ブルームの期待理論とは?具体的に分かりやすく解説
- 期待理論とは?簡単に言うと
- ブルームの期待理論の定義
- その他のモチベーション理論について
- ポーターとローラーの期待理論
- マズローの欲求5段階説
- 生理的欲求
- 安全欲求
- 社会的欲求
- 承認欲求
- 自己現実欲求
- ピグマリオン効果
- 期待理論がなぜビジネス面で注目されているのか
- 期待理論はモチベーションアップに繋がるから
- 組織全体のパフォーマンスアップとなり企業成長に繋がるから
- 報酬だけではなく心理的達成感を求める人が増えたから
- 上司と部下の関係性を強めることが出来るから
- 期待理論の具体的な活用方法
- 従業員に魅力ある目標を設定させる
- 目標達成までのプロセスを体感させる
- 企業側がしっかりバックアップする
- 目標達成の心理的フィードバックをする
- 期待理論を活用するメリット
- モチベーションアップだけでなくメンタルヘルス向上にも役立つ
- 人間関係を良好に保てる
- 離職防止に繋がる
- 生産性の向上・新企画の開発などへの影響が期待できる
- まとめ
期待理論とは?簡単に言うと
期待理論とは、「何かの行動に対して魅力ある報酬(報われる成果)が得られると分かっていればモチベーションが上がって頑張れる」という考え方のことです。
分かりやすく、具体例をあげてみます。
会社からの目標設定として以下の二つを比べてみましょう。
今月はこの商品を100個売ってください
今月はこの商品を100個以上売った人にはボーナスとして10万円出します
この二つを比べた場合、「目標を達成すると報酬が得られる」という後者の目標設定の方が、目標達成に対する期待が高まり、頑張ろうというモチベーションへ繋がることが明らかです。この考え方が「期待理論」です。
成果は報酬に限らず、表彰や昇進という「心理的方法」などもありますが、結果的に本人が成果に対して期待して頑張れるかどうか、という考えの事を言います。
それではこの「期待理論」について詳しくみていきましょう。
ブルームの期待理論の定義
期待理論の中に「ブルームの期待理論」というものがあります。ブルーム氏によって1964年に提唱されたもので、モチベーション理論の基礎と言われるものです。目標や成果に対して報酬(努力が報われる結果)が分かっていれば、行動に対してモチベーションが上がるというものです。
ブルームは以下の3つの事でモチベーションの高さを数値化できると提唱しています。
期待
職務遂行への努力が成果(報酬など)に結びつくという期待のこと。
道具性
目標達成の後、さらに何が得られるかというもの。目標達成のために頑張った成果が次の目標への自分自身の成長に繋がるという期待の大きさのこと。
誘意性
提示された報酬がどれほど魅力的かというもの。魅力的であればあるほど誘意性は高くなる。
この三つを用いて、モチベーションの高さを数値化するためには
「モチベーション=期待性×道具性×優位性」
と考えられます。
その他のモチベーション理論について
モチベーション理論には「ブルームの期待理論」の他にも以下のようなものがあります。
ポーターとローラーの期待理論
ポーターとローラーの期待理論とは、1968年に「リマイン・ポーター」と「エドワード・ローラー三世」によって発表されたものです。彼らの著書「Managerial Attitudes and Performance(管理職の態度と業績)」に記されています。
この理論を簡単に説明すると、努力した結果として得た報酬の満足度によって、その後の行動(モチベーション)の度合いが決まるというものです。
この理論の特徴としては、報酬で得た満足感がモチベーションに直結するというもので、簡単に表すと以下のような「好循環のループ現象」が起こり得るという考え方です。
マズローの欲求5段階説
期待理論と似ている理論として、マズローの欲求5段階説があります。これは人間が成果を出すためには、成功した際の満足感に「期待」することが重要だという点が似ているとされています。それでは詳しくみていきましょう。
マズロー(Abraham Harold Maslowアブラハム・ハロルド・マズロー)とは1908年にニューヨークで生まれた心理学者です。乏しく差別に苦しむ生活を送っていました。しかし両親が教育熱心だったため大学の博士号を取得し、大学や大学院を経て心理学の研究に力を入れていました。その後マズローは1954年に「motivation and personality」という本を出版し、この中に記した「5段階欲求」が広まって行き、有名になりました。
マズローの5段階欲求とは
「人間は自己実現に向かって絶えず成長する生きものである」という仮定を元にし、人間の欲求を5段階に理論化したものです。
