#人事評価
2024/08/30

OKRを導入する際のポイントは?MBOとの違いや導入時の注意など

目次

企業は、売り上げ目標を掲げてその目標に対して従業員が一丸となって日々働いています。最近では新たな目標管理方法が注目を浴びています。

それが「OKR」。

GoogleやFacebookなどの海外企業だけでなく、メルカリなど日本の企業でも新たな目標管理方法としてOKRを導入している企業が増えてきています。

OKRの導入は企業にとってどのような変化をもたらしてくれるのでしょうか。

そこで今回は、OKRの基本情報やOKRを導入することでのメリット・デメリット、実際にOKRを導入する場合の設定方法について解説していきます。

現在、人事評価や研修などにおいて次々と新しい手法が生まれています。人事担当者としては自社に導入可能な新しい手法は常に把握しておきたいところです。今回は、Googleやメルカリといった多くの著名企業が採用している目標管理法である、OKR(Objectives and Key Results)について取り上げます。KPIやMBOとの違いや導入メリット、導入例などもご紹介します。

OKRとは

OKRとは、「 Objectives and Key Results」の略で、Objectives(目標)とKey Results(主要な成果)の頭文字を取ってOKRと呼ぶようになりました。

日本語に翻訳すると、「達成すべき目標と、目標達成のための主要な成果」です。

一番最初に取り入れた企業がアメリカのIntel。
そこから徐々に普及し、現在ではGoogleやFacebook、メルカリなどもOKRを導入しています。

OKRの特徴として挙げられるのが目標設定。

会社全体で大きな目標を掲げた後にトップダウン方式でチームから個人へと目標を設定していきます。この方法によって、会社全体が一丸となって同じ目標に進むことが可能になりました。

また、目標を設定するサイクル期間も短く、四半期に1度、遅くても半年に1度です。

設定する目標も100%到達できるものではなく、60〜70%程度到達できるものに設定されています。 

100%に到達させるのが非常に難しいのですが、挑戦的・野心的な目標であることから、「ムーンショット」とも呼ばれています。

OKRの目標設定ではSMARTという方法が用いられます。
SMARTとは、5つの頭文字を組み合わせたものです。

  • Specific:明瞭であること

  • Measurable:測定可能であること

  • Achievable:達成可能であること

  • Relevant:関連性があること

  • Time-bound:期限があること

この5つ当てはまっている目標を設定しましょう。

SMARTについての詳細な内容はこちらの記事をご覧ください。
関連記事:【完全版】人事のためのKPIとは。KGI・SMART・OKRとの違い

OKRとMBOの違いについて

OKRと間違いやすい言葉としてMBOがあります。

MBOとは、「Management by Objectives」の略で、日本語に変換すると「目標による管理」です。

個人と組織の目標をリンクさせることによって、従業員を自主的に行動させて成果を出すための方法です。

従業員が目標に到達するためにタスク管理を行うので、客観的な目線で管理ができます。

MBOについての詳しい内容はこちらをご覧ください。
関連記事:MBOとは?目標管理におけるメリットやOKRとの違いを解説

OKRとの違いは様々です。

まずは新しい目標を設定するサイクル期間。

OKRは四半期〜半年に1度ですが、MBOは半期〜1年に1度です。

上司と部下が行うレビュー頻度はOKRが毎週のように行うのに対して、MBOは1年(または半年)に1度のペースになります。

目標設定に関しては、OKRはSMARTという方法を用いますが、MBOは企業によってそれぞれ異なります。

また、目標の共有についてはOKRが会社全体として共有するのに対して、MBOは基本的に上司のみにしか共有しません。

目標はOKRが60〜70%の到達を目標としていますが、MBOは100%到達できるような設計のため、OKRが「ムーンショット」と呼んでいるのに対して、達成するのは不可能ではないことから「ルーフショット」と呼んでいます。

似ているキーワードですが、意味は全く異なるのです。

OKRとKPIの違いについて

OKRとKPIも非常に間違えやすいです。

KPIとは、「Key Performance Indicator」の略で、直訳すると「重要業績評価指標」という意味です。

目標に到達させるために実行する過程を数値として表したものになります。

KPIの他にKGIという用語があります。
KGIは、「Key Goal Indicator」の略で、直訳すると「重要目標達成指標」です。
最終的に到達したい目標を数値として表したものになります。

KPIとKGIはセットで使われることが多く、例えば、自社の商品を月に500万円販売するというKGIを設定した場合、新規購入者を20人に設定するというKPIが設定されます。

