アサーティブコミュニケーションとは?意味・例文・ポイントを説明
- アサーティブコミュニケーションとは
- アサーティブコミュニケーションが必要とされた背景
- アサーティブコミュニケーションのメリット
- 良好な人間関係を構築できる
- 組織の生産性がアップする
- ストレスを軽減できる
- アサーティブコミュニケーションの考え方
- アグレッシブ(攻撃的タイプ)
- ノンアサーティブ(受け身タイプ)
- アサーティブ
- アサーティブコミュニケーションの実践方法
- 対等なコミュニケーション
- 相手の話を聞いて、理解し、受け止める
- 事実と主観を分けることで「伝わる」
- 抽象的な言葉は、具体的な言葉に変換することで「伝わる」
- 「言わない」選択肢があることを知る
- アサーティブコミュニケーションのポイント
- 自分の思考のクセ・バイアスを知る
- 伝える内容と表情を一致させる
- 相手への伝え方を言語化して、繰り返し練習する
- アサーティブでない相手を責めない
- まとめ
近年、アンガーマネジメントの次に行うコミュニケーションとして「アサーティブコミュニケーション」が注目を集めています。
この記事では、アサーティブコミュニケーションのメリット、実施方法、注意点について紹介します。
アサーティブコミュニケーションとは
アサーティブコミュニケーションの語源ともなっているアサーティブネス(Assertiveness)は、日本語では「自己主張すること」と訳します。
そのように聞くと、自分の意見を強く主張して押し通すように聞こえますが、そうではありません。
自分の気持ちや意見を「誠実」かつ「率直」に主張しつつも、相手の気持ちも尊重し、「対等」に表現することを意味します。
つまり、「誠実」「率直」「対等」「自己責任」という4つの柱を、アサーティブコミュニケーションでは重視しています。
こうしたアサーティブなコミュニケーション力を身に付けることで、対等なコミュニケーションができるようになります。
アサーティブコミュニケーションが必要とされた背景
アサーティブコミュニケーションは、1950年代にアメリカの心理学者が「行動療法」の一つとして開発しました。
その後、1970年代から1980年代のアメリカにおいて、人種差別・性差別に対する新しいコミュニケーション方法として広がっていったという背景があります。
日本には1980年代から流入し、注目を集めるようになりました。
現在では、ハラスメントへの意識の高まりや、対話力の必要性から再注目されている手法です。
特に、コロナ禍ではテレワークが増加したことにより、社内におけるコミュニケーションの難易度が高まっています。
そこで、マネジメントにこのアサーティブコミュニケーションを取り入れる企業も増えています。
また近年、「アンガーマネジメント」という怒りと上手に付き合うための心理トレーニングが注目されています。「アンガーマネジメント」の次に行う「相手に伝える」具体的なコミュニケーション手法としても、アサーティブコミュニケーションは評価されています。
アサーティブコミュニケーションのメリット
では、アサーティブコミュニケーションにはどのようなメリットあるのでしょうか。
良好な人間関係を構築できる
上司と部下で行う1on1ミーティングの際にも、アサーティブコミュニケーションを活用することができます。
アサーティブコミュニケーションを行うことで、上司は自身の考え方のバイアスに気づき、部下に対して伝え方を工夫できるようになります。
また、先に述べたように、アサーティブコミュニケーションはパワハラの防止にも効果的です。
一方、部下も、「こんなことを言ったら、上司はどう思うだろうか」などと萎縮することなく、素直に感情を表すことができるようになります。
例え受け身の人であっても、訓練を重ねることで自分の主張ができるようになります。そのため、結果的に良好な人間関係を構築することが可能になります。
さらに、コロナ禍でテレワークなど、オンラインのコミュニケーションが増加しています。
画面越しの場合、どうしてもタイムラグがあること、また相手の表情がわかりにいため、ちょっとしたことで「相手を怒らせてしまったのだろうか?」と不安に思うことがあります。
特に受け身の人は、その傾向が強いと言えるでしょう。
しかし、アサーティブコミュニケーションを行うことで、そうした環境下においても、バイアスを排除し、落ち着いたコミュニケーションができるようになります。
組織の生産性がアップする
上司と部下の間だけでなく、同僚の間でもアサーティブコミュニケーションができるようになると、対等かつ「わかりあえる」関係が築けるようになります。
そうした関係作りができると、職場の心理的安全性に繋がり、組織の生産性はアップします。
なぜなら、「この組織では、例え私がどんなアイディアを出したとしても、笑われるようなことにはならない」と安心できるからです。
意見・考え方・価値観などに違いがあったとしても、互いに尊重・信頼できる関係が築けると、建設的な議論ができるようになります。
相手からも尊重されていることを実感できるため、のびのびとアイディアを出し、自分の意見を伝えられるようになります。
ストレスを軽減できる
自分が感じたこと、思ったことを、素直に相手に伝えることができるため、「我慢」することが少なくなり、ストレスを軽減できます。
