#人材管理
2024/08/16

要員管理の目的・抑えるべきポイントを徹底解説!実施プロセスも紹介

目次

要員管理は、プロジェクトの遂行において最も大切な工程といっても過言ではありません。所属する社員の能力やスキル、これまでの実績を会社が正しく把握し適材適所で人材配置が行えると、人材コストを抑えながら円滑かつ品質の高いプロジェクトの遂行が期待できます。また、プロジェクトに必要なスキルを持つ人員を適材適所に配置できると、従業員は得意分野で業務が行えるため、ポテンシャルの発揮やモチベーションの向上にもつながり、高い成果が期待できます。

今回は、要員管理の概要をはじめ、得られる効果やメリット、要員管理の下準備や具体的な進め方を解説します。

要員管理とは?

プロジェクトを円滑に遂行し成果を上げるためには、さまざまなスキルを持つ人材を正しく配置することが必要不可欠です。

「要員管理」とはどういうものであるのかを理解していただくために、まずは要員管理の概要や「人員計画」との違いを解説します。

要員管理の意味・概要

「要員管理」とは、要員それぞれの能力を把握し、プロジェクトごとに適した配置を行うことを指しています。要員の能力を把握しないまま人員配置をしてしまうと、人員の不足による納期遅れや余分なコストが発生したり、逆に余剰人員により人材コストがかかったりします。また、本来要員の持つ能力が十分に活かされなかったり、そもそものスキルが足りず本来の計画から大幅に遅延が生じたりする恐れがあるのです。

人員計画とは違う?

要員管理と似た「人員計画」という用語があります。人員計画は要員管理と混同されやすいものの、実は似て非なるものです。

「人員計画」は、この部署には何人の要員が必要か、どのようなスキルを持ちどのポジションに配置すべきかといった「異動」や「採用」などを含んだ具体的な計画を立てることを指します。人員計画については、こちらで詳しく解説しています。

「要員管理」は、実際に配置された要員の管理までを行うため、要員ひとりひとりの能力やタイプなどを把握したうえで教育などマネジメントも行います。

要員管理の効果

要員管理が適切に行われると、企業側はもちろん社員もさまざまな効果が得られます。要員管理の意味とそれによって得られる効果を正しく理解しておくことで、要員管理そのものが行いやすくなります。

要員のスキルを把握できる

要員管理において不可欠であるのが、要員が持つ「スキルの把握」です。

たとえば、1つのプロジェクトを終えた時点で、従業員が新たに得たスキルや伸ばした能力を記録しておきます。この作業は、プロジェクトの進捗をみたり、報告を受けたりする各プロジェクトの管理者が担うと良いでしょう。従業員それぞれが保有している資格やスキル、能力を理解し常に把握・更新しておくことで、次のプロジェクトで正しい配置が行えるだけでなく、円滑にプロジェクトが遂行できます。

要員全体の状況が把握できる

要員のスキルを把握できていると、自然に要員全体の状況がみえてきます。要員全体の状況がみえることで、各部署およびプロジェクトの人材不足やスキル不足を把握できます。そうするとスムーズに人員調整が行えるほか、採用活動や部署間の異動調整においても無駄がありません。

要員管理のメリット

要員管理により期待できる効果とあわせて、得られるメリットもさまざまです。要員管理は、企業側と業務を遂行する社員それぞれがメリットを得てこそ実施する意味があります。ここからは、要員管理で得られるメリットを4つ紹介します。

人件費を節約できる

個々の持っているスキルや能力、習熟度を把握し管理できていると不足や余剰を発生させることなく適切な場所に適切な要員を配置できます。そのため、人件費そのものを削減できるでしょう。

経費の中で人件費は大部分を占めます。ひとつひとつのプロジェクトや人員配置を見直し整理することで、人件費の大きな削減に期待できるでしょう。

生産性を向上させられる

要員の能力を適切に把握しないまま人員を配置すると、従業員にとって不得手な業務を行うこととなり生産性を大幅に下げかねません。もちろん要員の成長を図る意味で配置することもありますが、その場合は管理者として個人のポテンシャルや経験をよく理解しておく必要があります。

要員の能力をはじめ、要員同士の相性やバランスに合わせた配置を行えると、チーム内の雰囲気が良くなり生産性はもちろんクオリティの向上にも期待できるでしょう。

より効果的な人員配置を可能にする

要員管理において重要なのは「適材適所」です。各要員が本来の能力を存分に発揮するには、個人の能力にあった配置につかせるだけでなく、管理者が能力を理解し把握しておく必要があります。

要員本人も気付かない能力や長所もあるため、管理者側がそこに気付き、能力を伸ばせるよう人員配置しましょう。そうすることで、今後の要員管理においてより効果的な人員配置ができます。また、要員自身が把握していなかった長所や才能を見出せると、管理者や企業に対しての信頼感の向上および愛社精神も育めるでしょう。

人員配置を検討する際、Excelや表での一覧作成が一般的でしたが社員数や部署の人数が増えたことで管理や配置シミュレーションに手間がかかってしまうことがあります。

そういったお悩みをお持ちの際は、ぜひ弊社の「配置シミュレーション」をご検討ください。マウス操作でより直感的に、部署やプロジェクトごとに配置のシミュレーションができる機能を備えており、人員配置を円滑に進めていただけるツールです。

