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2024/07/30

PDCAサイクルとは?基本のやり方と時代遅れと言われる理由を解説

目次

PDCAサイクルは、多くの日本企業が目標達成や業務改善のためのフレームワークとして採用しています。

しかし、PDCAという言葉は聞いたことがある人も多いものの、その理解が不十分であったり、効果的な活用方法を知らない人も少なくありません。

近年では、スピードを重視する傾向が強まっており、「PDCAは時代遅れだ」「もう古い」といった声も聞かれますが、適切に活用すれば効果を発揮することができます。

この記事では、PDCAサイクルの基本的なやり方から、古いとされる理由まで、幅広く解説します。

PDCAサイクルを回すために重要な目標設定方法

PDCAサイクルとは

PDCAサイクルは、Plan(計画)、Do(実行)、Check(評価)、Action(対策・改善)の4つのプロセスを繰り返し、目標達成や業務改善を行うフレームワークです。Plan→Do→Check→Actionの4つのステップを順番に繰り返し、最後のステップであるActionまで終わったところで、また最初のPlanに戻ります。

この一連の循環は「PDCAサイクル」と呼ばれ、継続的にプロセスを改善し続けることで、業務改善を進めます。

PDCAサイクルが日本に広まったのは1950年代で、アメリカの統計学者でコンサルタントのウィリアム・エドワード・デミングらによって生み出されました。

デミング氏は「品質管理の父」として知られ、統計に基づく工程管理手法の第一人者です。

現在では、品質・生産管理にとどまらず、経営管理や人材マネジメントなど、さまざまな場面でPDCAサイクルが活用されています。

PDCAサイクルの4つのステップ

Plan(計画)、Do(実行)、Check(評価)、Action(対策・改善)の各プロセスについて詳細を解説します。

Plan(計画)

Plan(計画)では、まず目標や目的を明確に設定し、それらを達成するための具体的な行動計画(アクションプラン)を作成します。

このステップはPDCAサイクルの中でも特に重要であり、成功の鍵を握る部分です。

まず初めに、現状を正確に把握し、数値で計測可能な目標を設定します。

さらに、誰が見ても理解しやすく、具体的で実行可能なアクションプランを立てることが重要です。

これにより、Do(実行)の段階において、迷うことなく行動することができ、目標達成への道筋が明確になります。

また、この計画段階で目標が明確に設定されていれば、後の段階での評価も容易になります。

目標の達成度を定量的に評価するためには、計画段階で設定した数値目標と比較し、進捗状況を確認することができます。

これにより、PDCAサイクル全体を通じて、目標達成への取り組みを効果的に管理し、改善していくことが可能となります。

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Do(実行)

Do(実行)段階では、Plan(計画)で立てた計画を実行しますが、それだけではなく、後述する「やりっぱなし」にならないように気をつける必要があります。

この段階でのポイントは、実行した内容を客観的に振り返れるよう、プロセスや活動内容を記録しておくことです。

具体的には、実行の過程で生じた事象や進捗状況を詳細に記録しておく必要があります。

また、実行段階で計画が予定通りに進まない場合でも、問題点や課題を記録することが不可欠です。

これにより、問題の原因や本質を明らかにし、改善策を考える際に有益な情報となります。

また、この段階での記録は、Check(評価)段階での振り返りに役立ち、客観的な評価を行う上でも重要です。

数値化された指標や実際の事実を記録しておくことで、その後の評価がより的確かつ客観的に行えるようになります。

Check(評価)

Check(評価)では、設定した目標やアクションプランに対する達成度や進捗を検証・評価しますが、その際に重要なのは、単に「できた」「できなかった」という結果だけではなく、その結果に至った原因を分析することです。

なぜ目標が達成されたのか、あるいは達成されなかったのか、その背後にある要因を理解することが肝要です。

このような分析を行う際には、定量的なデータを参考にすることが非常に有益です。

具体的な数字や統計データを見ながら振り返ることで、より深い洞察や学びを得ることができます。

Check(評価)段階での振り返りがより精度の高いものであれば、その後のAction(改善)段階での効果も期待できます。評価の精度が高ければ高いほど、改善策の導入や調整が的確に行われ、業務プロセスの効率化や品質向上に繋がるでしょう。つまり、PDCAサイクル全体の効果を最大限に引き出すためには、Check段階での徹底した評価が不可欠です。

Action(対策・改善)

