介護離職とは?原因と理由や離職しないための対策と支援などの解決策について解説
- 介護離職とは
- 介護離職の現状
- 介護離職者数は約11万人
- 介護による経済損失は約9.2兆円の見込み
- 介護離職の原因
- 仕事と介護の両立が困難な職場環境
- 介護疲れによる健康状態の悪化
- 介護の負担の増加
- 介護離職が企業に与える影響
- 損失の発生
- 従業員の負担の増加
- 介護離職を防止する方法
- 仕事と介護の両立に関する実態の把握
- 介護に必要な情報の提供
- 仕事と介護の両立制度の理解
- テレワークの導入
- 助け合う職場の風土づくり
- 働き方改革の導入
- メンタルヘルスケアの実施
- 介護離職を防ぐための仕組みづくりに取り組むことが大切
介護離職とは、介護と仕事の両立が困難になり、家族や親族の介護のために離職せざるを得ない状態になってしまうことを指します。
また、介護は突然訪れるため備えていなければ、心身に大きな負担となり、仕事と介護の両立が難しいと感じたら、介護離職せざるを得なくなってしまい、介護者にも企業にも大きな損害を与えます。
この記事では、介護離職とはどのような状況なのか、介護離職の現状、介護離職者数、介護離職による経済損失、介護離職の原因、介護離職が企業に与える影響、介護離職を防止する方法について解説します。
介護離職を防止するための従業員アンケートの実施
介護離職とは
介護離職とは、介護と仕事の両立が困難になり、家族や親族の介護のために離職せざるを得ない状態になってしまうことを指します。
介護離職は、業務を熟知した、40代、50代の働き盛りの中堅社員が多く、企業にとっても大きな損失となるため、対策を考える必要があります。
また、介護離職者にとっても、介護には休みが無く、日中就業し帰宅後に介護を行うなど、心身ともに疲労がたまってしまい、さらに介護離職した場合は、収入源が無くなることで、経済的に困窮してしまう場合も多くあり、介護離職は社会問題となっています。
介護離職の現状
社会問題として取り上げられている介護離職ですが、実際にどれぐらいの人が離職しているのか、日本における介護離職の現状について確認してみましょう。
介護離職者数は約11万人
総務省の「令和4年就業構造基本調査」によると、直近1年間で「介護・看護のため」を理由とした離職者の数が約11万人で、男性が約3万人、女性が約8万人となり、前年比で約1万人増加していることが分かりました。
また、介護者の数は約629万人で、そのうち仕事に就いている有業者が約365万人であることが分かりました。
2022年10月1日時点での、有業者が約6,706万人であるのに対して、介護を行っている有業者が約365万人と全体の5.4%の人であることが分かりました。
(参考)総務省統計局「令和4年就業構造基本調査」
介護による経済損失は約9.2兆円の見込み
経済産業省の「介護政策」によると、仕事と介護の両立の困難による生産性の低下や、介護離職による経済損失は、2030年に約9.2兆円にのぼると試算されています。
(出典)経済産業省「介護政策」をもとにHRBrainが作成
2030年における経済損失の推計:合計9兆1,792億円
仕事と介護の両立困難による労働生産性損失額:7兆9,163億円
介護離職による労働損失額:1兆178億
介護離職による育成費用損失額:1,289億
介護離職による代替人員採用に係るコスト:1,162億
▼「2030年問題」についてさらに詳しく
▼「労働生産性」についてさらに詳しく
介護離職の原因
介護離職が発生する主な原因について確認してみましょう。
介護離職の原因
仕事と介護の両立が困難な職場環境
介護疲れによる健康状態の悪化
介護の負担の増加
仕事と介護の両立が困難な職場環境
介護離職が発生する原因として、「仕事と介護の両立が困難な職場環境」があげられます。
仕事と介護の両立を試みても、要介護者の急な体調不良による病院への付き添いなど、突然の介護が必要になり、計画通りに進まないことが多いです。
企業側が介護者の状況について理解を示さないと、介護者は介護で何度も休むことへの後ろめたさを感じてしまいます。
また、要介護者の状態次第では付き添いが必要になり、会社へ出社することが難しくなってしまいます。
企業側が介護者に対して理解を示さず支援を行わない場合、介護離職が発生してしまいます。
▼「職場環境の改善」についてさらに詳しく
介護疲れによる健康状態の悪化
介護離職が発生する原因として、「介護疲れによる健康状態の悪化」があげられます。
仕事と介護の両立は、介護者に心身的な負担となります。
また、要介護者の急な体調不良で病院に付き添うなど、突発的に仕事を休まなければいけないため、責任感が強い人であれば「仕事の責任を果たせなかった」と自分を責めてしまう場合もあります。
さらに、介護は突然始まる場合が多く、終わりの期日が定められていないため、介護者は「いつまで介護を行うのだろうか?」と不安を抱きがちです。
