#人材管理
2024/08/27

パーパス経営とは?その重要性やメリットについて解説

目次

企業運営は、事業を成長させ、利益を上げることが大きな目的です。
企業が、長期的に消費者や株主などから支持を受け続けるためには、社会問題の解決に寄与するなど、その企業が社会に貢献できる存在であることが有効です。
このように、社会問題の解決に関連する事業目的を掲げ、それに沿った事業を展開することを、パーパス経営といいます。
この記事では、パーパス経営の概要やメリット、実施する際の流れやパーパス経営に必要な要素について解説します。

パーパス経営とは

パーパス経営とは、企業がどのような貢献をするかを事業目的として社会に広く知らせた上で、その目的に沿って経営を行うことをいいます。
「パーパス(Purpose)」には、「目的」「意義」という意味があります。

近年、社会のあらゆる分野で深刻な社会問題が生まれ、それらをどのように解決していくかという点に注目が集まっています。
また、内容によっては企業の事業活動が一因となる場合もあります。
利益追求に伴い社会問題の原因を作った企業には、問題を解決につなげる責任があるともいえます。
企業が社会問題の解決に貢献できる目的を定め、事業を運営し、存在意義を確立していくことがパーパス経営なのです。

パーパス経営を行うメリットとは

パーパス経営は、各社会問題の解消など、社会や地域への貢献を事業目的に掲げるものです。
それでは、パーパス経営には具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか。
以下で3点に分けて説明します。

ステークホルダーからの支持を得られる

パーパス経営は、労働問題や環境問題を始めとする社会問題の解決など、地域や社会への貢献を軸とした事業目的を定め、広く周知するものです。
社会貢献を事業目的に掲げることにより、消費者はもちろん、株主や取引先など、事業に関わる人々、つまりステークホルダーから信頼や共感、支持を得やすくなるでしょう。
ステークホルダーからの支持を多く得られれば、商品やサービスの売上増加や、自社のブランディングにつながることが期待できます。
また、採用活動においても、人材の応募が集まりやすくなると考えられます。

従業員エンゲージメントが高まる

企業の事業目的は、従業員ひとりひとりにとって、自身がその企業で働く意義に直結します。
従業員が「自分の仕事が何の役に立っているのか分からない」「何のために仕事をしているのか分からない」と感じていると、モチベーションを高めたり、やりがいを感じたりすることは難しいでしょう。

企業が社会・地域へ貢献できる事業目的を定めれば、従業員も自分が社会に貢献できていると感じられるでしょう。
また、日々行っている業務に誇りを持てるようになり、自身の仕事と社会とのつながりを感じやすくもなるでしょう。
ひいては、従業員エンゲージメントが高まることが期待できます。

革新や変化が生まれやすくなる

パーパス経営を行う際は、消費者・株主などのステークホルダーが自社に求める需要を改めて深掘りし、把握する必要があります。
ステークホルダーのニーズを深く理解することにより、それまでにはなかった新たなアイデアや改善策が生まれやすくなると考えられます。

また、パーパス経営によってはっきりとした事業目的が掲げられると、従業員全体が一丸となって同じ目標に向かいやすくなります。
そのことにより、従業員ひとりひとりが他人の意見・アイデアを受け入れやすくなったり、自発的な行動や学習に取り組みやすくなったりすることも期待できるでしょう。
ひいては、事業そのものや従業員の働き方において、革新や変化が生まれやすくなると考えられます。

パーパス経営が重要視される理由とは

パーパス経営は、近年急速に注目されるようになりました。
このようなパーパス経営への注目度の高まりは、パーパス経営によって生まれるメリットが企業自体や消費者から求められているからでしょう。
それでは、具体的にはなぜパーパス経営を行うことが重要と考えられているのでしょうか。
以下で、4点に分けて説明します。

SDGsやサステナビリティへの関心の高まり

近年、SDGsやサステナビリティといった言葉に注目が集まっています。
SDGsは、「Sustainable Development Goals」の略称であり、「持続可能な開発目標」と訳されます。
そして、サステナビリティ(Sustainability)も「持続可能性」という、SDGsとほぼ同様の意味を持つ言葉です。

SDGsは、計17個の目標を達成することを目標として、2015年9月に国連サミットで採択されたものです。
17個の目標は、以下のようになっています。

  • 目標1 「貧困」

  • 目標2 「飢餓」

  • 目標3 「保健」

  • 目標4 「教育」

  • 目標5 「ジェンダー」

  • 目標6 「水・衛生」

  • 目標7 「エネルギー」(安価で信頼でき、持続可能なエネルギーの確保)

  • 目標8 「経済成長と雇用」(持続可能な経済成長、働きがいのある雇用の促進)

  • 目標9 「インフラ、産業化、イノベーション」(強靭なインフラ構築、持続可能な産業化、イノベーションの推進)

