#人材採用
2024/08/23

タレントプールとは?人材採用に必須のデータベース構築方法から運用までを解説

目次

タレントプールは、人材獲得競争の激化が進むなか、企業が求める優秀な人材を獲得する採用手法として注目されています。

また、さまざまな変化に対応できる人材確保ができることから、経営戦略にとっても重要な施策となっています。

この記事では、タレントプールに必要な人材データベースをどう構築し、どう活用すれば良いのか、タレントプール導入の手順から運用方法までを解説します。

人材データベースの管理方法

タレントプール(人材プール)とは?

タレントプールとは、将来採用の可能性のある優秀な人材を中長期的に確保することや、その人材のデータを保持する仕組みを意味します。

タレントプールは、英語で「優秀な人材」を意味する「Talent」と、「蓄積すること」を意味する「Pool」を組み合わせた造語で、「優秀な人材の蓄積」を意味します。

タレントプールの目的

タレントプールは、自社に必要な優秀な人材を中長期的に管理し、関係性を構築し、維持していくことを目的としています。

「人材データベース」を構築し、優秀な人材のデータを登録して蓄積し、継続的にコンタクトを取っておくことで、適切なタイミングに優秀な人材の採用を行うことができるため、「優秀人材の確保方法」として使われます。

タレントプールの仕組み

タレントプールは、「優秀人材をリストアップしたデータベース」のことです。

リストアップは、単に紙やExcelなどに記録したものもあれば、管理システムを活用したものもあります。

いずれにしても何らかの方法で、優秀な人材をリストアップし、いつでも見られる状態にすることがタレントプールの一般的な仕組みです。

タレントプールの由来

タレントプールは、大手コンサルティング会社である、マッキンゼー・アンド・カンパニーが、1997年から2000年にかけて行った「人材の獲得・育成競争」に関する調査結果をまとめた調査報告書「The War for Talent(ウォー・フォー・タレント)」で提唱された概念です。

調査報告書が刊行された80年代は、パーソナルコンピューターの誕生から、本格的な情報化時代に入ったことで、企業では優秀な知識労働者が必要になっていました。

このような環境変化と人材獲得競争の激化から、マッキンゼー社はタレントプールを構築する重要性を提唱しました。

「The War for Talent(ウォー・フォー・タレント)」では、「やがて人材獲得や人材育成を企業が争って行う時代がやって来る」と言及されていました。

ウォー・フォー・タレント
McKinsey & Company

タレントプールと「データベース・リクルーティング」

「The War for Talent(ウォー・フォー・タレント)」では、「タレントプール」と合わせて、「データベース・リクルーティング」という概念が提唱されています。

データベース・リクルーティングは、タレントプールで構築した、優秀人材のデータベースを活用して、継続的に優秀人材とコンタクトを取り、企業側から採用候補者にアプローチをする採用手法です。

また、採用企業から求職者に直接アプローチする「攻め」の採用手法には「ダイレクトリクルーティング」という採用手法もあります。

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タレントプールはなぜ必要なのか?

タレントプールがなぜ必要なのかについて確認してみましょう。

タレントプールが必要な理由

  • 労働人口の減少と雇用形態の多様化

  • 優秀人材の確保が困難

  • スペシャリスト人材の不足

  • 人的資本の浸透

労働人口の減少と雇用形態の多様化

タレントプールが必要とされている理由には「労働人口の減少と雇用形態の多様化」があげられます。

内閣府の「人口減少と少子高齢化」によれば、日本の総人口は、今後急激に減少するとされています。

労働人口である、15歳〜64歳の生産年齢人口の数は、2020年の7,406万人から、2065年には4,529万人となり2,453万人減少すると予測されています。

(参考)人口減少と少子高齢化(内閣府)

パーソル総合研究所と中央大学の共同研究による「労働市場の未来推計2030」によると、2030年には労働需要7,073万人に対して、労働供給が6,429万人と、約644万人の人で不足になると予測されています。

2030年にどのくらいの人手不足となるか-労働市場の未来推計2030

(引用)パーソル総合研究所、中央大学:「労働市場の未来推計2030

このように、今後深刻な人手不足が予想されているため、人材の確保は各企業の課題となっています。

また、これまで日本に多くあった「年功序列」や「終身雇用」の考え方から変わり、働き方改革の推進などにより、雇用形態の多様化が進んできています。そのため、人材の確保が困難になってきています。

