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2024/08/15

ピボットで事業を転換させるには?言葉の意味や成功事例、成功させるポイントを解説

目次

ビジネスにおけるピボット(pivot)とは

ビジネスにおけるピボット(pivot)とは

ピボットは様々なシーンで使われる言葉です。今回は特に、ビジネスシーンにおけるピボットについて解説します。

ビジネスシーンにおけるピボットの意味

ピボット(Pivot)とは、英語で「回転軸」を意味します。回転軸という意味が転じて、ビジネスシーンでは「事業転換」や「方向転換」を表すようになりました。特にスタートアップ企業が成長を目指して、これまで取り組んできた事業から他の事業へ転換することをピボットと読んでいます。

エクセルの機能であるピボットとは

日常的によく使われる言葉としてのピボットでは、エクセルのピボットテーブル機能があります。ピボットテーブルは元データから、自由に項目を選んで分析できる機能です。項目を選ぶだけで、自動的に合計や平均が計算され、グラフも作成できます。ピボットテーブルは、まるで回転軸を変えるように様々な切り口から自由に分析できるため、ピボットという名称がついていると考えられます。

ピボットを行うメリットデメリット(効果とリスク)

ビジネスシーンでの事業転換としてのピボットは、とても難しい経営判断の一つです。これまでやっていた事業をやめ、新しい市場で新しい製品を提供することは大きなリスクです。万が一、失敗すれば取り返しのないことにもなります。一方で現在の事業を続けていても、成長の見込みがない場合はピボットするべきでしょう。ピボットに成功すれば、これまでよりも大きな成長を手にできるはずです。

ピボットの10個の型とは

ピボットは経営にとって大きな決断であるため、闇雲に行えばよいものではありません。幸いにも10個の型が用意されています。

Zoom-in pivot(ズームイン・ピボット)
ズームイン・ピボットは、製品の機能の一部をメインプロダクトに変更する手法です。例えば多機能なエアコンを販売するのではなく、冷風扇に絞って販売するといった考え方です。市場に競合がいる場合に、ある機能に特化することで差別化を測れるというメリットがあります。

Zoom-out pivot(ズームアウト・ピボット)
市場ニーズに応じて、これまで開発してきた機能を強化・拡大し、製品全体における主要機能に変更する方法です。

Customer segment pivot(顧客セグメント・ピボット)
製品を変えるのではなく、ターゲットとするユーザーが定まった場合に対象顧客のセグメントを変更する手法です。例えば女性用化粧品から男性用化粧品へとターゲットを変えるといったことが想定されます。

Customer need pivot(顧客ニーズ・ピボット)
顧客そのものを見直すことで、サービスの課題を再検証する手法です。

Platform pivot(プラットフォーム・ピボット)
「アプリケーションのプラットフォーム化」または「プラットフォームの放棄」を行う手法です。プラットフォームを目指すのではなく、単発のアプリとして販売するといた方法が考えられます。

Business architecture pivot(ビジネスモデル・ピボット)
収益構造を「高利小売」から「薄利多売」への変更、もしくはその反対を行う手法です。

Value capture pivot(収益モデル・ピボット)
広告収益やサブスクリプションなど、定期的な収入の発生源を変更する手法です。

Engine of growth pivot(成長エンジン・ピボット)
成長エンジンとは、企業が持続的に成長をするための原動力になるものであり、企業の成長の度合いを測る尺度として考えられています。成長エンジン・ピポットとは、現在自社が採用している成長エンジンの考え方を別の考え方に変える手法です。

具体的には、「スティッキー・エンジン(粘着型)」「バイラル・エンジン(ウイルス型)」「ペイド・エンジン(支出型)」といった3つ成長エンジンの考え方があると言われています。

Channel pivot(チャネル・ピボット)
いわゆる「販売チャネル」とよばれる販売経路または流通経路を変更する手法です。訪問営業から通販へ変更するといった例が該当します。

Technology pivot(テクノロジー・ピボット)
新しく生まれた技術を活用して、これまでと同じ問題を解決する手法です。より高性能なスマホで写真を撮影できるようになるといった方法です。

ピボットで事業転換をした成功事例

ピボットで事業転換をした成功事例

日本ではベンチャー企業に限らず、大企業もピボットに成功してきました。

TSUTAYA

レンタルビデオ店を全国に展開するTSUTAYAは、従来の店舗でのレンタルビデオ事業だけではなく、Tポイントカードを活用したマーケティング事業も展開しています。TUTAYAは、Tポイントカードによりレンタルビデオの利用だけではなく、他企業と提携して様々なお店でTポイントを使えるようにしました。それにより、顧客の趣味嗜好から行動履歴までをデータ化することができ、そのデータを様々な企業に提供してマーケティングへと活用しています。BtoCのサービスからBtoBへのサービスへと転換した素晴らしい事例と言えます。

