#労務管理
2024/08/01

労務管理・人事管理・勤怠管理は何が違う?業務内容とあわせて解説

目次

企業では、労務管理や人事管理、勤怠管理など、従業員に関するさまざまな管理が行われています。
それぞれの管理は、従業員ひとりひとりが能力を最大限に発揮し、安全かつ健康に働き続けるために必要なものです。
それでは、労務管理・人事管理・勤怠管理とは、具体的にはどのようなものなのでしょうか。
また、それぞれの管理業務にどのような違いがあるのでしょうか。
この記事では、労務管理・人事管理・勤怠管理の具体的な業務内容と、それぞれの管理内容の違いについて説明します。

労務管理・人事管理・勤怠管理の違いとは

まず、労務管理・人事管理・勤怠管理には、どのような違いがあるのでしょうか。

最初に、労務管理とは就業規則の作成や安全・衛生管理など、従業員が業務を安全に心地よく行えるよう、社内の環境を整えることを指します。
個別の従業員ではなく企業全体の管理を行うため、業務の幅が広いことが労務管理の特徴と言えます。

次に、人事管理とは従業員の採用や育成、入退社に関する手続きなど、「人」に直接関わる業務を指します。
人事管理は、従業員という人材資源によって、企業という組織を活性化させる役割を持ちます。

さらに、勤怠管理とは労働時間や休暇の取得状況など、従業員がどのように働いたかを把握・管理する業務を指します。
過重労働の有無を把握する役割があることから、勤怠管理は従業員の安全を守る労務管理の一部であると言えます。
一方で、勤怠の情報は正確な給与計算のために重要であることから、労務管理の中でも他の業務と区別される場合があります。

簡単にいうと、労務管理は従業員が安全・健康に働ける環境づくりに関する業務、人事管理は従業員を管理することによって組織を活性化させる業務、勤怠管理は従業員の働き方を把握し、記録する業務であると言えます。

労務管理の具体的な業務内容とは

労務管理は、従業員が安全で健康に働ける環境を整える業務です。
具体的には、以下のような業務内容が労務管理にあたります。

就業規則の整備

就業規則とは、従業員に適用される企業ごとのルールを指します。
労務管理においては、就業規則を作成し、従業員に周知することが求められます。

就業規則は、自社にとって都合良く自由に作れるものではありません。
労働基準法を始めとした、各種の法令を遵守した上で作成する必要があります。
また、就業規則は一度作成すれば終わり、というものではありません。
関連する法律の改正が行われた際は、就業規則の内容も改正内容に沿って修正する必要があります。
就業規則の修正は法律の改正時のみではなく、自社の事業拡大や従業員の働き方の変化、従業員に関して発生したトラブルなどに応じて、柔軟に行われることが理想的です。

入退社に関する手続き

従業員が入社もしくは退社した際の手続きも、労務管理業務の一つです。
まず、新しく従業員が入社した際には、給与の振込先口座の登録など、雇用契約に関する基本的な手続きが必要です。
その他にも、以下の各種保険の加入に関する手続きを行います。

  • 健康保険

  • 厚生年金保険

  • 介護保険

  • 労災保険

  • 雇用保険

これらの保険への加入手続きに不備があると、従業員は必要な時に保障を受けられないなどの不利益を被る可能性があります。
そのため、各種保険の加入手続きは漏れがないよう、正確に行う必要があります。

また、従業員が退職した場合にも、各種の手続きが必要です。
上記の各種保険の資格喪失手続きを始め、退職証明書や源泉徴収票など、必要書類の発行を行います。
さらに、退職金制度がある企業の場合は、規定に沿って退職金の金額を計算します。
退職する従業員が滞りなく次のステップへ進めるよう、迅速かつ正確に手続きを行うことが大切です。

安全・衛生管理

安全・衛生管理とは、従業員の健康を守ること、職場の環境を良好に保つことを指します。
従業員の健康を守るための取り組みとして代表的なものに、健康診断があります。
さらに近年では、メンタルヘルスに配慮してストレスチェックを実施する企業が多くなっています。
健康診断やストレスチェックの結果、何らかの対応が必要と判断された従業員については、保健指導や夜勤業務の制限などの就業制限を行う場合もあります。

また、安全・衛生管理には各種ハラスメントへの対策も含まれます。
パワー・ハラスメントやマタニティー・ハラスメントなどは、従業員の心身の健康を害する許されないものです。
労務管理では、ハラスメントが発生しない環境づくりに努めることが大切です。
それでも、万が一ハラスメントが発生した場合には、労務部が従業員の相談窓口としての機能を果たすことが重要です。