Action(対策・改善)では、Check(検証)段階で得られた検証結果から、得られた気付きや課題などを元に改善案を考えていきます。

改善案を検討する際には、評価の段階で行った「なぜうまくいったのか」についての検討内容が有益なヒントになります。

成功の理由から得られる知見を、改善案の検討に積極的に活用しましょう。

複数の改善案が提案された場合は、次のサイクルの「計画」を見据えて、優先順位を付ける必要があります。

優先度の高い改善案から計画に反映させることで、より効果的な改善が実現できるでしょう。

改善案の検討が完了したら、再び最初のステップであるPlan(計画)を開始し、次のPDCAサイクルを進めていきます。

PDCAサイクルを実施するメリット

ここまでPDCAサイクルについて詳しく解説してきましたが、ここではPDCAサイクルを実施するとどのようなメリットがあるか、具体的に3つ解説していきます。

PDCAサイクルを実施するメリット

  • やるべきことが具体的になり集中できる

  • 継続的に事業や業務改善ができる

  • ナレッジが蓄積できる

やるべきことが具体的になり集中できる

PDCAサイクルでは、Plan(計画)段階で目標や実行アクション、その優先順位やスケジュールが明確に定められます。

そして、Do(行動)段階では、このアクションプランに基づいて行動し、その過程で発生した出来事やプロセスを記録していきます。

このやり方によって行動中に、正しいアクションが取れているか?や、他に良い選択肢はないか?といった疑問に悩む必要がなくなり、結果的に目の前の行動に集中しやすくなり、仕事を効率的に進めることができます。

要するに、明確な指針があることで、迷いなく作業を進めることができます。

持続的に事業や業務の改善ができる

PDCAサイクルは、連続的な評価と改善を重ね、中長期的な視点で業務改善や目標達成を促進します。

さらに、現場の従業員がアクションプランやタスクを自ら作成するため、問題解決への意識が高まり、業務に対する取り組みを自分ごととして捉え、モチベーションが向上も期待できます。

また、PDCAサイクルの実施により、従業員のCheck(評価)スキルの向上にも繋がります。

ナレッジが蓄積できる

PDCAサイクルは、成功や失敗にかかわらず、常に評価を行い、改善に繋げます。

失敗があった場合でも、「なぜうまくいかなかったのか」を徹底的に分析し、対策を講じることで、同じ失敗を繰り返すリスクを減らします。

また、評価と改善を繰り返すことで、PDCAの各プロセスの精度が向上します。

改善のナレッジを蓄積することは、最終的な目標に向かう着実性やスピードの向上に繋がります。

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PDCAサイクルを成功させるポイント

PDCAサイクルの効果を最大化させるためには、いくつか注意すべき点があります。

どのようなことに気をつければいいのでしょうか。

PDCAサイクルを成功させるポイントを解説します。

具体的な目的・目標を設定する

PDCAサイクルの効果を最大限に引き出すためには、まず目標を明確に設定することが不可欠です。

目標が具体的で数値化されると、計画や評価手法が明確化され、リソース配分の精度も向上します。

例えば、「売上を上げる」といった抽象的な目標ではなく、「月100件の新規顧客を獲得し売上を昨対比120%にする」といったように、具体的な数値目標を設定することが重要です。