タレントプールを構築することは、将来採用の可能性のある優秀な人材をプールするとともに、社内の限られた人材を有効活用するために不可欠な取り組みです。

▼「2030年問題」についてさらに詳しく
2030年問題とは?企業への影響と具体例、取るべき対策を分かりやすく解説

優秀人材の確保が困難

タレントプールが必要とされている理由には「優秀人材の確保が困難」ということがあげられます。

特に、多くの大企業では「優秀な中間層」が不足しています。

これは、2008年に起こったリーマンショックの際に、企業が採用を凍結したことが影響しています。

企業の中間層は、事業の中核となる層で、中間層の不足は事業に大きな影響を与えます。

そのため、日本企業では、中間層を補充するために積極的な中途採用を行ってきました。

タレントプールを構築することは、社外の優秀な人材をプールするとともに、社内の限られた人材を有効活用するために不可欠な取り組みです。

スペシャリスト人材の不足

タレントプールが必要とされている理由には「スペシャリスト人材の不足」があげられます。

近年の環境変化によって、人材要件が変化したことも、人材獲得の難易度を高めている要因となっています。

これからの時代では、AI、IoT、ロボティクスなど最新のテクノロジーに精通する、スペシャリスト人材が不可欠です。

しかし、日本では特定のテクノロジーに関する優秀な人材は、一握りしかいません。

また、IT業界や自動車産業などの多くの企業が、テクノロジーに精通した優秀な人材を求めているため、人材獲得競争がより一層激化していくでしょう。

職業別に見た人手不足-労働市場の未来推計2030

(引用)パーソル総合研究所、中央大学:「労働市場の未来推計2030

また、パーソル総合研究所と中央大学の共同研究による「労働市場の未来推計2030」によると、2030年には「専門的・技術的職業従事者」が212万人不足すると予測されています。

そのため、タレントプールを構築して、スペシャリスト人材を確保するだけでなく、素養のある人材に対して最新テクノロジーに関する教育を行うことで、必要な人材を社内に確保しておくことも重要になってくるでしょう。

人的資本の浸透

タレントプールが必要とされている理由には「人的資本の浸透」があげられます。

2020年8月にアメリカで上場企業に対して「人的資本の情報開示」が義務づけられ、日本でも、2023年3月期決算から、上場企業などを対象に情報開示が義務づけられました。

そのことによって、「スキル」「知識」「ノウハウ」などの、従業員が持つ能力を会社の資本として考えるという「人的資本」の概念が浸透するようになりました。

そのため、タレントプールを構築して、資本となる優秀人材を獲得することや、優秀人材を確保することは、企業成長に不可欠な取り組みとなりました。

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タレントプールを構築するメリット

タレントプールを構築することで企業が得られるメリットについて、「採用」「人材育成」「シニア活用」の3つのポイントに焦点をあてて確認してみましょう。

採用におけるタレントプールのメリット

タレントプールは、社外の優秀人材を確保することに役立ちます。

実際に多くの大企業では、採用方法として「登録制」を導入しています。

「登録制」とは、自社に興味のある人材に登録をしてもらい、すぐに求人がなくても、自社が求める優秀な人材であれば、連絡をとれるようにしておく採用手法です。

こうすることで、従業員候補の人材の情報を常に蓄えることが可能になり、本当に必要な機会に必要な人材を採用することができます。

また、タレントプールの導入は、採用コストの削減や、何等かの理由で一度採用を見送った人材へ再アプローチができることや、採用後のミスマッチを防ぐことができるというメリットもあります。

人材育成におけるタレントプールのメリット

もともとタレントプールは人材育成の考え方として提唱されたものでした。

どんなに才能のある人材でも、最初はビジネススキルが足りないものです。

これまでの人材マネジメントでは、潜在的能力よりも顕在的能力が重視されてきたため、潜在的能力が高い優秀な人材を見抜くことができませんでした。

しかし、評価ツールなどのアセスメントによって、潜在的能力が高い人材をある程度見極めることができるようになった現代では、優秀な人材を早期に見極めてプールすることが可能になりました。

潜在的能力が高い人材を集めたタレントプールをつくり、人材育成を行うことで企業は優秀な人材をつくりだすことができます。

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シニア活用におけるタレントプールのメリット

シニア活用にもタレントプールが重視されています。

人材不足が続く日本企業では、経験豊富なシニア人材を再雇用するニーズが高まっています。

そこで、定年退職を迎える人材のスキルや経験を整理して、予めデータベースに登録しておくことで、必要な時に再雇用を行い、人材不足を補うことができます。

タレントプールは、単に優秀な人材を蓄えておくだけではなく、従業員それぞれの経験や知識などのスキルをデータベース化して「スキル管理」することで、必要な時に必要な人材を供給できるようになるのです。従業員データの構築には、人事評価でのデータが重要になります。

