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2024/08/14

コンティンジェンシー理論とは?メリットとデメリットや最適なリーダーの選び方を解説

目次

コンティンジェンシー理論とは、「どのような環境や状況でも力を発揮するリーダーは存在しない」という理論で、「リーダーシップ条件適応理論」とも呼ばれます。

どんな環境でも成果を出せるリーダーというのは存在しません。

リーダーの職権や部下との相性によって結果は大きく変わります。

そのため、組織の変化に合わせて最適なリーダーを選出するために、コンティンジェンシー理論は有効な指標になります。

この記事では、コンティンジェンシー理論とは何か、意味や提唱者、コンティンジェンシー理論のメリットデメリット、コンティンジェンシー理論を活用するために企業がすべきことについて、分かりやすく解説します。

組織状況に合わせたリーダーの選出や最適配置に

コンティンジェンシー理論とは

コンティンジェンシー理論(Contingency Theory)とは、「どのような環境や状況でも力を発揮するリーダーは存在しない」という理論で、「リーダーシップ条件適応理論」とも呼ばれます。

コンティンジェンシー理論は、経営管理論における考え方の1つで、リーダーシップ論の1つです。

コンティンジェンシー理論の「コンティンジェンシー(Contingency)」は、英語で「偶然・偶発的」という意味の言葉で、コンティンジェンシー理論でのリーダーは、「偶然・偶発的」な状況の変化に応じて柔軟に変化していくことが求められます。

リーダーも人間なので、高いパフォーマンスを出せるかどうかは、「職場環境」や「人間関係」などの外的要因が大きく影響します。

また、現代は社会の変化が激しいため、リーダーの在り方も、組織再編や事業売却など企業を取り巻く環境に合わせて、リーダーシップスタイルを選ぶ必要があります。

そのため、組織の変化に合わせて最適なリーダーシップを選ぶ際に、コンティンジェンシー理論が活用される傾向にあります。

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コンティンジェンシー理論が注目される背景

コンティンジェンシー理論は、1960年代から提唱された理論のため、他のリーダーシップ論や組織論と比べると歴史は長くありません。

コンティンジェンシー理論が注目されるようになった背景について、「リーダーシップは才能と考えられていた」時代から、「リーダーシップは状況によって変わる」と考えられる時代へと変化した、2つのポイントに合わせて確認してみましょう。

リーダーシップは才能と考えられていた

1940年代までは、リーダーシップは生まれ持っての才能で決まるという「リーダーシップ資質論」が一般的でした。

リーダーシップ資質論では、「知性:知識と決断力やクリエイティビティ」「行動力:シチュエーションに応じた正しい行動と忍耐力」「信頼:責任感が強くメンバーからの信頼も厚い」の3つの能力は、生まれながらに備わっていると考えられ、訓練や勉強では習得不可能だと信じられていました。

