有効求人倍率とは?計算方法や完全失業率まで解説
- 有効求人倍率とは
- 有効求人倍率の計算方法
- 有効求人倍率が「高い時」と「低い時」の意味
- 有効求人倍率の推移
- 有効求人倍率推移
- 有効求人倍率職種別推移
- 求人倍率新卒の推移
- 有効求人倍率の注意点
- 有効求人倍率と完全失業率との関係
- 完全失業率とは
- 完全失業率と有効求人倍率との関係性
- 有効求人倍率の今後と人事がすべきこと
- 今後の有効求人倍率予測
- 人材採用と有効求人倍率からの予測
- 人事が気をつけるべきポイント
- クラウド型人事評価と労務管理で評価の見える化と効率化を実現
経済指標としてよく使われる有効求人倍率。採用計画にも大事な数字だと言われています。ここでは有効求人倍率の意味と計算方法、また数字の意味を解説します。
有効求人倍率とは
有効求人倍率とは、「有効求職者の数」に対する「有効求人の数」の割合です。
有効求人倍率は、雇用動向を表す大事な指標のひとつで、景気動向とほぼ連動して動くため「景気動向指数」としてもよく用いられます。
有効求人倍率は、厚生労働省が全国のハローワーク(公共職業安定所)の把握する数字をベースに算出しています。
倍率が1を上回れば求職者数よりも、求人数が多いことになり、1より小さい数になれば、求人数よりも求職者数が多いということです。
有効求人倍率の「有効」という言葉は、「ハローワークでの求人票や求職者票が有効期間内にあること」からきています。
ハローワークは、求人票でも求職票でも「求職票や求人票を受理した日の属する月の翌々月の末日」(※参考)と有効期間と定めており、期間内の「有効求人数」と「有効求職者数」から計算しているため「有効」という言葉が使われているのです。
厚生労働省は「一般職業紹介状況(職業安定業務統計)」で有効求人倍率を毎月発表しています。
(※参考)Wikipedia:「求人倍率」
有効求人倍率の計算方法
有効求人倍率の計算式は以下を参照してください。
有効求人倍率=有効求人数÷有効求職者数
さらに3つの例で簡単に説明します
企業からの求人1,000人に対し、求職者が1,000人いた場合
1000÷1000=1
数字が1になり、1人の求職者あたり1社の求人があることを示します。
企業からの求人1,000人に対し、求職者が500人いた場合
1000÷500=2
数字が1をこえ、1人の求職者に2社の求人があることを示します。
企業からの求人500人に対し、求職者が1,000人いた場合
500÷1000=0.5
数字が1を割り、2人の求職者に1社の求人しかないことを示します。
有効求人倍率が「高い時」と「低い時」の意味
有効求人倍率は一般的に数字が1より大きい場合は「求職者数よりも求人数」が多いため、企業が積極的に採用活動をしていることを意味します。
採用の場面は「売り手市場」で、景気は「良い」という意味です。 逆に数字が1を下回る場合は、企業が採用活動を縮小させていることを示し、社会の動きは鈍化している、もしくは不景気な状態を表します。採用面では「買い手市場」です。
有効求人倍率の推移
有効求人倍率の職別の推移について、最近の有効求人倍率はどのように推移しているのでしょうか。
ここでは全体の傾向に加え、職種別と新卒の求人倍率を紹介し、数字を見るときの注意点まで解説していきます。
有効求人倍率推移
前述した通り厚生労働省は、ハローワークの求人や求職の状況を「一般職業紹介状況」として毎月発表しています。
ここでは2023年8月29日発表の、2023年7月の数字とグラフを紹介します。
※以下引用
【ポイント】
令和5年7月の有効求人倍率は1.29倍で、前月に比べて0.01ポイント低下。
令和5年7月の新規求人倍率は2.27倍で、前月に比べて0.05ポイント低下。
(※引用)厚生労働省「一般職業紹介状況(令和5年7月分)」
(※引用)厚生労働省「一般職業紹介状況(令和5年7月分)」
有効求人倍率職種別推移
主な産業、職業別の有効求人倍率の推移は以下の通りです。
情報通信業(5.2%増)、宿泊業,飲食サービス業(2.1%増)、学術研究,専門・技術サービス業(0.3%増)で増加となり、製造業(11.4%減)、建設業(8.0%減)、生活関連サービス業、娯楽業(3.4%減)などで減少となりました。