労災・労務トラブルへの対応

労務管理においては、労働災害や労務トラブルへの対応を行う必要があります。
労働災害とは、従業員が業務に関連して負った怪我や疾病を指します。
そして、労務トラブルとは、パワー・ハラスメントやセクシュアル・ハラスメントなどの各種ハラスメントや、賃金や労働時間に関するトラブルを指します。

労働災害や労務トラブルが発生した際は、あらかじめ定められた対応手順に沿って、当事者から話を聞き、必要な手続きを進めます。
労災やトラブルへの対応においては、対応に苦慮する場面も多々あります。
しかし、後々の流れが円滑に進むよう、法律に照らし合わせながら正確かつ誠実に対応することが大切です。

人事管理の具体的な業務内容とは

人事管理は、従業員ひとりひとりが能力を発揮すると同時に、組織全体が最大のパフォーマンスを出せるようサポートする業務です。
人事管理の具体的な業務には、以下のようなものがあります。

人材の採用

人事管理の重要な業務の一つに、人材の採用があります。
採用には、大学などを卒業した人を対象とする新卒採用と、社会人経験のある人などを対象とする中途採用があります。

人事部ではまず、自社の経営戦略や事業方針に基づいて、年間の採用計画を立てます。
そして、実際に求人を出す前に、自社が求める人材像について要件定義を行います。
その後、求人媒体や自社のホームページなどを使って、人材を募集します。
応募が集まったら履歴書や職務経歴書を見て書類審査をしたり、面接の日程を調整したりする必要があります。
また、応募者だけではなく、自社の面接担当者に対しても、面接対応の依頼や日程の調整を行わなければいけません。
そして、書類審査を通過した応募者との面接を行い、採用する人材を決定します。
このように、人材の採用は計画から採用者の決定まで、大変多くの工数を必要とします。

人事配置の決定

自社の事業計画に基づいて、従業員を各部署に配属させる人事配置も、人事管理における重要な業務です。
また、自社内だけではなく、社外への出向や転籍などの子会社や関連会社への異動も人事配置業務に含まれます。
個々の従業員の能力に合わせた適切な人材配置ができれば、従業員のモチベーションが向上すると考えられます。
ひいては、人材の定着に繋がることが期待できるでしょう。

人事配置を検討する際は、企業側の業務上の都合のみではなく、従業員が自身の能力を発揮しやすいかどうかを考えることが大切です。
具体的には、従業員が持つスキルや特性、キャリアビジョンなどを踏まえることが求められます。

人材の育成

従業員が業務に関する知識やスキルを習得できるよう、育成を行うことも人事における重要な業務の一つです。
育成には、実務を通じて業務について学ぶOJTや、講義形式やオンラインなどで行うOFF-JTなどがあります。
また、必要に応じてe-ラーニングを利用したり、外部の公開講座を受講したりする場合もあります。

特に、新入社員の研修においては、業務知識はもちろん、社会人として必要な知識を学べることが理想的です。
そのため、人材育成のプログラムは自社の事業内容に応じた業務知識の他、コンプライアンス意識の向上やビジネスマナーなどの一般知識も含めて構成することが求められます。

人事評価の制度策定

従業員に対する人事評価制度の策定も、人事の業務の一つです。
従業員への評価は、従業員自身が事前に設定した目標に対する達成率や、業務であげた成果などに応じて判断します。

人事評価の内容は、社内の等級やその後の報酬に反映します。
そのため、人事評価は従業員のモチベーションに大きく影響するものと言えます。
人事評価に関して従業員に不満感を抱かせないよう、人事評価の基準は従業員の誰もが納得できるものであることが必要です。
評価を行う上司の主観や、上司と従業員との関係性に影響されることがない、明確な評価基準を人事部が示すことが重要と言えます。

勤怠管理の具体的な業務内容とは

勤怠管理はその名称の通り、従業員の勤怠に関する情報を管理する業務です。
従業員の過重労働などの良くない状況を防ぐという点で、労務管理の一つとも捉えられます。

万が一、勤怠の記録状況や残業時間の上限や、有給休暇の取得について違反があった場合には、企業に厳しい罰則が課される可能性があります。
勤怠管理は、従業員が健康・安全に働くためだけではなく、企業を労働関係のトラブルから守るためにも重要なのです。
勤怠管理の具体的な業務内容は以下となります。

