人的資本経営の強化。経営・人事・現場をつなぐ、自社らしさを重視したサーベイ活用
株式会社アドウェイズ 人事グループ 人事推進室 室長
新田 利之 様
株式会社アドウェイズ 人事・経営推進グループ
湯浅 大 様
株式会社アドウェイズ 人事・経営推進グループ
匡 舟宇 様
- IT・インターネット
- 1001名~
- 従業員エンゲージメントを向上させたい
- 人材データの分析・活用を行いたい
- 人的資本開示への準備がしたい
- 組織の課題把握・分析がしたい
- 組織診断サーベイ
HRBrain導入開始:2018年07月01日
人的資本経営の強化。経営・人事・現場をつなぐ、自社らしさを重視したサーベイ活用
- 課題背景
- 社員のコンディション不調や、エンゲージメント低下について、現象を把握していても原因を把握できていなかった
- 他社サーベイは質問固定式でボリュームも多く、回答者である社員の負担が大きかった
- 打ち手
- 具体性の高い課題把握ができるEX Intelligenceにリプレイス
- 実施回数や頻度を調整する、具体的に知りたい内容の質問を多くする、などのカスタマイズを行う
- 効果
- 課題同士の因果関係が見えたことで、関連づけて解決策を検討できるようになった
- 多面的なクロス分析により、今後会社として取り組む重点施策を決めることができた
- 他社サーベイよりも回答負担が大幅に減ったという声が多くあった
株式会社アドウェイズの人事グループ 人事推進室 室長の新田 利之様、人事・経営推進グループの湯浅 大様、匡 舟宇様に、HRBrainの組織診断サーベイ EX Intelligence (以下、「EX Intelligence」※1)の導入背景、以前利用していたサービスとの違い、そして今後の活用について伺いました。
アドウェイズ様はすでに5年ほど、タレントマネジメントのHRBrainをご利用いただいていますが、今回はEX Intelligenceに焦点を当ててお話を伺いました。
ー貴社の事業内容を教えてください。
新田様:
アドウェイズは、2001年に設立したインターネット広告企業です。
1,125名(2022年12月末日時点/グループ全体・臨時雇用者含む)が在籍し、アプリ・Webの包括的なマーケティングを支援するエージェンシー事業を始め、国内最大級のアフィリエイトサービス「JANet」「Smart-C」、スマ―トフォン向け広告配信サービス「AppDriver」や全自動マーケティングプラットフォーム「UNICORN」などのアドプラットフォーム事業を展開しています。また、アプリやコンテンツの企画・開発・運営など多彩な事業を手がけています。
さらに、日本を始め、アジアを中心とした世界各国への海外展開も行なっています。
アドウェイズでは、『全世界に「なにこれ すげー こんなのはじめて」を届け、すべての人の可能性をひろげる「人儲け」を実現する。』をパーパスに掲げています。 これまでなかった"なにこれ すげー こんなのはじめて"を、できるだけ多くの方々へ届け、すべての人が成長できる社会へ向け、事業を通じて本質的な価値を創造し続けています。
サーベイを現象の把握ではなく、施策を行うために原因を把握できるものにしたい
ー導入前に抱えていた人事課題を教えてください。
新田様:
これまでは、社員のコンディション不調や、エンゲージメント低下について、現象を把握していても原因を把握できていませんでした。つまり、社員の不調やエンゲージメント低下に対策ができないという課題がありました。
私が室長を務める人事推進室は、社員の成長体験を積極的に推し進めることにより、パーパスの「人儲けの持続的実現」を目指しています。
具体的には、
- 採用や環境改善など衛生要因の改善
から、
- 抜擢や挑戦を促す人事配置
- 成長支援をサポートするための育成・教育など動機付け要因の支援
というように活動をシフトしていくことが求められます。
社員に挑戦を促すということは同時に、社員に負荷がかかった状態を生み出すことになります。
そのため、社員のコンディション・エンゲージメントを可視化する必要がありました。人事が現場の成長を支援していくための羅針盤として、可視化したデータを活用していくためです。
EX Intelligenceを導入する前は、eNPSを活用したサーベイを月次で実施していました。同時に他社サーベイも実施し、eNPSで得たデータとあわせて活用をしていました。
eNPSではアドウェイズへの愛着・身体的不安・精神的不安などを5問程度の設問で回答にしていましたが、これは人間の体で例えるところの体温計の機能に近く、不調であることはわかっても、不調の原因が何かはわかりませんでした。
また、他社サーベイは人間ドッグのような形で、あらゆる切り口で結果はわかるものの、これもまた何が原因で不調になっているかがわかりませんでした。
そのため、しっかり原因を把握してPDCAを回すことのできる、体温計でも人間ドッグでもない「問診」ができるサーベイを求めていました。
ー他システムからのリプレイスとなりますが、経営陣に向けてどのように上申されたのでしょうか。
まず、「正確に記入してもらう」ということを重点的に伝えました。これは、社員の体験により生まれた不調や不満に対する原因を正確に把握して、施策を行うために必要でした。
社員のコンディションやエンゲージメントを可視化するサーベイの場合、大前提として「正確に記入してもらう」ことが必要となります。