そのため、優れたリーダーを見つけるためには、リーダーシップ資質論に照らし合わせ、リーダーを選出することが重要でした。

リーダーシップは状況によって変わる

1960年代になると、これまで信じられていた「リーダーシップ資質論」にほころびが出てきました。

なぜなら、産業が急速に発展し、組織の在り方が多様化しはじめたからです。

例えば、戦前までは国が大多数の軍人に滞りなく命令を出す「トップダウン型」のリーダーシップが力を発揮していました。

しかし、現代は産業がグローバル化し、異文化理解に長けたリーダーが求められているため、トップダウンでの思考だけでは部下をまとめることは難しいでしょう。

このように、時代の変化によって、一律なリーダーシップが通用しなくなりました。

そのため、状況によって求められるリーダー像は変わるというコンティンジェンシー理論が注目されるようになりました。

組織状況に合わせたリーダーの選出に

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コンティンジェンシー理論を発展させた3つの概念

コンティンジェンシー理論を深く理解する上で重要な考え方である、コンティンジェンシー理論を発展させた3つの概念について確認してみましょう。

機械的組織と有機的組織

組織の構造によって、成果を出すリーダーのタイプは変わります。

組織は主に「機械的組織」と「有機的組織」に分けられます。

機械的組織とは、トップが強い権限を持ち、トップダウン的に命令が下される組織のことを指し、行政機関や大企業に多い組織構造です。

機械的組織の大きな特徴は、意思決定に関わる人の数が限られていることで、部下からの提案に応じたり、積極的に意見を汲み取ったりすることは多くありません。

一方の有機的組織は、機械的組織のような階層構造にはなっておらず、規模が大きい企業でも各部署がフラットな関係になっています。

有機的組織のメリットは、個々の専門性を発揮しやすいことです。

例えば、技術関連で良いアイディアが出たら、上の命令に縛られることなく他の部署と自由に連携を取ることができます。

もし機械的組織であれば、連携を取る際もトップの承認が必要になるなど、組織の動きが鈍くなり、成長が遅くなる恐れがあります。

そのため、有機的組織は柔軟性を重んじるベンチャー企業などによく見られる傾向にあります。

ここで注意すべきは、有機的組織と機械的組織に優劣はないという点です。

例えば、もしトップダウンでの指示が必要な軍隊を有機的組織にしてしまった場合、指揮命令がバラバラになり秩序を保てなくなってしまうでしょう。

一方、スタートアップ企業が機械的組織になってしまうと、個人のスキルを発揮しづらくなり、組織の動きも遅くなってしまいます。

このように、組織の特性に合わせて企業の在り方を考え、最適なリーダーを選ぶ必要があります。

条件適合理論

条件適合理論とは、組織が置かれる環境によって優秀なリーダーの定義は変わるという考え方です。

優れたリーダーは行動に特徴があるという「行動理論」が主流になっていました。

しかし、行動理論にさえ当てはまっていれば、成果を出せるというわけではありません。

リーダーが結果を出すためには行動理論に当てはまるだけでなく、リーダーが置かれている環境も影響すると判明しました。

条件適合理論では、リーダーが力を発揮するために考慮すべきポイントとして、「職場の人間関係」「業務の難易度」の2つがあげられます。

部下とそりが合わない場合、仕事はスムーズに進みません。

また、不得手な業務を任されていた場合、リーダーのポテンシャルは発揮されにくくなってしまいます。

このように、リーダーの行動特性以上に「リーダーを取り巻く環境」にも注意を払わなければいけません。

コンティンジェンシーモデル

コンティンジェンシーモデルとは、リーダーが成果を出すうえで影響を与える環境を定義したモデルで、経営心理学者のフィドラー氏が提唱しました。

コンティンジェンシーモデルでは、環境を数値で表す「状況変数」が採用されています。

状況変数とは、「部下との人間関係」「仕事内容の明確さ」「リーダーの権限の強さ」を数値化したものです。

状況変数が非常に高いか非常に低いリーダーは、「タスク中心で指示的なスタイルが有効」で、状況変数が高くも低くもないリーダーは、「人間関係中心で非指示的なスタイルが有効」とされています。

さらにフィドラー氏が加えた評価値に、「LPC(Least Preferred Co-worker:環境適合測定)」があります。

LPCとは、「職場で最も苦手な人間に対する評価」のことで、最も苦手な仕事仲間を1人思い浮かべてもらい、質問項目に回答します。

LCPが高い場合は「苦手な同僚を高く評価するリーダー」、LCPが低い場合は「苦手な同僚を避けようとするリーダー」とされています。

また、「組織の業績」は「LPC」と「状況変数」をかけ合わせた数値によって算出されるため、組織の状態によって適したリーダー像は変わってきます。

そのため、リーダーを選定する際は過去の実績だけでなく、状況変数に照らし合わせて総合的に検討する必要があるでしょう。

(参考)厚生労働省「リーダーシップを発揮しよう

コンティンジェンシー理論の3つのメリット

コンティンジェンシー理論を導入する3つのメリットについて確認してみましょう。

コンティンジェンシー理論の3つのメリット

  1. 組織の柔軟性が上がる
  2. ピラミッド型の人事体系に縛られにくい
  3. 変化への対応力があるリーダーを育成できる

組織の柔軟性が上がる

コンティンジェンシー理論を導入するメリットの1つとして、組織をフレキシブルにしやすくなり、「組織の柔軟性が上がる」ことがあげられます。

どんな状況でも必ず結果を出せるリーダーは存在しないため、組織の方針や社会の変化に合わせてリーダーを変えていく必要があります。

例えば、同世代をまとめているリーダーは、お互いに根底の価値観が似ているため、明確な指示がなくても、「あうんの呼吸」で部下は的確な動きをしてくれるでしょう。

しかし、幅広い年代の人をまとめる際は、信条や価値観も違うケースが多く、「あうんの呼吸」が通用しなくなってしまう可能性が高いため、物事をロジカルに伝えられるリーダーが適しているでしょう。

