナラティブマーケティングのメリットとして、「ユーザーを主人公にしたアプローチ」があげられます。
ナラティブマーケティングでは、ユーザー自身を主人公にしたアプローチをするため、ユーザーは商品やサービスにより親近感を覚え、商品に対しての好感度も上がりやすく、リピート率が高くなるというメリットがあります。
物事をよりユーザー目線で捉える
ナラティブマーケティングのメリットとして、「物事をよりユーザー目線で捉える」ことがあげられます。
ナラティブマーケティングでは、物事をユーザー目線で考えるため、よりユーザーに響く商品の開発ができます。
例えば、「この化粧品は高品質の材料を使っているにもかかわらず、バイヤーの努力でこんなにも低価格で発売を実現した」と表現するのがストーリーマーケティングだとすると、「あなたの肌に寄り添い、これから何十年もあなたの若さのパートナーになる」とユーザーが主役になった提案をするのが、ナラティブマーケティングです。
商品の本質がユーザーに届きやすくなる
ナラティブマーケティングのメリットとして、「商品の本質がユーザーに届きやすくなる」ことがあげられます。
例えば、「高品質材料」の原材料をいくら訴えても、ユーザーからすると「そうなんだ」で終わってしまう場合があります。
会社としては、「これだけ高品質なものを、これだけ安く売れるなんて凄い」と思っているかもしれませんが、その凄さは、ユーザーには届きづらいです。
「高品質材料」がもたらす、ユーザーが主役の未来を語る方が、商品の本質をよりユーザーに理解してもらいやすく、商品の本質が届きやすくなるでしょう。
ナラティブマーケティングの活用事例
ナラティブマーケティングの企業の事例について確認してみましょう。
ナラティブマーケティングの活用事例:無印良品
無印良品を展開する株式会社良品計画は、SNSを使ったナラティブマーケティングの国内での先駆者と言えます。
Instagramで商品紹介をする際に、従業員の声がどう反映されたのか紹介し、無印良品が掲げる理想やストーリーにユーザーが参加できる「巻き込み型」のナラティブマーケティングを展開しています。
例えば、新商品のサーキュレーターを紹介する際に、「前カバーが外せます」と紹介しても、「外せるから掃除がしやすい」ということはあえて言わないそうです。
商品を使用した際の発見はユーザーに任せ、ユーザー自らが物語を作る「余白」を残すようにしているそうです。
そうすることで、「外せるから掃除がしやすい」といった発見をしたユーザーは、自分の物語として勝手にその情報を「拡散」するようになり、ユーザーの拡散で店頭から商品が無くなる現象も起きています。
また、無印良品の商品を紹介すると、ファンの多さからフォロワーが獲得しやすいこともあり、「無印良品」の商品を専門で紹介するアカウントが数多くあります。
「消費者の共感」をマーケティングの軸にして、SNSでユーザーとwin-winの関係が築けている好例だと言えます。
(参考)ネットショップ担当者フォーラム「良品計画の川名部長が語る『消費者の共感』を生む無印良品のデジタルマーケティング」
ナラティブマーケティングの活用事例:SUBARU
国内の車メーカーである株式会社SUBARUは、ナラティブマーケティングをトータルで展開し、テレビCMだけでなく小説も公開しています。
テレビCMをドラマ仕立てにした「あなたとクルマの物語」は、ユーザーを主体にした内容になっています。
主人公はユーザーで、車に関わった思い出を振り返って行くような物語が展開され、SUBARUの企業理念などの物語は入っておらず、あくまで脇役に徹している印象です。
設定の主人公がユーザーと近ければ近いほど、ユーザーは自分の物語として引き込まれやすくなります。
ナラティブアプローチと1on1の導入で従業員の育成を促進
ナラティブ(narrative)とは「物語」「語り」「話術」という意味で、ビジネスシーンで使われる「ナラティブアプローチ」から「ナラティブマーケティング」だけでなく、医療や臨床心理、教育などの現場でも使われている言葉です。
特に、ナラティブアプローチは人材育成の場面でも役に立つアプローチ方法です。
ナラティブアプローチの際に、合わせて取り入れたいのが、上司と部下が1対1で行う面談を、よりシステマチックに効果的に行う「1on1」のアプローチです。
「HRBrain タレントマネジメント」は、ナラティブアプローチに必要な、1on1での面談記録や、従業員ひとりひとりのスキルや業務内容のデータを、シンプルで使いやすく見える化します。
さらに、従業員のスキルマップや、これまでの実務経験、育成履歴、異動経験、人事評価などの従業員データの管理と合わせて、OKRなどの目標管理、1on1やフィードバックなどの面談履歴などの一元管理も可能です。
HRBrain タレントマネジメントの特徴
検索性と実用性の高い「データベース構築」を実現
運用途中で項目の見直しが発生しても柔軟に対応できるので安心です。
柔軟な権限設定で最適な人材情報管理を
従業員、上司、管理者それぞれで項目単位の権限設定が可能なので、大切な情報を、最適な状態で管理できます。
人材データの見える化も柔軟で簡単に
データベースの自由度の高さや、データの見える化をより簡単に、ダッシュボードの作成も実務運用を想定しています。
▼「タレントマネジメントシステム」についてさらに詳しく
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