5段階欲求はピラミッドのように表され、下の段階が満足すると次の段階へそれが満たされるとまた次の段階へと上がっていくものです。
5つの欲求とは以下のものです。
下位段階の欲求から順に見ていきましょう。
生理的欲求
生命を維持するための本能的な欲求のこと。五段階欲求の中では最も低いレベルの欲求とされています。具体的には以下のようなものです。
食欲
睡眠欲
性欲
排せつ欲
安全欲求
1の生理的欲求が満たされると、次に出てくる欲求が安心して安全な生活を送りたいという欲求です。具体的には以下のようなものです。
経済的安定性を求める欲求
健康状態の維持をしたいという欲求
より良い生活水準への欲求
事故の防止
社会的欲求
2の安全欲求が満たされると出てくる欲求が、自分が社会に必要とされ、社会的役割を果たしたいという欲求です。具体的には以下のようなものがあります。
会社・学校・団体などに所属していたい欲求
孤独・追放・誰かに拒まれる・無縁状態などを避けたいという欲求
相談できる仲間・自分を必要としてくれる人・愛情の欲求
承認欲求
3の社会的欲求が満たされると出てくる欲求が、自分が集団から価値のある存在だと認められ、尊重されることを求める欲求です。これは低層と高層に分けられます。具体的には以下のようなものです。
低層
他者から尊敬されたい欲求
地位・名声・名誉・利権といった他者から承認されたいという欲求
高層
自分自身の高評価
自己尊重感
自己肯定感
自分の能力を高めたい
自己現実欲求
4の認証欲求が満たされると出てくる欲求が、自分の持つ能力や可能性を最大限に発揮し、どうなりたいのか「自身が求める自分」になりたいという欲求です。具体的には以下のようなものです。
会社のミッションの達成に貢献したい
自信の能力を発揮して社会に貢献したい
ピグマリオン効果
ピグマリオン効果とは、教育心理学の中の心理的行動の一つです。他者からの期待によって「その期待に応えるために成果が出せる」という心理効果のことです。
アメリカの教育心理学者ローゼンタール氏によって発表された心理学用語です。これは「教師期待効果」や「ローゼンタール効果」とも呼ばれています。またこれとは全く逆で、教師が期待しないことによって成績が下がることを指す「ゴーレム効果」というものもあります
ピグマリオンの語源
ピグマリオンという言葉はギリシャ神話からきています。
昔ピグマリオンという彫刻家の王様がいました。王様は自分が彫り上げた美しい女性に恋をしました。そしていつか本物の人間の女性になってほしいと期待し切実に願い続けました。それを哀れに思った神様が、その彫刻の女性に命を与えてピグマリオンはめでたくその女性と結ばれました。
この神話が由来となり、期待をすることで成果が得られるという意味で、ピグマリオン効果と名付けられたと言われています。
期待理論がなぜビジネス面で注目されているのか
「期待理論」がなぜビジネス面で注目されるのか、その理由についてみていきましょう。
期待理論はモチベーションアップに繋がるから
昨今では、多くの企業が人材育成に力をいれています。スキルアップや能力アップについては「研修」や「実践」を通して自然と身に付けることが期待できますが、精神面の育成については人それぞれの性格があるため非常に難しいと言われています。
これまでみてきたように、「期待理論」の考え方では行動の先に何かを期待することによって頑張ろうというモチベーションに繋がります。これを人材育成に活用してモチベーションアップに繋げたいという企業が増えているのです。
組織全体のパフォーマンスアップとなり企業成長に繋がるから
「期待理論」を活用して、個々のモチベーションを上げることができたら、自然と組織全体に活気が出て以下のようなパフォーマンスアップに繋がります
仕事効率の向上
チームワークの向上
新企画案など
これらが実現できると結果的に企業成長へと繋がると考えられるからです。
報酬だけではなく心理的達成感を求める人が増えたから
期待理論で唱えられているように、行動の結果で得られる達成感は「報酬」によってのみ与えられるのではなく、「表彰される・承認される・褒められる・尊敬される」といった精神的満足から成り立つものも多いのです。このように心理的な達成感を求める人が増えたからです。
ここで企業側が具体的に行うべき重要なことは、「人事制度」を整えることです。社員全員に対し平等に評価をし、報酬・昇進・昇給などを行うということ。この体制を整えることがまず第一歩だと言えるでしょう。
人事制度について詳しくは以下をご参照ください。
https://www.hrbrain.jp/contact-hrdesignmanual