  • 目標10 「不平等」

  • 目標11 「持続可能な都市」(安全かつ強靭、持続可能な都市及び人間居住の実現)

  • 目標12 「持続可能な消費と生産」(持続可能な消費生産形態の確保)

  • 目標13 「気候変動」

  • 目標14 「海洋資源」(持続可能な開発のための海洋・海洋資源の保全、持続可能な形での利用)

  • 目標15 「陸上資源」(生態系の保護・回復、森林の経営、砂漠化への対処など)

  • 目標16 「平和」

  • 目標17 「実施手段」(持続可能な開発のための実施手段の強化)

17個の目標の内、「経済成長と雇用」や「インフラ、産業化、イノベーション」、「持続可能な消費と生産」などは、特に企業が行う事業との関連が強いでしょう。
近年は、多くの場面でSDGsの言葉が聞かれるようになり、その概念があらゆる世代に浸透してきています。
SDGsを理解し、SDGsの目標を踏まえた事業の運営は、企業への信頼性や共感の観点からも重要と考えられます。

ESG投資の広がり

近年、投資家がESG投資を行う流れが広まっています。
ESGとは、環境(Environment)、社会(Social)、企業統治(Governance)の頭文字を取ったものです。

従来の投資家は、より多くの利益を生み出す企業に投資を行う傾向がありました。
しかし、利益追求のための生産活動が活発になった結果、環境問題や労働問題、企業の不祥事などが多く発生しました。
多くの問題が起こったことを考慮し、近年の投資家は社会問題の解決に前向きな企業、言い換えればESGに力を入れている企業に投資をする傾向が強くなったのです。
生産活動に欠かせない資金を与えてくれる投資家は、企業にとって非常に重要なステークホルダーです。
投資家から見て投資したくなる企業であり続けるという観点からも、パーパス経営が企業の間に広まってきているのです。

ミレニアル世代やZ世代の増加

パーパス経営は、「ミレニアル世代」や「Z世代」と呼ばれる世代の台頭と強い関連があると考えられます。
ミレニアル世代とは、1980年代〜1990年代半ばに生まれ、2000年以降に成人を迎えた世代をいいます。
Z世代とは、1996年以降に生まれた世代をいいます。
これらの世代は、幼少期などの早い段階から生活の中にインターネットが定着しており、多くの情報に触れてきた世代といえます。

多くの情報を目の当たりにしてきたこれらの世代は、社会問題の解決に重点を置いた「エシカル消費」を好む傾向にあると言われています。
消費者の内でミレニアル世代やZ世代が占める割合は、今後ますます大きくなっていくでしょう。
企業でも、これらの世代の志向に沿った事業運営に重きが置かれるようになっていくと考えられます。

DXの浸透

近年、DX(デジタルトランスフォーメーション)が急速に進んでいます。
DXとは、ITツールを導入して新たなビジネスモデルを作り出すなど、デジタルツールによって業務の変革・改善を行うことをいいます。

DXを進める際、企業はDXにより自社をどのように成長させていきたいか、将来的なビジョンを描くことになります。
そのためには、自社の長期的な成長を見据えて、明確な事業目的を定めなければいけません。
DXにおいて自社の理想の将来像を思い描く際には、必然的に事業目的=パーポスを考え直す必要があるのです。

パーパス経営に必要な要素とは

パーパス経営では、社会や地域へ貢献できる事業目的を掲げる必要があります。
しかし、事業目的は何でも自由に決められるわけではありません。
以下で、パーパスを定める際に必要な要素を5つに分けて説明します。

社会問題を解決するもの

パーパス経営を行うためには、事業目的が社会問題の解決に結びつくものである必要があります。
SDGsの17個の目標を始め、数多くある労働問題や環境問題などに焦点をあてた目的を定めることが求められます。

また、事業目的はできる限り具体的かつ明確なものであると良いでしょう。
事業目的が明確であるほど、自社の存在意義や事業の運営意義も明瞭になります。
仕事の意義を感じられれば、従業員エンゲージメントやモチベーションが上昇することも期待できます。

自社の利益につながるもの

パーパス経営では、社会や地域に貢献する事業目的を定めることが必要です。
しかし、社会への貢献とはいっても、事業の運営はボランティア活動とは異なります。
あくまで本来の事業で利益をあげ続けなければ、企業は継続していくことができません。
パーパス経営での事業目的は、社会への貢献に過度に重きを置きすぎず、自社の利益が十分に見込まれるものであることが重要です。

自社のビジネスに結びつくもの

パーパス経営を進める際は、自社が本来行ってきた事業をベースに目的を設定することが重要です。
経験や専門的ノウハウが少ない、自社の専門外の事業を始めても、採算が取れずに経営そのものが危うくなってしまう可能性があります。
社会や地域への貢献度が高く、支持を得やすい事業を行おうとするあまり、自社の事業と関連のないことに手を広げるのは避けるべきでしょう。

