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2024/08/14

組織風土と組織文化の違いとは?良い組織にするためのポイントを解説

目次

ビジネスシーンあるいは就活や転職の場面で「弊社はこういう文化があります」や「あそこの会社は社風がいい」といった言葉を聞くことはないでしょうか?そのような企業の雰囲気や特徴をひも解いていく際に「組織風土」や「組織文化」という概念で考えると、その企業を構成している要素をより良く理解することが可能になります。

「組織風土」や「組織文化」は、似通っている意味を持っており、さらに類似する言葉として「社風」や「カルチャー」が用いられることもあり混同しやすい言葉ですので、本記事ではそれら「組織風土」や「組織文化」の意味と定義を整理します。

また、「組織風土」や「組織文化」は、従業員のエンゲージメントなどにも関わるため、より良い経営戦略や人事面における採用や育成においても重要な概念となります。それらを踏まえて、組織風土や組織文化を形づくる要素、よい良い組織文化の醸成と改革についてご紹介します。

組織風土と組織文化とは?

組織風土の意味について解説!定義と要因

組織風土とは「従業員のパフォーマンスや行動に影響する職場環境の特性」です。言い換えるならば「職場を構成する前提条件」とも言えると思います。そして、組織風土に影響されながら組織文化も形成されていきます。

具体的には組織風土に影響を与える要因は、以下のようなものがあります。

  • 規則、ルール、福利厚生

  • 職場環境での相互協力の度合い

  • 上司や部下との関係性

  • 職場(オフィス)の特性と安全性

  • リーダーシップのスタイルと意思決定プロセス

  • 組織のミッションやビジョン

  • 組織の運営手法

  • 自発性に影響を与える機会

  • 組織が許容できるリスクや耐性のレベル

  • ノウハウの蓄積や情報共有の仕方

  • 組織文化

例えば、従業員のミスや事業の失敗に対して罰則が強いという職場環境があったとします。そのような規則やルールが存在する職場では、ミスや失敗を恐れて新しいチャレンジをせず慣例に従うような保守的な組織になりやすいと思います。

一方で、従業員がミスしたり事業に失敗したとしても、ある程度は許容しチャレンジを促すような職場であるならば、積極的なイノベーションを目指す改革的な組織になりやすいと思います。

このように組織風土とは、「従業員のパフォーマンスや行動に影響する職場環境の特性」であり、組織文化や社風にも影響を与えるものです。

「組織文化」の意味とは

組織文化とは、「組織内で共有されている価値観や行動理念」です。事業を進める際に大小様々な決断をせねばなりません。その決断を下すときに、その組織の文化、すなわち価値観や行動理念が反映されます。

例えば、新しいサービスを始める時に、完成度はそこそこにしておきスピード感優先でリリースするような組織もあれば、時間はかかっても完成度を高めてリリースすることを選択する企業もあるでしょう。どちらが良い悪いではなく、その企業が掲げる行動理念や価値観に基づいて判断されています。

また、組織文化は組織風土(事業の分野など)によっても左右されます。例えば、自動車業界であれば、自動運転のような新しいコンセプトの車は、人命にも関わるため半端な完成度で販売する訳にはいけません。反対に、町のケーキ屋さんが斬新なケーキを試しに販売する分にはその完成度に誰も文句は言わないでしょう。

組織文化は「ミッション」、「ビジョン」、「バリュー」といった名目で、組織共通の価値観や指針として明文化して定義している企業もあります。一方で明文化されていなくても、組織の経験の積み重ねなどにより暗黙の了解として定着している価値観や行動パターンも含まれます。このように組織に属する人が共通してもっている価値観(判断軸)や行動理念が組織文化です。

「社風」の意味を解説

社風とは「企業に属する従業員に共有されている価値観や行動様式」です。組織風土と組織文化が合わさって作られ、社内外の人から見たときに、その会社ならではの雰囲気や特徴として見いだすことができます。

企業風土や企業文化、カルチャーとの違い

「組織風土」と「企業風土」、「組織文化」と「企業文化」との違いは何でしょうか。

基本的にそれぞれの言葉が意味する内容は先述のとおりで、違いとしては、「企業風土」と「企業文化」は企業に限定した「組織風土」と「組織文化」と見なすことができます。

「組織風土」と「組織文化」は、個人やグループで構成される集団を組織ととらえており、それら組織の風土や文化に関する言葉です。もちろんその中には企業も含まれており、より広範に使える言葉です。

スタートアップやベンチャー企業では、組織風土や組織文化を総じて「カルチャー」と呼ぶことがあります。(注:企業によってはカルチャーの定義範囲が異なる可能性があります)

組織を形作る7つの要素「7Sモデル」

組織をより良くするためには、組織を構成する要素を整理し、バランスよく改善していくことが大切です。組織を構成する要素を説明する際に、代表的なフレームワークがあります。それが、マッキンゼー・アンド・カンパニー社が提唱した、組織変革のためのフレームワーク「7S(Seven S Model)」です。7つの要素の頭文字をとった名前になっています。