上司と部下の関係性を強めることが出来るから
これまで見てきたように、企業の管理職側が「期待理論」を良く理解して部下と接することができたら、お互いの関係性は良好なものとなることでしょう。「上司のために頑張りたい・上司が褒めてくれるから頑張ろう」と部下が思えるようになることが大切です。これは自然と人材育成や仕事効率アップにも繋がっていきます。
期待理論の具体的な活用方法
それでは実際にこの「期待理論」をどのように活用すれば良いかについて、具体的にみていきましょう。
従業員に魅力ある目標を設定させる
まず第一歩として、魅力ある目標を設定させます。目標を達成したら何かを得られるという期待をもたせます。ここで重要なのは、「期待」したことが「実現」されなければならないということです。「期待外れ」という言葉がありますが、期待したことが実現できなかった場合はモチベーションを下げるという結果になる可能性があります。そうならないように注意しなければなりません。
目標達成までのプロセスを体感させる
次に目標達成までの道のりをしっかり体感させることです。達成に近づくにつれてモチベーションも変化していくため、このプロセスを体感させることが重要となります。段階を踏んだ目標設定や、周りの「声かけ」などといった方法が有効的と言えるでしょう。
企業側がしっかりバックアップする
「期待理論」の精神面だけでなく仕事効率という面でも企業側のバックアップが重要となります。企業側のサポートは「もっと会社の役に立ちたい」「次も頑張ろう」というモチベーションにも繋がっていきます。企業側が目標達成のためのバックアップをしっかりと行いましょう。
目標達成の心理的フィードバックをする
最終的に重要なのは、目標達成の際の心理的なフィードバックをすることです。「1on1ミーティング」を実施する企業が増えていますが、それは「部下の成長促進」へと繋げることができるからです。期待していた成果を上司と具体的に話すことで、さらなる次への目標へと繋げていくことがとても大切なのです。
詳しくは以下をご参照ください。
1on1ミーティング入門書〜1on1を雑談で終わらせないためには〜
期待理論を活用するメリット
具体的な活用方法まで見てきましたが、ここからは「期待理論」のメリットについて見ていきたいと思います。
モチベーションアップだけでなくメンタルヘルス向上にも役立つ
期待理論の活用によってモチベーションアップになれば、そのことによってメンタルヘルスの向上も期待できます。仕事に対してモチベーションが上がるということは、仕事自体が「有意義な時間」「やりがいのあるもの」と感じられ、メンタル面を良好に保つことに役立つのです。その結果、人間関係や上下関係も自然と上手く行くと考えられます。
人間関係を良好に保てる
「期待理論」を活用することで、個々のモチベーションがあがれば活気が生まれ、コミュニケーションも多くなります。仕事に対して「自信」が生まれれば、周りとのコミュニケーションも楽しく感じられるからです。また、目標達成のために協力しあえるメンバーを意識することで会話が増えると考えられます。向上心ある者同士、自然と人間関係を良好に保つことができると期待できます。
離職防止に繋がる
仕事に対してモチベーションがあがれば、仕事に対する「やる気」が出ます。離職の原因で最も多いと言われるのが「人間関係」ですが、仕事が上手くいけば人間関係も良くなり、その結果離職防止へ繋がることが期待できます。
生産性の向上・新企画の開発などへの影響が期待できる
従業員のモチベーションが上がることにより、仕事効率アップ・新企画の開発などへの影響も期待できます。活気が出て、お互いに刺激しあって仕事が進められるので、全体的に良い結果が期待できます。
まとめ
「期待理論」についてみてきました。人間の行動に対するモチベーションは、その先の成果や報酬を期待することで上がることが分かりました。
企業の人材育成という面で、従業員のモチベーションアップは非常に重要です。しかし実際にはこの精神面の育成が最も難しいとも言われています。実際にこの部分の育成が上手くいかず、仕事効率の低下や、離職率の向上に繋がってしまっている企業が沢山あります。
大切なのは、まず教える側が従業員に対して「成長できる人材」だと期待してあげることではないでしょうか。企業成長のために人材育成に力を入れる企業は、今後「人事体制」を見直すことがとても大切だといえるでしょう。期待理論を活用して個々のモチベーションをアップすることで、組織全体のパフォーマンスを向上させ、企業成長へと繋げましょう。
人事体制に興味のある方はぜひ以下をご覧ください。
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