このように、コンティンジェンシー理論に照らし合わせ、社会の変化に合わせてリーダーを変えて行くことで、組織の柔軟性が上がるでしょう。

ピラミッド型の人事体系に縛られにくい

コンティンジェンシー理論を導入するメリットの1つとして、「ピラミッド型の人事体系に縛られにくい」ということがあげられます。

特に有機的組織では、組織内の部署がフラットな関係になっているため、個々のリーダーシップを発揮しやすくなります。

例えば、会社の上層部がテクノロジーに疎かったとしても、コンティンジェンシー理論を導入していれば、技術部門のリーダーの意見が尊重されるでしょう。

このように、コンティンジェンシー理論は官僚体質な組織のデメリットを補ってくれる点で魅力的です。

変化への対応力があるリーダーを育成できる

コンティンジェンシー理論を導入するメリットの1つとして、「変化への対応力があるリーダーを育成できる」ということがあげられます。

部下との相性や権限の強さによってリーダーの振る舞いは変わる必要があります。

例えば、部下との関係も良好でやるべき業務も明確で、リーダーの権限も強ければタスク志向のリーダーが成果を残す可能性が高いでしょう。

一方で部下との関係が良くても、業務内容が明らかでなかったりリーダーに権力が無ければ、人間関係を重視する人がリーダーに適しています。

このように、コンティンジェンシー理論を活用すれば、変化に対応できるリーダーを育てられるでしょう。

変化に対応できるリーダーの育成と選出に

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コンティンジェンシー理論の3つのデメリット

コンティンジェンシー理論を導入する3つのデメリットについて確認してみましょう。

コンティンジェンシー理論の3つのデメリット

  1. 環境の変化に合わせることが難しい
  2. 誤った方向へ組織を導くリスクがある
  3. 専門性を高めにくい

環境の変化に合わせることが難しい

コンティンジェンシー理論を導入するデメリットの1つとして、「環境の変化に合わせることが難しい」ということがあげられます。

なぜなら、コンティンジェンシー理論では定められた条件に応じて、最適なリーダーや組織の在り方を決めるからです。

そのため、時代の変化にどう対応すべきかまでは考慮していません。

今は社会の変化が激しく、コンティンジェンシー理論だけにこだわって人事を決めると、組織の混乱を招いてしまう恐れがあります。

例えば、人事異動でその部署のリーダーと合わない部下が配属された場合に、リーダーのパフォーマンスが落ちるからといって、その都度リーダーを配置換えすると秩序を保てなくなってしまいます

このように、変化の激しい現代で無理にコンティンジェンシー理論を採用すると、逆効果になってしまうリスクがあります。

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誤った方向へ組織を導くリスクがある

コンティンジェンシー理論を導入するデメリットの1つとして、「誤った方向へ組織を導くリスクがある」ということがあげられます。

特に有機的組織は組織内の各部署がフラットな関係にあるため、上層部が一括でコントロールをするのが難しくなるでしょう。

ある部署が間違った方向へ進んだとしても止めにくいというリスクがあり、最悪の場合は業績が下がってしまう場合もあります。

経営や経済の専門家もコンティンジェンシー理論を適用しても、必ずしも業績が良くなるとは限らないと主張しています。

「コンティンジェンシー理論には、高業績を生み出す適合への道筋がいくつもありうるという等結果性の概念がある。構造をいじることで業績が必ずしも向上するわけではないのに、なぜ構造をいじるのか、という問いが生じる。よって、等結果性の概念を修正する必要がある。」とされていて、組織を束ねるリーダーにはそれなりの能力が問われることが指摘されています。

