テレワークで生産性は下がる?生産性を下げる要因と向上させた事例
- テレワークで生産性がどう変化するか
- テレワークのメリット・デメリット
- データで見るテレワークの生産性
- テレワークで生産性が下がる要因
- コミュニケーション不足
- 設備や環境の整備不足
- テレワークの生産性を上げる施策
- 企業ができる施策
- 管理者ができる施策
- 個人ができる施策
- テレワークの生産性が向上した事例
- 住友商事株式会社 ~設備・環境の整備事例
- サイボウズ株式会社 ~コミュニケーション活性化事例
- 岩井コスモ証券株式会社 ~設備・環境の整備事例
- 【まとめ】テレワークでの生産性向上のポイントは、コミュニケーションの活性化と、設備・環境の整備
テレワークにおいて生産性が下がる要因と、それを回避した向上事例を紹介。テレワーク下での組織の管理の指標とすることを提案。実際のデータから、生産性が下がる要因は、コミュニケーション不足と環境整備不足と分析している。
テレワークで生産性がどう変化するか
テレワークを行うことで生産性はどのように変化するのでしょうか。テレワークのメリット・デメリットを踏まえたうえで、実際のデータから生産性の動向を見ていきたいと思います。
テレワークのメリット・デメリット
テレワークのメリット・デメリットは以下が考えられます。
・テレワークのメリット
- 優秀な人材の確保
- 災害時やパンデミック時等の事業継続性
- オフィスコスト削減
- 企業イメージの向上
- ワークライフバランスの向上
- 通勤にかかる負担の軽減
・テレワークのデメリット
- 情報漏洩のリスクが高まる
- 部下のマネジメントが困難になる
- 労働時間管理が煩雑化する
- 従業員間のコミュニケーションが希薄になる
企業と従業員の双方に多くのメリットがある一方、お互いが見えない場所で仕事をすることによるデメリットも発生します。
データで見るテレワークの生産性
上述のようなメリット・デメリットがある中で実際の生産性はどうなっているのでしょうか。NTTコムリサーチによる調査では、以下のデータが示されています。
・24%は生産性向上、24.9%は生産性低下
「自分自身の業務における生産性」において、「向上した」と回答している割合は、在宅勤務をしていない人(8.9%)より、在宅勤務をしている人(24.0%)のほうが上回るという結果でした。生産性の向上に関しては、在宅勤務のほうが効果があるといえます。しかし、一方で、在宅勤務をしている人の中で「生産性が低下した」と回答している割合も24.9%にのぼっており、在宅勤務により生産性が向上したと感じている割合より、低下したと感じる割合がやや上回っています。
在宅勤務には、生産性が向上するメリットだけでなく、低下するリスクもあることが考えられます。
(※出典)NTTコムリサーチ:「テレワークと会社満足度に関する調査」より
テレワークで生産性が下がる要因
第1章では、テレワークは生産性が低下する可能性があることがわかりました。では、生産性が低下した要因は何でしょうか?さらにデータを見ていくと、生産性が下がる要因として、大きく以下の2点が見えてきます。
コミュニケーション不足
NTTコムリサーチのモニター登録者を対象とした調査では、上述の個人の業務の生産性についてだけでなく、チームやプロジェクト業務における生産性についても結果が示されています。
在宅勤務をしている人に、チームでの業務における生産性について尋ねたところ、「低下した」と回答している割合が「向上した」と回答している割合を上回る結果となりました(低下:29.2%、向上:15.8%)。さらに、「低下した」と回答した人は、その要因について「コミュニケーション量・質の低下」を理由に挙げる人が大半でした。つまり、テレワークで生産性が下がる要因の一つは、コミュニケーション不足にあると言えます。
設備や環境の整備不足
NTTデータ経営研究所は、テレワークで何をボトルネックに感じたかについて調査しています。
結果は、「社内の状況がよく分からない」(38.7%)「相手・同僚の顔が見えない」(33.1%)というコミュニケーションに関する内容に続いて、「手元に必要な情報がない」(31.9%)や「紙の書類を前提とした押印、決裁、保管等の手続きがあること」(24.6%)が挙がり、テレワーク実施にあたっての設備不足をボトルネックと感じていることがわかりました。また、自宅の仕事環境に起因するものもあり、「通信回線が不安定」(15.4%)、「作業スペースが十分確保できない」(15.2%)や「家族がいて仕事がはかどらない」(9.3%)という要因が挙がっています。
(※出典)NTTデータ経営研究所:「働き方改革2021 with コロナ」より
テレワークの生産性を上げる施策
テレワークで生産性が下がる2つの要因を踏まえ、生産性を上げる施策を、企業・管理者・個人の三者の側面から考えてみましょう。
企業ができる施策
「設備や環境の整備不足」の要因を取り除くためには、企業としての施策が必要です。
・ICTの活用によるペーパーレス化の推進