(※引用)厚生労働省「一般職業紹介状況(令和5年7月分)」
有効求人倍率は、2023年5月以降3ヶ月連続で前の月を下回っています。
また、2023年7月の新規求人倍率は、2022年7月と比較すると2.5%減となりました。
特に、製造業(11.4%減)、建設業(8.0%減)での新規求人倍率が減少となり、これは原材料費や光熱費の高騰の影響が続いていることが要因となっています。
(※引用)厚生労働省「一般職業紹介状況(令和5年7月分)」
(※引用)厚生労働省「一般職業紹介状況(令和5年7月分)」
求人倍率新卒の推移
厚生労働省が直接把握している新卒に関する求人状況は、ハローワークを通しての就職による主に高校、中学新卒者がメインです。
対象は、学校やハローワークからの職業紹介を希望した生徒に限定されます。
2023年発表の資料では高卒でやや前年比低下、中卒でやや上向きという結果になっています。
以下引用
【高校新卒者】(第1表) 就職内定率 99.3%で、前年同期比 0.1ポイントの増
【中学新卒者】(第2表) 就職内定率 86.8%で、前年同期比 0.7ポイントの減
(※引用)厚生労働省:「令和4年度『高校・中学新卒者のハローワーク求人に係る求人・求職・就職内定状況』取りまとめ(3月末現在)」(令和5年3月)
大卒者に関しては厚生労働省と文部科学省が、令和5年3月大学等卒業者の就職状況を共同で別途調査し、令和5年4月1日現在のものを発表しています。
大学生の就職率は97.3%となり、前年同期を1.5ポイント上回りました。
以下引用
大学(学部)は97.3%(前年同期差+1.5ポイント)
短期大学は98.1%(同+0.3ポイント)
大学等(大学、短期大学、高等専門学校)全体では97.5%(同+1.4ポイント)
大学等に専修学校(専門課程)を含めると97.3%(同+1.3ポイント)
(※引用)厚生労働省:「令和5年3月大学等卒業者の就職状況」
(※引用)厚生労働省:「令和5年3月大学等卒業者の就職状況」
ちなみに、ハローワークは主に仕事を辞めた方や、中高卒者向けの求人というイメージがありますが、厚生労働省では「新卒応援ハローワーク」を設立しています。
全都道府県にあるワンストップで新卒者を支援する施設で、大学院、大学、短大、高専、専修学校などの学生へのサポート体制を強化しました。
未就職のまま卒業した場合は、新卒応援ハローワークの就職支援ナビゲーターが、大学の担当者と連携して学生へのサポートが継続されます。
有効求人倍率の注意点
有効求人倍率には大きく2つの注意点があります。
ハローワーク以外の求人数と求職者数は含まれていない
1つめの注意点は、「ハローワーク以外の求人数と求職者数は含まれていない」ことです。特に一般企業への就職や転職を希望する場合、失業手当の給付が必要ない場合など、就職情報誌や民間の就職サイトを利用することの方が多いでしょう。就職希望先の企業規模が大きくなると、よりこの傾向が強くなると思われます。
有効求人倍率は正社員の求人だけではない
2つめの注意点は、「有効求人倍率は求人が正社員の募集だけの数字ではない」ことです。一つ前の項でも触れましたが、厚生労働省の資料では「パート」雇用は区別されていますが、正規、非正規の区別はありません。
企業が景気の鈍化を見込み正社員の採用を控え、非正規の募集を増やした場合で考えてみましょう。例えば正社員雇用を1名雇減らして、非正規社員募集を1名増やした場合は数字に反映されません。有効求人倍率が正確に景気の動向を映したものかどうか疑問が残る点です。
有効求人倍率と完全失業率との関係
有効求人倍率と並んで景気の重要な指標として 「完全失業率」があります。
完全失業率とは総務省が発表する数字です。
有効求人倍率と完全失業率が雇用と景気を表す指標として重要と考えられています。
ここでは完全失業率を解説し、有効求人倍率と完全失業率の関係性を説明します。
完全失業率とは
完全失業率とは、労働力人口(15歳以上の働く意欲のある人)のうち、完全失業をしている人の割合を指します。
