#人材育成
2024/08/19

エンパワーメントとは?意味やビジネスでの具体例とメリットデメリットについて分かりやすく解説

目次

エンパワーメントとは、「力や権限を与えること」を意味し、ビジネスの場面では、従業員に「権限委譲」を行うことを指します。

権限委譲によって従業員のコミットメント力や自律性が高まり、機動力のある組織づくりにつながります。

またエンパワーメントは、マネジメント手法や人材育成手法としても注目されています。

この記事では、エンパワーメントのビジネスでの意味と注目される背景、メリットとデメリット、エンパワーメントを導入している企業の具体例、エンパワーメントの導入方法と注意点について簡単に解説します。

エンパワーメントを強化するための情報の見える化

エンパワーメントとは

エンパワーメントとは、「empowerment」と書き、「力(権限)を与える」「自信を与える」という意味を持つ動詞「empower」が名詞形となった言葉で、「力や権限を与えること」を意味します。

エンパワーメントは、1950年から1960年代にアメリカ南部で起こった社会運動である「自由公民権運動」や、「ウーマンリブ」と呼ばれた1970年代の「フェミニズム運動」によって、社会変革活動が活発になったことで注目されるようになり、「誰もが本来備えている能力を発揮できる社会を目指す思想」として使われるようになりました。

エンパワーメントがビジネスで注目される理由

エンパワーメントとは、従業員に「権限委譲」を行うことです。

権限委譲によって従業員が裁量権を持ち、自分自身で意思決定するようになることで、コミットメント力が強まります。

また、従業員ひとりひとりが自律的行動をするようになることで、機動力のある組織づくりにつながります。

エンパワーメントは、従業員ひとりひとりが自律的に行動できる状態を作り出すマネジメント手法や人材育成手法としても注目されています。

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エンパワーメントが注目されている業界

エンパワーメントが注目されている業界について確認してみましょう。

看護のエンパワーメント

看護や介護などの分野は、サービス利用者が自立することを最終的なゴールとします。

サービス利用者が抱えている問題が本来の能力を奪っていると考え、問題を本人が解決し、本来の能力を引き出すように働きかけます。

自分自身が日常生活で人生の主役となれるよう、自己選択を行い、生活や環境をコントロールできるように支援を行います。

教育のエンパワーメント

教育は、「主体的・対話的で深い学び(アクティブラーニング)」を促進するという理念に基づき、教育を受ける本人の力を引き出すことにあります。

手取り足取り教えるのではなく、本来持つ能力を信じ、見守ることが重要で子供自身が試行錯誤して、自分のやり方を発見することを促します。

(参考)文部科学省「主体的・対話的で深い学びの実現

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社会福祉のエンパワーメント

社会福祉では、これまで行ってきたサービスとは別に、受益者に渡す補助金を増やし、権利を与えることで政府の介入を極力減らそうと考えます。

社会的弱者が自分の置かれている立場や問題の要因に気付き、現状を打開するために必要な方法を強化するための援助や理念を指すこともあります。

エンパワーメントのメリット

エンパワーメントの強化を行うことで得られるメリットについて確認してみましょう。

エンパワーメントのメリット

  • 労働生産性にプラスの影響を与える

  • 離職防止につながる

  • 企業と従業員の関係性が良好になる

労働生産性にプラスの影響を与える

エンパワーメントの強化は従業員のエンゲージメントの向上にもつながります。

さらにエンゲージメントスコアがアップすることで、営業利益率、労働生産性が上がることがリンクアンドモチベーションと慶應義塾大学との研究での結果で分かっています。

同じ時間勤務していても、労働生産性がアップすれば低コストで効率よく成果物を生み出すことができ、企業にとってのメリットは大きいです。

(参考)リンクアンドモチベーション「慶應義塾大学との研究結果を公開

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離職防止につながる

エンパワーメントで従業員のエンゲージメントが向上することは離職防止にもつながります。

従業員の満足度と離職に着目をした、アスマークによる「社員の離職原因とエンゲージメントアンケート」の調査結果から、企業への満足度と離職意向が反比例することが分かりました。

従業員が「この企業で働けてよかった」と思えれば、貴重な人材の流出を防ぐことができます。

(参考)アスマーク「社員の離職要因とエンゲージメント(愛着心・思い入れ)に関する分析レポート

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企業と従業員の関係性が良好になる

従業員が望む「働きやすい職場」を実現するためには、充実した報酬や福利厚生だけでは限界があります。

エンゲージメントが高い企業では「組織体制」「個人の成長」「働く環境」どの面から見ても従業員が前向きです。

会社がエンパワーメント経営を通して、従業員のエンゲージメントの向上と「帰属意識(愛社精神)」に重点を置く経営ができれば、従業員が生き生きと仕事ができる環境を作ることができます。