介護による不安が募り、ストレスが溜まることで、介護者自身が健康を崩してしまいます。
▼「ストレスチェック」についてさらに詳しく
▼「ストレス耐性」についてさらに詳しく
▼「コーピング」についてさらに詳しく
介護の負担の増加
介護離職が発生する原因として、「介護の負担の増加」があげられます。
仕事と介護を両立する場合は、訪問介護やデイサービスなどの介護サービスを利用する場合が多いですが、介護業界の人材不足の影響を受けて「訪問介護の希望日に応えてもらえなかった」「特別養護老人ホームに入所させてもらえなかった」などの事態が起きる場合もあります。
イレギュラーな事態で、介護の負担が増えてしまうと、仕事と介護の両立が難しくなります。
介護離職が企業に与える影響
介護離職が企業に与える影響について確認してみましょう。
介護離職が企業に与える影響
損失の発生
従業員の負担の増加
損失の発生
介護離職が企業に与える影響として、「損失の発生」があげられます。
従業員が介護を理由に離職してしまうと、採用や教育にかけたコストが無駄になってしまいます。
就職みらい研究所の「就職白書2020」によると、新卒採用の1人あたりの採用コストは約93.6万円、中途採用の1人あたりの採用コストは約103.3万円となっています。
採用平均コスト
新卒採用1人あたりのコスト:約93.6万円
中途採用1人あたりのコスト:約103.3万円
また、業務を覚えた従業員が離職した場合、企業側は大きな損失を受けることになります。
一般的に、業務を覚えた従業員が離職した場合の損失額は、退職前の年収の1/2と言われています。
調査結果からも分かるように、介護離職による企業が受ける損失は大きいと言えます。
(参考)就職みらい研究所の「就職白書2020」
従業員の負担の増加
介護離職が企業に与える影響として、「従業員の負担の増加」があげられます。
介護離職によって、他の既存従業員の負担が増え、不満が発生する恐れがあります。
介護離職した従業員の業務を担う人材を新たに採用すれば、不満は起こりませんが、少子高齢化社会で労働人口が減少しているため、求人募集をしてもなかなか人材が集まりにくいのが現実です。
上手く採用ができない期間は、既存従業員の負担が増えてしまい、従業員が不満を持ちやすくなり、離職率が上がるため注意が必要です。
▼「離職防止」についてさらに詳しく
離職の原因と対策について解説
⇒「若手の離職を防ぐためには」資料ダウンロード
介護離職を防止する方法
介護離職は介護離職者にも企業にとっても大きな損失を与えます。
介護離職の問題を防止するために打つべき対策にはどのようなものがあるのか、介護離職を防止する方法について確認してみましょう。
介護離職を防止する方法
仕事と介護の両立に関する実態の把握
介護に必要な情報の提供
仕事と介護の両立制度の理解
テレワークの導入
助け合う職場の風土づくり
働き方改革の導入
メンタルヘルスケアの実施
仕事と介護の両立に関する実態の把握
介護離職を防止する方法として、「仕事と介護の両立に関する実態の把握」があげられます。
介護離職を防止するための対策や方法には、さまざまなものがあります。
どの対策が良いかを検討する前に、従業員にアンケートやヒアリングを実施して、介護が必要になりそうな家族や親族がいるのかを確認します。
また、介護に対する理解がどれだけあるのかを確認し、どの対策が向いているのかを検討するようにしましょう。
介護について把握すべきこと
属性:役職や雇用形態など
介護に関する状況:介護経験の有無と可能性、介護中の働き方に対する意識
仕事や職場の状況:労働時間、休暇、職場のコミュニケーションなど
従業員へのアンケートとして、厚生労働省の「仕事と介護の両立支援ガイド」に掲載されている、「従業員用 実態把握調査票(例)」を参考にヒアリングシートを作成してみると良いかもしれません。
(参考)厚生労働省「仕事と介護の両立支援ガイド」
▼「社内アンケート」についてさらに詳しく
▼「従業員サーベイ」についてさらに詳しく
お悩み別サーベイの活用方法について解説
⇒「サーベイツールの選び方大全」資料ダウンロード
介護に必要な情報の提供
介護離職を防止する方法として、「介護に必要な情報の提供」があげられます。
介護は、親の病気などで突然必要になる場合が多いため、従業員が介護に直面する前に必要な情報を提供しておくようにしましょう。
具体的には、実際に介護に直面した際に仕事と介護の両立をイメージさせてみたり、介護に関する基本的知識が学べる場を提供したりします。
介護について事前に情報を提供しておけば、従業員も慌てずに済み、仕事と介護の両立がしやすくなります。
介護に必要な情報
仕事と介護の両立支援制度について説明する
仕事と介護の両立を企業が支援する方針であると周知する
介護に直面しても仕事を続けるという従業員の意識の醸成
介護が必要になった場合に相談すべき窓口を周知する
親や親族とコミュニケーションを取る必要性を伝える
仕事と介護の両立制度の理解