富士フイルムの事業転換

日本で近年有名なのが富士フイルムの事業転換です。富士フイルムはもともと、写真フイルムの大手メーカーでした。しかし2000年代にデジタルカメラが普及すると写真フイルムの需要は大幅に激減。市場が消滅してしまうほどにまで縮小しました。会社の存続が危ぶまれるこの時期に、富士フイルムは写真フイルムの技術を応用して医薬品・化粧品メーカーへと転換を遂げました。現在では化学メーカーとして順調に成長を続けています。

プレイステーション

あまり知られていない話ですが、実はソニーのゲーム機であるプレイステーションも事業転換を遂げた事業です。従来のプレイステーションは、単なる据え置き型ゲーム機としてCD-ROMを読み込むゲーム機でした。しかしその後、ネットワークと接続する機能を搭載したことでゲームや音楽のダウンロード販売が可能になりました。現在はプレイステーションを使用してNetflixなどの映像も楽しめるようになっています。単なるゲーム機から家庭用エンターテインメントプラットフォームへと進化を遂げたのがプレイステーションなのです。

ミクシィ

ミクシィはかつて、日本で大流行したSNSを運営していました。しかし、FacebookやTwitterなどのSNSが日本に進出するとミクシィのSNSは衰退していきました。そこでミクシィは起死回生を狙ってスマホゲームの「モンスターストライク」を開発。大ヒットゲームへと成長させました。現在はSNS運営会社ではなく、ゲーム会社として事業を運営しています。

ピボットピラミッドから考えるピボット戦略のやり方

ピボットピラミッドから考えるピボット戦略のやり方

経営戦略としてのピボットには、定石となる考え方があります。それがピボットピラミッドです。

ピボットピラミッドとは

ピボットピラミッドは、アメリカのスタートアップ企業のCEOであるSelcuk Atli氏によって提唱された概念です。Atli氏は、ピボットをする対象をターゲット顧客、課題、解決方法、テクノロジー、グロース戦略の5つに絞り、これらには上下の階層構造のようなものがあると指摘しました。

ピボットするべき内容

ピボットピラミッドでは、ピボットする内容には階層があり、一番下の階層を変えると全てを変える必要があるとされています。

ターゲット顧客
最も下の階層になるのがターゲット顧客です。ターゲット顧客を変えた場合、他の4つも変える必要があります。

課題
ターゲット顧客の上の階層が課題です。ターゲット顧客が抱える課題を変えることでピボットを実現します。

解決方法
真ん中の階層が解決方法です。ターゲット顧客や課題を変えずに解決方法だけを変えます。

テクノロジー
上から2番目の階層がテクノロジーです。プロダクトはできていて、なかなかユーザーが増えない場合は、アプリであればユーザーインターフェースを変えるといった方法が有効な場合があります。

グロース戦略
最後に最もピボットピラミッド上位にあるのがグロース戦略です。どのように事業を伸ばしていくのかという戦略です。例えばターゲット顧客に対するメッセージを変える方法や、キャンペーンを行うといった方法があります。

ピボットを行う上での経営の注意点

ピボットを行う上での経営の注意点

ピボットは慎重に行うべき経営判断の一つです。どのようなことに注意すればよいのでしょうか。

ピボットをする時期

まずはピボットをする時期が重要なポイントです。ピボットするタイミングが早すぎても遅すぎても成功しません。例えばターゲット顧客を変える場合、市場が十分に育っていなければ市場にいる顧客数は少ない状況です。反対にピボットが遅ければ、既存事業に体力を奪われるだけではなく、競合に先を越されてしまうこともあるでしょう。ピボットする時期は、ある程度の市場成長が見えてきたタイミングで行うのが良いかもしれません。

ピボットする内容(顧客目線)

ある企業が突然、全く別の事業を始めた場合、それまでのユーザーが離れていってしまうこともあるでしょう。例えばアプリなどのITサービスでは、しばしばユーザーインターフェースを変更することがあります。中にはユーザーインターフェースの変更により、従来のユーザーが使いづらさを感じて利用を辞めてしまうこともあります。ピボットする場合はあくまでも顧客目線で行いましょう。

企業の成熟段階に合わせたアプローチをする

企業には成熟段階があります。急成長できる段階もあれば、安定的に事業を発展させていく段階もあります。仮に急成長が求められる時に安定的な事業へピボットしたとしても、スピード感が合わずピボットが失敗してしまうかもしれません。こうした企業の成長段階に合わせてピボットを検討しましょう。

【まとめ】ピボットの成功は、自社の分析から

ピボットに成功した企業の多くは、それまで培ってきた自社の技術やノウハウを活用して成功しました。全くのゼロからノウハウを獲得して成功した企業は多くはありません。

もしあなたの会社が新規事業への進出や事業転換を考えているなら、まずは自社の強みや能力を検討しましょう。ピボットの成功は自社分析から始まります。

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HR大学編集部
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