(引用)長崎大学学術研究成果「修正コンティンジェンシー理論批判

リーダーの専門性を高めにくい

コンティンジェンシー理論を導入するデメリットの1つとして、「リーダーの専門性を高めにくい」ということがあげられます。

なぜなら、組織の環境が変化する度に、最適なリーダーを選びなおさなくてはいけないからです。

例えば、人事異動で部下との関係が一変した場合、現在のリーダーでは成果を出しにくいかもしれません。

その場合、すでに人脈を築いている他の部署の方が成果を残すかもしれません。

リーダーも異動することで成果を出しやすくはなりますが、異動先の部署で1から新しいことを学ぶ必要があります。

このように、コンティジェンシー理論だけを考慮して人事を組むと、リーダーの専門性が失われるリスクがあります。

コンティンジェンシー理論を活用するために企業がすべきこと

コンティンジェンシー理論を活用するために企業がすべきことについて確認してみましょう。

コンティンジェンシー理論を活用するために企業がすべきこと

  • 多様な人材を採用する

  • 海外ビジネスを視野に入れる

  • 人事制度を抜本的に見直す

多様な人材を採用する

コンティンジェンシー理論を活かすために、「多様な人材を採用する」と良いでしょう。

なぜなら、リーダー候補が増えるからです。

例えば、海外ビジネスに強いリーダーを求めているなら、外国人を採用すると成果を出しやすくなるかもしれません。

女性に理解のある会社を目指すなら、女性管理職の採用が有効である可能性が高いです。

このように、採用する人材の幅を広くすれば、環境に見合ったリーダーを選びやすくなります。

海外ビジネスを視野に入れる

コンティンジェンシー理論を活かすために、「海外事業も視野に入れる」と良いでしょう。

なぜなら、リーダーのポテンシャルを発揮できる人材が増えるからです。

海外では、ビジネスの慣習や常識が日本と異なるケースが多く、日本では上手くリーダーシップを発揮できない人でも、海外だと成果を出すことも珍しくありません。

部下や同僚がリーダーシップを発揮できるチャンスを多く作るためにも、海外ビジネスに力を入れてみると良いでしょう。

人事制度を抜本的に見直す

コンティンジェンシー理論を活かすために、「人事制度を抜本的に見直す」と良いでしょう。

保守的な企業の場合、「入社数年目でないと昇進試験を受けられない」「育休や産休取得者は一定期間、管理職登用の対象外」「大卒資格がないとキャリアアップができない」というようなルールが残っていることも多いのではないでしょうか。

従来の人事制度に固執していると、たとえ社内に優れた人材がいてもリーダーに選べなくなってしまいます。

組織のポテンシャルを最大化するためにも、人事制度の見直しも検討しましょう。

▼「人事制度」についてさらに詳しく
人事制度設計のポイントとは!設計方法を3つの人事制度を交えて解説

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コンティンジェンシー理論を学ぶための書籍

コンティンジェンシー理論を効果的に活用するためには、書籍での学習も必要です。

なぜなら、組織論やリーダーシップを体系的に学べるからです。

コンティンジェンシー理論を学ぶためにおすすめの本を確認してみましょう。

コンティンジェンシー理論を学ぶための書籍「組織論 再入門」

「組織論 再入門」は、野村総合研究所で人事コンサルティング領域を立ち上げた野田稔氏の著書です。

多様な組織問題に直面した際に、どうすれば組織の戦略を実現できるかの糸口が見つけられると評判の書籍です。

大きな特徴は、理論だけにとどまらず筆者の実務経験をもとに解説されている点です。

実際に書籍を購入した人のレビューを読むと、ビジネス論を筆者の経験で裏打ちしている点を高く評価していました。

組織構造やリーダーシップ論など人事全般を幅広く学びたい人におすすめの1冊です。

ダイヤモンド社「組織論 再入門

コンティンジェンシー理論を学ぶための書籍「日本の組織におけるフォロワーシップ」

「日本の組織におけるフォロワーシップ」は、部下の観点からリーダーや組織への効果的なアプローチを解説した西之坊穂氏の著書です。

西之坊氏も「リーダーシップの研究はたくさんあるが、部下などフォロワーが取るべき行動に関する研究は不足している」と主張しています。

本書では「コンティンジェンシーアプローチ」などリーダーシップ論のレビューをはじめ、日本の組織における効果的なフォローワーシップをアンケートなどの実証実験から考察しています。

コンティンジェンシー理論は組織やリーダーの在り方に重点を置いていますが、実際の組織では部下の振る舞いも軽視できません。

「今リーダーでない自分はどうやって組織に貢献すべきか」と悩んでいる人におすすめしたい1冊と言えるでしょう。

晃洋書房「日本の組織におけるフォロワーシップ

▼「フォロワーシップ」についてさらに詳しく
フォロワーシップとは?期待できる効果や導入のポイントを徹底解説

コンティンジェンシー理論は最適なリーダーの選出に有効な指標

コンティンジェンシー理論とは、「どのような環境や状況でも力を発揮するリーダーは存在しない」という理論で、「リーダーシップ条件適応理論」とも呼ばれます。

どんな環境でも成果を出せるリーダーと言うのは存在しません。

リーダーの職権や部下との相性によって結果は大きく変わります。

成果が振るわない管理職でも、部署を変えたらリーダーシップを発揮する可能性もあります。

一方で、今は順調なリーダーでも組織再編で成果を出せなくなってしまう可能性もあります。

このように、組織の変化に合わせて最適なリーダーを選出するために、コンティンジェンシー理論は有効な指標になります。

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HR大学編集部
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