#人材育成
2024/08/27

キャリアデザインとは?設計のメリットや設計方法について解説

目次

将来のキャリアビジョンを描くことは、中長期的な成長やモチベーション維持において重要です。

目指す姿をイメージし、そのために今後何をすべきか考えることができると、その後のキャリアアップの過程に大きく影響するでしょう。

中長期的な働き方を考える上で近年、キャリアデザインという考え方が注目されています。

それでは、キャリアデザインとはどのようなもので、考えることによってどのようなメリットやデメリットがあるのでしょうか。

この記事では、キャリアデザインの概念や考え方のポイント、企業が従業員のキャリアデザイン設計を支援する方法などについて解説します。

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キャリアデザインとは

キャリアデザインとは、自分の将来のビジョンや理想の働き方を考え、それを達成するために行動することです。

どの企業で何歳まで働くかといった実際的なことのみではなく、ライフスタイルや価値観まで踏まえた上で、自分らしい働き方を考えることがキャリアデザインの特長です。

キャリアデザインを考える際は、以下のような点に着目します。

  • 現在自分が持っている知識やスキル

  • 働くことに対する価値観や考え方

  • 将来的に達成したいことや具体的な目標

会社における業務や役職、異動などではなく、自分自身が望む将来的なイメージ像が軸になることがキャリアデザインのポイントです。

キャリアデザインには意味がない?なぜ必要とされるのか

キャリアデザインは重要とされている反面、「考えても意味がない」と言われることもあります。

それでは、キャリアデザインはなぜ必要とされているのでしょうか。

以下で3点に分けて説明します。

キャリアデザインはなぜ必要とされるのか

  • 社会や経済構造の変化

  • 企業を取り巻く環境の変化

  • 従業員の働き方の変化

社会や経済構造の変化

キャリアデザインが重視されるようになった要因の一つに、この数十年間で社会全体や経済の構造が大きく変化したことが挙げられます。

バブル経済の崩壊や急速なグローバル化などが、その変化の大きな要因といえます。

また、近年は平均寿命が大きく伸び、「人生100年時代」とも呼ばれるようになりました。

社会構造の変化や労働年数の長さを考慮した結果、どのように働いていくかを人々が重視するようになったことが、キャリアデザインが注目されるようになった要因の一つといえるでしょう。