介護離職を防止する方法として、「仕事と介護の両立制度の理解」があげられます。
大きな経済損失に繋がる介護離職を防止するために、政府は「仕事と介護の両立支援制度」を設けています。
企業は、制度の内容に対する理解を深め、介護者が現れた場合に速やかに手続きが行える状態にしておきましょう。
(出典)厚生労働省「仕事と介護の両立支援ガイド」をもとにHRBrainが作成
テレワークの導入
介護離職を防止する方法として、「テレワークの導入」があげられます。
テレワークは、仕事を行う場所を選べます。
さらに、フレックス制度や業務委託契約への切り替えなどで、働く時間も調整できるようになれば、仕事と介護の両立がしやすくなります。
場所や時間に縛られない自由な働き方を実現できれば、出勤時間を在宅勤務時間に捻出できるでしょう。
また、勤務時間や休憩時間の調整がしやすくなれば、介護が行いやすくなります。
▼「テレワーク」についてさらに詳しく
▼「ワークライフバランス」についてさらに詳しく
▼「ABW」についてさらに詳しく
助け合う職場の風土づくり
介護離職を防止する方法として、「助け合う職場の風土づくり」があげられます。
仕事と介護を両立するうえで大切なことが、職場の理解です。
仕事と介護の両立支援制度を設けても、上司が介護を他人事として捉えてしまうと期待する効果は見込めません。
また、介護者の業務負担を減らすことで、他の従業員の業務負担が増えてしまいます。
介護者の業務を引き継ぐ人員を確保できれば問題は発生しませんが、人員の確保は現実的にはなかなか難しく、他の従業員が不満を訴えて来る場合が考えられます。
また、介護者の業務を引き継ぐ従業員から不満の声が上がると、介護者は後ろめたい気持ちになってしまい離職してしまいます。
介護の問題は誰もが直面するため、お互いに助け合う職場風土を醸成するようにしましょう。
職場の風土の醸成づくりには、経営陣が声かけすることが大切です。
▼「組織風土」についてさらに詳しく
働き方改革の導入
介護離職を防止する方法として、「働き方改革の導入」があげられます。
働く場所や時間に融通がきく職場は、仕事と介護が両立しやすい職場です。
多様な働き方を実現して融通をきかせるためにも、長時間労働になりがちな職場は、働き方を見直すことから始めてみましょう。
働き方の見直し方法の例
会議時間を見直して終了時間を厳守する
報告書をフォーマット化する
業務をマニュアル化する
労働時間を適切に管理する
相手を信頼して仕事を任せる
スケジュールを共有する
集中タイムを設ける
仕事の効率化の方法を共有する
▼「残業時間」についてさらに詳しく
残業削減の7つのポイントについて解説
⇒「残業を削減するには?」資料ダウンロード
メンタルヘルスケアの実施
介護離職を防止する方法として、「メンタルヘルスケアの実施」があげられます。
介護中の従業員は心身に大きな負担を抱え、不安を抱きやすい状態になっているため、適切なメンタルヘルスケアが必要です。
企業は、産業医や産業保健師を採用して、専門家にアドバイスやサポートを受けられる体制を整備するようにしましょう。
特に産業医は労働衛生の専門家として豊富な経験を持っており、仕事と介護の両立についてアドバイスをすることが可能です。
また、サーベイツールを使用して、従業員の健康状態が良好かをチェックすることも大切です。
数値に異変が起きている従業員がいた場合は、声を掛けたり相談窓口を利用してもらうなどのケアを促すようにしましょう。
▼「メンタルヘルス」についてさらに詳しく
サーベイの成功の秘訣について解説
⇒「サーベイにおける3つの壁を突破する方法」資料ダウンロード
介護離職を防ぐための仕組みづくりに取り組むことが大切
介護離職とは、介護と仕事の両立が困難になり、家族や親族の介護のために離職せざるを得ない状態になってしまうことを指します。
また、介護は突然訪れるため備えていなければ、心身に大きな負担となり、仕事と介護の両立が難しいと感じたら、介護離職せざるを得なくなってしまいます。
介護離職は、介護者も企業も大きな損失を受けることになるため、仕事と介護の両立支援制度について理解を深めて、介護者を支援するための対策を実施するようにしましょう。
「HRBrain 組織診断サーベイ」は、組織全体の状態の可視化はもちろん、従業員ひとりひとりにフォーカスした分析が可能なため、企業と従業員の「エンゲージメントスコア」の調査と可視化ができ、従業員の介護状況や介護に対する認識調査にも対応したデータの収集から活用をサポートします。
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人的資本の情報開示にも対応したデータの収集から活用
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▼「組織サーベイ」についてさらに詳しく
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