#人材管理
2024/08/26

戦略人事のためのERPとは?企業規模別システムまとめ

目次

事業戦略の実現をサポートするという戦略人事の重要性が増しているなか、ERPを活用したピープルアナリティクスやタレントマネジメントが注目されています。

今回は、戦略人事のためのERP活用方法や導入のメリット・デメリット、サービス比較について解説いたします。

ERPとは

戦略人事の重要性が高まるなか、ERPを使ったピープルアナリティクスとはどのようなことか、ERPの基本も踏まえて説明いたします。

ERPを使ったピープルアナリティクスとは?

ERPとは「Enterprise-Resources-Planning」の略であり、企業資源計画を意味します。経営資源である「ヒト、モノ、カネ、情報」の最適配分を行う計画の考え方ですが、この考え方に基づいた基幹システムをERPといいます。

具体的には、「人事・給与」「生産」「販売」「会計」などの複数の基幹システムが統合されていることからデータの一元管理が可能です。経営の意思決定にデータを活用することができ、「統合基幹業務システム」といわれることもあります。

また、複数のシステムが統合されていることから、手間なくリアルタイムにシステム間のデータ連携できるメリットがあります。

さらに基幹システムについて詳しく知りたい方は「人事領域の基幹システムとは?背景から人事システム導入までを解説」をご確認ください。

ERPの種類は

ERPは、「利用形態」「構築方法」の切り口で4つの種類があります。

「利用形態」の切り口では、「オンプレミス」と「クラウド」の2つ、「構築方法」の切り口では、「パッケージ」と「フルスクラッチ」の2つにそれぞれ分けられます。

オンプレミス

オンプレミスは英語で「on-premise」と表記され、直訳すると「敷地内に」という意味です。形態としては、自社内にサーバーを設置し、社内ネットワーク内で運用するERPです。

社内ネットワーク内での運用なので、セキュリティはクラウドと比較すると優れているほか、カスタマイズが自由に行えるメリットがあります。ただし、ソフトや設備の初期費用などは高額です。

クラウド

クラウド上に構築されたERPであり、インターネットを介して運用するERPです。システムがクラウド上にあることから自社にサーバーをおく必要がなく、サーバーやOSのバージョン管理やリプレイスが不要で、初期費用やランニング費用を抑えることができます。

なお、クラウドの形態には「パブリッククラウド」と「プライベートクラウド」の2種類があります。

・パブリッククラウド

インターネット上で他社との共同で利用する仕組みですが、「プライベートクラウド」は自社専用のサーバーをベンダーが用意した安全な環境におき運用する仕組みです。

・プライベートクラウド

クラウド上で人事管理システムと他ベンダーの人事評価クラウドなどとリアルタイムにシステム連携できないため留意が必要です。

パッケージ

一般的に必要な機能が備えられており、仕様設計はパラメータで設定する仕組みとなっているERPです。導入コストはフルスクラッチに比べて安価に抑えることができますが、特殊な商習慣や自社仕様などはパラメータで調整できない可能性があります。

フルスクラッチ

一から自社仕様に作り上げる受託開発によるERPです。オーダーメイドですので、基本的には自社仕様にあわせることができますが、費用は高額であるほかバージョンアップ時にもカスタマイズした事項を継承するために費用がかさむ可能性があります。

戦略人事におけるERPを使ったピープルアナリティクスとは?

戦略人事としてのERPとは

ITの革新的な進化により、急速に進んでいるクラウドシフト(基幹システムのクラウド化)とそれに伴うビッグデータの活用などにより、戦略人事の重要性がより増してきています。

このようななか戦略人事としてのERPは、保有している人事データを経営の意思決定に活用し、人事戦略の要となるシステムとして位置付けられる基幹システムといえます。

人事部門が導入するERPは、人事管理システム・給与管理システム・労務管理システムがありますが、経営の意思決定に活用する人事データは主に人事管理システムのデータが中心になります。

ERPを活用したピープルアナリティクス

ピープルアナリティクスは、採用・配置・退職における人事業務の一連データが分析の対象になっており、このデータ分析によって人事課題の解決することが目的です。

例えば、採用業務において面接官の感性に任せていた場合、面接官によっては評価にブレが生じることがあります。このブレをなくすために、適性テストの結果や行動特性、志向性など自社で活躍している人材の傾向を分析し、この分析結果の傾向にあった応募者を抽出するといった活用方法が考えられます。

ただし、ERPの人事管理システムでは、基本的にピープルアナリティクスの機能を有していないことが多いため、できることに限りがあります。

例えば、退職者の予測のようなシミュレーション分析は、基本的にはピープルアナリティクス機能を有した人事評価クラウドなどを導入することが必須です。この場合、人事データは、ERPの人事管理システムから人事評価クラウドにデータを取り込む形式が主となります。