紙書類の手続きがテレワークのボトルネックになっていることから、ICTを活用してペーパーレス化を推進することが必要です。ただ、必要なことはわかっていても、人材不足で手を付けるのが難しい現状もあるかと思います。現在のテレワーク用のアプリケーションソフトは、ユーザー自ら設定できるような仕様になっているものが多くなっています。これらのソフトを利用すれば、ICTの専門家がいなくても導入は可能です。どこから手を付ければいいかわからないという場合は、厚生労働省の無料相談窓口に相談してみるのもよいでしょう(テレワーク相談センター)。
・サテライトオフィスの導入
従業員の自宅での仕事環境が生産性を下げる要因となっている場合、サテライトオフィス等を導入することも有効です。日本テレワーク協会では、コワーキング・シェアオフィス・レンタルオフィス施設等の紹介もしています。
管理者ができる施策
「コミュニケーション不足」の要因を取り除くために、管理者がチーム全体の雰囲気を作ることは最も大切だと考えられます。
・1on1の実施
テレワークであってもWeb会議システムを利用して1on1ミーティングを実施するなどして、メンバーの状況を把握することが大切です。また、その際には業務上の話だけではなく、雑談もすることでコミュニケーションが活性化します。
テレワークと雑談の関係性をさらに詳しく知りたい方は、こちらの記事をご確認ください。
関連記事:「テレワークの雑談は重要!在宅勤務のコミュニケーションを活性化する方法」をご覧ください。
また、1on1ミーティングについてさらに詳しく学びたい方のために「1on1ミーティング入門書」をご用意しているのでぜひご活用ください。
・チャットの活用
チーム内のチャットなどでも気楽に雑談ができるとコミュニケーションはさらに活性化します。管理者が率先することでコミュニケーションが取りやすい雰囲気を作りましょう。
テレワークにおけるコミュニケーションの重要性をさらに詳しく知りたい方は、こちらの記事をご確認ください。
関連記事:「テレワークのコミュニケーションを活性化させた事例やおすすめツール」をご覧ください。
個人ができる施策
自宅の設備・環境を整えて生産性を向上させましょう。
・作業中の体の負担を軽減させる
テレワークの作業スペースが確保できない場合、ダイニングテーブル等で代用することが多いのではないでしょうか。テーブルと椅子の高さが合わないと、肩こりなど体に負担がかかりと生産性が下がります。そのため、椅子だけでも高さが調整できるタイプのものを用意することをお勧めします。「オフィスチェア」等で検索すると、安価なものは数千円程度から販売しています。
・サテライトオフィスの活用も
サテライトオフィスを活用するのもおすすめです。企業とし契約していなくても、個人で利用可能な施設も多くあります。
テレワークの生産性が向上した事例
最後に、テレワークをうまく活用し、生産性を向上させた事例をご紹介します。
住友商事株式会社 ~設備・環境の整備事例
住友商事株式会社は、テレワークにおける情報通信環境を整えることはもちろん、さらに、それらを利用する従業員の教育も徹底しています。全社員を階層ごとに分け、受講対象者に合わせたIT講習会を実施し、また社内イントラネットではIT関連豆知識の発信も行っています。
(※出典)日本テレワーク協会「輝くテレワーク賞受賞企業(平成27~令和2年)令和元年度テレワーク先駆者百選 取り組み事例」21ページ目より
サイボウズ株式会社 ~コミュニケーション活性化事例
2010年からテレワークを取り入れてきたサイボウズ株式会社には、「分報」と呼ばれるチャットで行う雑談の手法があります。業務上の用件に限らず、取りとめもない会話を気楽に交わすための場です。チームメンバーの相互理解につながり、コミュニケーションが活性化するほか、思わぬアイデアが生まれる要因となっています。また、マネージャーとメンバーが一対一で対話をする「ザツダン」も行われています。ザツダンは、マネージャーがメンバーの状況や、チーム内の雰囲気を知ることに効果を発揮しています。
(※出典)[サイボウズ流テレワーク]チャットで何でも話せる「分報」より
岩井コスモ証券株式会社 ~設備・環境の整備事例
岩井コスモ証券株式会社では、営業職員を対象にタブレット端末・録音機能付携帯を導入したことで、各店舗ごとに紙資料で管理していた顧客個人情報の全店一元管理を実現しました。また、テレワーク導入によって、朝はWEB会議で朝会に参加後に自宅から客先へ直行し、営業事務も外出先で完結して直帰するなど、柔軟且つ効率的な営業活動を行っています。
(※出典)日本テレワーク協会「輝くテレワーク賞受賞企業(平成27~令和2年)令和元年度テレワーク先駆者百選 取り組み事例」5ページ目より
【まとめ】テレワークでの生産性向上のポイントは、コミュニケーションの活性化と、設備・環境の整備
テレワーク下で生産性を上げるためには、コミュニケーションを活性化させることと、ペーパーレス化などで作業環境を整えることが重要であることがわかりました。
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