企業を取り巻く環境の変化

近年、社会や経済の変化とともに、企業を取り巻く環境も大きく変化してきました。

終身雇用制や年功序列の制度が崩れつつあることなどが、その例といえるでしょう。

年次とともに自然に役職が上がり、定年まで勤めることができた頃と異なり、現代社会は成果主義に近くなっています。

それに伴って、定年まで一企業で勤め上げることが一般的だった時代と比べて、現代は転職することがごく普通のことになっています。

中途採用の場では、新卒採用と比べて即戦力を求められる傾向があります。

そのため、転職市場で有利になるためには、汎用的なスキルや専門的な経験を習得することが重要です。

このように、生涯の働き方やスキルとの向き合い方を考える必要が強まったことが、キャリアデザインが重視されるようになった要因の一つといえます。

従業員の働き方の変化

社会全体や企業のあり方の変化に伴って、人々の働き方も変わってきました。

この労働者側の変化も、キャリアデザインが重要視されるようになった要因の一つといえるでしょう。

近年では、雇用形態や働く場所など、労働を取り巻く環境が大きく変化し、働くことに対する価値観が多様化しています。

これらのことから、自身がどのような人生を送りたいのか、その人生のために今後どのように働くのかが、より問われる時代になったといえます。

このような働く人々の意識の変化から、将来のイメージ像を描く方法として、キャリアデザインが重視されるようになったと考えられます。

キャリアデザインを設計するメリットとは

キャリアデザインの考え方は、社会や経済構造などの変化に伴って広まってきました。

それでは、キャリアデザインを設計すると、具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか。

以下で3点に分けて説明します。

キャリアデザインを設計するメリット

  • 従業員のモチベーション向上につながる

  • 離職を防ぎ、人材の定着化につながる

  • 働き方の変化に対応できる

従業員のモチベーション向上につながる

キャリアデザインの設計では、今後どのように働きたいのか、将来どのような自分になっていきたいのかを考えます。

それにより、目指すべき目標や身につけるべきスキルを把握し、具体的な行動を起こせるようになると考えられます。

キャリアアップのために行動し、目標に近づいている実感を得られることは、従業員のモチベーションの向上につながるでしょう。

また、モチベーションの向上に伴って、従業員ひとりひとりが指示を待つのではなく、自主的に行動できるようになることも期待できます。

このような従業員の意識の変化が期待できることは、キャリアデザインにおけるメリットの一つといえます。

離職を防ぎ、人材の定着化につながる

従来、やりたい業務や就きたい部署と異なる状況にいる従業員は、理想的な働き方を求めて離職を選びがちでした。

しかし、職種変更や部署異動を企業側から提案してもらえると、従業員は退職することなく自社で継続してキャリアを積むことができるでしょう。

このように、企業がキャリアデザイン設計を促進し、それに伴って必要な支援を行うことができると、従業員が離職することなく、自社で理想的な働き方を追求し続けることが可能になります。

このような形で離職の防止や人材の定着につながることも、キャリアデザインのメリットの一つといえるでしょう。

働き方の変化に対応できる

現代は「人生100年時代」と呼ばれ、従来では一般的であった定年の年齢を過ぎても働き続ける人が多くなっています。

そのように、長期にわたって充実した働き方をするためには、早い段階から自身の働くビジョンを設計しておくことが重要といえるでしょう。

このように働き方の変化に対応できる点も、キャリアデザインのメリットの一つといえます。

また、企業側もキャリアデザイン支援を行うことによって、従業員の適性や能力を把握しやすくなります。

それにより、従業員個別のスキルや得意分野を活かし、定年後をも見据えた中長期的なマネジメントを行えることが期待できます。

キャリアデザインを設計するデメリットとは

キャリアデザインは、従業員のモチベーションの向上や人材の定着化など、さまざまなメリットにつながります。

一方で、キャリアデザインの設計には、デメリットもあります。

以下で、キャリアデザインを設計することによるデメリットを2点に分けて説明します。

キャリアデザインを設計するデメリット

  • 転職のリスクが高まる可能性がある

  • 昇進などのキャリアアップが目的化する可能性がある

転職のリスクが高まる可能性がある

キャリアデザインの設計は、従業員が将来的になりたい姿ややりたい仕事について考える機会になります。

理想のイメージ像を自社で実現できる場合は、キャリアデザインを設計することがモチベーションの向上につながるでしょう。

しかし、理想のイメージを実現できる職種やポジションが自社にない場合、従業員が理想の仕事を求めて他社へ転職する可能性があります。

このように、従業員の離職リスクが高まることは、キャリアデザインを設計することによるデメリットの一つといえるでしょう。

昇進などのキャリアアップが目的化する可能性がある

キャリアデザインの設計によって、従業員は将来の理想像を具体的にイメージします。

理想像を実現するために、自社内でのキャリアアップが必要な場合もあるでしょう。

その結果、場合によっては、昇進そのものが目的と化してしまう可能性があります。

特に、企業側がキャリアデザインの設計を主導する場合、上司からの評価を気にするあまり、従業員が自身を「会社が望む人物像」に合わせようとしがちです。

そのような状況を避けるためにも、企業がキャリアデザインの設計を主導する際は、自分の志向を軸に、主体的なキャリアデザイン設計をするよう、事前に従業員に丁寧に説明することが大切です。

キャリアデザイン設計の流れとは

キャリアデザインの設計は、具体的にどのような流れで行うと良いのでしょうか。

以下で4つの段階に分けて説明します。

キャリアデザイン設計の流れ

  1. これまでのキャリアの振り返りを行う
  2. 理想の将来のビジョンをイメージする
  3. ビジョンと現在の差を埋めるための課題を洗い出す
  4. 中長期的な目標を設定し、行動する