モチベーション向上につながる

要員のスキルはもちろん、得意・不得意を把握した人員配置は、要員たちのモチベーション向上に直結します。しかしながら、ただ要員のレベルに合わせた業務を割り当てるだけではありません。要員管理は要員の育成管理も含めてこそのため、要員自身のレベルアップと仕事に対する自信につながるような環境を用意することが大切です。

そのためには、要員がもともと持っている能力やポテンシャルを管理者側が正しく把握し配置することができる要員管理は、企業にとってなくてはならない施策です。

要員管理を実施するうえで事前に行っておくこと

いきなり要員管理を実施しても期待できるほどの効果は得られないでしょう。要員管理も一般的な業務やプレゼンと同様、実施前の下準備が最も重要です。ここからは、要員管理を実施する前に必要な準備を紹介します。

従業員個人の能力を把握

兎にも角にも、まずは従業員個人の能力を把握しましょう。所有している資格やスキルはもちろんですが、これまでにどのようなプロジェクトに携わり、どのような実績と経験を積んできているのかを把握しておくことで、今後のプロジェクト遂行において適切な人材配置を可能にします。

また、「できること」だけではなく「苦手なこと・伸び悩んでいる能力」もあわせて把握するのがポイントです。すべての人材を適材適所、得意な分野に配置できれば理想的ですが、場合によってはそうもいきません。苦手な担当への配置であっても、本人のモチベーションが保てるようにするにはどうするのがベストであるか、性格的な部分やメンタル面もあわせて把握できているとベストです。

従業員の理解を得る

要員管理は管理者側だけのことではありません。要員管理を実施するにあたって、従業員の理解が得られなければ要員管理の実施や準備そのものが円滑に進まないだけでなく、せっかく計画をたて実施しても期待するほどの効果が得られません。

従業員へは、全体通知として実施の理由や背景、要員管理の概要や計画、従業員に協力してもらいたいことなどを共有します。また、可能であれば役職者や上長からも面談形式で説明をすると良いでしょう。

定期的な再配置を計画する

従業員たちは、毎日の業務で日ごと成長しています。また、個人によっては、自身で新たな資格やスキルを取得したり伸ばしたりしているでしょう。

従業員が伸ばした能力を発揮させるには、定期的な配置の見直しが必須です。ずっと同じ環境に置かれたままでは、従業員の成長は頭打ちとなり従業員自身のモチベーションも上がりません。逆に、得たスキルを発揮できれば自信が生まれ、さらに新たなスキルを獲得したり伸ばすために勉強したりするため、仕事に対するやる気や役に立ちたいという思いが培われます。

また、定期的な見直しをすることで、人員の不足や余剰を調整できます。足りないスキルを持つ人員を補ってアサインしたり、必要な研修を実施して育成したりすることも可能です。

要員管理のプロセス

ここからは、実際の要員管理の手順を解説します。要員管理のプロセスは、大きく分けて4つです。1つずつ順を追って計画し実施しましょう。

資源マネジメント計画を建てる

まずは、人的資源のマネジメント計画を立てます。マネジメントの方針を決めたうえで、計画書作成に入りましょう。スムーズに進行させるためのコツは、項目を細かく設定することです。今回は例として8項目を紹介します。

  • 要員調達(調達先・調達方法・調達コスト・調達時期)

  • 要員ヒストグラム(月毎の要員数・作業時間のグラフ)

  • 要員離任計画(要員の離任方法・時期)

  • 表彰・報奨(表彰・報奨の明確な基準や運用)

  • トレーニング・強化計画(要員の能力・スキルの育成計画)

  • チーム育成(チーム全体の育成)

  • 要員役割・責任範囲(要員ごとの権限や責任範囲の決定)

  • 組織図(プロジェクト・チーム内の組織図、報告関係の決定)

ここまで具体的に計画を立てておくことで、プロジェクトを遂行するうえで従業員が迷うことが少なくなります。また、トラブルが発生した際の責任の所在や対処法を分かりやすくしておくと、円滑に対応できます。あわせて、表彰をはじめとした評価基準を明確にすることで、会社への不信感や不安感を払拭でき、社員自身で目標を立て達成に向けて努力します。

プロジェクトチームを編成する

資源マネジメント計画が立てられたら、計画書を基にプロジェクトに必要な要員を集めチームを編成します。各プロジェクトを遂行するうえで必要な人数やスキルを持つ要員が不足している場合は、計画書を基にあらかじめ決めていた方法で適宜要員を調達しましょう。他部署からアサインする場合は、担当マネージャーや上長へ相談のうえ本人へ正式依頼します。社内に適切な要員がいない場合は、社外からの調達を検討します。

プロジェクトに必要な要員が揃ったら、要員ごとの役割や責任範囲を決定しておきましょう。また、プロジェクト内もしくはチーム内の組織図も決めておくことで、業務の報告先や相談先が明確になりプロジェクトが円滑に遂行できます。