自社で実現可能なもの

パーパス経営を行えば、消費者や株主などからの支持を得やすくなることが期待できます。
しかし、支持を得たいあまりに、自社の規模や資金力では実現が難しいことを事業目的にするのは避けた方が良いでしょう。
パーパス経営を行ったからといって、確実に多くの支持が得られ、資金や労働力が手に入るわけではないことを前提に、事業計画を立てることが大切です。

従業員のモチベーションにつながるもの

パーパス経営における事業目的は、ステークホルダーからの信頼や支持はもちろんですが、従業員のモチベーションの向上につながるものであることが大切です。
事業目的が賛同・共感できるものでなければ、従業員のモチベーションは上がっていかないでしょう。

また、パーパス経営における事業目的が決まった際は、従業員に丁寧に内容を説明し、理解を求めることが重要です。
従業員全体が納得し、その事業目的に基づいて働きたいと思える状態が理想的です。
パーパス経営を進める際は、事業の最前線で動いているのは従業員ひとりひとりであるということを常に忘れないようにしましょう。

パーパス経営を行うステップとは

パーパス経営を行うには、社会への貢献度が高い事業目的の設定以外にも重要な点がいくつかあります。
以下で、パーパス経営を行う流れについて説明します。

1.自社とステークホルダーを分析し、パーパスを明確化する

まず、自社について分析を行います。
経営理念を理解した上で、自社が現在どのような環境に置かれ、どのような状況となっているのか、現状を把握することが大切です。
場合によっては、3C分析やSWOT分析のような分析を行うことも有効です。
3C分析とは、顧客(Customer)・自社(Company)・競合(Competitor)の3つの要素について調査を行い、市場での関係性を把握するフレームワークです。
SWOT分析では、自社の外部環境と内部環境を強み(Strength)・弱み(Weakness)・機会(Opportunity)・脅威(Threat)の4つの要素で分析します。
その上で、改善点や伸ばすべき点、将来的なリスクなどを見つけるためのフレームワークがSWOT分析です。

さらに、自社を取り巻くステークホルダーについても分析を行います。
必要に応じて、「顧客調査」や「仕入先調査」などを行い、自社にはどのような消費者や関係先、投資家がいるのかを把握しましょう。

2.パーパスを決定し、社内に浸透させる

自社やステークホルダーの分析を行ったら、自社の今後のあり方を改めて考えながら、パーパスを明確な言葉で定めます。
パーパスの文言は、経営者層・管理者層のみで考える方法や、現場で働く従業員も参加して考える方法があります。
パーパスの言語化は、自社に合った方法で行いましょう。

また、言語化したパーパスは、社内に広く周知します。
パーパスそのものだけではなく、パーパスの決定に至るまでの背景や経緯、信念についても丁寧に説明し、従業員からの賛同・理解を得られるように努めましょう。

3.パーパスを経営計画などのビジネス戦略に落とし込む

次に、決定したパーパスを経営計画を始めとするビジネス戦略へ落とし込んでいきます。
既存の経営計画がある場合は、計画をひとつずつ検証し、パーパスに沿っているものになっているかどうかを考えます。
もし、経営計画がパーパスの方針と合わない場合は修正し、修正が難しい場合は破棄も検討しましょう。
既存の経営計画がなく、ゼロから経営計画を立てる場合も同様に、パーパスを軸にしながら考えていきます。
最終的にパーパスを日々の業務へ落とし込むためにも、経営や事業への落とし込みは丁寧に行います。

4.パーパスを日々の業務に落とし込む

経営や事業枠組みへの落とし込みができたら、従業員ひとりひとりの実際の業務へパーパスを落とし込みます。
最終的には、従業員全員のすべての仕事がパーパスへつながっている状態にすることを意識しましょう。

まとめ

パーパス経営は、利益追求が最優先だった経済活動から、社会問題の解決に貢献する経済活動へと、企業がシフトしていく中で発展してきたものです。
パーパス経営を行うことにより、消費者を始めとしたステークホルダーの信頼や支持を得やすくなることが期待できます。
また、投資家がいわゆる「ESG投資」を重視する傾向にも合致するでしょう。

一方で、パーパス経営を行うあまりに事業の採算が取れなくなったり、従業員のモチベーションやエンゲージメントが低下したりすると本末転倒です。
パーパス経営を行う際は、ステークホルダーからの支持に加えて、事業の最前線で働く従業員ひとりひとりがモチベーションを保ち、自社の仕事に誇りを持てるような事業目的を定めることが大切といえるでしょう。

HR大学編集部
HR大学 編集部

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