さらにピープルアナリティクスについて詳しく知りたい方は「ピープルアナリティクス~Googleが注目する人事の問題解決手法~」をご確認ください。

ERP導入でできることと各々の役割

ERP導入でできること

ERPは統合基幹業務システムであることから、複数の基幹システムをERPで運用することでデータの一元管理を行えるメリットが生まれます。

ただし、ベンチャー企業でもない限り、生産や販売、会計などの基幹システムについて、同一の新たなERPを一括導入するようなケースは少ないと考えられます。

そのため、ここでは人事に関連した基幹システムについてERPを導入した場合を中心に紹介いたします。

人事管理

人事管理システムでは、従業員の入社から配置、退職までの一連の人事業務に関する基幹システムであり、従業員の住所や家族情報などの個人情報管理や所属情報、スキル、経歴などの管理、人事発令などの人事業務を行うことが可能です。

給与管理システムとセットでERPとして運用している場合は、人事管理システムで発令したデータを給与管理システムに連携することなどができます。

また、経営課題を解決する手段として、優秀な人材をマネジメントする目的の「タレントマネジメントシステム」が近年注目されています。タレントマネジメントシステムは、自社の保有する人事データを見える化し、経営課題に応じた優秀な人材を分析・抽出するシステムです。

このタレントマネジメント機能を有した人事管理システムであればこれらの分析が可能ですが、タレントマネジメントシステムを有していない場合は、人事管理システムから人事評価クラウドなどにデータを取り込む形式が主となります。

さらにタレントマネジメントシステムについて詳しく知りたい方は「【完全版】タレントマネジメントとは?基本から実践的な方法まで解説」をご確認ください。

タレントマネジメントシステムはどのような効果があるのか?導入事例を学びたい方のために、クラウド型人材管理システムの「HRBrain導入事例集」をご用意しました。ぜひご活用ください。

給与管理

給与管理システムは、給与計算を行うためのシステムであり、月次の給与計算や賞与計算、税金計算や年末調整ができるシステムです。

カスタムメイドのシステムとは違い、法改正や税制改正があったときにはシステムベンダーにて対応しますので、法令遵守の観点でも企業としては必須の基幹システムです。なお、人事システムとセットでERPを導入していれば、人事システムのデータを連携することが可能です。

労務管理

労務管理システムは、健康保険や雇用保険などの手続き、従業員情報の管理を行うシステムですが、給与管理システムに内包しているものが多くあります。

雇用保険の申告や給与支払報告書、マイナンバーの管理なども対応しているほか、資本金1億円以上の企業が義務化されている社会保険の電子申請について、政府のプラットフォームであるe-Gov「電子政府窓口」などにも連携できる仕組みがあるERPもあります。

人事業務にERPを導入するメリット/デメリットと企業別の導入の考え方

人事業務にERPを導入するメリット・デメリット

人事業務にERPを導入するメリットとデメリット、企業規模別の導入の考え方を説明いたします。

人事業務にERPを導入するメリット/デメリット

ERPは、「ERPの種類」で前述したように利用形態の切り口として「オンプレミス」と「クラウド」、構築方法の切り口では「パッケージ」「フルスクラッチ」の形態がありますが、企業規模毎に望ましい形態があります。

ただし、利用形態として、クラウドシフトの背景から、旧来主流であったオンプレミスからクラウドに移行する動きが加速化していますので、戦略人事の観点からも「クラウド」を選定することが多くなっていく見込みです。

ERPのメリットは、クラウドを選定すれば、クラウドベースのタレントマネジメントシステムやピープルアナリティクスなどの人事評価クラウドに自動連携できる等のメリットがあります。

自動連携によって、データを取り込む都度、手作業でデータ連携を行うことなく、リアルタイムで人事評価クラウド

などを運用することが可能となります。

ただし、プライベートクラウドの場合は、クラウド上の自動連携はできないことに留意が必要です。

また、生産・販売・購買・会計・人事・給与といった複数の基幹システムが同一のERPであれば、データを一元管理して経営の意思決定ができるほか、業務効率化を図ることが可能です。

他方、デメリットは、企業独自の仕様をフルスクラッチで開発していた場合、ERPでは高額になるほか実現できない可能性もあります。また、複数の基幹システムが同一のERPでないと、リアルタイムにデータを一元管理できるメリットを享受できません。

企業規模別のERP導入の考え方

次に、企業規模別のERP導入の考え方を説明いたします。

【従業員1,000名以上の大企業】

大企業では、旧来主流であったオンプレミスでフルスクラッチの基幹システムを運用していることが大半です。そのため、企業独自の仕様に合わせてカスタマイズしているなど、個別の基幹システムで部分最適化されていることが多く、選定するERPの形態としては自由にカスタマイズ可能なフルスクラッチが適しています。