プロジェクトチームを育成する

プロジェクトに必要な要員が集まっても、最初から最高のパフォーマンスを発揮できるとは限りません。プロジェクトで初めて顔を合わせるメンバーや他部署、外部から調達しているメンバーもいます。仕事の進め方やスタイルも違うため、個々のパフォーマンスやチームワークを発揮させるためにはチーム全体を整えていく必要があります。

今回は、チーム育成の手法として有名な『タックマンモデル』を紹介します。タックマンモデルとは、心理学者であるタックマン氏が提唱した手法でチーム形成を5段階で表したものです。

  1. 形成期
  2. 混乱期
  3. 統一期
  4. 機能期
  5. 散会期

「形成期」は、チームが発足したばかりの段階です。プロジェクトで招集されたメンバーたちは、お互いのことをよく知りません。プロジェクトにおいてのお互いの立ち位置も把握していないため、メンバー同士のコミュニケーションを増やす機会を設けましょう。また、チームメンバー全員でプロジェクトの目的や目標、方針をあらためて理解、把握しましょう。

「混乱期」は、実際にプロジェクトが開始し業務を遂行し始めた段階です。個々で仕事を進めていく上で、意見が食い違ったり認識や見方が違ったりして対立しやすくなる時期でもあります。また、日本人の特徴として、気になる部分があってもそれを指摘せず、我慢する傾向にあります。不満ばかりを口にするのも良いとは言えませんが、一部のメンバーばかりが我慢を強いられてしまうと、今後のプロジェクト遂行に差し障るおそれがあるため、うまくバランスを取りましょう。

「統一期」は、混乱期を乗り越え、チームが結束し統一感が生まれる時期です。お互いの役割を理解し、最適な業務の進め方を把握し始めます。プロジェクト遂行において、意見が異なった場合も、混乱期とは違いお互いの意見を尊重しながら最適解を見つけ、チーム全体で仕事ができるようになる時期です。

「機能期」は、統一期からさらにチームの結束が固まる時期です。お互いの能力を把握し、より円滑に業務を遂行してチーム全体で高いパフォーマンスを発揮します。機能期に至るまでは、メンバー同士の理解だけでなくリーダーの能力が試される期間でもあります。リーダーがメンバーひとりひとりを理解し、客観的にチームを見ながら必要な場面でフォローに入ることで必然的にチームのレベルは上がっていくでしょう。

「散会期」は、プロジェクトを終えチームが解散する段階です。管理者は、今回のプロジェクトにより各要員が成し遂げた実績や向上したスキルをまとめ、次の要員管理に活かせる状態にしておきましょう。

プロジェクトチームをマネジメントする

プロジェクトチームのマネジメントとは、プロジェクトを遂行する上での課題を見つけ解決まで導く工程です。

プロジェクトの進捗状況や、メンバーが提出する報告書から問題点を特定します。業務上の問題ではなく、メンバー間の対立や衝突による課題が見受けられる場合は、『コンフリクトマネジメント』を用いて問題解決を図りましょう。

『コンフリクトマネジメント』とは、組織やチーム内で生じた対立(コンフリクト)をポジティブなものであると考え、解決を図ることです。対立しあっているメンバーの個人間の問題ではなく、チーム全体の問題・課題として認識することも大切です。

コンフリクト(対立)が生まれた時の状況は5つに分類されます。

  1. 強制
  2. 妥協
  3. 服従
  4. 回避
  5. 協調

「強制」は、どちらかが相手へ意見を押し通している状態です。上司と部下など上下関係のもとで発生しやすい状況です。

「妥協」は、自分の意見・要求を妥協し譲歩している状態です。同僚間や先輩後輩の関係のもとで発生しやすい状況です。

「服従」は、強制と逆の立場にいる状態です。自分の意見を完全に押し殺し、相手の要求や意見をのんでいます。

「回避」は、生じている問題を解決する気がない状態です。双方とも自分の意見を曲げず、対立したまま解決する気もないためこじらせる恐れがあります。同職位間のもとで発生しやすいといえるでしょう。

「協調」は、お互いの意見を尊重し合い共に解決へと歩み寄っている状態です。コンフリクトマネジメントにおいて、最も理想的な状況です。

対立は、どちらかの意見だけが採用され、「勝敗」として捉えられがちですが、本来は勝ち負けの問題ではなくプロジェクト遂行において最適解を見つけるのが理想的です。勝敗が付いてしまうと、対立しているメンバー同士の今後の関係性が悪化してしまい、他メンバーも気を遣いチームの雰囲気は悪くなる一方でしょう。

そのため、コンフリクトが発生した場合は、協調しあえる状況に導けるとチームとしてのレベルアップにもつながります。

まとめ

企業を運営していくために、人材は必要不可欠です。従業員が日々の業務をこなし、プロジェクトを成功させ成果をあげることで会社は利益を得られます。より利益を上げるには、人材を管理し適材適所を意識した配置が重要です。

この一連の流れを「要員管理」といい、ただ人員を配置するだけでなく、人材それぞれの能力やスキルを発揮させてあげることこそが要員管理の最大の目的ともいえるでしょう。

HR大学編集部
HR大学 編集部

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