そして、経営陣・人事はいろいろなデータを把握したいのですが、社員にとっては回答数・回答頻度が多くなればなるほど負担になります。結果として、「サーベイ疲れ」につながる可能性がありました。
また、他社サーベイは、質問固定式でボリュームも多く、質問のカスタマイズもできませんでした。
つまり、高頻度の大量のテンプレート型のサーベイ実施に、回答者である社員への負荷が高くなりすぎてしまった。すると、社員はすべての設問に正確に答えなくなっていきました。
そうなると、正確性が低い回答が上がってくる。そのため、人事は問題の本質にたどり着けない。このように回答者、人事双方に問題を抱えておりました。
また、アドウェイズではeNPSも採用していたため、エンゲージメントが下がったタイミングは把握できていました。しかし、何が原因で下がったのか?という因果関係までは分析不可能でした。
そこで、経営陣への上申の際にはEX Intelligenceの、
- 設問を月次・四半期・半期や質問する月まで設計できるので、毎月少しずつ回答してもらう対応ができる
- 約5年間利用しているHRBrainと同じ画面で回答できるので、社員の負担を軽減できる
- 具体的に知りたい内容の質問を多くするなど、アドウェイズ独自の設問としてカスタマイズができる
ということを訴求しました。
これらは社員に正確に記入してもらえるということに加えて、会社として注力して調査したい内容に対してより深掘りした設問も設定できるということです。これは当時、新パーパスを設計していた経営陣にとっては、有効性を感じてもらえるポイントだったと思います。
決め手は、具体性の高い課題把握とシステムの見やすさによる回答負担の軽減
ーEX Intelligenceを選んだ決め手を教えてください。
新田様:
前提として、従業員エクスペリエンス(EX)の設計思考が人事推進室との戦略思考に合致したことが大きかったです。また、具体性の高い課題把握ができること、システムの見やすさ(UI・UX)により回答負担を軽減できること、この二点が最終的な決定の主な理由となりました。
まずは具体性の高い課題把握について、データを瞬間のデータとして見るのではなく、推移で捉えられるというのが良いと考えました。
具体的には、入社年次に応じて体験がどう変化していくかを見ることができるため、現在の入社2年目の社員に起こっていることを確認できます。それをもとに、現在1年目の社員に先んじて手を打つことができます。ここが、マネジメントや人事施策の「結果」としての貢献度合いを測定する、従業員エンゲージメントとの大きな違いだと思っています。
また、UI・UXは回答画面のスムーズさと、ダッシュボードのシンプルでありながら網羅性があるところも強い長所として捉えました。同じデータを横軸で見ることで、どこの部署のどの期待値・実感値が課題なのかが分析しやすいのではないか、と感じました。
以前より人事評価で使用しているHRBrainというプラットフォーム内で完結すること、導入前のトライアルでの回答画面のスムーズさ。この2点で、他社サーベイよりも回答負担が大幅に減ったという声が多く、導入に至りました。
課題同士の因果関係が見えたことで、関連づけて解決策を検討できるように
ーサーベイ実施後、導入前に抱えていた課題の解決状況はいかがですか。
新田様:
三つの導入効果をすぐに感じることができました。
一つ目は、詳細項目の統計分析により、スコアを決定する因果関係の可視化ができたことです。
一般的な組織サーベイでは単なる平均点の比較で問題を特定することが多いです。しかし、この方法では因果関係を導くことができませんでした。HRBrainのデータアナリストによる支援の場合は、なぜこの結果が出るのか、という原因と結果の因果関係や、課題同士の因果関係が数字で出るのが決定的な違いです。
アドウェイズでは、「やりがいの高さ」がスコアを決定する一番の要因でした。そして、成長ストレッチによる心身の負担や、自らの業務に納得感を得られない場合に、スコアが減少する傾向があるということがわかりました。今までは、業務負担とキャリアの問題など問題が2つ以上出た際に、どちらを優先して解決するかの議論をしていました。しかし、EX Intelligenceの導入により、複数の因子における影響関係を把握できた点が大きいです。
そのため、課題をストーリーとして把握した上で解決策を検討できるようになりました。
二つ目は、キャリアに不安をもつタイミングなどを把握できたことです。
これは、EX Intelligenceのスコアを活用した入社経年別や役職別など多面的なクロス分析により可能となりました。具体的には、業務負荷を感じている役職や、経験に不安を感じ始める時期が把握できるようになりました。
これにより今後、会社として取り組む重点施策を決めることができました。
三つ目は、マネージャー教育に活用できることです。
これは副次的な効果だと思いますが、EX Intelligenceによって、職の魅力・業務の難易度・目標の納得度・成長に繋がるフィードバックなど、マネージャーとメンバーのコミュニケーションにおける課題が明確に数値化されました。具体的には、まず、マネージャーとメンバーのコミュニケーションを、メンバーがどう思っているかの結果が数字ではっきり出たことです。そして、その結果をマネージャーにも数字を用いて伝えることで、納得感の高い状態で改善策を考えることができるようになりました。