働く気がない場合や、働けない場合の人数は入っておらず、求職活動をしているにもかかわらず職がない場合を「完全失業」と定義しています。
完全失業率の計算式は以下の通りです。
完全失業率=完全失業者数÷労働力人口(就業者+完全失業者)
完全失業率は、総務省統計局が全国の4万世帯を標本調査し、「労働力調査」で毎月発表しています。
完全失業率の数値が高いほど仕事が見つからない人が多いことを示します。
完全失業率と有効求人倍率との関係性
一般的に景気が後退すると、完全失業率が高くなり、有効求人倍率が低くなります。
また、景気が回復すると逆の現象が起こります。
下記のグラフをみていただくと、完全に同じではありませんが、大きく反比例して動いていることが分かります。
(※引用)独立行政法人 労働政策研究・研修機構(JILPT):「完全失業率、有効求人倍率」
有効求人倍率の今後と人事がすべきこと
有効求人倍率は今後どのように変化すると推測されているのでしょうか。
ここでは、今後少子化にあわせた長期的予測に加え、人事が気を付けるポイントを解説していきます。
今後の有効求人倍率予測
パーソル総合研究所と中央大学の共同研究による「労働市場の未来推計2030」によると、2060年までに老齢人口はほぼ横ばいで推移するのに対し、生産年齢人口は約3,000万人減少すると予測しています。
このまま進めば、2030年時点での労働需要が7,073万人であるのに対し、労働供給は6,429万人と、644万人不足する見込みです。(※引用)
こうした状況を受けて、政府は女性層、シニア層に加え、外国人労働者の3分野から労働人口を増やそうとしています。
今後の有効求人倍率は、短期的には物価高騰などの影響で低下が見られるものの、長期的には上昇していくと考えられるでしょう。
(※引用)パーソル総合研究所、中央大学:「労働市場の未来推計2030」
(※引用)パーソル総合研究所、中央大学:「労働市場の未来推計2030」
▼「2030年問題」についてさらに詳しく
2030年問題とは?企業への影響と具体例、取るべき対策を分かりやすく解説
人材採用と有効求人倍率からの予測
有効求人倍率が低い場合は、人事としては採用がしやすく、逆に高い場合は注意が必要と言えます。
これまでは、有効求人倍率や完全失業率などの経済指標を参考にしながら、採用計画を立てることができたかもしれません。
しかし現在は、有効求人倍率が横ばいでも、景気に関係なく前述の通り、長期的には有効求人倍率が上昇していくことが予測されています。
特に職種によっては採用難がすでに起こっています。
転職求人サイトDODAが発表している「転職求人倍率」によると、「技術系(IT・通信)」は2021年4月時点で8.34倍と売り手市場になっています。(※参考)
優秀な人材確保のためにより好条件を提示する、採用コストが増大するなど、費用面も含めた戦略を立てておく必要があります。
(※参考)日経XTECH:「『余計な仕事』が日本のDXを阻む、IT人材不足の解決に必要な視点」
人事が気をつけるべきポイント
国全体として労働人口が減少するため、優秀な人材の取り合いは激化するでしょう。
人事としては優秀な人材の確保にあわせて、現在の人材の流出を防ぐこと、一人あたりの生産性をあげることが大事なポイントになってきます。
人材の流出を防ぐために、魅力的な人事評価制度の整備やテレワークの導入などで、より働きやすい会社をアピールすることもひとつの手法です。
より魅力的な人事評価制度の設計には「タレントマネジメント」の活用が役立つでしょう。
また日本企業では独自開発したシステムが稼働し、手作業による労務管理が行われている企業も多いのが現状です。
人事部そのものの生産性を向上させ、DX化を加速させることも長期視点では必要でしょう。
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クラウド型人事評価と労務管理で評価の見える化と効率化を実現
有効求人倍率に関して、計算方式や人材採用にどう影響するのかを紹介してきました。
長期的には人事にとって難しい採用が続くことが予想されます。
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