KGIに到達するための過程がKPIなのです。

OKRとKPIの違いですが、KPIの場合、目標を設定するサイクル期間はプロジェクトによって異なります。

しかし、レビュー頻度はプロジェクトによって毎日〜毎週行われるため、OKRよりも頻度が高いです。

目標の共有範囲は部門ごとになっており、MBOと同じで目標は100%達成できるような設計となっています。

OKRとKPIも間違えないようにくれぐれも気をつけましょう。

OKRを導入する理由

最近、OKRの導入を検討する企業が増えてきました。

その理由は、従来までの目標管理を見直す動きが出てきたからです。

従来の目標管理では上層部が目標の売り上げ金額などを設定して、従業員に伝えるというトップダウン方式を採用していました。

しかし、実際に現場で働く従業員と上層部が掲げる目標が大きく異なるということが度々発生したのです。

同じ目標に向かって足並みを揃えなければ、会社全体のバランスが保てなくなります。

上層部の戦略や目標を従業員全員が把握して足並みを揃えるためににOKRを導入する企業が増えてきたのです。

OKRという考え方は、最近新しくできた手法ではなく、古くからありましたが、それまで注目されていませんでした。

しかし、大企業であるGoogleやFacebook、メルカリなどが導入したことで一気に認知されるようになったのです。

OKR導入のメリット

OKRを導入するメリットを紹介します。

モチベーションが高められる

OKRを導入することでモチベーションを高めることができます。

特に目標がなければ、従業員は与えられた業務をこなしていくだけです。
そのため、働く上での意味を見出すことができず、生産性は徐々に低下していきます。

しかし、OKRを導入することで従業員ひとりひとりが会社に貢献していることを実感することができるようになるのです。

その結果、自分の業務にやりがいを感じてモチベーションを高めながら生産性の向上に繋がります。

仲間意識が強くなる

OKRを導入することで仲間意識が強くなります。
目標が社内全体で定まっているので、従業員同士で進捗報告をしたり情報の交換を行えるからです。

OKRの目標は60〜70%到達するように設定されているため、お互いが協力してチームワークが必要になってきます。

必然的にコミュニケーション図ることで自然と仲間意識が強くなるのです。

柔軟な対応が可能

OKRは柔軟な対応が可能になります。
OKRは長期的な目標ではなく、四半期に1度など短期目標が特徴的です。

目標の期間が短いため、前回の反省をふまえた上で次回の目標をすぐに設定することができるので、状況に適した目標設定が可能になります。

OKR導入のデメリット

OKRを導入するデメリットも紹介します。

融通が利かなくなることがある

OKRを導入することで融通が利かないと感じることもあります。

OKRは会社全体が1つの目標に向かって行動します。

そのため、業務内容や業務のやり方も統一されることが多く、自分で目標を管理している従業員にとっては融通が利かないと不満に感じたりもします。

浸透するまでに時間がかかる

OKRは従来とは異なる目標管理の方法です。

設定目標も100%達成する目標ではなく、60〜70%とするため、困惑する社員も出てきます。

社内全体にOKRを浸透させるには労力や手間がかかるので、導入当初が一番大変です。

従業員全体がOKRの意味を理解してもらうために、研修などを開催して説明する必要があります。

OKRを導入するうえで気をつけること

OKRを導入するうえで気をつけることを紹介します。

導入する理由を決める

何のためにOKR導入するのか、しっかりと理由決めしましょう。

OKRに限らず、理由が明確ではないまま導入してしまうと、失敗の原因にも繋がります。

そのため、「自社はOKRという方法で合っているのか」、「OKRを通して最終的に何を成し遂げたいのか」などの理由づけをしっかりと考えましょう。

目標を適当に設定しない

目標を設定する時には感覚値のみで設定しないようにしましょう。

あくまでもOKRの目標達成率は60〜70%としています。

この達成率に設定する場合、予想で適当に数値を設定してしまうと、目標が高過ぎたり低過ぎるということになりかねません。

そのため、何度か検証してみたり、参考となるデータを基に目標を設定するようにしましょう。

人事評価などと連動させない

OKRを人事評価などと連動させてはいけません。

連動させてしまうと、個人の目標を設定する時に「目標を達成できなかったらどうしよう」と従業員に考えてしまい、目標を低く見積もる場合があるからです。

目標を低く見積もってしまうと生産性も向上しないので、人事評価と連動させる場合でも一部分のみにしておきましょう。

OKRの失敗事例

OKRを導入しても失敗してしまったという企業も少なくありません。
実際の失敗事例を紹介します。

主要な成果(Key Results)が多すぎた

OKRを導入するうえで、基本的には目標を1つに定めた方が実行しやすいです。しかし、企業によってはプロジェクトが同時に進行することも珍しくありません。

KRは1つの目標に対して2〜3を目安に設定します。

失敗した企業では、複数の目標を設定した結果、Key Resultsが次第に増えていき、最終的にはどんなKey Resultsだったのかさえ忘れてしまうという状況になりました。