このように、抽象的なコミュニケーションの課題に対して、具体的な数字を用いて改善策を考えられるようになったことが、効果として挙げられると考えています。
湯浅様:
EX Intelligenceを導入して毎月サーベイを行うようになったことで、人事だけではなく現場の社員もHRBrainをよく使うようになりました。
今までは、HRBrainは半期に一度評価のために使うものであり、社員がシステムに触れるのも、人事が社員情報をメンテナンスするのも半期に一度だけでした。
しかし、サーベイの運用を始めて、人事としても常に最新の情報になるようメンテナンスを行うようになりました。そうすることで、リアルタイムでサーベイ結果が反映されるようになり、社員情報のメンテナンスもすごく楽になったと感じています。
匡様:
私も、社員情報のメンテナンスが楽になったと感じています。
導入目的の一つに、社員の回答負担を減らすことを置いていましたが、サーベイを管理する人事側にとっても運用面での負担が減りました。
ー経営陣や現場から、どのような反響がありましたか。以前利用されていた他社サーベイとの違いもあれば教えてください。
新田様:
経営陣からは、各部署の問題・個人のコンディションの双方が見える化できたことについて、非常に高い評価を頂きました。
2023年5月の決算説明会において、2023年~2025年の中期経営計画をリリースしましたが、その中の非財務指標として、EX Intelligenceのスコアを経営指標の一つとして追っていくことを決めました。
現場では、サーベイ結果で得られた総合点であるEXスコア®︎(※2)に対する信頼感が、他社サーベイよりも高いように感じました。
以前はコンサルタントの方が現場に結果の説明をしてくれていました。しかし、どうしても人により解釈が異なり曖昧な理解になってしまっていました。EX Intelligenceでは、具体的な事象がスコアに現れているため、現場責任者の納得感が高まったように感じます。
タレントマネジメントのHRBrainも利用しているので、今後は評価結果や社員名簿へのデータ拡充を進めて、EXスコア®︎と掛け合わせて分析を進めていきたいですね。
社員満足度の向上が経営結果とリンクすることを証明できる会社を目指す
ー今後の展望として、EX Intelligenceを活用してどのようなことを実現していきたいとお考えですか。
湯浅様:
EXスコア®︎の分析という意味では、より細かに分析項目や属性の比較を行いたいと考えています。
例えば、弊社の福利厚生にあるクラブ活動を分析軸の一つとして活用したいと考えています。具体的には、クラブ活動に参加している人の傾向やEXスコア®︎の推移を見ることで、福利厚生などの人事施策について打ち手が変わってくるのかなと考えています。
新田様:
EX Intelligenceの結果を受けて、社員に向けてキャリア支援などの施策のアナウンスを行いたいと考えています。
また、組織開発は中長期的に向き合うべき重要課題と捉えています。課題解決のために、中期経営計画における組織改善のKPIとしてEXスコア®︎を活用することにしました。
今後は、人的資本の情報開示の取り組みとして、統合報告書での開示も検討しています。非財務指標の中でも、従業員エンゲージメント・従業員エクスペリエンスの向上は欠かせません。今後はEX Intelligenceを活用しながら、個と組織の成長を目指していきたいと思っています。
また、さまざまなツールを使って効率化を進め、社員が価値ある業務に取り組めるようにしたいとも考えています。アドウェイズでの体験を通して、前向きになる、チャレンジしたくなる、この会社に貢献したい、この会社をもっと良くしたい、と思ってもらえるようにしたい。
そして、この変化はEXスコア®︎に表れ、社員の生産性は上がると考えています。私達はサーベイのスコアの改善が、会社全体の売上上昇などの変化と関連があるということを証明できる会社になりたいと考えています。
昨今、人材獲得競争が進んでいます。その中でも、IT業界は特に競争が激しいと感じています。
離職があると、採用・育成コストがかかる上に、入社者の習熟度により生産性は一時的にマイナスになります。それを防ぐためにも、社員のコンディション・エンゲージメントとその原因を把握して、フォローしていくことで長く活躍してもらえるのではないかと思います。
こうして社員一人ひとりの熟練度が上がることで、今年よりも来年と、n+1年の方が熟練度も上がり、結果的に生産性も上がって売上など会社全体の変化につながっていくと考えています。
ー組織改善にお悩みの他社のご担当者様に、アドバイスがあればお伺いさせてください。
新田様:
まずは、社員のコンディション・エンゲージメントについて、サーベイなどで数字として可視化をし続けることが大事なのではないかと思っています。
数字は客観的データのため、人事が主観であれこれ言うよりも、改善意欲につながるのではないでしょうか。平均点とのギャップを伝えることで、より納得度も向上し、改善を一緒に進めていけるのではないかと思っています。
アドウェイズの場合も、社員はデータを見て分析するマーケッターなので、数字で示すことの納得性は非常に高かったですね。
現在は、問題の原因や課題の因果関係を把握し始めた段階ですので、今後もサーベイと分析を継続し、改善施策の実行まで進めていきたいと考えています。
※掲載内容は、記事公開の2023年6月時点のものです。