これまでのキャリアの振り返りを行う

まず、自分のキャリアを振り返るために、以下のような内容について洗い出しを行います。

  • これまで経験してきた具体的な業務や職種

  • これまでに得たビジネススキルや資格

  • 仕事において困難な状況に対処してきた経験

  • 仕事において強くやりがいを感じた経験

これらの洗い出し作業では、自分の得意分野が見えると同時に、苦手とする分野も見えてくるかもしれません。

しかし、自分では苦手と感じている分野で、意外な適性が見つかることもあります。

洗い出しの際は、得意であったことだけではなく、苦手と感じていたことにも着目するようにしましょう。

理想の将来のビジョンをイメージする

過去の経験などについての洗い出しが終わったら、将来やりたい職種や業務内容について考えます。

この際、洗い出しの中で見えた自分の得意分野や苦手分野、興味関心に基づいて考えることが大切です。

具体的な職種まで考えられない場合は、「こんな風になりたい」「こんなポジションの人物になりたい」という漠然としたビジョンでも構いません。

地位や役職、キャリアの高さのみではなく、結婚や出産などの各ライフイベントの予定も踏まえた上で、どのような働き方が自分らしいかという視点で考えることが重要です。

ビジョンと現在の差を埋めるための課題を洗い出す

理想のビジョンがイメージできた後は、そのイメージと現状とを比べ、その差を埋めるための課題は何かを考えます。

たとえば、未経験の職種に就く際に、具体的なスキルや資格の習得が必要になる場合があります。

資格自体の取得以前に、必須要件として一定の実務経験が求められる場合もあるでしょう。

また、具体的な資格などの他にも、理想のイメージと比べて現在の自分に足りない要素がないか、洗い出しを行います。

「マネジメント職を目指したいが、後輩指導などの経験が足りない」

「営業のリーダー職を目指したいが、評価してもらうための実績がない」

などが、洗い出しの例です。

中長期的な目標を設定し、行動する

理想のイメージまでの課題を把握した後は、具体的な目標を設定し、行動計画を立てます。

目標を設定する際は、「30歳までにこの資格を取得する」「35歳までに実務経験を3年積む」など、年数の期限を可能な範囲で設定することが大切です。

具体的な時期を設定することによって、目標達成に向けた行動計画を詳細に立てることができるでしょう。

キャリアデザイン設計のポイントとは

キャリアデザインは、中長期的に自分らしい働き方をしていくために大変有用です。

それでは、キャリアデザインを設計する際は、どのような点に留意すればよいのでしょうか。

以下で3点に分けて説明します。

キャリアデザイン設計のポイント

  • ポータブルスキルに着目する

  • 定期的かつ柔軟に見直しを行う

  • 客観的なアドバイスを積極的にもらう

ポータブルスキルに着目する

ポータブルスキルとは「持ち運び可能なスキル」という意味であり、業種や職種を問わず役立つスキルのことを指します。

ポータブルスキルには、主に以下の3つがあります。

  • 対人力:人とのコミュニケーション能力(例:説得力、統率力、傾聴力など)

  • 対自分力:自身の行動や考え方をコントロールする能力(例:決断力、忍耐力、持続力など)

  • 対課題力:課題や仕事に対する対応能力(例:発想力、計画力、分析力など)