また、「自分がどうしたいか」という軸を持てるようになるため、自分、そして相手を責めるような気持ちを抑えやすくなります。
例えば、自分と相手に価値観の違いがあったとしても、その状況をそのまま受け入れて、傾聴し、尊重し、話し合うことができるようになります。
特に受け身の人は、「相手にどう思われるだろうか」という不安から解放され、発言ができるようになります。
このようにアサーティブコミュニケーションを行うことで、話し合いの際に感じるストレスは軽くなります。
アサーティブコミュニケーションの考え方
アサーティブコミュニケーションには、3つのタイプがあります。
アグレッシブ(攻撃的タイプ)
自分の言い分を押し通す、攻撃的なタイプを「アグレッシブ」と言います。
一見「はっきり言いたいことを言えている」と思われがちですが、裏には「自分の方が正しい」「間違いを指摘されたくない」といった心理があるため、相手を尊重する気持ちがなく、配慮ができていない状態です。
そのため、大声で相手を言い負かすなどの威嚇的な行動によって、相手の優位に立とうとする傾向があります。
こうしたタイプが上司になった場合、パワハラなどを引き起こしがちであると言えるでしょう。
ノンアサーティブ(受け身タイプ)
アグレッシブとは反対の、相手に合わせようとする意識が強いタイプを「ノンアサーティブ」と言います。
心の根底に「相手に嫌われたくない」「間違っていると思われたくない」という思いが強く、主張が苦手な傾向があります。
素直に感情を伝えることができないため、常にもやもやとしたストレスを抱えがちであると言えます。
アサーティブ
相手を尊重、また配慮しつつ、対等なコミュニケーションができるタイプです。
アグレッシブのように一方的に意見を押し付けることもなく、ノンアサーティブのように主張ができないこともありません。
例え相手が違った意見や考え方であったとしても、反論することなく受け止め、そのうえで、自分の考えを相手に伝えることができます。
アサーティブコミュニケーションの実践方法
アサーティブコミュニケーションのタイプについて説明しましたが、次は、具体的なアサーティブの手法について紹介します。
対等なコミュニケーション
たとえ立場が上司・部下と異なったとしても、対等なコミュニケーションは可能です。
「対等」というと、立場に配慮せずに馴れ馴れしい振る舞いをすることを思い浮かべがちですが、そうではありません。
「わたしは、立場が下なのだから、こんなに偉い人に、反対意見なんて発言できない」といった考え方に囚われない状態のことを指します。
ポジションという考え方に囚われて内心で見下したり、へりくだったりしすぎると、どうしても行動にそうした思いが現れてしまいます。
上司は部下をコントロールしようとせず、また部下は上司に対して謙遜をしすぎない状態で、建設的な話し合い・コミュニケーションができる状態をともに目指します。
相手の話を聞いて、理解し、受け止める
1on1を例にして説明しますが、往々にして上司は「話しすぎる」傾向にあります。
相手の話を理解した気になると、ついその話を遮って結論を述べたくなる衝動にかられることは、たびたびあります。
しかし、大事なことは「最後まで相手の話に耳を傾ける」ことです。
また、相手が自分の考えとまったく異なることを話しているとき、反論したくなる気持ちがわきおこりますが、抑えましょう。
相手を尊重し、内容を正確に復唱できるレベルで理解し、まずは受け止めるよう努力します。
「きちんと相手の話を聞いている」というサインを、正しく出すことも有効です。
本人はしっかりと聞いているつもりであっても、「目線が合わない」「身体の向きが横になっていて、正面を向いていない」など、無意識の癖が出ている場合があります。
最後まで話を聞き終わってから、もし相手と異なる意見を伝えたいと思うことがあれば、相手に配慮しながら主張しましょう。
理解したからといって、必ずしも相手の意見に「同意」する必要はないことも、アサーティブコミュニケーションのポイントです。
事実と主観を分けることで「伝わる」
では、アサーティブに注意したいときはどのようにすればいいのでしょうか。
そんなときは、「事実」と「主観」を分けることで、相手に伝えることができます。
■会話例:メールサポートを行う部署のチームリーダーからメンバーへ注意を行う場合
良い例(事実と主観に分けた場合):
「メールサポートで、お客様から2つ質問がきていることに対して、1つの回答をして完了ステータスにしていた件が、今日を含めた3日間で10回あったよ。全文を最後まで読んでから、メールを返信するように注意してくれるかな。お客様からの信頼を損なってしまうことにも繋がるし、内容によってはクレームに発展してしまう恐れがあるからね」
悪い例(主観による決めつけがある場合):
「いつも的外れなことをお客様に返信してるよね。ちゃんとマニュアル読んでる?」
このように事実と主観に分けることによって、「どのようにすればいいのか」を伝えることができます。
抽象的な言葉は、具体的な言葉に変換することで「伝わる」
職場では世代の異なる従業員同士がコミュニケーションを行う必要があります。
また、バックグラウンドの異なる多様な人材の活用も進んでいる今、相手に「伝える」のではなく「伝わる」ためのコミュニケーションを、努力して行うことが求められています。