こうして数値化された目標は、具体的なアクション計画を立てることに役立ち、結果的に効率的な業務推進へと繋がります。

状況を定期的にチェックしレポートする

PDCAサイクルの効果を最大化させるためには、定期的な評価と確認が不可欠です。

当初設定した目標に対する進捗状況や問題点の有無を、定期的に丁寧にチェックすることが重要です。

ただし、一般的にPDCAサイクルは通常業務に付加されることが多く、日々の忙しさに追われて評価が後回しにされることがあります。

このような事態を避けるためには、決まった曜日に評価・確認の時間を設けるなどの対策を取ることが重要です。

これにより、良好なサイクルが維持され、業務の効率性や品質が向上します。

PDCAを継続的に回し続ける

PDCAサイクルの効果を最大化するためには、単なる繰り返しではなく、各サイクルで得られた情報や洞察を活用して改善を進めることが不可欠です。

これにより、サイクルごとに品質や効率性が向上し、目標達成に向けた道筋が明確になります。

PDCAサイクルは目標達成まで継続して行われるべきであり、その過程で継続的な改善が行われることが重要です。

したがって、PDCAサイクルを実践する際には、毎回のサイクルが次の改善に繋がるように積極的に学び、成長していく姿勢が求められます。

組織全体がこの継続的な改善サイクルに参加し、協力して目標に向かって進んでいくことが、成功への鍵となります。

PDCAサイクルは時代遅れ?古いとされる理由

近年「PDCAはもう古い」「時代遅れ」といった声も少なくありません。

このようにいわれる原因として以下の3点が挙げられます。

改善までに時間がかかる

PDCAサイクルの大きなデメリットとして、行動までに時間がかかる点があげられます。

計画・評価・改善が、行動の間に挟まるため、特に近年のビジネス環境が急速に変化する中では、PDCAサイクルの適用が難しいと見なされています。

特に次の行動までに状況が一変している場合、意味をなさなくなります。

そのため、スピードが重要な業界ではPDCAが対応できません。

一方で、PDCAの適用範囲は業界や状況によって異なり、安全管理や品質管理など正確性や安全性が重視される場面では有効な手法として活用されます。

形骸化しやすい

目的を忘れてしまうと、目標を達成することではなく、単にPDCAサイクルを回すことそのものが重視されることがあります。

このような場合、PDCAサイクルを単なる形式だけで実行しても、目標達成や業務改善には繋がらない可能性があります。

PDCAの本来の意図や目的を理解せずに、単にサイクルを回すことで終わってしまうと、本来の目標や課題を見失う可能性があります。

そのため、PDCAサイクルを効果的に活用するためには、常に目標や課題が何か、それらを達成するために何をすべきかを明確にしておくことが重要です。

PDCAサイクルを実行する際には、常に目標に向かって進捗を確認し、改善を繰り返すことで目標達成に向けて効果的に進めることができます。

したがって、PDCAサイクルは本来の意図や目的を理解し、目標達成に向けて具体的な行動をとることが重要です。

新しいアイデアが生まれにくい

PDCAサイクルは、過去の経験や状況を考慮して、改善策を導き出す手法です。

しかし、このプロセスは過去のやり方や成功事例に依存しやすく、新たなアプローチや革新的なアイデアの創出にはあまり適していません。

特に現在は、世界がグローバル化の潮流に乗っており、新たな課題や変化が頻繁に生じている状況下では、従来のやり方が通用しなくなることが多々あります。

こうした場面で求められるのは、これまでとは異なる視点やアプローチで問題に取り組むことです。

その場合、PDCAサイクルのような過去の経験や成功事例を元に改善策を検討する方法では、新たな状況や課題に対応することが難しい場合があります。

そのため、組織は、これらの課題に対処するために、PDCAサイクルと異なる手法や戦略を組み合わせる必要があります。

PDCAサイクルに代わるOODAループとは?

近年PDCAサイクルの代わりに注目されているのがOODA(ウーダ)ループです。

PDCAサイクルが事前に立てた計画に対して、忠実に実行し、中長期的な成長のサイクルを生み出していく一方で、OODA(ウーダ)ループは迅速に意思決定し、柔軟に臨機応変に対応していき、短期的な視点で改善を進めるものです。

  • Observe(観察)

まず、現状を綿密に観察します。計画に固執せず、業界の状況や競合の動向、そして自社内の事情など、今後の行動に関わる内外の状況を把握するために、情報を集めます。

この段階で集める情報の確度や新鮮さは、後の判断や行動の成果に大きく影響を与えます。

  • Orient(現状判断)

集めた情報から現状を把握し、データの分析をおこなって、今後どう動くべきかを判断します。

この際に、Observe(観察)で収集した情報の量と質が、現状判断の精度を左右します。

  • Decide(決定)

現状判断ができたら、それに沿って具体的な行動計画を決めていきます。

  • Act(行動)

行動計画に基づいて実際に行動します。

その結果を観察し、またObserve(観察)へと戻りOODAループを繰り返します。

OODAループはPDCAサイクルとは異なり、瞬時の行動を重視します。

これにより、意思決定から実行までの時間が大幅に短縮され、急激な変化のある環境に素早く対応できます。

特に、激しい競争や技術革新が求められる分野では、この戦略が有効です。迅速な情報収集と柔軟な状況対応が成功の鍵です。

組織はOODAループを繰り返すことで、常に変化に適応し、競争力を維持・向上させることができます。

PDCAサイクルをうまく回して継続的な成果へと

PDCAは業務の質を向上させる基本的なフレームワークであり、理解と運用によって確実な改善と生産性向上が可能です。

近年、否定的な意見もありますが、目標設定や行動の集中、改善点の特定などに有効であり、扱い方次第で大きな成果を生み出すことができます。

そのためには適切な目標設定とそれに沿った行動計画を立てることが大切です。

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また、評価基準や評価プロセスの見える化によって、社内コミュニケーションの改善や、評価納得度の向上を促進します。

HRBrain人事評価の特徴

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  • 評価の集計や調整もシステム上で完結

部署別など任意の項目で集計が可能で、評価結果の調整もシステム上で完結できます。

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HR大学編集部
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