  • 戦略(Strategy)

  • 組織(Structure)

  • システム(System)

  • 価値観(Shared Value)

  • スキル(Skill)

  • 人材(Staff)

  • スタイル(Style)

これらはハードとソフトに大きく二分することができます。

ハード面のSである「戦略(Strategy)」「組織(Structure)」「システム(System)」は、責任者の決断さえあればすぐにでも変更ができる要素です。事業戦略を変えたり、部署の統廃合を行ったり、社内の制度を変えたりなどです。

ソフト面のSである「価値観(Shared Value)」「スキル(Skill)」「人材(Staff)」「スタイル(Style)」は、すぐには変えていくことが難しい要素です。人材の採用や育成、スキル習得などは時間がかかりますし、価値観は長い期間を経て蓄積されたものですので、すぐに変えることは基本的に困難です。

改革にあたり短期間で変更可能なハード面だけを変えても、うまく改革はできません。なぜなら、例えば高度な戦略をつくったとしても、それを実行する人の知識や経験値といったスキルが不足していると結果的に戦略が達成できないからです。ソフト面のSも時間をかけて変えていかなければなりません。

7つのSをバランス良く実施することで、相互に補完しあって、より高度な組織へと変容していくことができます。そうなれば従業員のモチベーションやパフォーマンスが高い状態になり、事業も成長しやすくなるといったことが期待できます。

組織風土と組織文化の重要性と企業に及ぼす影響

組織風土および組織文化がなぜ重要なのか?

例えば、企業において、組織のビジョンや目的が従業員に浸透していなければ、間違った判断をしてしまったり意見の対立が起こりやすくなったりすることが考えられます。

また、組織内の人間関係が悪い状況や働きにくい職場環境であれば、従業員のモチベーションは上がらずパフォーマンスも上がらない状況になるでしょう。そのような状態では、エンゲージメントも上がらず従業員の離職率が高くなり、事業は上手くいかないといった悪循環になりえます。

逆に、組織風土と組織文化が良い状態であれば、従業員は高いモチベーションと高い生産性を維持でき、優秀な人材が集まりやすく事業もうまくいきやすくなります。

組織文化の基盤となる企業理念

ミッション/パーパス

パーパスとは、ビジネスの場において「組織や企業の存在意義」の意味を持ちます。近年注目されるようになった言葉パーパスですが、なぜその企業があるのか、企業がなぜその事業を行うのかといった、より根源的な問いを企業自身が答えたものになります。

パーパスは人の心に訴えかける概念のため、共感をもった人達が応援してくれたり、同じような価値観を持った人材が来てくれたりします。また、パーパスは従業員が働く意味を明確にすることもできるため、パフォーマンスの向上も図れます。

ミッションとは、果たすべき使命や目的を示すものです。企業の基本的な方針と言え、企業がどのように社会に貢献していくのか、それを簡潔に言語化したものになります。

ビジョン

ビジョンとは「組織の将来像」を指します。ミッションを達成するための中長期的な目標を言語化したものとも言え、組織全体が目指す未来のイメージを共有することで、コミットメントが促されます。

バリュー

バリューとは「自社の価値基準」を指します。社員の行動基準や価値観を定める企業もあれば、クライアントなど外部に対しての行動基準を定めている企業もあります。ステークホルダーで切り分けて制定すると、うまく整理することができます。

組織文化の醸成のポイント(ベンチャー企業向け)

企業カルチャーが事業成長に欠かせない理由

ベンチャー企業やスタートアップでは、成長企業や大企業と違って、資金や人的リソースに限りがあることが多いです。また、規則やルールなどが決まっていなかったり、組織風土や文化が定まっていない状況です。

そのため、会社の資金が尽きる前に早急に組織基盤を整えないと、事業が立ち行かなくなってしまいます。限られたリソースを有効に使うためにも、ビジョンやミッションを設定して従業員が目指す方向を一致させ、行動基準や価値基準などを浸透させて効率よく運営していく必要があります。

事業が軌道に乗り始めたら採用を強化していくことになると思いますが、それまでにある程度の組織風土や組織文化ができていれば、採用のミスマッチを減らせることにもなります。また、組織文化を社内外に発信することで、カルチャーフィットした人材へPRすることも可能になります。

組織が崩壊する30人、50人、100人の壁に注意

スタートアップなどの新しい企業が成長して組織の規模が拡大する過程で、組織が崩壊しやすいタイミングがいくつかあると言われています。それが「30人、50人、100人の壁」です。

30人の壁は、社長個人がマネジメントできるギリギリの人数であり、属人的な運営方法の限界値となります。

人数が増えていく毎に経営陣がひとりひとりの従業員とのコミュニケーションに割ける時間も減りますので、経営方針の共有なども希薄化していきます。そのため、役割分担や仕組化を行っていないと、従業員の不満などにより退職が相次いで、組織が30人前後から成長しない壁となります。