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エンパワーメントのデメリット

エンパワーメントのデメリットについて確認してみましょう。

エンパワーメントのデメリット

  • 組織の方向性や目的にずれが生じる

  • 生産性が低下してしまう場合がある

  • 失敗による損失が発生するリスクがある

組織の方向性や目的にずれが生じる

組織の方向性や目的が統一されていないままエンパワーメントを強化してしまうと、従業員ひとりひとりの判断基準が曖昧になり、さまざまな弊害が発生してしまいます。

例えば、顧客対応にバラつきが生じて、顧客が不満を感じてしまうことで、会社全体への信頼を失う可能性もあります。

また、全社の方針を理解して動く部署と、好き勝手に動く部署が出た場合、衝突が起きることも考えられます。

生産性が低下してしまう場合がある

人には個性があり、自分自身で意思決定をして仕事を進めることが得意な人もいれば、苦手な人もいます。

また、経験値にも個人差があります。

意思決定が苦手な人や経験が浅い従業員に対して、エンパワーメントとして必要以上に権限を委譲してしまうと、プレッシャーとなったり、業務過多になってしまう恐れがあり、業務効率を低下させる原因になってしまいます。

失敗による損失が発生するリスクがある

エンパワーメントで権限を委譲したからと言って全てを部下へ任せるのは危険です。

部下の経験不足や能力不足から、課題に直面した際に誤った判断をしてしまう可能性があります。

エンパワーメントの成功事例

エンパワーメントの成功事例について確認してみましょう。

エンパワーメントの成功事例:ザ・リッツ・カールトン ホテル

リッツ・カールトン・ホテルは、顧客満足度(CS)が高いホテルとして知られていますが、「上司の判断を仰がずに自分の判断で行動できること」「セクションの壁を超えて仕事を手伝うときは、自分の通常業務を離れること」「1日2000ドル(約20万円)までの決裁権」という3つのエンパワーメントでも有名になりました。

3つのエンパワーメントは、お客様にとって一番良いサービスの方法を考え、個々の従業員が迷うことなく最善の方法を選択することができる環境を整えることを目的として実践されています。

ザ・リッツ・カールトン

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エンパワーメントの成功事例:株式会社星野リゾート

星野リゾートは、「仕組み」「文化」「価値観」を保持する組織と言われ、「組織」を1番大切にしています。

各施設のトップには総支配人が、その下には管理職、一般職と配置されていますが、それぞれの管理職は、上からの任命ではなく立候補制で決まります。

立候補者の中から誰が役職に相応しいのかを皆で議論して選出するという仕組みで、従業員自らが経営者の意識を持って仕事に取り組むことができる環境が人材育成や組織力の強化に繋がっています。

株式会社星野リゾート

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エンパワーメントの成功事例:株式会社メルペイ

メルペイは、メルカリアプリを使った決済サービスを提供している企業です。

メルペイでは、月に1回従業員にアンケートを実施し、アンケートの結果を可視化できるようにスコア化しています。

アンケートは10個の質問から構成され、それぞれを10点満点で評価します。

アンケート結果は全社で公開され、課題解決の方法や施策を従業員へ説明することで「経営陣の本気度」を現場に見せ、気持ちを伝えています。

株式会社メルペイ

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自社に適したアンケートの選定方法

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エンパワーメントの成功事例:株式会社アトラエ

アトラエでは、成果課金型の求人メディアを運営する企業です。

「意欲のある従業員が無駄なストレスなく働ける組織」をコンセプトに、ルールを最小化し、フラットな関係性を実現し、評価を「360度評価制度」で行っています。

給与は平均値ですが低い離職率を実現しています。

離職防止のカギを握っているのが、徹底した情報共有と意思決定の方法です。

どんな些細なことも従業員全員と情報共有をし、意思決定が必要な場面ではプロジェクトリーダーを立てて議論をしその結果をフィードバックすることで、高いパフォーマンスを維持し、生産性の向上を実現しています。

