#人材育成
2024/08/28

リーダー資質の診断方法は?資質診断のメリットや各種理論も紹介

目次

職場や部署において強いリーダーシップを持ったリーダーがいることは、円滑なコミュニケーションや業績の向上において大切なことです。

では、リーダーのタイプにはどのような種類があるのでしょうか、また自分がどのようなタイプのリーダーになっていくべきなのでしょうか。

この記事では、リーダーシップを持つことの重要性、リーダーシップの各タイプ、強いリーダーシップを持つ人材となっていくにはどのような方法があるのかなどについて説明していきます。

リーダーシップとは何を指すのか

まず、リーダーシップとは何を意味するのでしょうか。
「リーダーシップ」とは日本語に訳すと「指導力」「統率力」といった意味になります。

職場や部署においてリーダーとは、他のメンバーやプロジェクトチームの先頭に立って皆を引っ張っていく存在なのです。

リーダーシップとはこのように、他のメンバーに対して業務における明確な目標を示し、メンバーの行動・それに伴う成果を最大化させて、企業全体としての目標達成を実現させる能力と言えます。

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リーダーシップはなぜ必要?

近年、リーダーシップは適性を持ったごく限られた人だけではなく、従業員ひとりひとりが身に付けるべきスキルであるという考えが生まれています。

なぜ、個々の従業員にまでリーダーシップが必要とされているのでしょうか。

それには、企業を取り巻く環境が日々目まぐるしく変化していることが挙げられます。

それに伴い企業は、単に上司の命令に従うだけではなく、自ら考えて能動的に行動する人材、つまり周りの人を引っ張り、行動・成果を最大化させる人を求めるようになってきているのです。

また、メンバーひとりひとりの方向性やビジョンが異なり、ばらばらになっていては目指す目標に向かって最大限の力を発揮することはできません。

各従業員がリーダーシップを持つことでメンバーひとりひとりが力を発揮させる方法を知り、目標への団結を強固にすることができるでしょう。

リーダーとしての資質を診断するメリット

個人が自身のリーダーとしての資質・タイプを診断することにはどのようなメリットがあるのでしょうか。

リーダーのタイプには現在に至るまでさまざまな理論が提唱されています。

リーダーとしての自分の資質・タイプがどのパターンに当てはまるのかを知ることにより、今後どのような点を伸ばす、または改善していくべきなのかを考え、自分のやり方を見直すことができます。

また、自分の知らないリーダーシップスタイルを知ることで、今後目指すべき自分のリーダー像が見えてくる場合もあります。

PM理論とは

PM理論は、社会学者である三隅二不二(みすみじゅうじ)氏が1966年に提唱したリーダーシップ理論です。

誰にでも分かりやすく汎用性も高いことから、提唱から約60年経つ現代でも多く用いられています。

PM理論はリーダーが取る行動に着目しており、各行動を「P(Performance)=目標達成機能」、「M(Maintenance)=集団維持機能」の「P」と「M」の2つの軸をもって定義します。

目標達成機能を指すP機能

P機能はPerformance function=目標達成機能という意味を持ち、端的に言えば業務上の成果を上げるために発揮されるリーダーシップを指します。

具体的には目指す指標・業績に到達するための目標設定、各業務・プロジェクトなどを進めるための計画立案、共に業務に携わるメンバーへの指示などがそれに当たります。

このP機能について、目標を達成することを重視するタイプのリーダーは大文字のPで表記します。

逆に、目的を達成する能力の低いリーダーは、小文字のpで表記します。

集団維持機能を指すM機能

M機能はMaintenance function=集団維持機能)という意味を持ち、端的に言えば部署全体やプロジェクトチームなどの一定の組織・集団をまとめるために発揮されるリーダーシップを指します。

各メンバー間、またリーダーとメンバー間の関係を良好に保ち、目標達成に向けた全体のチームワークを維持・強化する機能と言えます。

このM機能について、チームの調和を重視するタイプのリーダーは大文字のMで表記します。

逆にチームをまとめることが苦手なリーダーは、小文字のmで表記します。

PM理論によるリーダーの分類

上記のP・Mそれぞれの機能性から以下のようにタイプを分類します。

  • PM型リーダータイプ

目標達成能力・集団をまとめる能力が共に高いリーダータイプ

  • Pm型リーダータイプ

目標を達成することを重視するあまり、チーム内の人間関係に目が行き届かなくなっているリーダータイプ

  • pM型リーダータイプ

チーム内の雰囲気を大切にできるものの、目標達成ができないリーダータイプ

  • pm型リーダータイプ

目標を達成する力も集団をまとめる力も低いリーダータイプ

6つのリーダーシップとは

リーダーシップの考え方として、アメリカの心理科学者・ダニエル・ゴールマン氏が提唱した「6つのリーダーシップ」も有名です。

この提唱では、以下のようにリーダーシップを6つに分類しています。

ビジョン型

1つ目に挙げられるのがビジョン型リーダーシップです。

このビジョン型リーダーシップとは、リーダーとメンバー間で共通の夢・目標を持ち、その達成・実現に向けて共に取り組んでいくやり方です。

リーダーは目標達成の基準となる指標を示しますが、そこに至るまでのプロセスは実際に業務に取り組むメンバー同士で決めることになります。リーダーは表に出過ぎず、メンバーを補佐する役目を担うのです。