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タレントプールの構築方法

タレントプールの構築に必要な3つのステップについて確認してみましょう。

タレントプールの構築ステップ

  • 人材要件を定義する

  • 人材の獲得計画を立案する

  • 候補人材をプールする

人材要件を定義する

どのような人材が必要なのかの「人材要件を定義」します。

人材要件を定義する際には、2つの方法があります。

  • ポジションに人をあてはめる

  • 人をポジションにあてはめる

1つ目は、「ポジションに人を当てはめる」方法です。

役職などのポジションに求められる能力や資質を定義し、そこに当てはまるように人を育成していく方法です。

2つ目は、「人をポジションに当てはめる」方法です。

会社としてどのような人材が必要なのかを定義し、最終的に適性を見ながら、人をポジションに配置していく方法です。

「ポジションに人を当てはめる」方法の場合は、「能力や資質」が重視されます。

「人をポジションに当てはめる」方法の場合は、「潜在的能力が高いこと」が重視されます。

このように、自社の人材マネジメントの考え方によって人材要件を検討しましょう。

人材の獲得計画を立案する

「人材の獲得計画」を立案します。

ポジション基準のタレントプールであれば、ポジションに当てはまる人材を、採用または育成する方法を考えます。

人材基準のタレントプールであれば、自社に求められる資質を持った人材を、どのように選定、採用、育成するかを考えましょう。

候補人材をプールする

人材要件と人材獲得の方法が決まったら、「候補人材をプール」していきます。

プールする際には、個々の人材に関する具体的なデータを記録していくことがポイントです。

その人物がどのようなスキル、経験、能力を持っているかをデータベース化します。

もし、必要な能力が足りなければ、育成を通じてスキルを補強するようにしましょう。

▼「人材データベース」についてさらに詳しく
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タレントプールの活用方法

タレントプールの活用方法について確認してみましょう。

タレントプールの活用方法

  • 急な人員追加や欠員補充の場合 

  • 組織の変革が求められた場合

  • 特定の専門知識が必要になった場合

タレントプールを構築できれば、急な人員補充や組織変革の必要性に迫られた際にすぐに、人材補充や確保が可能です。

また、特定の専門知識が必要になった際も、専門家にすぐアプローチできるようになるため、事業成長における機会損失を防ぐことができるでしょう。

急な人員追加や欠員補充の場合 

転職による急な欠員が出た際、欠員を埋めるために採用を行う場合もあるでしょう。

その際に、タレントプールを構築できていれば、すぐに欠員を補充することができます。

また、事業拡大によって、急な増員が必要になった際も、タレントプールがあればすぐに増員ができる確率が高まります。

タレントプールを構築するために、まずは、人材要件に合致する人材をサーチファームやSNSを活用してリサーチします。

そのうえで、求人案内を送り、対象の人材にタレントプールに登録してもらいます。

必要であれば、会社説明会を行ってもよいでしょう。

組織の変革が求められた場合

企業は、事業成長のために組織変革が求められる場合があります。

変革を成功させるためには、強いリーダーや、才能を持った優秀人材が必要です。

多くの場合、組織変革は待ったなしの状況ですぐに取り組まれることが多いでしょう。

組織を変革したい時に、変革を実現する人材をすぐに採用できれば、変革は早く実現できます。

例えば、他社で組織変革に成功した人事のリーダーを採用することや、事業再生を成功に導いた優秀人材を採用することが方法として考えられます。

タレントプールを構築して才能ある人材を常に採用できる状態にしておきましょう。

特定の専門知識が必要になった場合

企業活動の中では、特定の専門知識を持った、専門家が必要になることもあります。

例えば、法務の専門家として弁護士を採用する場合や、労務の専門家として社労士を採用する場合があります。

このように専門知識が必要な際に、タレントプールが構築できていれば、採用が難しい専門家でも採用することができるでしょう。

タレントプールの構築は人材確保の最適化に有効

タレントプールは、人材獲得競争が激しい現代において、とても重要な人材獲得方法です。

タレントプールとして、社内外の優秀人材の人材データベースを構築しておけば、組織変革やサービス変更、急な欠員やプロジェクトの立ち上げなどの際に、自社に適切な優秀人材を獲得することができ、どんな状況でも対応できる企業になるでしょう。

タレントプールの構築には「タレントマネジメントシステム」を使用することがおすすめです。

「HRBrain タレントマネジメント」では、ひとりひとりの、スキルや資格などのデータを可視化することが可能です。

HRBrainタレントマネジメントの特徴

  • 検索性と実用性の高い「データベース構築」を実現

運用途中で項目の見直しが発生しても柔軟に対応できるので安心です。

  • 柔軟な権限設定で最適な人材情報管理を

従業員、上司、管理者それぞれで項目単位の権限設定が可能なので、大切な情報を、最適な状態で管理できます。

  • 人材データの見える化も柔軟で簡単に

データベースの自由度の高さや、データの見える化をより簡単に、ダッシュボードの作成も実務運用を想定しています。

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タレントプールを構築するための「人材データベースの構築」方法

5分でわかる これからはじめる 人材データベース管理入門

5分でわかる これからはじめる 人材データベース管理入門

タレントプールに必要な人材データベースの構築方法について確認してみましょう。

人材データベースを構築することで、点在している人材情報を一元的に管理できるようになります。

この資料で分かること

  • 人材データベースとは

  • なぜ人材データベースが必要なのか

  • 人材データベース構築に必要な項目とは

  • 人材データベースの活用方法

  • 人材データベースを活用してデータドリブン人事へ

HR大学編集部
HR大学 編集部

HR大学は、タレントマネジメントシステム・組織診断サーベイを提供するHRBrainが運営する、人事評価や目標管理などの情報をお伝えするメディアです。難しく感じられがちな人事を「やさしく学べる」メディアを目指します。

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