株式会社アトラエ

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360度評価を成功させるためのポイントを解説

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エンパワーメントを経営に取り入れる方法

エンパワーメントを導入する方法について確認してみましょう。

エンパワーメントを経営に取り入れる方法

  • エンパワーメントの推進を宣言する

  • 目標への同意と共感を得る

  • 情報を公開し権限を委譲する

  • 目標達成のための行動の自由を認める

エンパワーメントの推進を宣言する

エンパワーメントを導入する際は、まず組織のリーダーが従業員に対して、エンパワーメント推進を図ることを宣言することが大切です。

エンパワーメント推進の宣言では、リーダーとしての力強いメッセージを届けるようにしましょう。

エンパワーメント宣言後は、ただのお知らせで終わることがないように、エンパワーメントの必要性や実際に導入するまでの流れなどを説明し、共通認識を持つことが重要です。

目標への同意と共感を得る

エンパワーメント推進の宣言から、従業員の気持ちを一致させるために、早々にエンパワーメント導入に関するディスカッションや勉強会を開きましょう。

参加する従業員が心理的安全性を感じることができる場として、忌憚のない率直な意見を述べられるような配慮が大切です。

心配していること、疑問に思うことなど、エンパワーメント推進にあたっての意見を出してもらうようにしましょう。

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情報を公開し権限を委譲する

意思決定には情報と権限が必要です。

重要情報の公開は経営陣からするととても勇気がいることですが、各現場で適切な判断を行うために公開しましょう。

企業の重要情報には、企業の方針や経営戦略、人事や経理状況などがあります。

重要情報をシェアすることで、従業員の意思決定に対する責任意識が芽生え、企業が従業員を信頼しているという姿勢を見せることにも繋がります。

権限を委譲する前に、従業員に裁量を与える範囲を定めてから、実際に任せるようにしましょう。

裁量の明確化は、判断ミスやサービスレベルのばらつきを防ぐためにもとても重要です。

目標達成のための行動の自由を認める

権限委譲後は、従業員に与えられた自由を認めましょう。

従業員に与えられた自由とは、目標達成のための戦略や手法を従業員が自ら考えて選択することや、目標達成のための提案や意見を自由に発信できることを意味します。

従業員主体の目標設定の重要性を解説

⇒「個と組織がともに勝つ目標管理」資料ダウンロード

エンパワーメント導入時の注意点

エンパワーメントを導入することで、事前に想定できなかったことに対して、判断ミスが起こってしまうことも十分想定できます。

判断ミスが起こってしまった時こそ、上司や組織のフォローが大切です。

部下と向き合い、改善の方法を考え、同じミスを繰り返さないためにどうすれば良いかを話し合うことが大切です。

介入のし過ぎは従業員の自律性の成長を妨げてしまうため、コーチングを意識してフォローするようにしましょう。

また、致命的な失敗が起こらないように、部下が相談しやすい体制や雰囲気作りを行なうようにしましょう。

▼「コーチング」についてさらに詳しく
コーチングとは?ビジネスでの役割と仕事で活かせる学び方

エンパワーメントを持つことで強い企業を作る

エンパワーメントとは、従業員に「権限委譲」を行うことです。

権限委譲によって従業員が裁量権を持ち、自分自身で意思決定するようになることで、コミットメント力が強まります。

また、従業員ひとりひとりが自律的行動をするようになることで、機動力のある組織づくりにつながります。

エンパワーメントは、従業員ひとりひとりが自律的に行動できる状態を作り出すマネジメント手法や人材育成手法としても注目されています。

このように、エンパワーメントを持つことができれば、強い企業を作ることが可能になります。

ですが、従業員ひとりひとりに会社の従業情報を公開し、裁量権を与え、権限委譲を行うことは、判断ミスなどが発生してしまう場合もあります。

致命的な失敗が起こらないように、日頃から相談しやすい体制や雰囲気作りや情報管理が大切です。

「HRBrain タレントマネジメント」は、エンパワーメント導入に必要な情報の見える化や、従業員ひとりひとりの状況把握が可能です。

さらに、従業員のスキルマップや、これまでの実務経験、育成履歴、異動経験、人事評価などの従業員データの管理と合わせて、OKRなどの目標管理、1on1やフィードバックなどの面談履歴などの一元管理も可能です。

HRBrain タレントマネジメントの特徴

  • 検索性と実用性の高い「データベース構築」を実現

運用途中で項目の見直しが発生しても柔軟に対応できるので安心です。

  • 柔軟な権限設定で最適な人材情報管理を

従業員、上司、管理者それぞれで項目単位の権限設定が可能なので、大切な情報を、最適な状態で管理できます。

  • 人材データの見える化も柔軟で簡単に

データベースの自由度の高さや、データの見える化をより簡単に、ダッシュボードの作成も実務運用を想定しています。

▼「タレントマネジメントシステム」についてさらに詳しく
【完全版】タレントマネジメントとは?基本・実践、導入方法まで解説
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HR大学編集部
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