補佐をするリーダーと実際に業務を進めるメンバーとで立場は違うものの、共通の夢・目標を追いかけることにより、メンバー同士の団結・帰属意識が高まると同時に、メンバーだけでプロセスを計画し進めていくことで個人の自立心を高めることができると考えられます。

コーチ型

2つ目に挙げられるのがコーチ型リーダーシップです。

コーチ型リーダーシップとは、言葉の通りコーチとして各メンバーの目標についてのサポートをしながらチームを成長させていく方法です。

モチベーションの高いメンバーに対して、特に効果的と考えられています。

コーチ型リーダーシップを発揮するには、各メンバーの立場に立って適切なサポートを行うためのリーダー自身の十分な経験と洞察力、メンバーとの関係を良好に保っていけるコミュニケーション能力が求められます。

関係重視型

3つ目に挙げられるのが関係重視型リーダーシップです。

関係重視型リーダーシップとは、ひとりひとりのメンバーと同じ目線に立ち、メンバーと良い関係を築くことを重視して進める方法です。

過去に何らかのトラブルによって悪化してしまった人間関係を立て直したり、部署やプロジェクトチームなど組織全体のモラルを高めたりしたい場合に特に効果的です。

この関係重視型のリーダーシップは、主にビジョン型リーダーシップと併せて用いられることが多くなっています。

民主型

4つ目は民主型リーダーシップです。

民主型リーダーシップとは「民主」の言葉通り、各メンバーの考えや意見を傾聴し、それらを部署やプロジェクトでの業務活動に反映させようとする方法です。

リーダーだけの考えで業務を進めるのと違い、各メンバーが考えた提案や業務改善などに向けた意見を広く受け入れられるため、生産性や業績を向上させるための新しいアイディアが生まれやすいことが特徴です。

その一方で、あまりに多くの意見や細かな提案が集まると、結輪や方向性を決めるのに時間がかかり、即時の決断が求められる緊急時の判断が難しくなる場合があります。

ペースセッター型

5つ目はペースセッター型リーダーシップです。

ペースセッター型とは、リーダーが自らメンバーに向けて手本を示すことで、その後のメンバーのパフォーマンス向上を促す方法です。

実力重視の職場・部署で、ひとりひとりのメンバーの実力が高い時に効果を発揮します。

各メンバーのサポートをするコーチ型リーダーシップと似ているように思えますが、ペースセッター型は直接メンバーをコーチングするのではなく、あくまで手本を示し、目標達成へ向けたビジョンを持たせることが狙いです。

強制型

最後は強制型リーダーシップです。

強制型リーダーシップとは、リーダーが業務進行における全ての権限を持ち、メンバーに強制的に従わせる方法です。

リーダーが全ての権限を持っていることからメンバーに対する具体的な説明などはなく、リーダーからの命令にメンバーたちは即座に従うことが求められます。

強制型リーダーシップのメリットとして、災害などの非常時でも対応について素早く決断を下せ、危機を脱せられることが挙げられます。

一方で、全ての指示をリーダーが出すため、メンバー個人の成長や自立心を育てることが困難になりがちな点が短所と言えます。

また、場合によっては各メンバーの自尊心やモチベーションが失われ、リーダーとメンバー間、各メンバー同士での人間関係が悪くなることが考えられます。

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SL理論とは

リーダーシップのタイプを分類するものの一つとして、SL理論があります。

SL理論はSituational Leadership Theoryを略したものであり、ハーシィ氏・ブランチャード氏によって1977年に提唱されました。

SL理論の特徴は「仕事志向」「人間志向」の強さによって教示・説得・参加・委任の4つのカテゴリーがあり、各カテゴリー毎にリーダーシップの有効性を示している点にあります。

SL理論

教示的リーダーシップ

教示的リーダーシップは分類として「S1型」と呼ばれ、成熟度は低いものの熱意がある部下に必要とされるスタイルと言えます。

リーダーはメンバーの業務における目標の設定や、それを達成するために行う具体的なプロセス内容まで指示し、常に間違っている箇所・困っている箇所がないかをチェックします。

このようにメンバーに対して仕事上のゴールを明示し、そこへの道順まで示してもらえるため、教示的リーダーシップの下では部下は安心して業務を進められます。

説得型リーダーシップ

説得型リーダーシップは分類上では「S2型」と呼ばれ、別名コーチ型リーダーシップとも呼ばれます。

教示的リーダーシップの下で経験を積んだメンバーに成長が見られたら、リーダーシップの形を教示的からこの説得型のスタイルに変えることが多いようです。

教示的リーダーシップでは、メンバーに対して目標から業務プロセスまでを事細かに指示していましたが、説得型リーダーシップではメンバーとコミュニケーションを取りながらも指示を徐々に減らしていき、質問を投げかけたりリーダーの考えを教えたりするようになります。