あくまでも目標は1つに絞るか、どうしても複数の目標がある場合には優先順位をつけましょう。

振り返りがされていない

OKRは短期間ごとに目標を設定して振り返ることで、次回に活かせることが強みです。

しかし、振り返る機会が設定されていないと、良し悪しの判断ができず、何が正しくて成功・失敗したのか分からなくなるという状況が発生しました。

しっかりと振り返る場を設けるようにしましょう。

他人事として捉えている

OKRを共有して社内全体が同じ方向に進もうとしても、従業員が他人事のように捉えてしまっては意味がありません。

自分事であると理解させるためにも、従業員に共有する際には伝え方を工夫しましょう。

「なぜ、この目標に設定をしたのか」、「この目標を設定するとどういったことが起きるのか」など、なるべく具体的かつ従業員を鼓舞するように伝えることで、従業員のモチベーションも高めることができます。

OKRの設定方法

OKRの設定方法を紹介します。

目標(Objectives)を設定

まずは目標の設定です。

目標の設定は60〜70%程度を到達できるように設定が必要です。

注意点としては、目標設定期間は四半期〜半年なので、その期間に達成できるような目標にしましょう。

また、憶測などで目標を決めてしまうと、目標が予想以上に高過ぎたり低過ぎるということもあるので、仮説とデータを集めた上で設定する必要があります。

主要な成果(Key Results)の設定

目標が設定したら主要な成果の設定を行いましょう。具体的には1つの目標に対して2〜3程度の数値化された指標を用います。

四半期〜半年程度なので、実現可能な成果設定にしましょう。

OKRを共有する

OKRの設定が完了したら、社内全体で共有しましょう。

共有する時にはなるべくわかりやすいキャッチフレーズなどを交えると誰もが覚えやすくなります。

また、従業員がOKRを忘れないようにしておくためにも内容をいつでも確認できるようなツールなどを作るのもおすすめです。

GoogleスプレッドシートやSlackなどのツールを積極的に活用してみましょう。

フィードバックを行う

OKRを共有したら、翌週からフィードバックを行います。
ミーティングなどを通して、現在の進捗状況や今後の改善策などを話し合いましょう。

改善していくことでさらに目標達成へと近づけることができます。

目標の振り返り

期間が終了したら、実際の目標に対して到達しているかなどの振り返りを行います。

目標の到達率などを加味した上で、目標を大きく超えていたり、全く届かないなどの差異がある場合には、原因を追求しましょう。

仮に目標の内容が合っていない場合には、次回までにOKRの内容を変更するかなどを決めましょう。

OKRを導入している企業

実際にOKRを導入している有名企業は以下の通りです。

  • Google

  • メルカリ

  • Sansan

  • ココナラ

  • dely

  • Hamee

その中でも3社を例に挙げて紹介します。

Hamee

Hameeは、スマホのケースやアクセサリーなどをネット販売している会社です。

会社の規模が拡大するにつれて、部署間同士の意思疎通が困難な状況になりました。

そこで、他部署であっても業務内容をお互いに理解できるようにするため2018年からOKRを導入しました。

OKRを設定するために部署ごとで合宿などを実施しています。

現在はOKRの導入によって従業員同士の一体感を取り戻せるようになったそうです。

Google

みなさんが一度は聞いたことのある企業のGoogleは、社員の足並みを揃えて課題を解決するためにOKRを2000年代の初めに導入しました。

Googleは、従業員数も非常に多いので、毎週木曜日に全従業員が参加できる「ウィンセッション」を開催してどんなに小さい成果で合っても褒め合うことを行っています。

ウィンセッションでは社長や上層部が自らプレゼンを行い、参加している人は質問することが可能です。

これによって全従業員が働きやすいような環境づくりを行いモチベーションを維持することができるのです。

また、GoogleではKey Resultsを、0~1.0の点数として表しています。OKRの達成率は60〜70%なので、0.6~0.7のスコアを従業員は目指します。

数値化することで個人に適切な目標であるかを確認しやすくなるのです。
Googleの方法を参考にする企業も少なくありません。

Sansan

Sansanは、クラウド名刺管理サービスを取り扱っている会社です。
GoogleがOKRを導入して成功したのをきっかけに2015年に導入しました。

Sansanの狙いは従業員が行っている業務内容がどういう形で会社に貢献しているのかを可視化させることです。

可視化させることでモチベーションの向上につなげています。

現在は、OKRを一部評価制度と連動させてグループとして達成させる方法にシフトしています。

まとめ

今回はOKRの導入方法やメリット、実際に導入している企業などについて紹介しました。

OKRは、これまでの目標設定方法とはかなり異なるので、失敗するというケースも珍しくありません。

しかし、Googleやメルカリ、Facebookなどの有名企業は積極的に導入しているので、今回の記事を参考に、自社でも一度OKRの導入を検討してみてはいかがでしょうか。

HR大学編集部
HR大学 編集部

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