とくに大企業は、様々な自社独自の仕様をフルスクラッチで作りこんでいるケースが多いため、新たなERPに移行することは莫大な費用が見込まれます。また、全体最適の観点でERPシステムで基幹システムを統一しようとしても各事業部門が抵抗勢力となり、導入が困難な可能性もあります。

【従業員1,000名未満の中堅企業】

中堅企業においては、パッケージ、もしくは大企業と同様にオンプレミスでフルスクラッチの基幹システムを導入していることもありますが、ERPは中堅企業向けの製品であれば、大企業ほどのリプレイス費用はかからないと考えられます。

ただし、フルスクラッチのERPは費用対効果の観点では、コストが見合わない可能性があります。そのため、できる限りパッケージを導入し、自社仕様を適用する必要がある場合は、カスタマイズが行えるパッケージを選定することも有効です。

【従業員100名以下の中小・ベンチャー企業】

中小・ベンチャー企業の場合は、パッケージの基幹システムを導入しているか、基幹業務のすべてに基幹システムを導入していないケースもあると考えられます。

そのため、独自の仕様を既存のシステムに組み込んでいることが少なければ、ERPに刷新することも考えられます。ただし、要件定義をしっかりしていないと、実現しなければならない仕様がERPで適用できないことがあり得ますので十分に注意が必要です。

また、成長段階にあるベンチャー企業は、各成長段階で組織再編があり得ますので、組織や制度変更が容易に行えるように極力カスタマイズは控え、パッケージのパラメータ調整の範囲で対応することが望まれます。

【企業規模別】人事業務に役立つERPサービス比較まとめ

ERPサービス比較まとめ

次に、人事業務に役立つERPサービスの企業規模別比較を紹介いたします。

従業員1000名以上の大企業

【Infor SyteLine】

この製品は製造業に強く、あらゆる生産形態に対応したERPでグローバル展開している企業の全体最適化に適したERPといえます。

大手製造業でグローバルで決算早期化や経営意思決定の迅速化を行いたい企業にお勧めです。

対応エリア:日本を含む世界170カ国
費用:要お問い合わせ
導入社数:6千社以上
製品形態:オンプレミス/クラウド
サポート体制:要問合せ(サポートサイトあり)
対応範囲:管理会計、連結会計、外貨管理、税務申告、生産管理、BIツール

従業員1000名未満の中堅企業

【OBIC7】

この製品はあらゆる業種に対応しており、国内全体最適化に適したERPといえます。

プライベートクラウドの形態のため、セキュリティ面を重視したい、または特殊な商慣習対応や自社仕様などのカスタマイズを行いたい企業にお勧めです。

対応エリア:日本全国
費用:要お問い合わせ
導入社数:2万社以上
製品形態:クラウド(プライベートクラウド)
サポート体制:運用保守サポートは業務時間中に受付
対応範囲:管理会計、連結会計、外貨管理、生産管理、BIツール

従業員100名以下の中小・ベンチャー企業

【SAP Business One®】

この製品は、手ごろな価格で各基幹システムをERPとして導入可能で、各プロセスの連携および合理化を行いながら、企業の成長に合わせて拡張することができます。

ベンチャー企業など、各成長段階に合わせて柔軟にシステム拡張をしたい企業などにお勧めです。

対応エリア:日本を含む世界170カ国
費用:要お問い合わせ
導入社数:7万社以上
製品形態:パッケージソフト/オンプレミス/クラウド
サポート体制:24時間365日体制の運用保守サポート
対応範囲:管理会計、連結会計、外貨管理、税務申告、生産管理、BIツール

【まとめ】人材管理・タレントマネジメント・ピープルアナリティクスをカンタン・シンプルに

ERPの意味や種類、企業規模別のERPの導入の考え方のほか、注目されているピープルアナリティクスやタレントマネジメントなど、戦略人事のためのERP活用方法について解説しました。

人事領域におけるERPは、人事管理、給与管理、労務管理をセットでERPを導入することで、連携機能により業務効率化を図ることが可能です。

また、クラウドのERPを導入することにより、タレントマネジメントシステムやピープルアナリティクスなどの人事評価クラウドに自動連携できます。

そのため、戦略人事の観点では、ぜひERPのクラウドを導入し、HRBrainのような人事評価クラウドと連携することを検討しましょう。

HRBrainはタレントマネジメントとピープルアナリティクスを確かな成長につなげる人事評価クラウドです。

HRBrainは、従業員の目標設定から評価までのオペレーションの全てをクラウド上のソフトウエアで効率化するサービスです。MBOやOKR、1on1などの最新のマネジメント手法をカンタン・シンプルに運用できます。

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HR大学編集部
HR大学 編集部

HR大学は、タレントマネジメントシステム・組織診断サーベイを提供するHRBrainが運営する、人事評価や目標管理などの情報をお伝えするメディアです。難しく感じられがちな人事を「やさしく学べる」メディアを目指します。

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