50人の壁は、社長がみることができない規模になるため、マネージャーなどのリーダー的な立場の人がでてくる事による組織としてのマネジメントが問われる壁です。

予算や採用などの意思決定を社長が行うのか又はマネージャーが行うのかといった権限の範囲を明確にしたり、行動基準や採用基準を定めておいたりしないと、自律的でスピーディーな事業推進ができません。

100人の壁は、経営陣と現場との距離が離れてしまうことと制度の整備不足による壁があります。100人もいると、さすがに全員とのコミュニケーションは困難ですので、従業員から見ると会社が何を考えているか分からない状況にもなります、そこで理念やルールを制定して浸透させることで組織を安定させていきます。

また、それらを現場に伝えたり部下を育成する中間管理職のマネジメント力が重要になってきます。しかし、中間管理職は業務目標のプレッシャーや部下の育成、経営層と現場の板挟みなど様々な負担がのしかかってくるため、フォローアップも大切です。

組織文化の改革のポイント

1.現状把握と整理

まず、現在の組織風土や組織文化の実態を把握しましょう。

どのような価値観や判断基準で業務がなされているか、従業員の行動や日々のコミュニケーションから傾向が見えてくるはずです。整理する際には、7Sモデルなどのフレームワークを活用することで総合的な状況を把握しやすくなります。

整理ができたら、どのような組織でありたいのか理想像を描きましょう。

現状を知り理想とのギャップを明らかにすることが肝心です。中途半端にやってしまうと、少しは良くなるかもしれませんが、大きくは変えられないままになる可能性があります。

大きな企業であればあるほど、社内全体を変えることは難しくなります。

権限のある人や影響力のある人を巻き込みながら進めましょう。経営層やリーダー層を巻き込むことで、経営方針とのブレがなく実行もスピーディーにできるようになります。また、広い視野や高い視座からの観点でも現状や理想を整理することができます。

2.変化

人には現状維持バイアスがありますので、改革にあたり急激な変化をしてしまうと現場の反発を生んでしまいます。知らないものやよく分からない物事をいきなり受け入れろと言われても難しいですよね。

そのため、目指す方向性を示すだけでなく疑問点や不安点などを払拭しながら、少しずつ変化を受け入れやすい環境を整える必要があります。目指す方向性を伝える際もポジティブで魅力的に発信するようにしましょう。

3.習慣化

新しい規則やルール、価値観などは根気強く取り組むことで、少しずつ浸透していきます。新しい価値観に基づく行動様式が習慣化することでそれが当たり前となり、一定の割合の人に受け入れられ臨界点を突破すれば、やがて文化として定着していくことになります。

組織文化の改革の事例

組織が拡大や年月の経過により組織文化に綻びが生じることがあります。

そのような状態から改革を実施したことで、社内風土の改善や業績の向上につながった事例がありますので、一例として以下にご紹介します。

トヨタ自動車の改革事例(参照元:PRESIDENT Online)

キリンビールの改革事例(参照元:キリンホールディングス株式会社)https://pdf.irpocket.com/C2503/pJa6/Fvsl/cI5p.pdf

組織文化の可視化

組織風土や組織文化は、従業員体験に影響していることは先述の通りですが、従業員体験は、モチベーションやパフォーマンスにつながっており、それらは顧客へ提供しているサービスの価値ひいては顧客体験にもつながっています。

つまり、従業員体験は巡り巡って、顧客体験をはじめ売上や利益にも影響している重要な要素です。従業員体験を把握することで、組織風土や組織文化がどのような影響を与えているのか、改革のポイントを知るためのヒントになります。

HRBrainが提供しているEX Intelligenceでは、従業員エクスペリエンスのデータを収集して分析することが可能です。従業員体験の期待値と実感値のギャップを可視化したり、評価データを活用したりすることで、具体性の高い課題を発見することができます。

そのため、発見した課題を優先順位づけして、面談の実施などの施策を考えやすくなります。さらに、タレントマネジメント機能も実装されていますので、課題の発見だけでなく改革施策の実行にもつかえるツールになっています。

▽「EX Intelligence」の詳細はこちら▽
https://www.hrbrain.jp/employee-experience

株式会社HRBrain 宮本幸輝
宮本 幸輝
  • 株式会社HRBrain コンサルティング事業部 組織・⼈事コンサルタント

大学卒業後、コンサルタント企業に入社し、大手家電メーカーや製薬企業に人材マネジメントや研修を提供。また50名〜500名規模企業への⼈事評価制度構築⽀援など組織開発領域を幅広く携わる。

その後、医療業界のネットベンチャー2社のジョイントベンチャーの立ち上げに携わり、自社組織の開発にも貢献。

総合経営コンサルティング会社に移り、50名の⽼舗企業からベンチャー企業、IT(2000名)規模の⼈事制度構築⽀援を複数経験。その他にも経営戦略コンサルや⼤⼿⽯油卸企業の店舗組織変⾰プロジェクトにも参画。

現在は、HRBrain コンサルティング事業部で組織人事コンサルタントとして活躍中。
人事戦略策定から人事評価制度コンサルティング領域まで年間約20社以上を支援する。

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