ただ、指導の中でメンバーのモチベーションが下がることのないよう、リーダーはメンバーが行う業務に組織としてどのような目的があるのかを共有したり、細やかなフィードバックを行ったりするよう心がけることが重要です。

参加型リーダーシップ

参加型リーダーシップは「S3型」と呼ばれ、高い能力を持ちながらも意思決定が苦手なメンバーや、仕事に対する意欲が低いメンバーに対して用いられます。

自分一人で業務における物事を決められないメンバーや、業務に対していまひとつ熱意を持てないメンバーに対しては、リーダーからの積極的なコミュニケーションが必要です。

メンバーが良い行動や試みをした際にはその点をしっかりと認めて褒め、アドバイスを与えることなどが大切です。

そのように個人の努力や功績を認めることで、メンバーが自信と主体性を持てるようになることが期待できます。

委任型リーダーシップ

委任型リーダーシップは「S4型」と呼ばれ、業務を遂行するレベルや仕事への意欲が高く、自信を持って業務を行えるメンバーに向いています。

このようなメンバーは自分でやるべきことや方向性を考えて実際に行動することができるため、細かな指示やコミュニケーションが必要ありません。

普段はメンバーが行うやり方に任せ、困っている時には助け舟を出す方法が最適です。

リーダーとしての資質を育てるには

部署やプロジェクトを牽引するリーダーには、強力なリーダーシップが不可欠です。

では、自分のリーダーとしての資質を育て、リーダーシップを高めるにはどのようなことを心がければ良いのでしょうか。

こちらでは、リーダーとしての資質を育てるための4つのポイントについて説明します。

自分のリーダーシップスタイルを理解する

PM理論やSL理論など、リーダーシップに関する理論はこれまでいくつも生まれており、その考え方や理論のベースもさまざまです。

現在までに提唱されているそれらの理論について知り、自分がどのようなリーダーシップスタイルに向いているのか、部署・プロジェクトチームのためにはどのようなリーダーシップスタイルが適しているのかを理解することは重要です。

自分のリーダーシップスタイルを理解した上で現実の状況に落とし込み、今後どのようなリーダー像を目指すべきかを考えることで、今後リーダーとしてより良いパフォーマンスを発揮できるでしょう。

自分の長所と弱点を理解する

今後、自分がどのようなリーダーになっていきたいかを考える上で、自分が何が得意で何が不得意なのかを把握しておくことは大切です。 

自分がこれまでに得た資質や、これから習得していかなければならない資質は何なのか、一度じっくり考えてみましょう。

答えが見つからない場合は、信頼できる他のメンバーに客観的な意見を求めることで、意外な長所や弱点に気づける場合もあります。

自分の長所と弱点を理解できれば、目指すリーダー像に何が足りないか、どのようなスキルが必要かを考えやすくなるでしょう。

周りの人の声を積極的に取り入れる

一つの部署やプロジェクトチームを動かす中で、メンバーひとりひとりの声は業務改善のための貴重な手がかりです。

そのため、リーダーはメンバーが挙げる声を積極的に取り入れ、より生産性が高く円滑に業務が回るよう努めていく必要があります。

周りの声を積極的に聴こうとする姿勢は、他メンバーにも自然に伝わります。

その姿勢が伝われば、メンバーからも意見やアイデアを発信しやすくなり、活発な意見交流が行われるようになることが期待できます。

何事にも柔軟に対応する力を身につける

リーダーは部署・プロジェクト等の最終的な意思決定を担うことになるため、その時々の状況に合った判断ができることが求められます。

特に何らかのトラブルや緊急事態などのイレギュラーな状況に遭遇しても、冷静かつ柔軟に状況を把握し、最善の方法を考えられる柔軟な対応力が必要です。

まとめ

リーダーシップには各種の理論・視点から見たさまざまな分類があり、状況に適したリーダーシップを発揮することで部署・チームでの生産性や業績が向上することが期待できます。

そのため、現在実際にリーダーに立っている人、これからリーダーを目指す人などにとって、それぞれの状況にどのようなリーダーシップスタイルが適するのかを知っておくことは大切です。

また、将来的に自分が目指すリーダー像に近づくためには、どのようなことに気をつければ良いのかを考えることも有意義でしょう。

どのようなリーダーを目指せば良いのか分からない、今のリーダーシップスタイルに疑問や迷いを感じている方は、一度自分の思い描くリーダーシップスタイルが企業や部署の状況に適しているかどうかを、各理論の観点から考えてみてはいかがでしょうか。

HR大学編集部
HR大学 編集部

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