そのため、「ちゃんと」「しっかり」「きちんと」「もっと」などの、抽象的な言葉には注意が必要です。
「いったいどのような行動をして、その状態までもっていけばよいのか」を、噛み砕いて擦り合わせる行為を、意識的に行わなければなりません。
「いつまでに」「どのような行動を行うのか」という、この2点をセットにして伝えることで「ちゃんと言ったのにできていない」といったようなトラブルを防止することができます。
ふわっとした言葉を使って「言った気になる」のではなく、具体的な言葉で相手に「伝わる」ことを心がけましょう。
「言わない」選択肢があることを知る
相手に「伝える」ことも重要ですが、ときには「言わない」という選択肢があるということを理解しておく必要があります。
なんでも心の内に溜め込んで、「言わない」ということとは異なります。
「あとで振り返ったときに、自分が後悔しないか」というポイントが、発言の軸になります。
自分が主体的に判断した結果として「言わない」ことを選択したのであれば、これもアサーティブな取り組みであると言えます。
アサーティブコミュニケーションのポイント
アサーティブコミュニケーションが、どのようなものであるか説明しました。
次に、アサーティブコミュニケーションのポイントについて紹介します。
自分の思考のクセ・バイアスを知る
「相手のために」と配慮したつもりが、バイアスの決めつけによって、かえって相手を傷つけてしまうことがあります。
たとえば、「実家で不幸があったばかりだから、出張が頻繁にある負担の多い仕事からは外してあげよう」と思ったとします。
しかし、相手によっては、「キャリアを築く機会から意図的に外された」と感じる可能性もあります。
このように、たとえ気遣いであっても本当に相手が望んでいるものであるかは、当人以外はわかりません。
そうした「〇〇なのだから〇〇に違いない」といったバイアスに自覚的になることが、アサーティブコミュニケーションのポイントです。
まずは、決めつけずに相手に提案してみましょう。
また、相手が微妙な反応をしたときに、素直に聞いてみることで、自分のバイアスに気づけることもあります。
ほかにバイアスのある例としては、「過去〇〇したけれど、失敗してしまった」と、以前に起こった出来事に対して必要以上に自分の中で重みづけをしてしまうことがあげられます。
過去は過去、今は今、と区別する考え方も大切です。
伝える内容と表情を一致させる
「注意しながら、つい笑ってしまう」といった、ちぐはぐな行動は、相手を混乱させることに繋がります。
特にノンアサーティブ(受け身タイプ)は、「相手に嫌われたくない」という気持ちを強く持っています。
そのため、「こんなことを言ったら嫌われてしまう。だから、少しでもキツいことを言ったと認識されないためにも、柔らかい表情で伝えよう」と考えた結果、伝える内容と表情が一致しない状態を引き起こしがちです。
言われた相手は「笑っているということは、たいした内容ではないんだな」と判断してしまいます。
もしくは、ちぐはぐな態度に「裏があるのかな?」と勘ぐったりと、伝えられた相手も混乱してしまいます。
注意する内容に合致した表情・態度で相手に臨むことによって、正しく伝えたい内容を伝えることができます。
相手への伝え方を言語化して、繰り返し練習する
アグレッシブ(攻撃的タイプ)には「萎縮してしまって伝えたいことを口に出せない」ということもあるでしょう。
まずは、相手へのモヤモヤした思いを言語化します。
書き出すことによって、不満だけではなく「自分はつまるところ、相手にどうしてほしいのか」という建設的な意見が明らかになります。
また、相手への要望・伝えたいことを書いた紙を持ったまま、口に出して練習し、いざというときに発言できるよう練習しましょう。
そうすることで、徐々に相手に言いたいことが言えるようになります。
アサーティブでない相手を責めない
自分がアサーティブに行動できたからといって、相手も同じことをできるとは限りません。
「自分がこんなに相手に配慮して行動したのだから、相手も同じように行動してくれるはずだ」と期待してしまうと、もしその期待と異なった場合、まるで裏切られたような気持ちを抱いてしまいます。
あくまで「相手が」ではなく、「自分」がアサーティブなコミュニケーションができることをゴールにしましょう。
アサーティブでない相手であったとしても、相手を責める気持ちは持たないように心がけましょう。
まとめ
アサーティブ コミュニケーションには、3つのタイプがあります。攻撃的タイプ・受け身タイプ・アサーティブタイプです。
「相手を尊重し、相手の意見を受け止め、自分の意見を主張できる」というアサーティブタイプになるためには、職場のポジションを意識しすぎず、「対等なコミュニケーション」を心がける必要があります。
また、テクニックとして、自分のバイアスに自覚的になること、伝える内容と態度を一致させることなど、相手にどうやったら「伝わる」のかを意識しましょう。
また、自分がアサーティブに行動できたからといっても、相手にも同じような行動を期待することはやめましょう。
あくまで「自分」を主体にして、「自分がアサーティブなコミュニケーションを行う」ことをゴールとして定める必要があります。
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