キャリアデザインを設計する際はこれらのポータブルスキルをバランスよく育てられるような働き方をイメージするとよいでしょう。

定期的かつ柔軟に見直しを行う

キャリアデザインは、一度設計したら終わりではありません。

働き続ける中で、働き方に対する考え方や志向が変化することもあるでしょう。

また、ライフイベントによって、周囲の環境が変化することも考えられます。

そのため、キャリアビジョンは設計後も定期的に見直しを行います。

見直しをする際は、最初に作ったキャリアデザインに執着しすぎないことが大切です。

考え方や家庭事情の変化などがあった際に、必要に応じて柔軟に変更することが、無理のないキャリアデザインのポイントといえます。

客観的なアドバイスを積極的にもらう

キャリアデザインを設計する際は、周囲の人からアドバイスを積極的にもらうことが大切です。

たとえば、理想のイメージに近づくための課題解決方法を考える際、自分ひとりで考えられる方法には限りがあります。

しかし、上司や同僚に相談することで、自分だけでは思いつかなかった方法に気づける場合もあるでしょう。

より効率的に目標を達成するためにも、すべてを自分だけで考えすぎず、周囲の人からアイデアを得ようとする姿勢が大切です。

キャリアデザインを企業が支援する方法とは

キャリアデザインは、基本的に従業員が自分で考えるものですが、企業がその設計をサポートすることは可能です。

企業がキャリアデザイン設計を支援する方法について、以下で4点に分けて説明します。

キャリアデザイン研修を実施する

キャリアデザイン支援の一つに、キャリアデザイン研修の実施があります。

キャリアデザイン研修では主に、キャリアデザインの重要性や具体的な設計方法などについて解説を行います。

研修内容については、受講する世代によってアレンジするとよいでしょう。

たとえば、若手の従業員に対してはモチベーション向上の観点から、自身の強みや将来やりたいことを把握してもらえるような内容がよいと考えられます。

これに対して、ベテランの従業員に対しては、過去の業務で得た経験やスキルを振り返った上で、今後どのように働くかについて考えてもらえるような内容がよいでしょう。

キャリア面談を実施する

キャリア面談も、キャリアデザイン支援の方法の一つです。

キャリア面談は基本的に一対一で行い、従業員の目指すイメージ像を共有した上で、今後取り組むべき内容を明確にするものです。

目標の達成に何らかの障壁がある場合は、どのようにそれを解消するかについても話し合います。

複数で受講するキャリアデザイン研修では掴めない、自身の課題や志向などに気づきやすいことが、キャリア面談の大きな特長です。

目標管理制度を整える

目標管理制度の導入も、キャリアデザイン支援の方法の一つです。

目標管理制度とは、事前に従業員自身に目標を設定してもらい、目標をどの程度達成できているかを指標にして人事評価を行う方法です。

目標に近づくことで評価が高くなるため、従業員のモチベーション向上につながることが特長です。

一方で、自身の志向に沿った目標を設定できないと、モチベーションが低下し、逆に目標自体がストレスの要因になってしまいます。

会社の意向に合わせるのではなく、自分が本当に理想とするイメージ像を元にした目標を設定することが大切です。

キャリアに関する幅広い人事制度を整える

現在の職種や部署では、目標を達成することができないと考える従業員もいるでしょう。

そのような場合でも、従業員が希望の職種や部署に異動し、そこで活躍できるような制度を企業側で整えることが大切です。

近年普及している具体的な人事制度には、以下のようなものがあります。

  • 社内FA制度:従業員が実績などをアピールし、希望部署への異動に挑戦する制度

  • 社内公募制度:部署が社内で募集を出し、他部署の従業員がそれに応募する制度

  • 自己申告制度:従業員が、異動や将来のキャリアの志向などを自社に申告する制度

  • ジョブリターン制度:出産や介護などが理由で退職した従業員を再雇用する制度

このような制度の整備により、従業員の離職を防止できることが期待できます。

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キャリアデザインを設計し、企業が従業員を支援するには

キャリアデザインは、現在だけではなく、将来にわたって中長期的に自分らしい理想の働き方をするために重要なものです。

そのため、キャリアデザインを設計する際は、これまでの経験やスキルの洗い出しと、今後自分がどのようになっていきたいのかを深掘りして考えることが大切です。

また、リモートワークや副業の普及などにより、近年は働き方が多様化しています。

そのような時代においても、従業員ひとりひとりがモチベーションを高く持ち、長期的に働き続けられるよう、企業側が幅広いキャリア支援制度を整えることが重要です。

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HR大学編集部
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