労働時間・残業時間の管理

企業には、従業員の勤務状況を管理することが法律によって義務付けられています。
従業員の勤務状況を正しく把握するために必要な情報には、出勤時間や退勤時間、休憩時間、時間外労働時間などが挙げられます。
また、遅刻や早退に関する情報も大切です。
企業は、従業員ひとりひとりの労働時間の記録から、法令はもちろん、自社の就業規則に反している点がないかを管理する必要があります。

また、記録した労働時間の情報を、正しく給与へ反映させることも勤怠管理の一つです。
休日出勤や残業時間、割増率などの情報から、給与額を正確に算出することが大切です。

有給休暇の管理

従業員ひとりひとりが年次有給休暇を取得できているかどうかを把握・管理することも、勤怠管理における大切な業務です。
部署の環境や上司の考えなどにより有給休暇を取得できずに働き続けた場合、従業員が不満を抱えることになるでしょう。
従業員の不満が蓄積すると、自社へのエンゲージメントが低下し、離職することにも繋がりかねません。
また、休暇を取得できない状況が続くと、労務トラブルに発展する可能性もあります。
従業員の心身の健康を保ち、業務生産性を向上させるためにも、休暇の取得状況の管理は大切なのです。
年次有給休暇の付与日数は、勤続年数などによって異なるため、従業員ひとりひとりの付与日数を正しく把握した上で管理を行うことが必要です。

労務・人事・勤怠管理に共通する留意点とは

労務管理・人事管理・勤怠管理は、従業員ひとりひとりが能力を発揮しながら安全かつ健康に働くために大切な業務です。
それでは、労務・人事・勤怠管理を行う上では、どのような点に留意すれば良いのでしょうか。
労務・人事・勤怠管理に共通する留意点について、以下で3点に分けて説明します。

徹底した情報管理意識を持つこと

労務・人事・勤怠の管理においては、従業員の個人情報を取り扱う機会が多くあります。
他の従業員に関する個人情報を無関係の同僚などに軽い気持ちで話してしまうと、部署全体が社内での信頼を失うことに繋がります。
業務で知り得た従業員の個人情報は、決して外部に漏らさないという強い姿勢を持つことが大切です。
また、情報の取り扱いについての社内規定を詳細まで定めておくことが重要です。

さらに、ITの発達により、労務管理システムなどのデジタルツールで情報を管理する機会も多いでしょう。
各システムが外部のウィルスなどによる損害を受けることがないよう、セキュリティーを万全にするなどして、情報の漏洩が起こらない体制を整えることが大切です。

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法令を正しく把握し遵守すること

労務・人事・勤怠管理においては、各種の法律を正しく理解することが大切です。
労務・人事・勤怠管理に関連する法律には、主に以下のようなものがあります。

  • 労働基準法

  • 労働組合法

  • 労働関係調整法

  • 労働安全衛生法

  • 労働契約法

法律を正しく理解していなければ、労働時間の管理や各種のハラスメントについて誤った対応をすることに繋がりかねません。

また、労働に関する法律は労働を取り巻く環境の変化により、改正される場合があります。
法律の改正が行われた場合は、就業規則や社内制度の変更など、必要な対応を迅速に行う必要があります。
法律の改正に関する情報を得るためには、厚生労働省のホームページなどをこまめにチェックするなどし、情報をキャッチアップする姿勢を持つことが大切です。

改善点を見つける姿勢をもつこと

労務・人事・勤怠管理においては、常に改善点を見つけようとする姿勢を持つことが重要です。
管理業務において、不要な作業や簡略化できる作業があれば、作業自体を廃止したり、効率化を図ったりすることが大切です。
特に、事務や書類管理に関する作業の効率化には、専用のシステムの導入が有効です。
たとえば労務管理システムは、労務管理におけるあらゆる作業を自動化できます。
作業の自動化により、作業時間や工数の削減をサポートしてくれるでしょう。

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※ITreviewカテゴリーレポート「労務管理部門」(2022Fall)

まとめ

労務管理・人事管理・勤怠管理は、個別の従業員や組織全体など、管理する対象がそれぞれ異なる業務です。
一方で、各業務に共通しているのは、従業員が最大のパフォーマンスを発揮しながら、安全に働くために欠かせない業務であるという点です。
労務・人事・勤怠管理を正確に行うためには、従業員に関わる個人情報を丁寧に取り扱うこと、法律に関する正しい知識を持つことなどが重要です。
必要に応じて、人事管理システムや労務管理システムなどの各種システムを活用しながら、効率的に業務を進められる工夫を行いましょう。

HR大学編集部
HR大学 編集部

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